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[25124] [習作]英雄伝説(軌跡シリーズ) ~闇夜の英雄達~ (クロス元 幻燐の姫将軍)
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2011/02/07 23:47
ついにやってしまった^^幻燐の姫将軍と書いてますが実際はVERITA後の話しです。基本幻燐側しか出す気がないので戦女神キャラを期待している方は諦めて下さい……
また、にじファンにも同じものがあります。



かつて、二つの世界が融合して誕生したディル=リフィーナ。
数ある大陸の中でもディル=リフィーナで2番目に大きい大陸、ラウルバーシュ大陸のアヴァタール地方
で邪竜復活による大きな戦いが起きた。戦いは多くの犠牲を出したが神殺しと半魔人とその使徒や
仲間たちによって邪竜は倒された。

そしてそれぞれが違う道を歩み始めた中で半魔人でありレスペレント地方を収める国、メンフィル帝国の
初代皇帝リウイ・マーシルンは亡き愛妻、正妃イリーナの魂を求めて息子シルヴァンに国を任せ、信頼ある仲間と旅に出ていたが、
メンフィルを飛び出した孫娘、第一皇女リフィアとリフィアに連れ出されたメンフィルの客人、魔神エヴリーヌを捕まえメンフィルに
戻し、また仲間と共に旅に出ようとした時リウイの最も信頼する家臣の一人であり混沌の女神、アーライナの神格者
ペテレーネ・セラの体調が崩れ、診察をした所なんとリウイの子供を身籠っていたのだ。これを知ったリウイは一時旅に出るのを中断したのだ。そんなある日………



後書き
紹介程度に書いたのですっごく短いです。更新は基本焔の軌跡を優先するのでかなり遅いと思いますのであまり期待しないで読んで下さい。



[25124] 第1話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/12/28 18:38
~メンフィル王都・ミルス城内~

新兵達の演習につきあったリウイはある部屋に向かい、ドアの前に立ちノックした。
コンコン
「はい、どちら様でしょう?」
「俺だ、入ってもいいか?」
「ご主人様!?どうぞ!」
ドアの中から慌てた声が返され、リウイは相変わらずだと苦笑し部屋に入った。
そこにはお茶の用意をしようとしているペテレーネの姿があった。
「あ、ご主人様。今、お茶の用意を致しますので少々お待ち下さい。」
その様子を見てリウイは呆れた。
「ペテレーネ……お前はもうすぐ子を産む身なのだから無理はするな。」
「ですが、折角ご主人様に来ていただいたのに何も御出ししない訳には……」
「構わん。これは命令だ。今はその身を大事にしろ。」
「ご主人様……ありがとうございます。」
リウイの言葉にペテレーネは顔を赤くし、椅子にすわり、リウイも椅子に座った。
そしてリウイはペテレーネを見、体の調子を尋ねた。

「どうだ、体の調子は。」
「はい、今は大丈夫です。でもときどき赤ちゃんがお腹を蹴るんですよ。ふふ、早く出してくれって言っているみたいです。」
「そうか……元気な子が生まれればいいな……」
「はい……」
ペテレーネはリウイの問いに答えた後、暗い顔をした。

「どうした、そのような暗い顔をして。」
「はい……リフィア様達を国に戻しこれからイリーナ様をお探しする矢先に私がこのようになってしまって、ご主人様の旅を中断してしまい申し訳ないんです。」
「そのことか……前にも言ったが気にするな。イリーナを探す旅はあてのない旅になるからな。数年中断した所で支障はでん。」
「ですが……」
「くどい。それともお前は俺の子を産みたくないのか?」
「そんな!私にとってご主人様の子供を授かるなんてこの上なく幸せなことです!」
リウイの言葉をペテレーネは慌てて否定した。

「ならばいいではないか。以前にも言ったが子供は多いほうがいい。それも信頼ある女性のなら尚更だ。」
「ご主人様………」
「それにイリーナがもし、これを知ったら間違いなくお前についてろと言うはずだ。だから今は安静にして
元気な子を産め。」
「ご主人様……はい、絶対に元気な子を産んでみせます!」
リウイの言葉にペテレーネは笑顔で答え、そんなペテレーネを見てリウイは笑みを浮かべた。そしてそこにほかの来客が現れた。

「は~い、ペテレーネ!元気?」
「全くあなたときたらいつも騒々しい……少しはペテレーネの性格を見習えないのかしら?」
元気よく部屋に入って来たのはリフィアの祖母で、リウイの幼馴染であり側室の一人であり、上位悪魔と睡魔族を両親に持つ闇剣士カーリアンと、その後から入って来たのはリウイの最も信頼する家臣の一人であり、飛天魔族のメンフィル大将軍ファーミシルスだった。

「なによ~いちいち五月蠅いわね~やるっていうの~?」
「私は当然の事を言ったまでよ。あなたがかかって来るならいつでも相手になるわよ?」
二人はどんどん険悪になり武器を構え始めた。それを見たリウイはいつものように2人を叱りつけた。
「いい加減にしろ、お前達。腹の子に悪影響だろうが。」
「申し訳御座いません、リウイ様。」
「ふう、今日のところはお腹の子に免じて収めてあげるわ。」
リウイの言葉に2人は武器を収めたが相変わらずお互いを牽制していた。それを見たリウイは相変わらずの様子に
溜息をついた。

そしてカーリアンはペテレーネに話しかけた。
「よかったわね、ペテレーネ。あなたずっとリウイの子供が欲しかったんでしょ。私、ずっと傍にいたあなたを出しぬいてちょっと悪く思っていたのよね。」
「そんな!恐れ多いです!私はカーリアン様なら素晴らしいお子様を産むと思っていましたし、そのお陰でリフィア様がいるではないですか。」
「ありがとう、ペテレーネ。」
カーリアンの言葉にペテレーネは慌てて否定した。そしてファーミシルスの方へ顔を向け申し訳ないような顔をした。

「それより、ファーミシルス様より早く子供を授かって申し訳ないです………」
「あら、気にしなくていいわ。幼い頃よりずっとリウイ様の傍にいたあなたなら私より早く産んで当然だと思っているわ。」
「ですが、私のような力不足の者が………」
「ペテレーネ、私はあなたを弱者だと思ったことはないわ。リウイ様のためだけに神格者にまで登りつめたその忠誠心、
魔術の力は私を超えていると言っていいわ。もっと自分の力を誇りなさい。そしてリウイ様のためにも元気な子を産みなさい。」
「ファーミシルスの言うとおりだ。プリゾアもあの世できっとお前を誇りに思っているだろう。」
「ファーミシルス様、ご主人様……ありがとうございます!」
ファーミシルスからの思いがけない励ましにペテレーネは自信を持った。
そこにさらに来客が来た。

「元気であるか、ペテレーネよ!」
「……気持ちよく寝てたのに………」
一人はリウイとカーリアンの孫であり、次期メンフィル皇帝第一候補である第一皇女リフィアともう一人は
姫神フェミリンスと戦うために太古の魔術師ブレア―ドより召喚された魔神の一柱、深凌の楔魔第五位のエヴリーヌだった。

「リフィア……もう少し静かに入室できないのか。それにエヴリーヌを無理やり起してくる必要はないだろう……」
リウイは相変わらずの孫の様子を見て呆れた。
「せっかく余の新たな妹か弟ができるのに大人しく入って来れるものか。それにエヴリーヌにとっても妹か弟になるのだから
連れて来て当然であろう!」
リウイの問いをリフィアは一蹴した。

「妹か弟って……カミ―リが産むわけじゃないんだから、正確にはあんたは叔母になるんじゃないの?」
カーリアンはリフィアから普段、婆と言われてた分、ついにリフィアが叔母と呼ばれるようになったのに気付き
ニヤついた。
「何を言っておる!生まれてくる子が伯父か叔母になるのじゃぞ?全くこれだからカーリアン婆は……」
「だ~れが婆ですって~!!」
「い、痛い、痛い!痛いのじゃ~!!離すのじゃ~~!!」
婆と言われ怒ったカーリアンはすかさずリフィアの後ろにまわりリフィアの頭を拳でグリグリし、それをされた
リフィアは呻いた。
「そのぐらいにしてやれ、リフィアも新たな命に興奮してるだけだろう。」
「もう、リウイったら。相っ変わらずリフィアには甘いわね!」
リウイに諭されカーリアンは文句を言いつつリフィアを離した。

「ハアハア、死ぬかと思ったのじゃ。リウイ、大好き!」
「これに懲りたらもう少しカーリアンを親切にしてやれ……」
「うん、わかった!」
リウイの言葉にリフィアは笑顔で答えた。
そしてリフィアはエヴリーヌといっしょにペテレーネに近寄った。

「ここに余とエヴリーヌの新たな兄妹がおるのか……不思議じゃの。」
リフィアはペテレーネのお腹をマジマジと見、興味深そうに見た。
「お2人ともさわってみますか?」
「よいのか?」
「はい、お2人でしたら赤ちゃんも喜ぶでしょうし。」
珍しく恐る恐る聞いたリフィアにペテレーネは笑顔で答えた。

「そうか、では早速……おお!かすかだが動いておるぞ!エヴリーヌも触ってみるが良い!」
リフィアはペテレーネのお腹に触り驚いた。
「ん……わあ、動いている……生きているの?」
「ええ、生きていますよ。この子が生まれたらエヴリーヌ様も姉になりますね。」
ペテレーネのお腹に触って驚いているエヴリーヌに優しく言った。
「エヴリーヌがお姉ちゃん……ふふ、楽しみ………早く産んで元気になって……いつも作るお菓子も楽しみだから……」
「ええ、その時はまた作らせていただきます。」

さまざまな人から祝福されペテレーネは幸せを感じ、また仲間もそれぞれ新たな命が産まれる時を待っていた……




後書き なんかペテレーネを凄く贔屓してしまった気分です……エヴリーヌやリフィアの口調がおかしくないかちょっと心配です……



[25124] 第2話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/12/28 22:01
~メンフィル王都・ミルス城内~

月日が経ちついに、ペテレーネはリウイの子を産んだ。
「ペテレーネ、無事か!」
お産の時部屋の外で待たされたリウイは新たな命の泣き声が聞こえるとすぐに部屋に入った。
そこには幸せそうな顔で赤ん坊を抱いているペテレーネとそれを優しく見守っているカーリアンの姿があった。
「リウイ、少しは落ち着きなさい。全くあなたったら子供が生まれるといつもそうなんだから……」
「ご主人様……はい、見ての通り無事です。それより見て下さい、この子がご主人様の子です……」

慌てている様子のリウイを見てカーリアンは呆れた。
そしてペテレーネは抱いていた子をリウイに見せた。
「仕方がなかろう。それよりこの子か……ほう……元気な子だ……それに魔力もリフィアに負けず劣らずあるようだな……きっと素晴らしい子に成長するだろう。性別はどっちだ?」
リウイは抱いていた子を渡されその子供の魔力を感じ取り驚いた。
「はい、女の子になります。」
「そうか……リフィアがいる以上恐らくこの子は王位継承者にはなれないが、正式な皇女扱いにはするから安心しておけ。」
「そんな!私はご主人様の子を授かれただけでも嬉しいのにそこまで気にして頂けるなんて……本当にありがとうございます!」
ペテレーネはリウイの優しさを感じ感謝した。

そしてリウイはある事に気付き、ある提案をペテレーネにした。
「ペテレーネ、いつまでもその呼び方はやめてはどうだ?」
「え、呼び方といいますと……?」
「その“ご主人様”だ。子供が産まれた以上その呼び方もおかしかろう。」
「え………でもご主人様はご主人様ですし……」
ペテレーネはリウイからの突然の提案に戸惑った。
「子供にとって父と母がお互い呼び合うのにはおかしかろう。お前ならば俺を呼び捨てにしてもいいのだぞ?」
「あら、それなら私も呼び捨てにしていいわよ?お互いリウイの子を産んだし、私とあなたは長年の仲間じゃない。」
「そんな!お2人を呼び捨てにするなんて恐れ多いです!その……せめて名前でしたら……」
ペテレーネは2人の提案に恐縮し、その後小さな声で呟いた。

それを見てカーリアンは感心し、リウイは笑みを浮かべた。
「あなたって本当遠慮気味ねえ……」
「ならばこれからは俺の事も名前で呼べ。これは命令だ。」
「はい、わかりました……その……リ、リウイ様……」
ペテレーネは恥ずかしげにリウイの名前を呼んだ。それを聞きリウイは笑みを浮かべた。

そしてカーリアンがある事に気付いた。
「そういえばその子の名前はどうするの?」
「ふむ……名か。ペテレーネ、お前がつけていいぞ。」
「え、私がですか!?よろしいのでしょうか?」
ペテレーネはリウイの言葉に驚いた。
「構わん。お前が産んだのだから当然だ。シルヴァンの時は俺がつけたがほかの子はその子の母につけさせたしな。」
「わかりました………では、プリネというのはどうでしょう?」
ペテレーネは少し考え子供の名を言った。

「プリネ……珍しい名だな。どこからその名が出た?」
リウイは新たな子の名を聞きペテレーネに名の由来を聞いた。
「はい、プリゾア様の名前から頂いた名です。私にとってあの方はもう一人の母親のような方でしたから……女の子が生まれたらこの名前にしようかなとずっと思っていたんです。」
「なるほどな……わかった、今日からこの子は「プリネ・マーシルン」だ。ペテレーネ、お前もマーシルンを名乗ってもいいぞ?」
「いえ、お気持ちはありがたいのですがそれだけはできません。リウイ様の妃でその名を名乗っていいのはイリーナ様だけであると私は思っていますから。」
「そうか……」
「そうね……ペテレーネの言うとおりだわ。」
王族の名を名乗っていいと言われたにも関わらずそれを断り、その断った理由を知り
ペテレーネのその忠誠心にリウイは感心し、またカーリアンもその言葉に賛成した。

「ペテレーネ!産まれたそうじゃの!余の新たな妹はどこじゃ!」
「エヴリーヌの妹……どこ?……」
そこに新たな妹の誕生で興奮しているリフィアと秘かに期待しているエヴリーヌが部屋に入って来て部屋は賑やかになった。
その後、ファーミシルスやシルヴァン等リウイの縁者や家臣が次々にやって来て賛辞を述べた。

そして神格者の子で、帝国の新たな皇女の誕生にレスぺレント地方の人々は喜び、記念に国を挙げた祭り等を行ったのでレスぺレント地方は一時期賑やかになった……

そして賑やかなレスぺレント地方に一つの魂が彷徨って来て太古の迷宮、「ブレア―ドの迷宮」の中にある不思議な魔法陣に入り消えた……

~クロスベル自治州・ウルスラ病院~

同じ頃、ディル・リフィーナとはまた異なる世界の大陸、ゼムリア大陸の様々な貿易がされている自治州、
クロスベルでも新たな生命が誕生した。
ある夫妻の夫は病室の前でうろうろしてる時、そこから新たな生命の初声が聞こえた時、
いてももたってもいられなく病室の中に入り、子供を抱いている妻の姿を見て安心し、笑顔で妻に近づいた。
「よくやった!本当にかわいい子だよ……」
「ええ……見て、この金の瞳と髪はあなた似ね……」
「そうか!でも女の子だからきっとお前に似て美人になるさ!」
「もう、あなたったら……」
赤ん坊を見て赤ん坊の将来を語り合っている夫妻が目を少し離している間に別の世界から来て
彷徨っていた先ほどの魂が赤ん坊の中に入り、その事に気付かない夫妻は赤ん坊の名を考えていた。

「名前はどうしようか……?」
「一応、考えてあるわ。エリィ、セリーヌ、イリーナ。どれがいいかしら?」
「どれもいい名だね。迷うな……」
夫は妻が提案した名前に迷い、一通り考えた後ある名前に決めた。

「そうだな……イリーナはどうだろう?なんとなくその名にしたらこの子は身分のある男性に嫁いで幸せになる気がするんだ。」
「イリーナ……いい名ね。偶然かしら、私もその名を口にした時、そう思ったわ。」
「決まりだな!今日からこの子の名は「イリーナ」!「イリーナ・マグダエル」だ!」
夫は決めた名を口にし、妻もその名を口にし赤ん坊を祝福した。

名を決める時、妻が「イリーナ」の名を口にした時、赤ん坊が反応したのは誰も気づかなかったことだった……

そして数年後………


後書き オリジナルキャラ、プリネ登場です。多分、これからの冒険でプリネとリフィアが主体になると思います。ちなみにエリィは生まれますのでご心配なく……



[25124] 第3話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/12/30 10:56
~アヴァタール地方・冥き途~

新たなメンフィル皇女、プリネが生まれて数年後リウイはペテレーネ、カーリアン、ファーミシルス、そして幼い娘のプリネを連れて死した命が集まる場所、冥き途にイリーナの魂の行方を門番に聞きに来た。

「あら、お久しぶりですね。またお妃様の行方を聞きに来たんですか?」
「……久し……ぶり……」
リウイ達の姿を見つけ、姿を現したのは冥き途の門番であり神殺しの使い魔であり、魔槍の使い手、リタ・セミフと、同じく神殺しの使い魔であり、ソロモン72柱の1柱、魔神ナベリウスが姿を現した。

姿を現した2人にリウイは魂の行方を聞いた。
「イリーナの魂はあれから何かわかったか?」
「………何年か前に……北……行って……消えた……場所………深い……そこで…魂……感じにくい……」
「数年前に北のほうへ行って魂が消えたそうです。場所はどこか地下深くに潜ってしまってそこから魂の反応が感じとりにくいそうです。」
独特の話し方をするナベリウスを補佐するようにリタが説明した。

