英ロンドン証券取引所とカナダのトロント取引所が合併で合意したのに続き、米ニューヨーク証取の持ち株会社とドイツ取引所も合併協議を発表した。2000年代後半に、米国やフランス、北欧で活発になった証取再編に続く第2幕だ。
世界の証取が競うように再編を続けている背景には、グローバルな金融市場の変化がある。
まず、投資家だ。金融派生商品を使い、国境を越えて株式や債券などを短期売買するヘッジファンドの存在感が高まっている。その運用資産は先進国の金融緩和を背景に増え、昨年末に1兆9000億ドルとリーマン・ショック前にほぼ並んだ。
こうした投資家はIT(情報技術)を駆使し、1秒間に数千回もの売買注文を出す。米株式市場の取引の6~7割をそうした高速売買が占め、かなりの部分は証取の外の電子取引所に流れるという。証取は自ら多額のお金を投じ、高速売買を処理するためのシステムをつくらないと、取引の流出は止まらない。
さらに、規制の強化が証取には重荷となる。金融危機の再発を防ぐため、欧米の監督当局は複雑な派生商品の売買を、金融機関の相対取引から透明性の高い証取を通じた売買に移そうとしている。今後増えることが確実な派生商品の取引に対応するためにも、システム開発の手を抜くわけにはいかない。
システムの一本化などにより、英加の証取が3500万ポンド(50億円弱)、米独証取は3億ユーロ(約340億円)の費用削減の効果を掲げた。こうした目標が達成されない限り、増える一方の負担が、企業や投資家など市場の利用者が支払う手数料に転嫁されてしまう。
東証をはじめとして、日本のほとんどの取引所は米欧勢のように自社の株式を上場していないので、国際的な再編とは無縁だった。
とはいえ、米欧のような高速取引はアジアでも急増している。シンガポールと豪州の取引所が合併に動くなど、再編の機運は高い。
日本の夕刻以降に発表された重要情報をもとに、海外で株式を売買したいという投資家の声も増えてきた。そうした意向に応えるには、自ら日本の外に拠点をつくるか、海外の証取を買収するしかない。
過去には発表後に破談になったり、狙い通りに進まなかったりした証取再編の例もある。今回の米独の統合計画も流動的な要素が残る。その成り行きに目を凝らすのは当然として、日本市場を活性化させる国際戦略も練っておきたい。
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