【社説】「天安事件は謀略」と主張する相手との対話は無理

 今回、板門店で行われた南北軍事実務(予備)会談は、より高いレベルの本会談で話し合われる議題について意見を交わすためのものだったが、双方とも歩み寄りの姿勢を見せず、対立を解消できないまま2日で完全に決裂した。韓国側は「哨戒艦『天安』沈没と、延坪島砲撃に対する北朝鮮側の責任ある対応、そして挑発行為防止の確約がなければならない」と主張した。これに対して北朝鮮側は「哨戒艦沈没事件と延坪島での砲撃戦は、いずれも双方の軍部間における相互挑発と見なすことができる。このような軍事行動を中止することについて議論すべき」と主張した。今回の予備会談は冒頭からこのように意見の違いが表面化したが、その後も平行線が続き、最終的に一致点を見いだすことはできなかった。すると、9日午後になって北朝鮮側は「哨戒艦の沈没はわれわれと一切関係ない。これは米国が背後で操作する中、南側が自分たちの対決政策を合理化するために行った特大の謀略劇だ」と主張した。また延坪島砲撃問題についても「南(韓国)側が延坪島を挑発の根源地としたため発生した」と発言した。北朝鮮側はこのように言い放った直後、軍事境界線を越えて北朝鮮に戻ってしまった。

 今回の予備会談は、北朝鮮からの強い求めによって実現したものだ。そのため韓国側は、哨戒艦沈没と延坪島砲撃について「北朝鮮はこれまでの主張を変えてくるのでは」というわずかな期待を持って会談に臨んだ。しかし北朝鮮側の態度はやはり変わらなかった。この二つの問題で北朝鮮が主張を変えない限り、本会談を開催したところで、南北が和解する道筋を設定することなど絶対に不可能だ。北朝鮮もこのことを知っているはずだから、結局は現時点で、北朝鮮は対話に臨む準備ができていなかったことになる。

 韓国は二つの事件について北朝鮮の責任ある対応を求めているが、これに対して北朝鮮は「本会談が実現すれば、すべてはきれいに解決するだろう」と主張し、何としても本会議を実現させたいという意志を示してきたという。また、今回の予備会談初日は9時間にわたり話し合いが行われたが、合意点が見いだせない状況になると、北朝鮮側は「徹夜してでも会談を続けよう」と提案してきた。北朝鮮との交渉について詳しい複数の専門家は「北朝鮮側の初日の態度を見れば、最終的に会談が合意に至るか、あるいは決裂するか分かる」と語る。つまり今回、北朝鮮側は上層部から「会談を妥結して終わらせるように」という指示を受けていたものとみられ、そのため二つの事件については韓国側を適当にあしらうつもりだったようだ。ところが自分たちの思い通りにならないことが分かると、結局は全ての責任を韓国側になすりつける、昔のパターンに戻ってしまったのだ。

 北朝鮮は中国との交易により、毎年7億ドル(約574億円)から8億ドル(約656億円)の赤字が発生している。かつて韓国が太陽政策を取っていたころは、韓国側から年平均7億ドル前後の現金や現物支援を受けていたため、中国との交易による赤字を埋め合わせることができていた。ところが李明博(イ・ミョンバク)政権発足後、韓国からの支援が途絶えてしまったため、北朝鮮経済は文字通り限界に到達している。これは韓国の複数の専門家の間で一致する見方だ。今回、北朝鮮が南北対話を求めた理由が「韓国からの支援を手にするため」だったのなら、韓国もその機会を見過ごすべきではない。しかし南北対話に臨むに当たっては、あらかじめ明確な原則を設定しておかなければならない。今回、いかなる状況でも絶対に譲歩できない韓国側の第一の原則は、哨戒艦沈没と延坪島砲撃という二つの事件に対する北朝鮮の責任ある対応を引き出した上で、その後に話し合いに応じるということだ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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