「消えたって……もしかして、魂が消滅したってこと!?」
カーリアンは説明を聞き焦った。
「いえ、魂が消滅したのならナベリウスが感じ取ります。ナベリウスが存在を微かに感じましたから恐らくですが神の墓場のような別次元の世界に行って彷徨っているか、そこで新たな人間に転生したかもしれません。」
「別次元の世界か……それにここから北の地方なら我が領土であるし、地下深くならブレア―ドの迷宮に手がかりがあるかもしれんな。」
「ええ、あそこは全ての階層は制覇しましたが、転移門に未だ謎の部分がありますから可能性はあるかもしれませんね。」
リタの説明でリウイは場所を推測しまた、ファーミシルスもリウイの考えに賛成した。
「そうだな……ならば国に戻り次第、迷宮の探索隊を再び結成し調べてみるか……」
リウイは少し考えた後これからの方針を決めた。

「あ……よければこれをどうぞ。」
ペテレーネは荷物からお菓子を出し門番の2人に渡した。
「……甘い……匂い……あり……がとう……」
「わあ、ありがとうございます。エクリアちゃんやマリーニャちゃんのお菓子もおいしいですけどこれもおいしいから気にいってるんですよ。」
「気にいって頂けたのなら何よりです。」
ペテレーネは2人の様子を見て笑顔になった。
そこに興味深そうに周りをみていた母と同じ髪を持つ娘、プリネが2人と母のところに来た。

「ねえねえおとうさま、おかあさま~この人達、だれ~」
娘の素朴な疑問を聞きペテレーネは優しく答えた。
「この人達はお母さん達の友達のようなものよ。ほら、挨拶をしなさい。」
「わかった~メンフィル皇女、プリネ・マーシルンです~よろしくおねがいしま~す。」
「よろ……しく……」
「わあ、かわいい。ペテレーネちゃんの子供ですか?私はリタ、こっちはナベリウスよ。よろしくね。」
幼いながらもたどたどしい礼儀で挨拶をしたプリネに2人は自己紹介をし、少しの間おしゃべりをした。

「……そろそろ国に戻るぞ。」
「はい、リウイ様。お2人ともお世話になりました。プリネ、帰りますよ。」
「わかった~じゃあ、またね。リタちゃん、ナベリウスちゃん。」
「ええ、無事見つかる事をお祈りしておきます。」
「……また……会う……」
門番の2人に別れを告げたリウイ一行は祖国、メンフィルに戻った……

~ブレア―ド迷宮・地下100階層・野望の間~

広大なレスぺレント地方にある古代の迷宮”ブレア―ドの迷宮”に帰還したリウイは調査隊を結成し
迷宮内の奥深くを調べて、そこでメンフィル機工軍団の団長、古代の兵器でもある機工種族の
シェラ・エルサリスより報告をうけていた。
「謎の転移門だと?」
「ハ、調査隊の一部が調べましたところ、現在登録済みの転移門のほかに記録されてない新たな転移門が見つかり現在、その門の先を探索中です。」
「そうか……では、ほかの調査隊をもそちらにも廻してその転移門の先を重点的に調べるようにしておけ。」
「御意。」
淡々と報告するシェラにリウイは新たな命令を出した。

~メンフィル王都・ミルス城内~

そして数日が経ちリウイは謎の転移門から帰還した調査隊の隊長より報告を受けていた。
「……別次元の世界だと……?」
「ハ、謎の転移門の先を調べました所、別の世界につながっておりました。最初はほかの大陸かと我々は疑いましたが、調査しましたところ、この世界とはあまりにも違う文明が発達しておりました。さらにそこにも信仰されている神はいたのですが”空の女神(エイドス)”という聞いたこともない神しか信仰されていなく”軍神(マーズテリア)等の
他の神の名を出しましたが全く知らない様子でしたので別次元の世界だと我々は判断致しました。」
「光の勢力で最も知られている”軍神”も知らぬとはな……それは信憑性が高そうだな……ほかに報告はないか?」

リウイは新たな世界が存在することを知り、内心驚いたが心の奥深くに止め、先を促した。
「ハ、あの門には欠点がございました。」
「欠点だと?」
「我々先行隊より後に来た部下達が申すには我々とは異なった場所に出たようです。ただ、向こうからこちらに戻ってくる門は何ヵ所かに固定されているというおかしな現象がございました。」
「その異なった場所というのは全く違うのか?」
「いえ、調べました所、”ロレント”という街の近くの森に全て出ましたのでそれほど離れてはございませんでした。魔術師達の話ではもうすぐ出る場所の固定は出来るそうです。」
「そうか……御苦労、下がっていいぞ。」
「ハ!失礼いたします!」
隊長はリウイに一礼した後部屋を後にした。

「リウイ、やったじゃない!もしかするとそこにイリーナ様がいるかもしれないわね。」
報告を聞いていたカーリアンは喜んだ。
「まだ、断定はできん。だが、可能性は出てきたな。しばらくはその世界に拠点を作り調べるとするか。」
カーリアンの言葉を否定しながらもリウイは微かな希望を持ち、笑みを浮かべた。

~ブレア―ド迷宮・謎の転移門前~

そこにはリウイ一行のほか、リフィア、エヴリーヌ、シェラとファーミシルスの副官、ティルニーノエルフのルースがいた。
「では、これより別次元の世界の調査及び拠点作りに我々が先行する。みな、準備はいいか。」
「いつでもオッケーよ。」
「こちらも万全です。」
「ふふ、腕がなりますわ。」
3人の頼もしい言葉を聞きリウイはリフィアとエヴリーヌの方に顔を向けた。

「……どうしてもお前たちもついてくるのか?」
「当たり前であろう!別世界に余の名を知らしめしてくれる!」
「エヴリーヌはお兄ちゃんといっしょならなんでもいい……プリネとお留守番もいいけど、すぐ帰ってくるんでしょう……?」
「……仕方のないやつらだ。絶対に俺達から離れるなよ?」
おいていってもついてきそうな2人にリウイは溜息をつき注意をした。そしてシェラとルースに顔を向けた。

「いつでも軍は出せるようにしておいたか?」
「ハ、機工軍団は問題ありません。」
「こちらも問題なく迷宮の外に待機させています。みな、リウイ様の久しぶりの出陣に勇んでおります。
かく言う俺も楽しみなのです。」
淡々と報告するシェラと年甲斐もなくワクワクしているルースの言葉にリウイは頷き背を向けた。

「では、みな行くぞ!」
そしてリウイ達は門の先に進み光につつまれた……









後書き リタとナベリウスは出してもおかしくなかったので出しました。多分戦女神キャラはもう出ないかと……リウイ達がついた時の時代は”焔の軌跡”といっしょですのでいくつかの軌跡キャラの運命を改変いたしますので期待して待って下さい。



[25124] 第4話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/12/30 10:57
~ロレント市内~

ズドーン!ダダダダダ!キャア―!助けてくれ!逃げろ!
ディル・リフィーナとは異なる世界の大陸ゼムリア大陸にある小国、リベールの都市の一つロレント市内は戦場であった。なぜそのような事になったのは突如、エレボニア帝国がハーメルという村をリベール軍が襲ったと言い、戦争を仕掛けてきたのだ。リベール軍は劣勢ながらも軍人カシウス・ブライトが考えた作戦で反撃をし始めたのだ。この作戦でエレボニア帝国軍は崩れ始めたのだが、作戦により孤立した一部の部隊が半ばやけ気味にロレントを襲ったのだ。そしてあちこちで市民が戦闘に巻き込まれ、悲劇が生まれた。
そして、ある場所でも悲劇が生まれようとした。

「おかあさ~ん!」
「に……げ……て……エ……ステル……」
瓦礫に埋もれている女性はカシウス・ブライトの妻レナで呼びかけているのはその娘、エステルだった。
レナは砲撃によって崩れてきた瓦礫からエステルをかばい重傷を負い、正に命が風前の灯であった。
「誰か~助けて――!おかあさんが死んじゃう!」
エステルは必死で助けを呼んだが逃げる事に必死な市民達は誰も気付かなかった。
そこにリウイ達が転移してきた。

「ふ~ついたわね。あら、面白い事になってるじゃない。」
カーリアンは周りの戦闘を見て不敵に笑った。
「きゃは、久しぶりに遊べそう……」
エヴリーヌも周囲の状況を見て遊ぶ相手を見つけたような顔をした。
「報告では街中に出るというのはなかったんですがね……」
ファーミシルスは街中に出たのに気付いて呆れた顔をした。
「まだ、転移の固定が出来てないのだから仕方ないだろう……それより現状の把握をするぞ。」
リウイは周りを見て現状を把握しどう動くか考え始めたところ、その姿を見つけたエステルがリウイのマントをひっぱた。

「ねえ、おかあさんを助けて、お願い!」
「……なんだ、貴様は?」
マントをひっぱられた事に気付いたリウイはエステルに声をかけた。
「お願い!あそこにいるおかあさんを助けて!おかあさんが死んじゃう!」
エステルは瓦礫に埋もれているレナを指差してリウイに懇願した。

「リウイ!助けようぞ!それが余達王族の義務のひとつであろう!」
リフィアはレナを見てリウイに答えを求めた。
「(………母か)ああ。」
母の助けを懇願しているエステルを見て人間に追われ母に庇われた昔を思い出し、瓦礫のところに近寄った。
「さっさと片付けるぞ。カーリアン、ファーミシルス、悪いが手伝ってくれ。」
「しょがないわね~」
「ハ、了解しました。」
そして3人は協力して瓦礫からレナを出した。

「おかあさん!」
瓦礫から出された意識を失っているレナを見てエステルは縋りつくように泣いた。
「おかあさん!死なないで!お願い!」
「……リウイ様……」
それを見てペテレーネは懇願するような目でリウイを見つめた。
「わかっている。治療してやれ。」
「はい、わかりました!」
「余も力を貸そうぞ!」
リウイから許可をもらいペテレーネとリフィアはレナの所に近寄った。

「おかあさん、助けてくれるの?」
「ええ、今助けますからね。」
「安心するがよい。余の辞書に不可能という文字はない!」
泣きはらした顔をあげたエステルにペテレーネは優しく言ってリフィアと共に魔術を発動した。
「「暗黒の癒しを……闇の息吹!!」」
神格者であるペテレーネと、魔力の高いリフィアの手から放たれた紫色の光はレナの傷を完全に癒した。
そしてレナは目を覚ました。

「う……ん?あら、どうして傷が?」
レナは重傷だった傷が治っていることに気付き不思議がった。
「おかあさん!よかったよ~。」
「エステル……ごめんね心配をかけて……」
目が覚めたレナにエステルは抱きつき、抱きつかれたレナは受け止めエステルの頭をなでた。そしてそれを見ていたリウイ達に気付き話しかけた。

「あの……どちら様でしょうか?見た所帝国兵でもありませんし、かといってこちらに住んでいない方と見受けられていますが……」
「……ただの旅の者だ。」
レナの問いにリウイは適当に答えた。
「あのね、おかあさん。この人達がおかあさんを助けてくれたの。」
「そうでしたか……本当にありがとうございました。」
「礼はいらぬ。それが余達の義務であるからな。」
エステルから事情聞いたレナはリウイ達にお礼を言ったがリフィアのおかしな言動と
翼のついているファーミシルスを見てレナは疑問を持った。

「義務……?それにあなたは人間ですか?」
レナの疑問にどう説明するべきか考えていたリウイ達のところに複数の帝国兵達が包囲した。
「市民がいたぞ!殺せ!」
ズダダダダ!
帝国兵達は銃を構え一気に放ち、それを見たレナはエステルを抱きしめた。
「ハッ!」
「甘い!」
「遅いわよ!」
「させません!」
「させぬわ!」
「「「「「「「「な!!!!!!」」」」」」」
放たれた銃弾はリウイのレイピア、カーリアンの双剣、ファーミシルスの連接剣にはじかれ
リウイ達の横を通り過ぎた銃弾はペテレーネとリフィアの簡易結界に弾かれ兵達は驚愕した。

「まさか、いきなり攻撃してくるとはな……」
リウイが出す闘気に兵達は後ずさった。
「ク……臆するな!かかれ!」
「「「「「「「オオ!!」」」」」」

一人の兵の言葉に兵達はリウイ達の恐ろしさも知らずに襲いかかった。
後にこの一人の兵の判断がエレボニア帝国の衰退の原因となった……




後書き 次回はリウイ達の蹂躙です。といかリウイ達に勝てる人って英雄伝説シリーズはいないんですけどね……



[25124] 第5話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/12/30 21:42
突如襲いかかった兵達にリウイ達は戦闘態勢に入った。
「みな迎撃するぞ!」
リウイはレイピアを兵達に向けて号令をし
「ハイ!リウイ様!」
ペテレーネは杖を構えて詠唱をし始め
「ハッ!」
ファーミシルスは連接剣を構え
「ふふ、楽しませてもらうわよ!」
カーリアンも双剣を構え
「力持たぬ者を攻撃した上、余達に剣を向けたその罪……死して悔いるがよい!」
リフィアはペテレーネと並ぶような位置で杖を構えて詠唱をし始め
「きゃは、遊んであげる……」
エヴリーヌは弓を虚空から出し、片手に魔力の矢を作りだした。

「「「死ね―!」」」
「炎を味わえ!フレインバル!」
ゴオ!
「「「ぐああ……」」」
リウイに襲いかかった兵達はリウイの炎を纏ったレイピアによって急所をつかれた上、その身を炎が跡形もなく焼いた。

「相手は女子供がほとんだ!殺せ!」
「「「「オオッ!!」」」」
「ふふ、ファーミ、何人殺せるか競争ね?それェ!」
「フン、こんな雑魚共相手に何を言ってるのかしら?……まあ、あなたには負けないけどね!」
ズバ!ドス!
「「ガ!」」
「「ガあ……」」
軽口を叩きながらもカーリアンとファーミシルスは次々と兵達を葬っていった。
「うふふ、みんな死んじゃえ!」
ドスドスドス!
「「「グ……ア……」」」
遊び感覚のエヴリーヌが空中に向けて放った矢は空中で分散し複数の兵達の眉間や喉元に当たり絶命させた。

「大いなる闇よ……ティルワンの死磔!」
「古より伝わりし純粋なる爆発よ……落ちよ!エル=アウエラ!」
ゴォォォォ……ズドーン!
「「「「「ギ!………」」」」」
ペテレーネの暗黒魔術とリフィアの純粋魔術によって周りの兵達は跡形もなく消え去った。
リウイ達の圧倒的な強さに帝国兵達はなすすべもなく命を落とし、ついには突撃を命令した兵しか残らなかった。

「……さて、残るは貴様だけのようだな。」
「ヒ!な、なんなんだよ……貴様らはぁ!」
近づいて来るリウイに恐怖した兵は銃を何度も撃ったが、全てリウイの剣によって弾かれ弾切れになった。
「俺達<闇夜の卷族>に剣を向けた事をあの世で後悔するがいい!」
ズバ!
そして一瞬で相手に詰め寄ったリウイの剣が兵の首を通り、恐怖の顔をした兵の首が地面に落ちた。
「フン、雑魚が。あっけない。」
「ん~ちょっと物足りないわね。」
物足りなさそうな顔をしたカーリアンと死体に侮蔑の顔をむけたファーミシルスは武器を収め、ほかの仲間達も武器を収めた。

「あなたたちは一体……」
驚異的な強さを見せたリウイ達をエステルに死体を見せないように抱きしめたレナは呟いた。
「……いずれ我ら<闇夜の卷族>を知る時が来るだろう。せっかく助かった命だ。娘共々さっさとここから離れるがいい。」
「……わかりました。命を助けて下さって本当にありがとうございました。」
リウイの警告にレナはリウイ達に頭を下げた後、エステルを抱いて戦場から走り去った。

「それでこれからどうするのリウイ?」
レナ達を見送ったカーリアンはリウイにワクワクした顔で何をするか聞いた。
「少し待て。ファーミシルス、確かこの世界には3ヵ所の国があるそうだな?」
「ハッ、”カルバード共和国”、”エレボニア帝国”、そしてここ”ロレント”を持つ国”リベール王国”の3ヵ所の国が主体で、ほかは自治州等小国がちらばっているほどかと。先ほど助けた女性の話から推測すると我らを襲ったのはエレボニア帝国兵かと。」
「そうか……フ、この世界に拠点を作る手間が省けたな。」
「では……?」
リウイの言葉から先を予測しファーミシルスは不敵に笑った。
「ああ、ここロレントを”一時的”に我がメンフィル”保護領”にしここを拠点にエレボニアに攻め入る。ファーミシルス、お前は一端戻ってルース達を連れて来い。戻る転移門の場所は知っているだろう?」
「ハッ!すぐに連れて来てまいりますのでお待ち下さい!」
リウイの命令を受けたファーミシルスは翼を広げ空へ上がり転移門がある森のほうへ向かった。

「フフ、国を攻めるなんて”幻燐戦争”以来じゃないの?」
「勘違いするな。俺達は”襲われた”から対処するだけだ。ロレントもいずれリベールに返還する。まあ、”条件”は付けさせてもらうがな……」
久しぶりの戦争の気配で笑っているカーリアンの言葉をリウイは否定しながらも笑みを浮かべた。そしてリフィアのほうに顔を真剣な顔を向けた。

