「衆参ねじれで国会が動かなくなったのは、元をただせば夏の参院選で民主党が大敗したから。それは有権者が作り出した状況でもありますよね」
昨年暮れのテレビでこんな話をしたら、予想通りというべきか、何人かの方から「有権者の責任とは何ごとか」とお叱りのメールをいただいた。
無論、参院選で民主党が負けたのは有権者の期待に応えるような政治をしてこなかったのが最大の理由だ。一昨年の衆院選で政権交代への期待をあおり、政権が代われば一転、文句ばかりをつけたがるマスコミの責任も大きい。長年、「日本の政治には政権交代が必要」と書き続けてきた私には、衆院選の時からいずれ無理が来ると予想されていた民主党のマニフェストについて、財源論などもっと詰めた報道をしておくべきだったという反省もある。
だが、衆院選で民主党に投票した人たちも「選んだのは私たちだ」と思い起こす必要がある。投票したら後はお任せで、期待に沿わなければ不平ばかりでは、やはり政治は変わらない。
さて、愛知の「トリプル投票」だ。名古屋市長に再選された河村たかし氏らの圧勝は、民主党などへの不満や、日ごろ、何をしているのか分からない地方議会への不信が爆発した結果だろう。「チェンジ願望」は依然、すさまじく強いということだ。既成政党側も「あれは名古屋の特殊事情」などとたかをくくらない方がいい。
ただし、ここまで一方的な結果になると私も少しおののいてしまうのは事実だ。「劇場型選挙」の危うさだけではない。どうも最近の選挙は「不満のはけ口」のようになっていると思えるからだ。
名古屋市議選の結果にもよるけれど、河村氏が公約する市民税10%減税は、いずれ財源をどうするかの問題に突き当たるだろう。議員報酬の半減だけでは足りないし、借金にも限度がある。他の予算を削れば反対する市民も出てくる。今の民主党と同じ状況になれば、今度は河村氏への失望感が一気に広がるだろう。で、有権者はまた新しいスターや人気者を求める……。
気が早すぎる? その通り。むしろ、そうなってはいけないと言いたいのだ。投票で不満をぶつけ「ああすっきりした」と満足するような風潮に待ったをかけ、もう少しじっくり政治を見ていこう。私たちマスコミはもちろんだが、既存のものを壊すだけでなく、がまん強く何かを作り出していくことも「選ぶ責任」だと思う。(論説副委員長)
2011年2月10日
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