2011年2月11日3時30分
10日、カイロのエジプト考古学博物館で報道陣に公開された、修復中の「黒豹の背に乗るツタンカーメン王立像」=越田省吾撮影
【カイロ=前川浩之】エジプトの大規模デモによる混乱で、カイロ中心部にあるエジプト考古学博物館が略奪被害に遭い、所蔵されている「黒豹(ひょう)の背に乗るツタンカーメン王立像」など70点が損傷していたことが分かった。
エジプト考古省のザヒ・ハワス大臣が10日朝、朝日新聞など一部外国メディアを同館に招き、明らかにした。この像はツタンカーメン王墓で見つかった副葬品の一つで、ツタンカーメンが黒豹の上で直立している。高さは約85センチ。略奪被害後、黒豹の背の部分でまっぷたつに折れ、王の左手や黒豹の脚はバラバラの状態で見つかった。黒豹の右耳も欠けていた。さらに、黄金の装飾品や木製の船の模型なども損傷を受けていたことが確認されたという。
同館の収蔵品はいずれも世界一級の価値があり、特にツタンカーメン関連の副葬品はエジプト考古学上、非常に貴重とされている。現在、館内では修復作業が進められており、ハワス大臣は「すべてを3日以内に直す」と強調した。
大臣によると、博物館に夜盗が入ったのは、そばのタハリール広場で大規模デモ「怒りの金曜日」があった1月28日夜。男9人が博物館の塀をよじ登り、天井のドーム屋根のガラス窓を破ってロープで侵入した。男らはツタンカーメンの展示物が並ぶ2階に降り立ち、付近を物色。一角に展示されていたツタンカーメン王立像の入っていたガラスケースを破り、像をつかんで放り投げたという。
計13のガラスケースが壊されたが、世界的にも有名な「ツタンカーメンの黄金のマスク」や、石製の棺や像などは無事だった。男らは侵入に気づいたデモ隊の人たちが捕まえたという。
中東に駐在し、日々、中東の動きに接する川上編集委員が、めまぐるしく移り変わる中東情勢の複雑な背景を解きほぐし、今後の展望を踏まえつつ解説します。エジプトからの緊急報告も。