「リフィア、お前にとってこれが初めての国同士の戦争になるだろう。怖いのなら国に戻ってもいいぞ?」
「余を誰だと思っているのじゃリウイ?余は次期メンフィル皇帝、リフィア・イリーナ・マーシルン!余の辞書に後退の二文字はない!あっても消し去ってくれる!此度の戦いで得た知識を余の力にしてみようぞ!」
「そうか……ならばしっかり学べ。」
「当然じゃ!」
迷いのない顔で否定し、前向きな発言をしたリフィアにリウイは孫娘の将来を期待した。

そしてそこに先ほどメンフィルに戻ったファーミシルスに先導されたルース率いる陸兵軍団とシェラ率いる機工軍団が到着した。
「リウイ様!ご指示通り我らメンフィル軍、いつでも出れます!ご命令を!」
「ご指示を、リウイ様。」
命令を待つ2人にリウイは頷き、勇んでいる兵達の正面に立ち、レイピアを空高くへ振り上げ大きな声で号令をした。

「これより我らメンフィル軍はロレント市を”保護”しエレボニア帝国に進軍する!!一般市民達の保護と建物の消火を最優先にしろ!!力持たぬ一般市民を襲うエレボニア帝国兵に慈悲はいらぬ!!行くぞ!!!」
「オオオオオオオオオッオオオオオオオッ!!!!!!!!」
リウイの叱咤激励を受け、武器を掲げ勇んだ兵達は帝国兵との戦闘や一般市民の保護を行い始め、わずか2刻で市内の戦闘は終了した。

そしてリウイ達は市内の戦闘後の処理をし、市内にいくつかの部隊を残し1日後に来た援軍と共に破竹の勢いで帝国軍が守るエレボニア帝国とリベールの国境、ハーケン門を突破しエレボニア帝国に侵攻をし始めた。

何の前触れもなく、突如現れたメンフィル軍はゼムリア大陸全ての国に激震を走らせた……


後書き やばい、どんどんアイディアが来ます。本編に入るまで下手したらこっちを更新し続ける気がします……



[25124] 第6話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/12/31 17:35
~エレボニア帝国・平原~

晴れ渡る平原に2つの軍が睨みあっていた。一つはエレボニア帝国でも5本の指に入る名将、ゼクス・ヴァンダール率いるエレボニア帝国軍でもう一つは突如どこからともなくロレントより現れ、ロレントの帝国兵を殲滅した後、破竹の勢いでハーケン門を突破し次々とエレボニア帝国領を制圧しているリウイ、ファーミシルス、シェラ、ルース率いる猛者揃いのメンフィル皇帝軍だった。


「(ク……リベール攻略だけでも手間取ってるというのに、ここで我が国土に侵攻する強国が現れるとは……これもリベールに無実の罪を被せた我らの報いか……)全軍、ここで必ず押しとめるぞッ!!!今こそ我らの忠誠を皇帝陛下に見せてみよ!!!!」
「イエス、サー!!!!!」
目の前の謎の軍――メンフィル軍の強さを感じ取り自軍の劣勢を悟ったゼクスは自分を叱咤するように兵達に号令を挙げた。
「全軍突撃ッッ!!」
「オオオオオオッオオオオッ!!!!!!」
ゼクスの命令で歩兵や導力戦車はメンフィル軍に向かって突撃した。

その突撃を丘の上からリウイ達は見ていた。
「リウイ様、機工軍団、戦闘配置完了しました。ご指示を」
機工軍団の戦闘配置を完了したシェラは主君の命令を待っていた。
「よし、突撃してくる帝国兵どもを一掃しろ。」
「了解しました。―――全軍に通達、第一戦闘準備。繰り返す――」
ウィィ――ン……
リウイの命令を受けた軍団長シェラの指令に反応し、兵士たちが唸りにも似た騒動音を徐々に高めていた。

「(……なんだこの音は……まさか!)いかん!全軍後退せよ!」
風に乗って聞こえてきた騒動音に嫌な予感を感じ、ゼクスは後退の命令を出した。

「我が主、攻撃準備完了。」
「攻撃開始だ。」
「……攻撃開始。」
ズド―――――ン!!!!
「「「「―――――ッ!!!!」」」」
「なッ!!!!」
しかしその命令は空しくリウイの命令によりシェラ率いる機工軍団が放った砲撃は平原を轟かす大爆音と共に、業火と爆発が一瞬で
突撃した敵兵を飲み込んだ。兵達の断末魔の叫びさえ掻き消し導力戦車さえも跡形もなく吹き飛ばした
機工軍団の一斉砲撃にゼクスは驚愕した。

「……目標攻撃範囲の生体反応が半減、残存した敵兵に動揺が見られます。」
「わかった。御苦労。」
シェラの報告を聞きリウイは兵達の前に出て大声で号令をした。

「我らはこのまま目の前の帝国軍を突破し、エレボニア主要都市の一つに侵攻する!兵は将を良く補佐し、将は兵を震い立たせよ!何人たりとも遅れることは許さんぞッ!!」
「オォォォオオォォォォォォオオオォォッッッ!!!!」
リウイの叱咤激励に応じて勇ましい雄叫びを上げたメンフィル軍は一斉に突撃を開始し帝国兵達を蹂躙した。
動揺している帝国軍はなすすべもなく突撃したメンフィル兵に次々と討取られて行った。

「………まさかこれほどの強さとは………全軍、退却せよ!!!」
戦場の敗北を悟ったゼクスは退却命令を出し、退却をし始めたのだが。
「ギャア!」
「グワア!」
「な、何が起こった!」
次々と討取られて行く周りからの叫び声にゼクスはうろたえた。

「フフ、どこを見ているのかしら?」
「どこだ!どこにいる……馬鹿な!」
どこからともなく聞こえて来た声を探していたゼクスは空を見上げた時、降下してくるファーミシルス率いる
親衛隊の飛行部隊に驚愕した。
「まさか、天使……」
「フン!あんな奴らと同等だなんて気分が悪いわ。……見た所貴様が指揮官のようだからここで討取らせてもらうわよ。」
ゼクスの呟いた言葉に降下したファーミシルスは鼻をならし連接剣を構えた。
「戦う前に聞きたい事がある……貴殿等は何者だ!なぜ、我が国土を侵攻した!」
「フフ……死に行くものに教えてやる義理はないけど、冥途の土産に教えて上げるわ。我はメンフィル大将軍ファーミシルス!誇り高き闇夜の卷族の国の将なり!貴様らによる我らが王を攻撃した罪、そして我らが王の悲願のため、貴様等には死を捧げて貰うわよ!」
「メンフィル……!?闇夜の卷族……!?我らが貴殿等の王を襲っただと……!?何を言っているのか理解できんぞ!」
「おしゃべりはここまでよ……ハッ!」
「ッ!!」
ガン!
戸惑っているゼクスにファーミシルスは襲いかかったが咄嗟の判断で剣を抜いたゼクスは防御した。

「少しはできるようね……楽しませて貰うわよ!」
「クッ!」
ガン!ギン!ガン!ヒュッ!
人間でありながらファーミシルスの攻撃を捌き致命傷を避けていたゼクスだったが、メンフィルでも一、二の実力を争うファーミシルスには叶わず徐々に疲弊して行った。
「ハアハア……(つ、強すぎる……この私が手も足もでんとは……)」
「フフ……神格者でもない人間にしては中々やるようだけど、遊びはここまでよ、ハッ!」
「クッ!」
疲弊したゼクスは迫る連接剣を交わそうと動いたが、疲弊していた体は云う事を効かず少ししか動かなかったので
攻撃を受けてしまった。
「グアアアッッ!!」
「少将ッ!」
ファーミシルスの凶刃を受けて叫び声を上げたゼクスを見てファーミシルスの部隊と応戦していた兵士達は思わず悲鳴を上げた。

「だ、大丈夫だ……うろたえるな。」
「しかし少将、目が……!」
駆け寄ってくる兵達を片手で止めたゼクスだったが、もう片方の手で連接剣で斬られ血を流し続けている片方の目を押さえていた。
「フフ、疲弊しながらも致命傷をさけるとはやるじゃない……だが、ここまでよ……!」
それを見てファーミシルスは半分感心し、止めを刺すため連接剣を振るった。
「グウッ!」
「な……!」
「あら。」
ゼクスは迫り狂う連接剣を見てもはやこれまでかと諦めたがほかの兵が楯になったのを見て驚き、ファーミシルスも少しだけ驚いた。

「少……将……お逃げ……下さい……グフ!」
ファーミシルスの剣によって貫かれた兵は血を吐き事切れた。
「少将、今のうちにお逃げ下さい!」
「お前達をおいて逃げれるものか……!やめろ、離せ!離せ――!」
わめくゼクスを兵達は抑え戦場から退避しようとした。
「チッ、逃がすか!」
「させるか!少将をお守りしろ!」
ズダダダダダダ!
追撃しようとしたファーミシルスを止めるため、周りの兵達は銃を撃ったが全てファーミシルスやファーミシルスの部下によって防がれた。
「鬱陶しい!……闇に落ちよ!ティルワンの闇界!」
「「「アアアアアッッ……!!!」」」
「怯むな!少将を逃がす時間を稼ぐだけでいい!」
「「「「オオッッ!!!」」」」
ファーミシルスの暗黒魔術を喰らった兵達は叫びを上げて事切れた。しかしそれでも将を守るため挫けずファーミシルス達に帝国兵達は襲いかかった。

「どうやらよほど死にたいようね……いいわ、その心意気を買って上げるわ!親衛隊よ!まずはこいつらを皆殺しにしてその後逃げた将を追うわよ!」
「「「「「「ハッッッッ!!!!」」」」」
ファーミシルスを中心とした飛行部隊に周りの帝国兵は一矢も報いることができずわずか1刻で全滅した。

「フン、雑魚共があっけない!」
全滅した兵に侮蔑の顔を向けたファーミシルスは武器を収めた。
そこに伝令を携えた副官のルースがやって来た。
「リウイ様より伝令です、ファーミシルス様!敵は全滅し街も制圧したとのことでただちに部隊を戻すようにとのことです!」
「……そう。指揮官を討ち取れなかったのは口惜しいがあの程度の者を逃がしたくらいで支障は出ないわ。親衛隊、ただちに帰還せよ!」
「「「「「「ハッッッッ!!!!」」」」」
ファーミシルスは指揮官が逃げた方向を見た後踵を返し、リウイ達の元へ向かった。

この戦いでエレボニアは全兵力の4割と主要都市の一つが失われた……




後書き 今年最後の更新です。みなさんよいお年を…… 感想お待ちしております。



[25124] 第7話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2011/01/01 21:23
あけましておめでとうございます。これからもよろしくお願いします。








~グランセル城~

リベールの首都グランセル城内は今、新たな第3勢力謎の軍――メンフィル軍についての話し合いが行われた。
「……それで、現在ロレントに駐屯している謎の軍についてはわかりましたか?」
不安そうな顔で情報を聞いたのはリベールの全国民に慕われているリベールの女王、アリシア・フォン・アウスレーゼであった。そして報告を待つ人物の中にはロレントに妻と娘がいるリベールの英雄、「剣聖」カシウス・ブライトもいた。
カシウスは最初ロレントが謎の軍に制圧されたと聞き、一人で向かおうとしたが上司や部下達総動員で押しとどめられなんとかグランセルに留まったのだ。ロレントの状況を最も知りたかったため、ロレントへ偵察に行ったカシウスの部下・リシャールが戻った時は鬼気迫る顔で妻と娘の状況を聞き、リシャールを脅えさせ女王にたしなめられてようやく大人しくなったのだ。

「ハッ!では報告いたします!現在ロレントに駐屯している謎の軍はメンフィル帝国軍という名前でございました!」
「メンフィル帝国……?エレボニアではないのか?」
聞いたこともない国の名前を出されリベールの将軍、モルガンは確認するように聞いた。
「間違いございません。町人の振りをし見回りを行っている謎の兵に聞きました。念のためエレボニアの間違いではないかと聞きましたが強く否定されました。」
「君主の名前はなんという者ですか?」
アリシア女王は先を促すように聞いた。
「ハッ!現メンフィル皇帝はシルヴァン・マーシルン。そして現在軍を率いているのはその父リウイ・マーシルンという者だそうです。そしてリウイ・マーシルン率いるメンフィル皇帝軍はロレントを制圧後翌日には部隊を残しハーケン門へ向かったとのことです。」
「……市民はどうなっている。」
最も聞きたかった事をカシウスは心の中で妻と娘の無事を祈るようにして聞いた。
「はい。市民達は少々とまどってはいますが普通の生活をしてました。聞けば襲撃の混乱の最中に突如現れ、市民達の保護や建物の消火をしエレボニア兵達を皆殺しにしたそうです。戦闘後は食料、医療品の配給や市民の怪我人や病人の治療も
行っていて、市内は至って平和です。ただ……」
「ただ……とはなんだ?ハッキリ言え!」
「カシウス、落ち着け!」
リシャールの言葉を濁すような言い方にカシウスは我慢できず声を上げたがモルガンに窘められた。

「……取り乱して申し訳ございません、将軍。リシャール続きを。」
「ハッ!メンフィル兵の中には人ではない存在がいました。」
「人でない?どういうことですか?」
アリシア女王はリシャールの言葉に疑問を抱き聞いた。
「見た目は人なのですが翼や尻尾がついている者や明らかに人の姿ではない者がいました。メンフィル兵によると彼ら自身を含め自ら”闇夜の卷族”と名乗りました。」
「”闇夜の卷族”……聞いたこともない人種ですね。ほかにはありませんか?」
アリシア女王は未知の人種名を聞き少しの間思考したがほかの情報を聞いた。
「はい。もうひとつございまして……こちらは我々リベールというよりゼムリア大陸全てが驚愕するようなことかと。」
「ゼムリア大陸全てだと?一体何なのだ?」
モルガンは先を促すように聞いた。
「……たまたまメンフィル軍による市民の治療を見たのですが、市民の治療をメンフィル軍のあるシスターがしていました。」
「……軍にシスターがいるとはな……それで?どこがおかしいんだ?」
カシウスは軍内にシスターがいたことに驚き理由を聞いた。

「はい。そのシスターが傷を癒す時手から光が出、光が収まった後は傷は跡形もなく消えていました。それを見た市民達は奇跡だと大騒ぎをしてメンフィル兵達によってその場は収められました。
騒ぎは収まりましたがそのシスターは現在、市民から奇跡を起こす聖女として敬われています。……それでそのシスターに七曜教会の者かと聞いたのですが、否定されました。……混沌の女神(アーライナ)の神官だそうです。」
「「「混沌の女神(アーライナ)!?」」」
ゼムリア大陸唯一の信仰されている神、空の女神以外の神の名前が出されその場にいた全員は驚いた。

「……続けます。そのシスターに治療され感謝した者やそれを見ていた市民達の一部がそのシスターに教義等を求め信徒となる者まで現れ、七曜教会の者達はどうすればいいのか戸惑っています。」
「……陛下、これは一度七曜教会の者を含め、メンフィルと話し合う必要がございますな。」
驚愕したカシウスだったが気を取り直し女王に進言した。
「……そうですね。市民達に危害を加えていない上、治療もしているということは少なくても話しあう余地はありそうですね。
誰か、紙と筆を。」
「ハッ!」
報告していたリシャールは部屋の前を守っている兵に紙と筆を持ってくるように命じた。

そこにリシャールの部下、カノーネが慌てて入って来た。
「重要会議中の所申し訳ありません!火急の情報が入ったので報告に参りました!」
「火急の情報とはなんですか?」
どんなことが知らせれてもいいように心構え、アリシア女王は先を促した。
「ハッ!偵察兵によるとメンフィル皇帝軍はハーケン門を破竹の勢いで突破後、エレボニア帝国領内に進軍し主要都市の一つやいくつかの帝国領を制圧しました!エレボニア帝国軍も抵抗はしたのですがなすすべもなく全滅あるいは敗退いたしました。かのゼクス・ヴァンダール率いる帝国の主力部隊も壊滅しゼクス少将自身も重傷を負い撤退したとのことです!メンフィル軍はその後部隊を残し本軍はロレントに引き返したそうです!」
「「「「なっ!?」」」」
カノーネの言葉に部屋は驚愕に包まれた。

「この短期間で主要都市を落とし、エレボニアでも5本の指に入るというゼクス少将がなすすべもなく敗退するとは……メンフィル軍は一体どれほど強いのでしょうか……」
報告を聞いたリシャールは震えるように嘆いた。
「……それよりエレボニア帝国が今後どのように動くかだ。見ようによってはリベールの逆襲とも見られてしまうぞ……」
モルガンはこれから先起こりそうなことを考え唸った。
「……そうですな。陛下、一刻も早くリウイ・マーシルン殿と会見をする必要がございますな。」
カシウスもモルガンの考えに同意し女王に進言した。
「……急いで教会の者に同行するよう連絡してください。そしてエレボニア大使館にも人をやって帝国侵攻は私達の仕業ではないと伝えて下さい!準備ができ次第すぐにメンフィル軍本陣に私自身が向かいます!」
「陛下!危険なのでは!」
女王の命令にモルガンは慌てた。
「……人を信じることで信頼が生まれるのです。最初から私達が向こうを疑えば相手の本音を知ることができません。市民に危害を加えていないのです。相手は賢王なのでしょう。ですから心配は無用です。」
「……わかりました、陛下、ただし私もお連れ下さい。」
女王の決意を知りモルガンは諦めたような顔で護衛を申し出た。
「僭越ながら陛下、私も同行させて下さい。」
「わかりました。お願いします。」
「「ハッ!」」
そして女王の命令の元、城内は慌ただしくなり準備ができた女王たちは陸路でロレントへ向かった……




