外資の土地取得、水面下で進行中 日本企業を買収・経営陣に外国人…法規制なく
中国系をはじめとする外資による土地買収が相次いでいる問題で、外資が表面に出にくい形での土地取得が進んでいることが、シンクタンク「東京財団」がまとめた報告書で明らかになった。土地を所有する日本企業を外資が買収しても、土地取得時しか届け出る必要がないため、外資所有と判明しないケースもあるという。法の隙間を縫って進められる外資の土地取得に、専門家は「実態に合った法整備が必要だ」と警鐘を鳴らしている。
報告書「日本の水源林の危機III」が指摘したのは、北海道や鹿児島などでの買収例だ。
北海道伊達市と壮瞥(そうべつ)町との境界に広がる700〜800ヘクタールの森林を所有・運営していた日本のゴルフ場企業が昨年7月、中国人実業家の企業に買収された。
しかし、国土法で土地の所有者を届け出る必要があるのは、新たな所有者が取得したときのみ。この森林は買収されても所有企業名が変わらなかったため届け出の必要はなく、外資の森林取得とされなかった。
鹿児島県では大連や上海、台北などと関係が深い海運会社グループが奄美大島一帯の山林買収を進めている。グループは日本人の同族経営だったが、中国人役員が経営参画。その後、事業拡大が図られた。
経営陣に外国人が入って主導権を握っても、企業の体裁が変わらない限り、日本企業として扱われる。グループは木材チップを生産するために、奄美大島の森林を伐採対象としている。
北海道日高町では、アラブ首長国連邦(UAE)の企業の日本現地法人が農業生産法人を新設。周辺の生産法人を次々子会社化し、少なくとも道内7牧場を買収したが、農地の売買を定めた農地法に外国人や外国法人の規定がないため、問題化していない。
外資の土地買収に対し、自民党は水源地買収への対策法案を策定。民主党もプロジェクトチームで法規制を検討し、地方でも水源地を自治体で買収したり、独自の条例作りが盛んだが、規制の中身は届け出強化などにとどまっている。
東京財団は「買収したり、経営陣に参画したりと、外資がさまざまな形で日本企業に入り込んでいるのに、法や制度が対応できていない。届け出強化だけでなく、土地制度のあり方全般への国の取り組みが重要だ」と話している。
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