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社説:新燃岳噴火 警戒と被害への支援を

 宮崎、鹿児島県境の霧島山系・新燃岳で先月26日以後噴火活動が活発化し、爆発的噴火(爆発)が頻繁に起きている。

 現在は降雨による土石流の発生が最も心配されている。地元では避難準備を進めるなど警戒を強めている。万全の体制を敷いてほしい。

 専門家で作る火山噴火予知連絡会は、3日に開いた臨時の拡大幹事会で「1、2週間程度は現在と同程度の爆発的噴火を繰り返すと考えられる」との見解を示した。

 ただし、長期的な見通しについては「観測体制をきちんとしないと見極めがつかない」とした。その後、予知連は観測班の現地事務所を鹿児島県霧島市内に開設した。地下のマグマなど火山活動の予測につなげる方針という。

 また、政府の総合科学技術会議も、新燃岳の噴火の推移を把握するため観測網整備を決めた。地震計やGPS(全地球測位システム)の受信機を設置し、噴火の予兆となる山の地形変化を観測する。活動の監視に一層力を注いでもらいたい。

 新燃岳での本格的なマグマ噴火は、江戸中期に1年半続いた「享保噴火」以来、約300年ぶりという。半径4キロ以内の入山が依然、禁止されている。人命の危険に直結する噴石や火砕流などには、今後も最大限の警戒が必要だ。

 降灰に伴い、宮崎県内を中心に町一面が灰色に染まった。住民らはマスクや帽子、傘などで自衛しているが、爆発を繰り返せば健康被害が懸念される。

 また、道路が滑りやすい上、センターラインなどが見えにくく、スリップ事故が多発している。噴火に伴って起こる「空振」で、霧島市では病院やホテルなどの窓ガラスが割れ、けが人も出た。いずれも十分な注意を心がけてもらいたい。

 農作物への被害も出始めている。畜産や養鶏業者は、昨年来の口蹄疫(こうていえき)や鳥インフルエンザによる被害に続く災難である。

 国や自治体は、被害の実態を的確に把握し、最小限に食い止める手立てを考えるべきだ。可能な支援についても検討してほしい。

 温泉街の予約がキャンセルされるなど観光への影響も出始めた。来月12日に九州新幹線の全線開業を控え、鹿児島県内などの自治体からは、風評被害を心配する声が上がっている。冷静に事態を見守り、風評に惑わされぬよう対応したい。

 宮崎県高原町の避難所などには、各地からボランティアの人が駆けつけ、力になっている。地元の自治体は、銀行に募金窓口を設置した。一人一人ができる範囲で善意を形にしたいと思う。

毎日新聞 2011年2月11日 2時30分

 

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