後書き 感想お待ちしております。



[25124] 第8話
Name: sorano◆b5becff5 ID:024b2ccc
Date: 2011/01/08 17:17
文章力がだんだん落ちて来た気がします……




~ロレント郊外・メンフィル皇帝軍本陣~

ロレントの郊外にあるメンフィル軍の本陣の前に女王達はつき、入口を守っている兵士に話しかけた。
「リベール国王、アリシア・フォン・アウスレーゼです。リウイ・マーシルン皇帝陛下に御取次をお願いします。」
「……少々お待ち下さい。」
女王の言葉を受け、判断がつかなかった兵の一人が伝令を伝えに本陣の中へ走っていた。
そしてそこにロレントの探索から帰ってきたプリネを連れたリフィアが女王達の姿を見つけ近寄った。

「なんじゃお主らは?余達になにかようか?」
「あなた達はどなたですか?見た所身分が高い方に見受けられますが……」
話しかけられた女王はリフィア達の服装を一目見て、位の高い者だと判断し、正体を聞いた。
「余か?余はメンフィル皇女にして次期皇帝、リフィア・イリーナ・マーシルン!謳われし闇王、リウイ・マーシルンの孫!」
「……メンフィル皇女、プリネ・マーシルンです。お父様に何か御用ですか?」
自身満々に紹介するリフィアと幼いながらもしっかり紹介したプリネを見て女王達は驚いた。

「あなたが次期皇帝ですか……!それにそちらの方は父とおっしゃりましたが両親はどなたしょうか。」
「父はメンフィル初代皇帝、リウイ・マーシルン。母はアーライナの神官、ペテレーネ・セラです。」
「え……リフィア姫は今、リウイ皇帝陛下の孫とおっしゃていましたが……」
女王達はリフィアとプリネを見比べ戸惑った。
「事実じゃ。ここにいるプリネは形式上には余の叔母じゃが、余の後に産まれておるから実質余の妹のようなものだ。」
「そうでしたか……紹介が遅れ申し訳ありません。リベール国王、アリシア・フォン・アウスレーゼです。
リウイ皇帝陛下に此度のロレント制圧のことについてお聞きしたいことがあり、こうして参上してまいりました。」
「ふむ、そうか。一つだけ訂正しておこう。余達はロレントを制圧した覚えはない。あくまで”保護”だ。」
「”保護”ですか……詳しいことをお聞きしても?」
「それはリウイ本人に聞けばわかる。……どうやらお主たちの迎えが来たようだな。」
女王としばらく話していたリフィアは近づいてきてる気配を感じ、その方向に向いた。

「ペテレーネ、迎え御苦労。」
「おかえりなさいませ、リフィア様。それにプリネも。」
「ただいま戻りました、お母様。」
「おかえりなさいプリネ。……リフィア様、この場は私にまかせて本陣の中へ。」
「わかった。エヴリーヌのところに行くぞ、プリネ。」
「はい、リフィアお姉様。」
女王達を迎えに来た時、その場にリフィアとプリネを見つけたペテレーネは2人を本陣の中へやった後
女王達の正面に立った。
「お初にお目にかかります。アーライナの神官にしてリウイ様の側室の一人、ペテレーネ・セラです。」
「貴殿がかの”聖女”か……」
モルガンは先ほど出会ったプリネ皇女の母であり、報告にあった聖女だと気付き、少女と言ってもおかしくないペテレーネの若さに驚き呟いた。
「あの……その呼び名は恥ずかしいのでお止め下さい。みなさんが勝手におっしゃているだけです。
……それでご用件はリウイ様とお会いしたいとのことですが。」
「はい。お会いできるでしょうか?」
「構いません……こちらです。」
そしてペテレーネは女王達をリウイの元へ案内した。

ペテレーネによって案内された天幕の中に入り女王達はリウイと対面した。
「……メンフィル皇帝リウイ・マーシルンだ。まあ、今は隠居の身だがな。」
「(なんて覇気……まさに覇王ですね……)リベール国王、アリシア・フォン・アウスレーゼです。使者も出さずのいきなりの訪問、お許し下さい。」
女王はリウイがさらけ出す覇気に飲み込まれないよう自分自身を保って自己紹介をした。
「七曜教会より参りました者です。」
「リベール王国軍所属、モルガンです。」
「同じくリベール王国軍所属カシウス・ブライトです。とても孫がいるような年には見えないのですが失礼ながら本物ですか?」
「本物だ。これでも100年以上は生きてる。そこにいるペテレーネもそうだ。」
「ハッ……?」
リウイを見て年齢を疑ったカシウスだがリウイの言葉に理解ができず女王達と共に固まった。

「この世界の人間が驚くのも無理はない。俺は半魔人でそこにいるペテレーネは神格者だからな。」
「この世界……?詳しいことをお聞きしたいのですが。」
一瞬思考が停止した女王はリウイ達の正体を聞き、リウイは語った。自分達は異世界の者でありその中で
人ならぬ者やその者と共に暮らす者を”闇夜の眷属”といい、異世界には複数の神が現存していることを語った。
また、信仰する神より”神核”という力を承った者を”神格者”と呼び、神格者は半不老不死の存在であることも話した。

「異世界では不老不死の方法があるのですか……」
カシウスはペテレーネの容姿を見て、どう見ても年下にしか見えない少女が自分の倍以上生きてるようには思えなく驚愕した。
「複数の神が現存しているのですか……!そこには我らが神、エイドスはいらっしゃるのでしょうか?」
異世界の存在、神が現存していることに驚いた七曜教会の司祭は自らの神の存在を聞いた。
「生憎ながら聞いたことはない。まあ所詮異世界だ。いなくて当然だ。……世間話はここまでだ。要件を聞こうか。」
「では……異世界に来た目的、此度のロレント保護とエレボニア侵攻についてお聞かせ下さい。」
女王はリウイにここに来た理由を話した。

「……こちらに来た理由はある探し物だ。」
「……それはどのような物ですか?」
「それは教えることができん。国家機密と言っておこう。」
「……わかりました。では続きをお願いします。」
「まず、エレボニア侵攻はこちらの世界に来た時、いきなりエレボニア軍に襲いかかられたからだ。よって我らは身を守るためとこの世界の拠点を作るためにエレボニアに侵攻しただけだ。ロレント保護はそのついでだ。そちらに通達もなしで勝手ながら保護をしたのは謝罪する。」
「……いえ、聞けば市民の保護や食料の配給等もして下さったと聞きます。リベール国民を代表してお礼を言わせて下さい。民を守って下さってありがとうございます。」
アリシア女王はリウイに頭を下げた。それを見てモルガンは慌てた。
「へ、陛下!他国の王族に簡単に頭を下げるなど……!」
「よいのです。民の命と比べられません。……それでできればロレントを返還してほしいのですが。」
「……条件がある。今回の保護で食料、医療薬などかなりの出費が出た。その条件を呑むのなら我ら
メンフィル軍はロレントから兵を退こう。」
「その条件とは……?」
女王達はリウイから出される条件を固唾をのんで待った。

そしてリウイが出した条件とは
1、ロレントの近くにある森の一部にメンフィル大使館を作ることを許可すること。
2、導力技術の提供
3、メンフィルの国教の一つ、混沌の女神(アーライナ)の教義を広めることの許可
だった。

「……以上の条件を呑むのならすぐに兵を退こう。よければ友好の証として現在占領されている都市の解放を手伝うが?」
「いえ、貴国にそこまでしていただくわけにはいきません。条件ですがアーライナ教を広めることにはすぐには頷けません。七曜教会との相談が必要ですので。」
「……いいだろう。こちらにも多少の非はあるしな。返事をもらうまでは我らが責任を持ってロレントを守ろう。」
「……念のためにこちらの兵も置いてよろしいでしょうかな?」
モルガンは情報等手に入れるためリウイに兵の配置の許可を聞いた。
「かまわん。我らをよりよく知るにはちょうどいい方法だしな……」
「ありがとうございます。……陛下、一度城に戻り会議を開かなくては。」
「そうですね……リウイ殿、私達はこの辺りで失礼します。」
一通り話し合いが終わった女王達はその場を去ろうとした時、シェラが入って来た。

「会議中のところ、申し訳ありません。リウイ様、エレボニア兵がボース方面より迫って来ています。」
「何……?ハーケン門にはファーミシルス達を配置したが。」
「敵兵勢力は数はありますが我らが圧倒的に優勢。ファーミシルス大将軍から伝令が来まして、現在ハーケン門にも
ボース方面から向かってきたエレボニア兵を相手にしてるとのことです。恐らくリベールの都市内を占領していた兵が2手に分かれたかと。」
「フン……ロレントとエレボニア侵攻の兵の敵討ということか。出陣するぞ。シェラ、ペテレーネ。」
「御意。」
「はい、リウイ様。」
リウイは外套をペテレーネから受け取るとそれを羽織り、エレボニア兵の出現に驚いている女王達に顔を向け話した。
「我らはこれよりエレボニア兵の迎撃にうつる。よければ我らの戦いを見ていくか?」
「よろしいのでしょうか?自国の戦い方を見せつけるなど。」
女王はリウイの提案に戸惑った。
「かまわん。見られた所で貴殿等が我らの真似をできる訳ないしな。」
「陛下、せっかくのご好意を受けられるのがよいかと思われます。」
モルガンはリウイの言葉に内心、自国では真似できないと言われ憤ったがメンフィルの強さを知りたいため
顔に出さず女王に進言した。
「陛下、将軍の意見に私も賛成です。陛下の身は我らが責任を持ってお守りしますので。」
「大佐まで……わかりました、リウイ殿、よければ後方で貴殿らの戦いを見せて貰ってもよろしいでしょうか?」
「ああ。」
そしてリウイはシェラやペテレーネと共に天幕から出て行き女王達もリウイ達について行った……







後書き 今、レンをどうしようか考え中なんですよね……
一つは教団壊滅作戦の時リウイ達に保護されマーシルン王家入りする。もう一つは原作通り結社入りし王都襲撃かリベル=アークの際リウイ達に敗北し、パテル=マテルはリウイ達に破壊され心のよりどころをなくし、脅えたレンにリウイ達が止めをさそうとした所をエステルに庇われ、今まで嫌っていたエステルを大好きになりエステルの支えになることを決める。どっちがいいかみなさんのご意見待っています。



[25124] 第9話
Name: sorano◆b5becff5 ID:50efcd77
Date: 2011/01/13 17:04
~メンフィル皇帝軍・本陣~

天幕から出た女王達はすでに整列して命令を待っているメンフィル兵を見て驚いた。
「な……すでに出陣用意ができているとは……なんという早さだ……!」
モルガンはメンフィル兵達の行動の早さを知り驚いた。そしてリウイは兵達の前に立ち、命令を出した。
「我らはこれより街の防衛とエレボニア兵の迎撃にうつる!第1部隊から第3部隊は市民を安全な場所に避難させろ!
第4部隊は……」
次々と命令を出すリウイに兵達はリウイに敬礼をした後それぞれの行動を移すために動き始めた。
そしてリウイ達は少数の兵を率いてボース方面の街道でエレボニア兵が来るのを待ち構えていた。そこにはリフィアやペテレーネもリウイと共にいた。
前線となる場所に皇女や衛生兵がいるのに驚きカシウスはリウイに自分の疑問を話した。

「リウイ殿、前線に皇女やシスターがいるのは危険なのでは……?それにこの数では迎撃が難しいのでは?」
「カシウスと言ったか。何か勘違いしているようだが2人がいるからこそこの数で迎撃できるのだ。」
「ハッ……?」
カシウスはリウイの言葉に思わず呆けた。
「……今にわかる。シェラ、エレボニア兵はまだか?」
「少々お待ちを……複数の反応が近付いております。後、数分で姿を表すかと。」
「わかった。ペテレーネ、リフィア。」
「お任せを、リウイ様。」
「余に任せておけ!リベールの者達よ、余の戦いをその目でしかとみるがよい!」
リウイの言葉を聞き、2人はそれぞれ詠唱を開始した。
「シェラ、お前も準備しておけ。」
「ハッ……いつでもいけます。我が主ご命令を。」
シェラもエレボニア兵が来る方向に攻撃できるように準備した。
そしてついにエレボニア兵達がその姿を見せた。

「来たか……攻撃開始だ。」
「……攻撃開始。」
「……アーライナよ!私に力を……深淵なる混沌、 ルナ=アーライナ!」
「これが余に秘められし真なる力!究極なる光、クロースシエル!」
「「「「「「「「「………ッ!!!!!」」」」」
シェラの砲撃、リフィアの出す強大な光の奔流とペテレーネの出す強大な闇の奔流がエレボニア兵を呑みこみそれをうけた大半のエレボニア兵達は叫び声を上げずのも許されず消滅していった。
「「「「なっ……!」」」」
それを見た女王達は驚愕した。

「敵兵戦力、攻撃前の兵力と比べ3割を切りました。」
「御苦労。いくぞ!一兵たりとも生かすな!」
「オオオオッオオオオオッ!!!!!」
「フフ、やっと私の出番ね。行くわよ!」
リウイの号令でカーリアンを筆頭にメンフィル兵達は進軍しリフィア達の攻撃を運良くのがれたエレボニア兵達を蹂躙した。

「神聖なる力よ!エクステンケニヒ !」
「「「ギャぁぁぁ……」」」
リウイの聖なる力を宿したレイピアが複数の兵を消滅させ
「ふふ、行くわよ……奥義!桜花乱舞!」
「「「グワァ!」」」
カーリアンの剣技は兵達の体を2つに分かれさせ
「古より伝わりし炎よ……落ちよ!メルカーナの轟炎!」
「「「ウワァァァァ……」」」
ペテレーネの火炎魔術に兵達は叫び声を上げながら骨すら残さず炎に焼かれ
「出でよ!ソロモンに伝わりし魔槍!……封印王の槍!死愛の魔槍!」
「「「グッ、ガハ!」」」
リフィアが次々と出す暗黒魔術の槍が兵達を貫き絶命させた。そしてメンフィル兵達も雄叫びをあげ敵兵を討取って行った。

「……メンフィルは信じられない戦い方をしますな……まさか王自身も戦うとは……」
カシウスはシスターのペテレーネや皇女のリフィアの魔術攻撃、シェラの砲撃、またリウイ自身が戦っているのを見て驚愕した。
「王族達も強いが兵達自身、統率がとれ一人一人が強すぎる……これがメンフィルの強さか……」
モルガンはメンフィル兵達の統率のとれた攻撃に唸った。
「……一般兵達がこれほど統率のとれた攻撃にうつれるのはやはり、リウイ殿の仁徳の良さですね……兵の一人一人がリウイ殿を信頼を超えて信仰に近い形で慕っているように見えます……私やクロ―ディア、デュナンでは決して真似はできませんね……」
女王はリウイのカリスマ性を感じ、自分たちでは決して真似できないとわかり溜息をついた。
「それだけではなく、王自身が戦い自らの強さを見せることで兵達の士気も上げているのでしょう……本当にリウイ殿は隠居をなさっているのでしょうか?」
カシウスはリウイの強さは自分を超えていると感じ、また先ほどのリウイの隠居しているという言葉に疑問を持った。そしてわずか1刻でエレボニア兵は全滅した。

メンフィル兵の勝利の雄叫びの中、驚愕している女王達のところにリウイ達が悠然と歩いてきた。
「いかがかな?我が軍は。」
「さすがエレボニアに侵攻するだけのことはありますね……それより、ロレントを守って下さってありがとうございました。」
女王はロレントを守ったことをリウイにお礼を言った。
「気にする必要はない。力持たぬ者を守るのも我ら王族の務めだ。」
「ご高説ありがとうございます。私達も見習わせていただきます。」
女王とリウイが会話を終えた時、今まで黙っていた七曜教会の司祭がペテレーネに質問した。

「ペテレーネ殿、一つ質問はよろしいですか?」
「……はい、なんでしょう。」
「なぜ、奇跡の力を戦争のために使うのですか?我々聖職者はそのような力を決して戦争に使ってはいけないはずです!」
「そう、申されましても……私はリウイ様のためにこの力を使っているだけです。」
司祭はペテレーネの言葉に驚愕した。
「なっ……!個人のためだけに使うというのですか!それでも神を敬う人間の一人ですか!?」
「……もちろん、我が主神、アーライナも敬っております。それにアーライナ様は混沌を司る女神。力をどのように使うかは個人の自由が我らの教えです。それに神核を頂いた時、アーライナ様は自分の思うがままにその力を使えとおっしゃられました。」
「「「「なっ!!!!!」」」」
司祭と横で聞いていた女王達はペテレーネの言葉に絶句した。

