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東京・虎の門病院の過剰投薬:薬剤師に賠償命令 医師らの責任も--東京地裁

 虎の門病院(東京都港区)で入院中に死亡した大学教授の男性(当時66歳)の遺族が、過剰投薬が原因として、病院を運営する国家公務員共済組合連合会や担当医らに約1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(浜秀樹裁判長)は10日、連合会と投薬を指示した担当医や、薬剤師3人の賠償責任を認め、2365万円の支払いを命じた。医療過誤訴訟で薬剤師の責任を認める判決は異例。

 判決によると、男性は肺がんで入院していた05年10月、併発した肺炎の治療薬「ベナンバックス」(一般名ペンタミジン)を通常の5倍の量で3日間投与され、11月に腎不全などで死亡した。臨床経験3年目の担当医が薬品マニュアルを見た際に、隣のページの別の薬品と見間違えて投薬を指示していた。

 薬剤師法は、医師の処方箋による指示がなければ薬剤師は薬を調剤できないとする一方で「処方箋に疑わしい点がある時は、医師に確認した後でなければ調剤してはならない」とも定める。

 薬剤師のうち実際に調剤したのは1人で、2人は投与量を確認する立場だった。判決は「ベナンバックスは劇薬で重大な副作用を生じることがある。5倍の量だったことを考えると、薬剤師は指示に疑問を抱いて担当医に確認する注意義務があった」として3人の過失を認めた。【伊藤直孝】

毎日新聞 2011年2月11日 東京朝刊

 

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