2010年8月17日更新
ポレスター・タワー大手町リーモ 東側面 竣工 分譲中 2010年7月
ポレスター・タワー大手町リーモ 北側 手前の用地には健和会病院が複合施設を建設する 2010年7月
ポレスター・タワー大手町リーモ 南側 駐車場入口(左)と正面玄関(右) 2010年7月
マリモが事業を継承、工事進む 2009年12月
広告看板がなくなり、クレーンが動いたほかは変わらず 2009年5月
アーバンコーポレイションの倒産により工事中断 2008年9月
建設地 左手の建物はグランドパレスロイヤルコート大手町 2007年6月
ポレスタータワー大手町リーモは、マリモ(本社、広島市)が大手町の給水塔跡地で開発した分譲共同住宅。免震構造を採用した20階建てのタワーマンション。元はアーバンコーポレイションの開発物件であり、ポレスターシリーズのマンションとは根本から異なる。北九州で一番人気の大手町の高台という好立地とあいまって住宅購入予定者が注目する物件だが、数奇な運命をたどったことから一般市民の関心も高い。
以下、これまでの紆余曲折を簡単に整理して、最後に物件を紹介する。
建設地の給水塔跡地は国有地売却の際に作州商事(本社、福岡市)が落札した。同社はエイルマンション香春口ロゼア(全210戸、2005)で北九州進出を果たし、この場所に第二弾 エイルマンション大手町を計画した。物件は西隣のグランドパレスロイヤルコート大手町(全260戸、1998)と同規模、同形状の分譲マンションだった。
作州商事はアンケートを取ったり、説明会を開催したりして、計画の実現にまい進していたはずだ。しかし計画はある日忽然と蒸発して、土地は最寄の安川電機小倉事業所跡地で不動産流動化事業を手がけていたアーバンコーポレイション(本社、広島市)に渡った。開発断念の経緯は明らかではない。アーバン社に住戸数を減らして高層化する理由を尋ねてみたが、返事は返ってこなかった。
従って、ここからは憶測になる。エイルマンション大手町はグランドパレスロイヤルコート大手町の東側を完全に塞ぐ計画だったから、日照権で揉めたのではないか。で、軋轢に嫌気した作州商事がアーバン社へ土地を転がした。アーバン社は建物を分割・高層化し、日差しや風通しに配慮した案を再提示して、これが決定稿になった。
後に業界筋から聞いた話によれば、アーバンビュー大手町は、20階建ての高層マンション2棟(ウエストコートとイーストコート)を敷地の南西角と南東角に南向きに建て、北西角に賃貸マンションを建設するのが全体計画だった。しかし、アーバンコーポレイションは米国サブプライム問題に端を発した信用収縮により資金繰りに窮し、第一期のウエストコートを建設中の2008年8月13日に倒産した。
地上12階まで鉄骨が組み上がったウエストコートはその後1年間放置された。2009年8月にマリモがウエストコートとその敷地を取得、建物の名称を「ポレスタータワー大手町リーモ」と改名して事業をそのまま引き継いだ。マリモが引き継いだのはウエストコートの土地建物のみであり、残りの未利用地は健和会大手町病院が取得した。健和会はここにデイサービスセンターを建設するほか、おさゆき病院を移転新築する。
アーバンビュー大手町ウエストコートは名称を変えて当初計画どおりに建設されるが、全体計画が実現する見込みはなくなった。全体計画が実現すれば、エイルマンション大手町との比較で建物を高層化して建築面積を小さくしたのだから、余裕のある敷地に庭園をつくったり、集会場を設けたりと、共有施設に付加価値がついたはずだ。1棟計画になり、大規模マンションのみが実現しうる贅沢は失われた。
当初計画のツインタワーなら印象が異なったろうが、片廊下式の公団住宅が縦に伸びただけの20階建て1棟では、周囲のマンションに紛れて超高層なのに存在感が薄い。関門都市圏にある同形状のタワーマンションとしては、クロッシングタワー(2006)、ヴェルタワー下関駅前マリンビュー(2007)に次いで3棟目。前者は同じ設計者による作品で、賃貸特有の廉価版という違いはあるが、それ以外はよく似ている。
構造的には地盤頑強な大手町だからベタ基礎は当然として、免震構造を挟んだのが目新しい。免震装置は角型鉛入り積層ゴム。本体は鉄筋コンクリート造で、高耐久百年コンクリートを採用した。工事中断による鉄骨への影響は軽微だろう。錆は落とせば問題ない。そもそも錆は酸性、コンクリートはアルカリ性で、両者は中和する。駐車場は2層3段の自走式を裏手に設置する。
建設地は南側に伝統ある永照寺が控えて、将来とも日照が遮られる恐れがない。大通りから一歩入った閑静な環境は、車影少なく子供やお寄りに安全な環境でもある。評判のスピナガーデン大手町が至近距離にあり、買い物の便もいい。病院と寺院に囲まれるのを縁起が悪いと受け止める向きもあるが、それを厭わないのであれば、街なかでこれ以上の住環境と利便性を兼ね備えた場所はそうない。
2008年1月11日作成、2010年8月17日更新
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