「一つだけ言わせてもらいます。あなた達の教義と我が主神アーライナの考えは違います。あなた達の考えといっしょにしないでください。」
ペテレーネは毅然とした態度で自分自身の考えを言った。そして女王達の様子を見たリウイが口を開いた。
「異世界の神官よ、一つだけ言わせてもらおう。ペテレーネは俺にとっても掛け替えのない存在だ。また、我が国にとってもなくてはならない存在だ。この意味はわかるな?」
「……それはどういうことでしょう?」
リウイの脅しともとれる言葉に司祭は震えながら聞いた。
「確か貴殿等、七曜教会にも武装集団がいたな。……”星杯騎士団”と言ったか。」
「なっ……!どこでその名を!?」
司祭は教会でも極秘とされる集団の名前を出され驚愕した。
「この世界はある程度調べさせてもらった。もちろん貴殿等、七曜教会も詳しくな。ペテレーネは我が国メンフィルの神官長であり、王族でもある。ペテレーネや娘のプリネに手を出したらどうなるかわかるな?」
「ッッつ!!!!」
司祭はリウイが星杯騎士団の実態を知っていることに気付き、王族でもあるペテレーネやプリネに騎士団が危害を加えることがあれば先ほどのエレボニア兵のようにメンフィル帝国に蹂躙されると思い、押し黙った。

「……さて、我らは事後処理があるのでこれで失礼させてもらう。先ほどの条件、よい返事を待っている。」
「……はい。では、私達はこれで失礼させてもらいます。」
メンフィルの強さを知った女王達はそれぞれが違った表情を出しながら、リウイの言葉に頷きその場をカシウス達と共に去った。


~ロレント郊外・ブライト家~

リウイと会談を終え、グランセルに戻る女王達にカシウスは1日だけ家に戻ることの許可をとり、急いでブライト家に戻りドアを蹴破った。
「レナ!エステル!無事か!?」
ドアを開けたカシウスが見た光景は食事の支度をしているレナと、何かの本を読んでいるエステルだった。
「あら、おかえりなさい、あなた。」
「おかえり~おとうさん!」
いつもとかわらない愛妻と愛娘の姿にカシウスはホッとした。

「ああ、1日だけ家に戻れる許可がとれたので戻ったぞ。ケガはしてないか?食事はまともにとれているか?」
「ふふ、見ての通りよ。食事のほうはメンフィル軍が食料を配給してくれているおかげで大丈夫よ。」
「そうか……そういえばエステル、何の本を読んでいるんだ?見た所聖書のようだが?」
元気そうなレナから現状を答えられカシウスはホッとし、エステルが聖書らしきものを読んでいるのを見て驚き聞いた。
「あのね、これはアーライナ教の教えと魔術の使い方が書いてあるの~」
「なっ……!エステル、お前、アーライナ教の信者になったのか!?」
カシウスはエステルが異教の信者になったのかと気付き顔色を変えた。
「ううん違うよ。あたしはただ、聖女様みたいに誰かを助ける力が欲しいから読んでいるだけだよ?」
「聖女様……!?エステル、ペテレーネ殿に会ったのか!?」
エステルから予想もしない人物の名が出、カシウスは驚いた。
「ほえ?おとうさん、聖女様に会ったの?」
「ああ……陛下の会談の時にな。」
「すっご―――い!あたしも会ってお礼をしたかったな。聖女様、めったに町に出てこない上に町に出てきたらみんなの人気者だから近づけないし……」
「お礼?エステル、何かあったのか?」
「うん、あのね……」
ペテレーネに会ったことにはしゃぐエステルにカシウスは事情を聞いた。それは死にそうになったレナをペテレーネと誰かが魔術を使いレナの命を救ったことで、レナからはリウイ達が自分達をエレボニア兵から守ったことを聞いた。
そしてエステルは大好きな母を助けたペテレーネに憧れ、少しでも近づくためにアーライナ教の教義が載っている本をアーライナ信徒から貰ったことを言った。

「そうだったのか………」
全てを聞き終えたカシウスは溜息をついた。そしてエステルに聞いた。
「エステル、お前はこれからどうしたい?ペテレーネ殿を慕ってアーライナ教に入信するのか?」
「ううん。あたしにはシスターなんて向いてないもん。でも聖女様のように誰かを助けれるようになるために、あたし遊撃士になる!そしてこの本に書いてある魔術を覚えて、それを使って聖女様のように傷ついた人を助けるわ!」
「そうか……父さんは応援するぞ。」
「お母さんも応援しているわ。がんばりなさい、エステル。」
「うん!」
父と母に自分の夢を応援され、エステルは元気よく頷いた。

その後久しぶりの家族そろっての夕食に3人は楽しんだ。そしてエステルが寝かしつけた後、カシウスはレナと話をした。
「レナ……今回のことが片付いたら俺は軍人をやめて遊撃士になろうと思う。」
「あなた?」
「エステルとお前から話を聞いて痛感した……軍人では身近な人間は守れない。今回はリウイ殿達のお陰でお前達は無事だったが、次があるかもしれないしな……だから俺はそうならないために遊撃士になる。」
「あなたがそう決めたのなら私はそれに従います。」
一家を預かる男として、職を手放すその行為にレナは笑顔で応援した。

そしてリベール王国はメンフィル帝国との条件を呑み、同盟を結んだ。異世界の宗教を広めることに七曜教会の
一部が反対したが、グランセルの司祭よりアーライナ教が広まる元となる人物は王族であり、またその人物より敵対する意思はないと伝えられ、星杯騎士団がメンフィル帝国を相手にする訳にもいかず、しぶしぶながらアーライナ教の布教を認めた。
その後、メンフィルの攻撃とリベールの反撃で疲弊したエレボニアはメンフィルとの仲介を条件にリベール侵攻を断念し、リベール、メンフィルと講和条約を結んだ。

こうして後に百日戦役と呼ばれる戦争は結果的に戦争を仕掛けたエレボニアが領土のいくつかを失い終結した。
また、ペテレーネは今回の功績が評価されアーライナ自身がメンフィルに降臨し、ペテレーネにさらなる力を授けるという異例の事態が起こった。

そして数年後………



後書き 次はいよいよリウイ達のパラメータを出します。まあ、反則的なパラメータですが。



[25124] 設定1
Name: sorano◆b5becff5 ID:9b89eb66
Date: 2011/01/14 16:44
<漆黒の神魔王>リウイ・マーシルン
LV500
HP70000
CP6000
ATK7000
DEF6000
ATS4000
ADF3000
SPD60
MOV20

装備

武器 ロイヤルバキュラ
防具 神魔の戦鎧(属性・魔神……空、時、幻以外の属性ダメージを半減する)
靴  ロイヤルブーツ
アクセサリー イリーナの首飾り(リウイ専用、回避30%上昇、5%の確率でダメージ無効)
       マリアハート (全パラメータ20%上昇効果、HP+5000)

自らの身体能力のお陰で即死無効、また、一人出番が廻るごとにCP300自動回復する。
ほか、パーティーにカーリアン、リフィア、ペテレーネ、プリネがいるとお互いATK、DEF10%アップ

オーブメント(無属性)並びはリシャールです。

クラフト フェヒテンアルザ 200 単体 5回攻撃
     フェヒテンケニヒ 900 単体 ダメージ450%
     戦闘指揮 100 全体 自分を含めた味方の回避、命中を20%アップ
     マーリオン召喚 300 自分 サポートキャラ、マーリオンを召喚する
(水属性の全体攻撃or味方全員20%回復)
     ウィンディング 400 小円 風属性130%攻撃
     フレインバル 400  小円 火属性130%攻撃、火傷20%
     メーテアルザ  400  小円 地属性130%攻撃
     エクステンケニヒ 600 中円 空属性150%攻撃

Sクラフト フェヒテンカイザ 単体 レイピアによる驚異の連続突き 
                     ダメージ300%の8回攻撃
      魔血の目覚め  全体 内に秘めたる魔の力を解放する究極奥義。時属性のダメージ2000%

<燐武の戦妃>カーリアン

LV500
HP68000
CP6500
ATK8000
DEF3500
ATS3000
ADF2000
SPD70
MOV18

装備

武器 戦姫の双剣
防具 女剣士の肌着
靴  剣士の靴
アクセサリー 剣の耳飾り(CP+500、SPD3%アップ)
       技力再生の指輪 (一人終わるごとにCPが200回復)

味方のすぐ後に攻撃すれば1.5倍。また、常にクリティカル率20%、回避率50%で回避すればカウンター攻撃。

オーブメント(時属性)並びはジョゼットです。

クラフト 挑発 20 自分 敵の攻撃対象を自分に向ける
     三段斬り 200 単体 3回攻撃
     双葉崩し 100 単体 騒動&アーツ妨害
     北斗斬り 300 単体 120%攻撃&マヒ20%、遅延効果
     淫魔の魅惑 500 全体 敵を50%で混乱させる
     魂の接吻術 600 単体 敵の体力を奪い自分の体力を回復させる
                    (ただし威力はATSに反映される)
     乱舞 400 小円 140%の複数攻撃
     冥府斬り  800 単体 200%攻撃&マヒ30%、またこの攻撃の後すぐ自分の番になる。

Sクラフト 白露の桜吹雪 特殊 自らを中心とした中円攻撃。ダメージ800%
     奥義・桜花乱舞 中円 武器から強力な衝撃波を出す技の中の最終奥義。ダメージ1200%

<アーライナ聖女>ペテレーネ・セラ
(属性・神格……物理攻撃を含め全属性ダメージを70%にする)
LV490
HP35000
CP9500
ATK300
DEF2000
ATS9999
ADF8000
SPD45
MOV12

装備

武器 アーライナの聖杖(攻撃の際30%の確率で敵のいずれかの能力を下げる)
防具 混沌の聖衣(即死無効)
靴  混沌の聖靴(毒無効)
アクセサリー 杖の耳飾り(EP、CP+250 SPD3%アップ)
       混沌の証(ペテレーネ専用、混乱・封魔・封技無効。5%でダメージ無効)
一人終わるごとにCP、EPが500回復、10%で敵の攻撃を反射、リウイがいると本人のATK、DEF10%上昇

オーブメント(時属性)ならびはレンです。

クラフト 連続闇弾 100 単体 2回攻撃の時属性攻撃
     闇の息吹Ⅴ 300 単体 味方のHPを全回復させる
     ティルワンの死磔 800 全体 180%の時属性攻撃
     死愛の魔槍 600 単体 時属性ダメージ150%&HP吸収30%
    滅びの暗礁壁 700 特殊 指定した横3列全体に時属性攻撃130%&毒30%
     トラキアの消沈 700 全体 敵全員のSPDを30%下げる
     アルテミスの祝福 500 全体 味方全員のSPDを30%上げる
     メルカーナの轟炎 800 小円 ダメージ180%&火傷30%の火属性攻撃
     ケシェスの聖炎  1500 全体 ダメージ140%&火傷20%の火属性攻撃
     酸衝撃 600 特殊 指定した横3列全体に地属性攻撃130%&毒30%
     イオ=ルーン 300 小円  ダメージ110%の無属性攻撃
     レイ=ルーン 400 中型直線 ダメージ130%の貫通する無属性攻撃
   ベーセ=ファセト 3000 全体 ダメージ200%&混乱、毒40%の地属性攻撃
   アーライナ召喚 5000 全体 サポートキャラ、アーライナを召喚する。
  (ダメージ1000%&混乱90%の全体攻撃or味方全員異常&全回復)


Sクラフト ルナ=アーライナ  全体 混沌の女神、アーライナの力を憑依させ、最大級の神力を放つ。ダメージ3000%

ペテレーネのクラフトは全てATSに反映される


<メンフィル帝国第一皇女> リフィア・イリーナ・マーシルン

LV400
HP25000
CP7500
ATK250
DEF1000
ATS7000
ADF6000
SPD30
MOV10

装備 

武器 プランセスロッド
防具 燐露の聖衣(空、幻属性の攻撃を半減する)
靴  燐露の靴
アクセサリー 賢者の石(一人廻るごとにCPが500回復)
       マルウェンの腕輪(経験値が40%増加)

アーツ攻撃無効、敵に見つかりやすい

オーブメント(空・時属性)並びはレンです。

クラフト 追尾弾 100 2回攻撃の無属性攻撃
     イオ=ルーン 300 小円  ダメージ110%の無属性攻撃
     レイ=ルーン 400 中型直線 ダメージ130%の貫通する無属性攻撃
     闇の息吹Ⅳ 300 単体 味方のHPを80%回復させる
     防護の光陣 500 全体 味方のDEF、ADFを30%上昇
     死愛の魔槍 600 単体 時属性ダメージ150%&HP吸収30%
     贖罪の光霞 800 全体 空属性ダメージ140%
     ティルワンの闇界 700 全体 120%の時属性攻撃
     エル=アウエラ 1200 全体 200%の無属性攻撃

Sクラフト クロースシエル 特大直線 内に秘めたる魔力を全解放する究極魔術の一つ。
ダメージ4000%

リフィアのクラフトは全てATSに反映される

<深凌の楔魔第五位>エヴリーヌ(属性・魔神)

LV380
HP40000
CP5500
ATK4000
DEF3000
ATS4000
ADF2800
SPD50
MOV10

装備

武器 蒼穹の魔神弓
防具 黎魔の戦衣
靴  闇の靴
アクセサリー 杖の耳飾り(EP、CP+250 SPD3%アップ)
       黒の魔鏡(20%の確率で敵の攻撃を反射)
一人廻るごとにCP、EPが300回復、常にクリティカル率10%、戦闘開始時10%で先制攻撃

オーブメント(時・風属性)並びはケビンです。

クラフト 三連射撃 300 単体 3回攻撃
     贖罪の雷 200 直線 貫通する130%の風属性攻撃、封技10%(ATSに反映)
     ティルワンの闇界 700  全体 120%の時属性攻撃(ATSに反映)
     闇の息吹Ⅲ 300 単体 味方のHPを60%回復させる
     制圧射撃 400 全体 110%の攻撃
     精密射撃 350 単体 150%のアーツ&騒動妨害、遅延攻撃
     審判の轟雷 800 中円  150%の風属性攻撃、封技25%(ATSに反映)
     ケール・ファセト  900 単体 時属性ダメージ200%&HP吸収50%
                              (ATSに反映)
     アン・セルヴォ 1000 中型直線 ダメージ300%

Sクラフト ゼロ・アンフィニ  大型直線 魔力の眼と闘気を最大限に出した一撃奥義
ダメージ2500%

<メンフィル大将軍>ファーミシルス
LV490
HP65000
CP6000
ATK6000
DEF4500
ATS5000
ADF3000
SPD55
MOV15

装備 ラクシュティール
防具 飛天魔の鎧(時属性ダメージを半減)
靴  飛天魔の靴 
アクセサリー 大将軍の指輪(DEF40%上昇)
       魔力再生の指輪(一人廻るごとにCP、EPが300回復)
味方のすぐ後に攻撃すれば1.5倍、戦闘開始時20%で先制攻撃

オーブメント(時属性)並びはヨシュア、ダドリーです。

クラフト 戦闘指揮 100 全体 自分を含めた味方のATK、SPDを20%アップ
     連接剣伸張 200 直線 アーツ&騒動妨害の貫通攻撃
     闇の息吹Ⅱ 300 単体 味方のHPを40%回復させる
     電撃剣 300 単体 140%の風属性攻撃、封技10%
     ティルワンの闇界 700  全体 120%の時属性攻撃(ATSに反映)
     封印王の槍 400 単体 時属性攻撃ダメージ130%
     強酸の暗礁壁 700 特殊 指定した横3列全体に時属性攻撃、120%&毒20%
     連接剣双伸張 1000 直線 ダメージ300%の2回攻撃、この攻撃の後すぐ自分の番になる

Sクラフト 暗礁電撃剣 単体 電撃剣の上位奥義、ダメージ800%&封技70%
      暗礁回転剣武 大型直線 近づく者全てをチリにする最終奥義、ダメージ1500%






後書き 強すぎです。特に前衛は正直言ってカシウスやレーヴェどころかウロボロスの全戦力でも無理でしょう。原作知ってる人ならわかると思いますが、VERITA後だったらこれぐらい強くても可笑くないはずです。HPの限界は軌跡シリーズを採用しています。後、CPはリウイ達に200とか少なすぎですし。というかリウイ達にオーブメントって必要でしょうか?全員、人間じゃないですから。オーブメントを使って身体能力上げたらとんでもないことに……それとペテレーネが純粋と地の魔術が使えるのはアーライナからさらなる力を貰った時に使えるようになりました。
元々大地も司っていましたから使えてもおかしくないでしょうし。
後、更新はしばらくないかもしれません。ここで一区切りができましたので、焔の軌跡に集中しようかなと思っています。



[25124] 第10話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/02/01 00:27
~国境~
「ハァハァ……」
「イリーナ、エリィ!こっちよ!」
「はい、お母様!エリィ、急いで!」
「う、うん、お姉様!」
そこには一つの家族が何者かに追いかけられているように走っていた。
その家族は理由があって家族離れ離れに暮らしていたが、年に一度だけ家族そろって食事をしていたのだ。いつものように、決まったレストランで食事をしていたのだが突如何者かにそこが襲撃されたのだ。襲撃の時、運良く家族全員逃げれたのだが襲撃者達は逃亡者に気付き、執拗に追いかけてきたのだ。

「それにしてなぜこんなことが……」
金の髪と瞳を持つ少女イリーナと姉とは逆に銀の髪と瞳を持つ少女エリィの母は息を切らせながら呟いた。
「もしかしたら、最近大陸中で流行っている幼児誘拐事件のグループの仕業かもしれないな……」
2人の父は最近の出来事を思い出し、妻の疑問に答えた。
「そんな………!」
妻は娘達の手を握り、震えた。
「もうひと頑張りしよう。あそこにある関所はメンフィル領の関所だ。噂ではメンフィル領では例の事件は起こってないそうだから、メンフィル領に亡命すれば大丈夫だろう。」
「ええ、そうね……」

その家族が逃げようとした場所は百日戦役でメンフィル帝国領となった場所であった。なぜ、メンフィル領だけ事件が起こらなかったのは、問題になっている犯罪グループが自分達の教祖になってもらうためにペテレーネを勧誘しようとして活動目的を話し
断られ、強硬手段としてその場でペテレーネを攫おうとしたが同席していたリウイ達によって討取られ、その犯罪グループの活動をプリネやリフィアにとって危険と判断したリウイによってメンフィル領と大使館があるロレントを徹底的に警戒させ、誘拐が起きても
本国から呼び寄せた夜の活動を主としている闇夜の眷属によって全て未遂に抑えられたのだ。

安堵をついている家族の所に突如どこからともなく飛んできたナイフが地面に刺さった。
「「ひっ……!!」」
突如刺さったナイフにイリーナとエリィは悲鳴を上げた。
「クッ……もう、追いついてきてしまったか!」
父は悔しげに嘆き、懐から護身用の銃を出した。
「イリーナ!エリィを連れてあそこにある関所に逃げなさい!」
「で、でもお父様とお母様は!?」
イリーナは母の言葉に驚き、2人に詰め寄った。
「お父さん達はここで2人を攫おうとしている悪者と戦うよ。」
「嫌よ!2人ともいっしょに逃げよう!?」
エリィは半泣きの顔で2人に懇願した。
「大丈夫よ。少ししたら追いつくわ。だから、2人はあそこにある関所の兵士に助けを呼んでお母さん達を助けて。」
「で、でも……」
「イリーナ、お前は賢い子だからわかるだろ……このまま逃げても絶対に捕まってしまうことに……だったら、誰かが助けを呼ぶ必要があるんだ。」
「お願い、2人とも聞きわけて……」
夫妻は娘達の手を握り諭した。
「………わかりました。でも、2人とも絶対に無茶をしないでね……」
「ありがとう、イリーナ。」
そして夫妻は2人の娘の体を抱きしめた。
「「2人ともまた、会いましょう!」」
「絶対にだよ!エリィ、早く!」
「う、うん!お父様、お母様、どうかエイドス様の加護を……」
そしてイリーナはエリィを連れて関所に向かって走った。

「……君には辛い思いをさせたね。」
「いいえ、最後にあなたといっしょだからいいのですよ。」
夫の言葉に妻は微笑み、夫と同じように懐から銃を出し襲撃者の迎撃をしようとした。
そしてついに襲撃者達が追いつき、姿を現した。
「……子供達がいないだと?陽動のつもりか、余計な真似を……」
「ふん、ならばこいつらを殺して子供達を奪うまでだ。」
「そんなことは絶対させない!」
「例えこの命果てようとも、絶対にあの子達には手出しをさせないわ!」
そして夫妻達は銃を使って襲撃者達と戦闘を始めた。


~関所~
「ハァハァ……ついた……エリィ、大丈夫?」
「う、うんお姉様。」
2人はようやくついた関所を見て安堵をつき、イリーナはエリィを連れて関所にいる兵士に話しかけた。
「「お願いします!お父様達を助けて下さい!!!」」
「な、なんだお前達は……?」
関所を守っているメンフィル兵士達は深夜に現れた子供達とその勢いに押され戸惑った。
「今、お父様達が戦っているんです!」
「このままじゃ、2人は死んじゃうよ!兵士さん、お願い助けて!」
「ま、待て!順を追って話してくれ!」
「……何かあったのですか?」
そこに騒ぎを聞きつけた、幼いながらも関所の兵士達の慰問に来たプリネ皇女が姿を現した。
「プ、プリネ様!」
「お休みの所、申し訳ありません!」
兵士達はプリネの姿を見ると姿勢を正した。

「……構いません。その子達が何か?」
「ハッ!父を助けろと言って場所や事情も判らずどうすればいいのか、判断がつかなかったのです。」
「判りました……お二人とも何があったのか話してくれませんか?」
兵士から事情を聞いたプリネは2人に近づき事情を聞いた。
「は、はい!実は……!」
同い年に見えるプリネを見て安堵したイリーナは事情を話した。
「……なるほど。事情を話してくれてありがとうございます。」
プリネは事情を聞き、イリーナにお礼を言った後真剣な顔をして兵士に命令した。
「……今すぐ、就寝している兵士の方々を起こしてこの子達の親の救出に向かって下さい。万が一の事を考えて私も行きます!」
「し、しかし救出だけなら我々だけで十分です!プリネ様に万が一の事があったら陛下やリフィア様に顔向けできません!」
「……こう見えても、お父様達から剣術や戦い方、魔術を習っています。だから護身ぐらいできます。それにもしお二人のご両親が怪我をしていたら、私を除いて治癒術ができる方はいらっしゃいますか?」
「「そ、それは……」」
プリネの言葉に兵士達は思わず口をつぐんだ。
「絶対に貴方達から離れたりしませんので、お願いします!」
「わかりました……そこまで言うのでしたら、絶対に我々から離れないで下さい。おい、休んでいるやつら全員叩き起こしてきてくれ!」
「ああ!」
そして一人の兵士が休んでいる兵士たちを起こしに関所の中へ走って行った。

「お二人は関所の中で休んでいて下さい。」
「そんな……!そんなことできません!」
「迷惑はかけませんので連れて行って下さい!」
「「お願いします!!」」
プリネは2人の安全を考え関所の中にいるように言ったが2人は強く否定した。
「……わかりました。では絶対に私達から離れないで下さいね。」
「「は、はい!ありがとうございます!」」
押し問答している時間がなかったプリネは仕方なく2人の同行を許した。
そしてプリネは兵士達と共に助けを求めた少女を連れて2人の親が戦っているであろう場所に向かった。

そしてプリネ達が関所を出て少しした後、ある場所に夫は事切れ妻も大量の血を流して息絶え絶えになって倒れていた。
「クソ……手間をとらせやがって……」
「どうする?この先はメンフィル領だぞ?」
「構うものか。関所にいる兵士なんて数えるぐらいだろう。行くぞ!」
「「了解した。」」
そして襲撃者達は関所に向かおうとしたが、
「出でよ魔槍!狂気の槍!!」
「プリネ様に続け!弓隊撃て!!」
「「「「「オオッッ!!!」」」」
プリネが放った暗黒魔術の槍と続くように兵士達が撃った矢が襲撃者達に命中した。
「「「グハッッ!!」」」
「全員、抜刀!!!」
「「「「「オオッッ!!!」」」」
「「「ギャぁぁぁ……!!!」」」
さらにメンフィル兵士達は剣を抜き襲撃者達の命を刈り取った。
「「お父様、お母様!!」」
一瞬で戦闘が終了し、イリーナとエリィは血を流して倒れている2人に近寄った。
(こちらの男性はもう……なら女性だけでも!!)
2人の状態を見て男性はすでに死んでいると確信したプリネは女性に近づき治癒魔術を使った。
「暗黒の癒しを……闇の息吹!!」
治癒術を発動したプリネだったがその表情は芳しくなかった。
(……ダメ……傷が深すぎるし血も流しすぎている……お母様がいなくても、せめてリフィアお姉様かエヴリーヌお姉様のどちらかがいれば……)
自分では女性を助けれないと悟ったプリネは悔しげに唇を噛んだ。
そして女性はうっすらと眼を開けた。

「イリー……ナ……エ……リィ……」
「「お母様!!」」
母親の目が覚めたことに気付いたイリーナとエリィは母に何度も呼びかけた。
「よ……かった……無事で……」
「気をしっかり持って下さい!今、目を閉じたら死んでしまいます!」
「あ……な……た……は……?」
薄れゆく意識の中、娘以外の声の持ち主を見て、呼びかけているのがイリーナと年が同じくらいの少女に気付き聞いた。
「メンフィル軍の者です!」
「メン……フィル軍……よ……かった……お願い……しま……す……私達はもう……無理です……だか……ら
この子達……の……こと……を……お願い……しま……す」
「わかりました……私の名はプリネ・マーシルン!闇夜の眷属を束ねる名においてお二人は責任を持って守ります!」
「マーシルン……!よかった………!」
母親はプリネがメンフィル王家の者だと知り、イリーナとエリィが王家に保護されたことに安心し涙を流し2人の名を呼んだ。
「イリーナ……エリィ……よく聞き……なさい……」
「お母様しっかり!」
「言うことなんでも聞くから死んじゃやだ!」
「ごめんね……お父さんと……お母さんは……先に……エイドス様の……所に……行くね……だから……
この人の……言う事を……よく聞きなさい……2人とも……幸せに……な……ってね……」
そして女性は事切れ目を閉じた。
「お父様、お母様……?嘘でしょう……ねえ……返事を……してよ……」
「うっ……ひっく……おとうさま、おかあさま……」
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁんっっ……!!!」」
雲ひとつなく月明かりとメンフィル兵士の持つ照明の許で2つの亡き骸によりそった少女達の泣き声が響いた……




後書き エリィ達の両親設定はほぼオリジナルです。後、エリィは原作通りになりますのでご安心を。感想お待ちしております。



[25124] 第11話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/02/03 21:42
その後、イリーナとエリィの両親を兵士の手を借りて手厚く葬ったプリネは2人を連れて関所に戻った。
~翌日~
「落ち着かれましたか?」
「……はい。お父様とお母様の御墓を建ててくれてありがとうございます……」
「う……ひっく……ありがとうございます……」
プリネの言葉に2人は沈みながらも答えた。
「……あの、あなたは本当にメンフィル帝国の皇女様なのですか?」
顔を下に向けイリーナはポツリと呟いた。そしてその疑問にプリネは答えた。
「ええ……ご紹介が遅れ申し訳ありません。メンフィル皇女、プリネ・マーシルンです。」
「ひっく……エリィ・マグダエルです……」
「エリィの姉のイリーナ・マグダエルです……」
「イリーナ!?」
「あの……私の名に何か……?」
「……いえ。特に何もありません。(金の髪に金の瞳……おまけに名前がイリーナ……それによく見ると肖像画のイリーナ様に似ているような……まさかね……)」
プリネはイリーナの名を聞いた後、驚きイリーナの容姿を見て父親の目的の人物だと一瞬思ったがその考えを打ち消した。

「……ひょっとしてリウイ皇帝陛下と親しいですか?」
「え、ええ。リウイ・マーシルンは私の父ですが……」
イリーナの疑問にプリネは戸惑いながらも答えた。
「だったらお願いします!私達の家族を無茶苦茶にした人達を処罰するために軍を動かすようリウイ皇帝陛下にお願いして下さい!!
このお願いを聞いて頂けるのなら私にできることならなんでもします!」
「落ち着いて下さい。貴女達は今回の事件の終結と貴女達の親戚の方を見つけるまで
ロレントの大使館で保護するつもりですから、その時お父様と会わせますのでお父様に直接言って下さい。」
「はい、ありがとうございます……」
そしてプリネは2人を連れて兵士に守られながらロレントの大使館への帰途についた。


~ロレント郊外・メンフィル大使館内会議室~
そこではリウイやファーミシルスとルース、ペテレーネ、カーリアン、そしてリフィアがシェラの報告を聞いていた。
「……以上になります。子供達の誘拐の阻止はできたのですが、襲撃の際両親などに被害が出、孤児になる子供が増加しています。」
「……そうか。孤児となった子供達のための孤児院や心の治療が必要だな……癒しの女神(イーリュン)の信者達に協力を呼びかけてくれ。……ティアに信者達の先頭に立つよう俺から頼んでおこう。……誰かティアに至急城に戻るよう手配してくれ。」
「ハッ!!」
リウイの命令にルースはイーリュンの信者へ協力の要請とレスペレント地方で母の遺志を継ぎ皇女と云う身分でありながらイーリュンの信者として活動しているリウイと幻燐戦争でペテレーネと共に衛生兵として活躍したイーリュンの信者であったティナ・パリエの娘、ティア皇女をミルスに呼び戻すために会議室から出て行った。そして入れ替わるようにプリネが会議室に入って来た。
「お父様、お母様。プリネ・マーシルン、ただいま戻りました。」
「戻ったか、プリネ。」
「お帰りなさい、プリネ。」
「よく戻ったのプリネ。余とエヴリーヌも首を長くして待っておったぞ。」
「ありがとうございます、リフィアお姉様。あの……帰って早々にお願いがあるのですが……」
優しく迎えた両親にプリネは言いづらそうに願いを言った。
「お前が頼み事とは珍しいな……言ってみろ。」
「はい、実は……」
そしてプリネは関所で起こった出来事、孤児になった2人の少女を保護するようにリウイに頼んだ。
「……そうか。いいだろう、例の事件の終結とその2人の縁者が見つかるまでここで世話をする。みな、いいな?」
「リウイ様が決めたのなら従うまでです。」
「私もファーミシルス様と同じ意見です、リウイ様。」
「別にいいわよ。」
「妹の頼みを聞くのも姉として当然のことじゃ!」
「皆さん……ありがとうございます!」
全員から2人の滞在の許可を言われプリネは笑顔になりお礼を言った。
「あの……それから、保護した姉妹の姉の方がお父様に頼みがあると。」
「俺にか?……まあいい、会って話をしよう。その2人を呼んでくれ。」
「はい。……いいですよ、入って来て下さい。」
プリネの言葉を聞いて会議室のドアが開けられ、そこに立っていたのは緊張しているイリーナとその後ろに隠れているエリィだった。

イリーナとリウイが目を合わせた時、それぞれに衝撃が走った。
(な……イリー………ナ……!?いや、ただ似ているだけかもしれんが……この雰囲気は………!?)
(何……?この愛しい気持ちと胸の高まりは……?私、この人に会ったことあるの……?)
2人は見つめあいしばらくの間、沈黙が流れた。
「リウイ?何、その娘をボーっと見てるのよ?もしかして小さい子が趣味になったの?」
「バカを言うな……プリネ、その二人が話に出ていた例の姉妹か?」
カーリアンの言葉に我に帰ったリウイは気を取り直しプリネに聞いた。
「はい。二人ともこの方が私のお父様であちらにいる女性が私のお母様です。」
「あの……もしかして、そちらの方はアーライナ教の聖女様ですか?」
エリィはプリネが紹介した女性を見て、新聞で載っていた異教を広める聖女だと気付き震えながら聞いた。
「あの……お願いですからその呼び名はやめて下さい……本当に恥ずかしいのですから……」
「お母様はゼムリア大陸でアーライナ教の神官長を務めております。巷では”闇の聖女”とも呼ばれています。」
「プリネまで……お願いだからその呼び名はやめて……」
「ふふ、ごめんなさいお母様。でもお母様は私にとって女性の鑑だもの。」
「もう、この娘ったら……」
娘にまで恥ずかしい呼び名を言われペテレーネはやめるように言い、プリネは上品に笑いながら謝った。

「本当に聖女様なのですか!お願いします、奇跡の力でお父様とお母様を生き返して下さい!」
エリィはペテレーネに詰め寄り懇願した。
「申し訳ありませんが、私が使える魔術で人を生き返す魔術は使えません。イーリュンの神格者の方でしたら可能かもしれませんが、
魂と体が離れている以上、例え蘇生魔術を使っても生き返らせません。人を生き返すのはとても高度な事ですから……」
「そう……ですか……」
ペテレーネの言葉にエリィは暗い顔になり顔を下に向けた。
「さて……自己紹介をしようか。プリネの父でこの大使館を指揮している、リウイ・マーシルンだ。」
「プリネの母、ペテレーネ・セラです。何か困ったことがあれば遠慮なく私に言って下さい。」
「カーリアンよ♪よろしくね♪」
「メンフィル大将軍、ファーミシルスよ。武芸を学びたいのなら教えてあげてもいいわよ。」
「メンフィル機工軍団団長シェラ・エルサリス。」
「そして余こそが!メンフィル次期皇帝、リフィア・イリーナ・マーシルン!大事な妹の頼みじゃ、何か頼みたいことがあれば余に言ってみるがよい。願いにもよるが、余の器の大きさを見せてやろう!」
それぞれが自分の名を言った後、リフィアのフルネームを聞いた時エリィとイリーナは驚いた。
「「え……イリーナ……!?」」
「どうした、余の名が不服か?」
「いえ……私といっしょの名前だなと思って……紹介が遅れ申し訳ありません。イリーナ・マグダエルです。」
「エリィ・マグダエルです……」
2人は自分達とは身分が遥かに違う者達に恐縮しながら自分の名を言った。

「何!?」
「え……!?」
「嘘!?」
「な……!?」
「………」
「ほう……」
リウイ達はイリーナの名を聞き、驚愕しイリーナを見た。
「あの、プリネ様も私の名を聞いて驚いたのですが何かあるんでしょうか?」
リウイ達の反応を見てイリーナはオロオロした。
「…………………いや、その名は我らにとって特別な名でな。驚かせてすまなかったな。」
しばらくの間、黙っていたリウイだったが気を取り直し理由を言った。
「リウイの言う通りじゃ。その名はリウイの正妃で人間でありながら闇夜の眷属との共存を願った者の名前じゃ。国民達や余にもその思いを忘れぬよう余の名につけられたのがその名なのじゃ。……余とイリーナ様と同じ名を使うその心意気、気にいったぞイリーナ!我らマーシルン家に仕えてみないか?お主を余やプリネ専属の者として重用してもよいぞ。」
「え……そんな……私のような者が王族の方達に仕えるなんて恐れ多い事を……」
イリーナはリフィアの言葉にうろたえた。
「リフィアお姉様……この方も混乱していますからそれぐらいで……」
「プリネの言う通りだ……まだ幼い者に仕えるよう言うのは酷だ。王族であるお前が言ったら断れなくなるだろう。」
「そうか?いい考えじゃと思ったんじゃがな。」
リウイとプリネに諌められリフィアは残念そうな顔をしつつ引き下がった。
「……さて、プリネの話では俺に何か願いたいことがあるそうだな?」
「そうでした……お願いします!お父様とお母様の仇を取って下さい!」
「仇だと?」
そしてイリーナはリウイに事情を話した。

「………そうか、いいだろう。その願い確かに聞き届けた。」
「本当ですか!?」
「そろそろこちらも本格的に動くべきか迷っていた所だ。ペテレーネを攫おうとした時点で奴らを野放しにした俺たちにも多少その責はあるしな……」
「ありがとうございます!!」
リウイの言葉にイリーナは頭を下げた。
「……ペテレーネ、客室の用意を。プリネ、お前はこの2人の相手をしてやれ。」
「承知しました、リウイ様。」
「はい、お父様。それでは失礼します、2人とも行きましょう。紹介したい方もいますし。」
「「は、はい!」」
「余も行くぞ、プリネ。」
ペテレーネは2人の滞在用の部屋を用意するために出て行き、プリネは姉妹を伴ってリフィアと共に出て行った。

「……それで、あのイリーナという少女、いかがなさいますか?」
「私もあの子の容姿を見たけど、雰囲気とか髪や瞳とかイリーナ様そっくりじゃないの?」
リフィア達が完全に離れたのを見計らってファーミシルスとカーリアンはリウイに聞いた。
「………………しばらくは様子見だ。ファーミシルス、お前はあの少女の産まれた年、家族を調べてくれ。」
「ハッ!」
「シェラ、例の事件、これ以上被害が出ぬよう夜の見回りの兵達を本国から呼び寄せさらに増やせ。犯人を見つけた際、前のように殺害でかまわないが、できれば生け捕りにするように指示をしてくれ。」
「御意。」
「リウイ様、件の組織はどのようにつぶしますか?」
ファーミシルスはリウイの命令を受けた後、今後の方針を聞いた。
「例の誘拐組織は一斉につぶす必要がある。そのためには彼女に協力の手紙を書かなければな……」
「手紙って誰に書くの?」
カーリアンはリウイの手紙の相手を聞いた。
「セリエルだ。彼女とメルの力は今回の事件の解決の鍵となる。」
「そっか、動物達に聞くのね。リウイ、一斉攻撃する時私も混ぜてね。子供達を攫うなんて趣味の悪いやつ、私は気にいらないもの。」
「ああ。」
イリーナの必死の願いを受けたメンフィル帝国は事件解決に向けてついに動き出した……!




後書き ついに生まれ変わったイリーナがリウイと出会いました。もっと感動的な再会を期待した方、ごめんなさい……ただ、このイリーナは魂の記憶は目覚めてないので完全なイリーナではないです。空の軌跡の間に記憶を取り戻しますのでそれまで期待して待ってて下さい。ちなみにティアはシルフィアがシルヴァンを生むより早く生まれたリウイの娘、つまりシルヴァンの腹違いの姉というオリジナル設定です。セリエルは獣人族の血を継いでますからVERITA後でも生きている数少ないキャラだと思っています。感想お待ちしております。



[25124] 第12話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/02/06 22:15
リウイ達が動き始めて数日後、遊撃士協会を始めとし、各国でも事件解決や防止に向けて動いていたが一向に犯罪は減らなかった
~グランセル城~
そこにはアリシア女王を始めとした、各国の大使館の人間や事件解決の指揮をしている人物達がさまざまな確執を捨て秘密裏に集まっていた。
「……あれから、子供達の行方や犯人の手掛かりは掴めたのでしょうか?」
アリシア女王は沈痛な顔をして各国の代表者に聞いた。
「……残念ながら、共和国では依然防げてない上、足取りもつかめません。」
カルバード大使館のエルザは悔しそうな顔をして答えた。
「……我らエレボニア帝国も巡回を増やしたりしているのだが答えは同じだ。」
メンフィルに大敗しながらも未だに少将という地位で収まっているエレボニア帝国のゼクス・ヴァンダールも進展しない今の状況に屈辱を感じ、重々しく答えた。
「……俺達、クロスベル警察は醜い上共の保身せいで、事件が起こっても内密にしようとしてさらに酷くなってて嫌になってくるぜ。」
クロスベル警察からの代表者セルゲイは今の警察内部の状況を吐き捨てた。
「私達ギルドもA、B級を総動員して調べてはいるのですが中々尻尾を出さず悔しい思いをしております……」
遊撃士協会からはリベール軍をやめ遊撃士になったカシウスが来ていて、自分の無力さを嘆いた。

「そういえば、例の異世界の方々は見えておられませんね。」
エルザはここにいる人物を見て疑問に思ったことを言った。
「来ていなくて当然でしょう。メンフィルは文字通り異世界にある上、世界の移動の仕方はメンフィルしか知りませんからな。当然被害は受けていないのでしょう。……それにしても、おかしいですな。メンフィルは以前の戦争でいくつかの都市を得たはずなのに、そこでは事件は起こらなかったのでしょうか?」
リベールの将軍、モルガンはエルザの疑問に答え、あることに気付きメンフィルに疑問を持った。
「……もちろん起こりました、将軍。ですがメンフィルは全て未遂に防いだとメンフィル領にある支部やメンフィル大使館があるロレント支部から報告が上がっています。」
「「な……!」」
「なんと………」
「「いったいどうやって……」」
カシウスの答えた事にそれぞれ驚いた。
「報告によれば、メンフィル兵を本国から大量に呼び寄せ、さらに人でない存在――闇夜の眷属の中でも夜の活動を主にしている者達を巡回させ、未然に防いでいます。彼らの中には翼を持ち、空を自由自在に飛べる者や暗闇の中でも目が利く者等いるのですから誘拐に成功した犯人がいてもすぐに未然に収められるのです。」
「では、メンフィルなら何か情報があるのでは……!」
アリシア女王はカシウスの答えを聞き、希望を持ち聞いた。
「……メンフィルは犯人達をかなり危険視しているようで、犯人は我々遊撃士が駆け付ける前にメンフィル兵や闇夜の眷属によってその場で殺害されております。ですが組織の名は判りました。メンフィルによると犯行グループの名は『D∴G教団』という名でエイドスを否定する集団だそうです。」
「「「「「「なっ!!!!!!」」」」」
カシウスの報告にその場にいた者達はエイドスを否定するという集団に驚愕し、声を上げた。

「なぜ、エイドスを否定するためにそのような凶行を……」
女王は震えながら嘆いた。
「それより、なぜメンフィルがそれほどの情報を持っている!エイドスを否定する教団ということはエイドスとは異なる宗教、アーライナ教が関係してくるのではないか!?アーライナ教が関わっているのだとすると此度の件、メンフィルの仕業ではないのか!!」
ゼクスは憎々しげに自分の意見を言った。
「まさか……リウイ殿やペテレーネ殿、帝位継承者であるリフィア殿とは何度か会談を通じて話しましたが3人とも人格ある方でそのようなことを考える方達には見えません。」
「陛下のおっしゃる通りそれはありえません。例の教団はペテレーネ殿を勧誘し断られさらおうとしたそうです。もちろんその場でリウイ殿達によって討取られたそうです。」
カシウスはメンフィルがある程度の事情を知っている理由を言った。
「ほら、御覧なさい。私も一度だけ聖女殿とお話しましたけどそんなことを考える人には見えませんでしたわ。評判通り正に聖女と言われても可笑しくない他者を労わる優しい方でしたわ。それに聖女殿とて幼い一人娘がいるのにそのようなことをするハズがないでしょう。これだから野蛮なエレボニアは……」
エルザはゼクスの言葉を否定し、さらに挑発した。
「貴様……!何が言いたい!」
ゼクスはエルザの言葉を受け、怒り心頭に聞いた。
「今、共和国で噂になっていますわよ。エレボニアはメンフィルに逆襲の機会を淡々と狙っていると。
無駄なあがきですわよね、以前の戦争でメンフィルによって戦力の半数が壊滅した上、メンフィルは未知の技術、我々には使えないアーツに似た魔法、魔術を持って戦っているのですから。私自身、好戦的なエレボニアなどメンフィルに占領されてしまえばいいと思っていますもの。」
「我らを愚弄するか……!そういうそちらこそどうなんだ!?例の件のせいでそちらからメンフィル領へ亡命する市民が増えていると聞くぞ!」
「なんですって……!それはそちらこそ同じじゃありませんか!」
ゼクスとエルザはお互い睨みあった。
「お、おいおい何喧嘩してんだよ。今はそれどころじゃないだろ。」
「お二人ともやめられよ!」
犬猿の仲である帝国と共和国の代表が喧嘩を始めたことで、慌ててセルゲイとモルガンは仲裁に入った。しかし、2人の罵倒は止まらず、女王も困ったように眉を顰めどうすればいいか迷っていた時カシウスが怒気を猛烈に含み叫んだ。

「静粛に!!!」
その場にいた全員がカシウスを見た時、カシウスのさらけ出す怒気に全員が震えあがった。
「……権力をもつただの大人が……」
少しずつ呟くカシウス。その声が、不自然なほど室内に響き渡りカシウスの言葉ひとつひとつで全員は冷や汗をかいた。
「……自国の利益だけを醜く言い争う。」
「グッ……」
ゼクスは頬を赤くし、唸った。
「そんなくだらない国の事情より、もっと大切なことがあるだろう!今、なお攫われた子供達はその幼い体を苦しめられているというのに!」
エルザはカシウスの言葉に痛い所をつかれ目を伏せた。
セルゲイも悔しそうに拳を握り顔を歪めた。
「我々に出来ることは最も簡単なこと。」
女王はカシウスと視線を交わして静かに頷いた。
「今こそ、1つに集い、事件解決のために必要なメンフィルに積極的な協力を願うよう頭を下げる覚悟をお願いしたい。」
頭を下げるカシウス。そして最初に席を立ったのはセルゲイ。
「クロスベル警察セルゲイ・ロウ以下2名。事件解決のために必要であればこんなオッサンの頭でよければいくらでも下げる。」
「幼い子供が助かるためにはこの老骨、いくらでも頭を下げさせて頂きたい。」
「私も同じ意見です、カシウス殿。」
続くようにモルガンと女王が賛同した。
カルバード共和国大使・エルザがしばらくの間思考した後ゆっくりと立ち上がった。
「我々も、力なき子供たちが犠牲になるのは見過ごせません。そのための協力、いくらでもさせて頂きます。」

そして最後となったのはエレボニアのゼクスのみ。
「我々がこれまでやってきた事は、外道と言われてもおかしくない。好戦的国家と言われても、メンフィルや闇の聖女から裁きの鉄槌を受けたと揶揄されても否定できない。」
正に外道と言われても可笑しくないことをエレボニアはやってきた。リベール侵攻のために一つの村を犠牲にしたことを。
「だが、それでも幼い甥を持つ者としてこの事態は見過ごせない。」
そして席を立つ。
「我々エレボニアも今はメンフィルへの恨みを捨てさせて、頭を下げさせて頂く。カシウス殿あなたが我らの代表者になっていただけないか?」
「私が……ですか?」
ゼクスの提案にカシウスは唖然とし、周囲を見たがみなゼクスの意見に頷いた。
「わかりました……このカシウス・ブライト、此度の事件解決のため必ずメンフィルとの共同作戦を実現させて頂きます!」
全員がその場でメンフィルへの協力要請の紙に調印し、カシウスはそれを大事に受け取り全員に敬礼した。



~ロレント郊外・ブライト家~
そこではレナと最近正遊撃士になったシェラザードが今の状況を話していた。
「……そう、未だに事件解決は難しいのね……」
「はい……私も参加したいのですが今はC級以上の正遊撃士は受けれない状況です……」
レナは暗い顔をし、シェラザードも自分に力のなさを嘆き、悔しそうに唇をかんだ。そこにエステルが2階から降りて来た。
「あ、シェラ姉来てたんだ!いらっしゃい!」
「ちょっとね……ところでエステル、その格好は何?あんた、まさかどこかに出かける気?」
シェラザードはエステルの服装や持ち物を見て疑問に思った。
「そうだけど?」
「今は一人で外に出るのはやめなさい!ロレントはメンフィル大使館があるおかげでメンフィル兵や闇夜の眷属によって市内は平和だけど
この辺りは昼とかそんなに見回りはされていないのよ!?」
「何よもう~シェラ姉ったら~……それに今は一人で外に行かないし!」
慌てたシェラザードの注意にエステルは口を尖らせた。

「じゃあ、お母さん行ってきます!」
「暗くならない内に帰ってくるのよ。」
「はーい。」
「レ、レナさん!」
あっさり外出を許可したレナにシェラザードは慌てた。
「大丈夫よ。今は安心できる友達があの娘にはいるから。」
「それはいったい……」
「すぐにわかるわ。エステル、今日はあの人に挨拶をするわね。」
「うん、いいよ~」
そう言うとエステルは2階に上がった。
「え……なんで外に行くのに2階へ……?」
シェラザードはエステルの行動に疑問を持った。
「まあ、ついて行けばわかるわよ。」
そして2人はエステルについて行き、ついたその先は2階のベランダだった。
「いったいどういう事……?」
「ふふ、最初はビックリするわよ、シェラちゃん。」
そしてエステルは眼を閉じて集中し両手を空にかざした。
「え~い!」
すると両手から紫色の弾が空に向けて放たれ、それが空中に弾けた。

「な………エステル、あんた魔術が使えるの!?」
シェラザードはエステルが魔術を使ったことに驚愕し聞いた。
「うん、でも今できるのはこれだけだよ?」
「これだけって……あんた、わかってんの!?魔術はアーライナ教の司祭以上の人かメンフィル出身の人しか使えないのよ!」
「むう、わかってるわよ~。でも、あたしはできたよ?」
「できたって、いったいどうやって……」
「この聖書に書いてある、え~と……ひいんじゅつ?それのやり方にそって練習したらできたんだよ~」
「いや、あたしもその本読んで魔術を使えるように頑張ったけど無理だったわよ!?」
シェラザードが唖然とする中、空より翼を持った睡魔族の娘、リスティがベランダに降りて来た。

「な………!闇夜の眷属!?」
シェラザードはリスティを見て、驚愕した。
「今日もいっしょに遊ぼう、リスティ!」
「はいですぅ~」
エステルの誘いにリスティはほのぼのと答えた。
「リスティさん、今日も娘のことを守って下さい。」
「エステルに近づく悪い人はリスティが懲らしめますから、安心して下さい~」
「ありがとうございます。」
レナとリスティが普通に会話をしているのを見て、シェラザードは混乱した。
(嘘……レナさんも顔見知りなの!?いったい何がどうなっているの!?)
そして会話をしていたリスティは今の状況に驚いて固まっているシェラザードに気付いた。
「そちらの人は誰ですか~?」
「この人はシェラ姉!遊撃士をやっているんだよ!凄いでしょ!」
「……シェラザード・ハ―ヴェイよ。一応エステルの姉みたいなものよ。」
「リスティですぅ。名前がシェラザードですか~シェラ様の名前に似ていてややこしいですね~」
「シェラ様……か。その人は私達の知っている人かしら?」
シェラザードはほのぼのしているリスティが言った言葉に引っ掛かり聞いた。
「どうでしょう~?でも、その人はたくさんの兵隊に命令していますよ~」
「(兵を率いているということはメンフィル軍の中でも少なくとも隊長クラスね……)その人のフルネームはなんていうのかしら?」
「シェラ・エルサリス様ですよ~」
「「え………!?」」
リスティが出したフルネームにレナとシェラザードは驚いた。

「それって、メンフィル機工軍団団長の名前……!」
シェラザードは新聞に載っていたメンフィルの重鎮の名前を聞き驚いた。
「……そういえば、リスティさん。あなたは以前”ご主人様”の許で暮らしているって言ってましたよね。その方の名前は……?」
「ご主人様ですか~?ご主人様はリウイ・マーシルン様ですよ~」
「「な……!?」」
2人はリスティの言った言葉にさらに驚いた。
「むう~お母さん達ったらあたしにはわかんない話をしている~。リスティ、行こう!」
3人のやり取りが理解できなかったエステルは膨れ先を促した。
「はいですぅ~それじゃあ、私にしっかりつかまって下さいね~」
「うん!」
そしてリスティはエステルを抱きしめ空へ舞い上がった。
「きゃっほ~い!いつものことだけど凄いながめだわ~!エリッサやティオはなんで断るのかしら?すっごく気持ちいいのに!」
エステルは空を飛んでいることに歓声をあげた。
「今日はどこまで行きますか~?」
「今日はミストヴァルトの大樹があるところまで冒険よ!マーリオンともお話したいし!」
「わかりましたですぅ~」
「ちょ、ちょっと!まだ聞きたいことが……!」
シェラザードはリスティを引き留めようと大声を出したが、すでにエステルを抱きしめた状態のリスティは飛び去っていた。

その場にはしばらく沈黙が流れ、やがてシェラザードが口を開いた。
「レナさん、エステルはいったいどうやってあの闇夜の眷属の人と知り合ったんですか?」
「私も詳しいことはわからないんだけど、あの子が言うには森で寝ていた彼女を見て話しかけて最近友達になったそうよ。それにしてもまさかメンフィル皇帝と縁のある方だったなんて……」
「はぁ……あたしの時と言い、相変わらずあの子には驚かされますね……」
「ふふ、そうね。」
シェラザードは自分とエステルの出会いを思い出し、思わず溜息をつきその後真剣な顔をした。
「レナさん、もし今日エステルがあのリスティと云う人と帰ってきた時、引き留めてもらえますか?いろいろと聞きたいことがあるので。」
「リスティさんとはたまにいっしょに食事をしているからいいわよ。」
「ありがとうございます。」
レナに礼を言ったシェラザードは事件解決に向けて何か進展ができるかと思い気を引き締めた………

後書き エステルは信仰による魔術ではなく秘印術によって暗黒魔術が使えるようになりました。まあ、アーライナにも目をかけられていますが。次回、エステルがあるキャラを召喚できるようになります。ちなみにそのキャラはZEROから出すつもりなのでお楽しみに……感想お待ちしております。



[25124] 第13話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/02/08 20:46
~ミストヴァルト~
木が深く茂っている中、開けた場所で大樹がと小さな泉がある場所にリスティは降り立った。
「到着ですぅ~」
「ありがとう、リスティ。……すぅ……マーーリオ――ン!遊びに来たよ――!!」
リスティに礼を言ったエステルは深く息をすって最近友達になったもう一人の人でない存在の名前を叫んだ。
「こん……にち……は、エステルさん……」
すると泉の中からリウイの使い魔――水精・マーリオンが出て来て、表情が見えないその顔をわずかに笑みに変えた。
「えへへ、こんにちは!」
「今日は何して遊ぶですか~?」
「リスティの翼に埋もれるのもいいし、釣りだってできるし、冒険もしたいわね……悩むわ……よし、決めた!
全部やるわ、まずは釣りよ!」
そしてエステルは木の枝等を使い即席の釣り竿を作り泉で釣りを始めた。それをしばらく見ていたマーリオンはエステルに話しかけた。

「エステルさんは……どう……して……私達と……仲良く……できるん……ですか?」
「ほえ?どういう意味?」
「人間の方は……自分達とは……違う……姿を見て……普通……恐がり……ます……でも……あなたは……最初に…出会った時から…私達と……気兼ねなく……話して……います……」
「う~ん、あたしは特に何も考えてないな~。それにリスティとかただ単に翼と尻尾があるだけの人じゃない。」
エステルはそう言うと釣り竿を置き、リスティの翼に埋もれた。
「う~ん、気持ちいい……」
「くすぐったいですよぉ~」
リスティはそう言いながらも気持ちよさそうにした。
「それにさ、マーリオンとだって今、こうして会話をしているでしょ?ロレントの人以外で何人か闇夜の眷属の人を悪魔や魔物とか言うけど失礼しちゃうわね!確かに闇夜の眷属の人って、ちょっと近寄りがたい雰囲気があるかもしれないけど、会話ができるんだから、こうやって友達になれることをなんでわかってくれないのかしら?」
リスティの翼を堪能した後、エステルはマーリオンの手を握った。
「あ………」
「うわぁ~……マーリオンって本当に水で出来ているのね。冷たくて気持ちいいわ……でも、なんで水なのにこうやって手を握れるのかしら?」
「私の……体は………魔力によって……固められて………います……から……」
「う~ん、よくわかんないわ。ま、いっか!よし、次は森の中を冒険よ!リスティ、行こう!」
「はいですぅ~」
マーリオンの言葉に少しの間考えたエステルだったが、理解できなく考えるのをやめた後、立ち上がりリスティを呼んだ。
「じゃあ、マーリオン。ちょっと行ってくるね!」
「はい………」
そしてリスティを連れたエステルを見送った後、マーリオンは心の中でいつかエステルが今言った言葉をリウイの
前でも言うことがあればいいのにと願った。

そしてエステルはリスティとしばらくの間、森を歩いていた時、エステルが何かに気付いた。
「…………」
「ほえ、リスティ、呼んだ?」
「いいえ~」
誰かに呼ばれたような感じがしたエステルはリスティに振り向いたが違うようで、空耳かと思い気を取り直したが
また、自分にでは理解できない言葉が頭に響いた。
「…………」
「また、聞こえた!ねえ、あなたはどこにいるの!?」
エステルは辺りを見回し叫んだ。
「チ………カ……ク………」
するとわずかながら理解できる言葉が聞こえた。
「近くね!わかったわ!」
「エステル、どうしたですかぁ~?」
リスティはエステルの突飛な行動に疑問を持ち聞いた。
「誰かがあたしを呼んでるの!リスティ、いっしょに探して!」
「何がなんだかわかんないですけど、わかったですぅ~」

そしてしばらく辺りを探すとそこにはエステルの拳ほどの大きさの羽の生えた小人が倒れていた。
「え……妖精さん!?」
エステルは倒れている小人を見て驚いた。
「その子は風の守護精霊ですねぇ~。でも、どうしてこんなところにいるんでしょう~?」
リスティは呑気に答えたがなぜ異世界である場所にいるのかと疑問に思った。
「それより、助けなくちゃ!妖精さん、目を覚まして!」
エステルは小人を両手ですくい、呼びかけたが目を覚まさなかった。
「あやや……この子、異世界に来て慣れない魔力のせいで魔力が上手く維持できず、それが切れてしまったんですね……」
リスティは小人の状態を見て悲しそうな表情に変えた。
「それじゃあ、この子どうなるの!?」
「消えて、自然に還ってしまいますね……」
「それって死ぬってことじゃない!?ねえ、リスティ、どうにかならないの!」
エステルは悲痛な表情でリスティに懇願した。
「この子にエステルの魔力を分けて上げれば、一時しのぎにはなりますぅ~」
「それってどうすればいいの!?」
「いつもやっているみたいにこの子に魔術を使う感覚で魔力を集めてみて下さい~」
「わかったわ!」
そしてエステルは目を閉じて願った。
(お願い……目を覚まして……!)
すると、エステルの両手から淡い光が出てそれが小人を包んだ。そして小人は目を覚まし、自分が助かったのはエステルのお陰だとわかり笑顔でエステルの周りを回った。

「わぁ………キレイ……!」
エステルは飛び回っている小人を見て、思わず呟いた。
「………」
「え、何?なんて言ってるの?」
エステルは頭に小人の声らしきものが聞こえたがわからず、聞いた。
「助けてくれてありがとうと言ってますね~。それと私といっしょにいることをどうしてと聞いていますね~」
「リスティ、わかるの!?」
エステルはリスティが小人の言葉を訳していることに驚いた。
「一応私は風属性の睡魔ですから~それとこの子の名前はパズモ・メネシスだそうです~。」
「名前はパズモって言うんだ……うん、いい名前ね!それとさっきの答えだけどリスティとは友達だからいっしょにいるだけだよ?」
「…………!」
「闇夜の眷属である私やその子自身恐くないのかと言ってますね~」
「全然恐くないわ、むしろもっとたくさんの闇夜の眷属の人と友達になりたいわ!」
エステルの答えを聞いたパズモは少しの間、エステルの嘘をついていない純粋な眼を見つめてまたエステルの頭の中に声を送った。

「………」
「え………」
「ほえ?リスティ、なんて言ってるの?」
パズモの言葉を訳そうと思ったリスティが呆けた声を出したのに気付き、エステルは聞いた。
「エステルを守護する契約をして下さいと言ってるですぅ~。」
「あたしを守護する契約ってなに?」
「言ったことそのままの通りですぅ~。要するにエステルを主人と認めてエステルが死ぬまでずっと傍にいることですね~」
「え……あたしなんかとずっといるなんて約束していいの!?」
エステルはリスティが言った事に驚きパズモに聞いた。そしてまたエステルの頭の中に声を送った。
「…………」
「エステルじゃないと嫌と言ってますぅ~」
「そうなんだ……あたしでよければその契約、受けて上げるわ!」
「………!」
エステルの言葉を聞き、パズモは真剣な表情を笑顔に変え、またエステルの頭の中に声を送った。
「契約を受けてくれてありがとうと喜んでいますね~。」
リスティはパズモの喜びが自分が喜んでいるように伝えた。
「あ!ひとつだけ言い忘れたことがあるわ!」
「………?」
思いついたかのように言い出したエステルにパズモは小さな首をかしげた。
「あたしとパズモは主人と従者じゃなく友達よ!友達に命令するとかあたしが嫌だもん!」
エステルの言葉を受けて固まったパズモだったが、やがてまた笑顔になりエステルの頭の中に声を送った。
「…………!」
「わかったと言ってますね~。」
「えへへ、よかった。それで契約って何をすればいいの?」
「………」
「エステルは何もしなくていいですよ~ただ、この子がエステルの魔力と同調するだけですからエステルはそれを受け入れるだけですぅ~」
「わかったわ……いつでも来なさい!」
リスティから契約の仕方を聞き、エステルは両手を広げた。そしてパズモは勢いよくエステルの身体に入った。
「わ……」
エステルは自分の身体にパズモが入ったことに最初は驚いたが、特に何も異常は感じずあたりを見回した。

「ねえ、パズモはどこにいっちゃったの?」
「エステルの身体の中に入ってエステルの魔力と統合しただけですから、エステルが呼びかければまた出てきますよぉ~」
「わかった、やってみる……おいで!パズモ!」
エステルがパズモの名を言うと、エステルの目の前で小さな竜巻が起こりその中からパズモが姿を現した。
「えへへ……これからよろしくね、パズモ!」
(あなたをずっと守るね、エステル……)
「え……今の声はパズモ、あなたなの!?」
エステルは頭の中に響いた声に驚き、パズモに聞いた。
(そうよ……エステルと私は契約して繋がっているから精霊である私の声が聞こえてもおかしくないわ。)
「そうなんだ……パズモとおしゃべりができるようになって嬉しいわ!」
(私もよ、エステル……!)
そしてパズモを加えてリスティとしばらく遊んだエステルはマーリオンにもパズモのことを報告し、その後行きと同じようにリスティにブライト家まで送ってもらった。

かつて正義の大女神と神殺しに仕えた守護精霊は長年いっしょに旅をし、異世界に来た際はぐれた友人の思いと同じ新たな幼い契約者に希望を持った……




同じ頃、プリネもまた、誰かに呼ばれるように感じメンフィル大使館の敷地内を歩いていた。
(確か……この辺り……いた!)
そこには鳥翼族の娘が倒れていた。
「う~魔力がうまく取り込めないよ……ボク、このまま死んじゃうのかな……」
「あなたが私を呼んだのですね。」
「え……もしかして、ボクの呼びかけの答えてくれた人!?」
鳥翼族の娘はプリネを見て驚いた。
「ええ、異世界だから魔力がうまく取り込めなかったんですね……少しの間、待って下さい……」
プリネは鳥翼族の娘に近づき魔力を分けた。
「う~力がみなぎってきた……ボク、ふっか~つ!」
鳥翼族の娘は魔力を分けられ元気になり、勢いよく起き上がった。
「魔力を分けてくれてありがとう!」
「気にしないで下さい、私がやりたいと思ってやったことですから……それより、どうしてこんな所にいるのですか?あなたはメンフィル兵やお父様が呼んだ闇夜の眷属の人にも見えませんが……」
「う……それは……!」
鳥翼族の娘は図星をつかれたように後退した。
「事情を話してくれませんか?このままだとあなたを侵入者としてメンフィル兵に突き出さなければなりません。」
「はい……実はボク、闇夜の眷属と人間が仲良く暮らす国を世界中を廻って探していたんだ。それで久ぶりに故郷に帰ろうと思って来た帰り道によったレスぺレント地方がいつのまにか、ボクが望んだ国になっていて、それでミルスで王様が新しい世界を見つけてそこと交流をし始めたって聞いたから、そこもボク達闇夜の眷属を受け入れてくれるのかなと思って、友達といっしょに兵士の目を盗んで転移門に入ったんだけど、入る直前に兵士にみつかっちゃって、焦って起動してしまったから友達ともはぐれて今の状況に……」
「なるほど……それで、友達は見つかったのですか?」
「ううん……この世界は魔力の流れが違うからわかんなくなっちゃった……」
「……あなたのお名前は?」
「ボク?ボクの名前はペルル!」
「私の名前はプリネ・マーシルンです。」
「え、マーシルン!?それってメンフィル王家の名前……!」
ペルルはプリネのフルネームを聞き、驚いた。
「ええ、お父様はリウイ・マーシルン。闇夜の眷属と人間の共存の国を実現した偉大なるお方です。」
「あわわ……ボク、皇女様に失礼をしちゃった……ごめんなさい!」
ペルルは慌て、勢いよく頭を下げて謝った。

「フフ、気易く接してもらってかまいません。それより友達を探すあてはあるのですか?」
「う……それが全然……おまけに魔力の波長も合いにくいし……」
プリネの疑問にペルルはこれからのことを考え肩を落とした。
「でしたら、これも縁だと思ってお友達が見つかるまで私の使い魔になってくれませんか?」
「え……皇女様みたいな偉い人がボクなんかを使い魔にしちゃっていいの!?」
ペルルはプリネの言葉に驚き聞いた。
「皇女と言っても私は帝位継承権はほとんどありませんから……それにお父様とマーリオンのやり取りを見て、私もずっと傍にいる使い魔さんがほしいと思いましたから。……それでどうでしょうか?」
プリネの言葉を聞き少しの間考え真剣な顔でプリネに聞いた。
「一つだけ聞かせて……プリネはボク達、闇夜の眷属と人間の共存を望んでいるの?」
「私とて魔神の血を引く闇夜の眷属の一人です。いずれ皇帝となられるリフィアお姉様を手伝って、広大なレスぺレント地方を闇夜の眷属と人間が暮らすためのよりよい国にしていきたいと思ってます。……こんな答えじゃダメですか?」
「ううん!それだけ聞ければ充分!ボクの方こそお願いします!」
ペルルはプリネの答えを聞き笑顔になった。
「よかった……では、契約を……」
「うん……!」
そしてプリネとペルルはお互いの手と翼を握り、ペルルが翼に伝わるプリネの魔力に溶け込むように消えた。
「契約完了ですね……ペルル、来て!」
「はーい!」
プリネが呼びかけるとプリネの身体から小さな光が出、その光の中からペルルが現れた。
「しばらくの間、お願いしますね。ペルル。」
「うん!こっちこそよろしくね、プリネ!」
こうして、ペルルもまた闇夜の眷属と人間の共存を願った最初の主の思いと同じ新たな契約者にパズモと同じように希望を持った……




後書き 感想者様の要望を受けて文を大幅に変えました。パズモ、ペルルは数少ない神聖魔術使い、お宝探し要員でしたがアムドシアスやナベリウス等が入ると即2軍行きしましたから、優遇しました。パズモの口調は今、ZEROの終章の紅き月神殿なんですが、一切しゃべらないので正直わかんないです……感想お待ちしております。



[25124] 第14話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/02/07 23:59
~ブライト家~
夕方にさしかかりそうになった頃、3国とクロスベルの代表になったカシウスは妻にもそのことを報告するために一端、家に戻った。
「今、帰ったぞ。」
「おかえりなさい、あなた。」
「お邪魔しています、先生。」
出迎えたのは夕食の準備をしているレナとテーブルにタロットカードを広げて占いをしているシェラザードだった。
「来ていたのか、シェラザード。」
「ええ、レナさんに例の事件でエステルに注意してもらうためにお邪魔させてもらいました。」
「そうか……ところでエステルの姿が見えんが?」
「あの子なら友達と遊びに行ってますよ。」
「今大変なこの時期にか……はぁ、こっちの気も知らないであのお転婆娘は……」
カシウスはレナからエステルの姿が見えない理由を言われ溜息を吐いた。
「ふふ、あの子の行動は誰にも止められませんよ。」
「レナさん、そんな呑気な……でも、レナさんの言う通りですね。まあ、ここロレントはメンフィルのお陰でなんとか例の事件の影響を受けずにいますけどね……」
「そうだな……実はそのメンフィルのことで、忙しい中帰って来れたんだ。」
そしてカシウスは2人に事情を話した。

「メンフィルに大敗したエレボニア帝国までメンフィルに頭を下げるなんて信じられませんね……」
カシウスの話を聞き、シェラザードは驚愕し目を見開いた。
「それだけ深刻な問題なんでしょうね……あなた、いつ大使館のほうに行くの?」
レナは暗い顔をした後、気を取り直しカシウスに聞いた。
「ああ、ここで少し休憩したらすぐにでも行く気だ。」
「でも先生、相手は隠居しているとはいえ仮にも皇帝ですよ?いくらなんでも約束もなしにそんな時間に行ったら門前払いされるんじゃ……」
「わかっている。それでも俺達の本気がメンフィルに伝わってほしいんだ。そのためなら土下座でも何でもやってやる。」
「あなた……」
レナはカシウスのことを心配そうな顔で見た。
「……そうだ、先生!ひょっとしたらすぐに会えるかもしれませんよ!」
「何?どういう事だ?」
シェラザードの提案にカシウスは驚き聞いた。
「その前にレナさん、さっきのことを話さないと……」
「そうね。あなた、驚かないで聞いてちょうだいね。実は………」
そしてレナはカシウスにカシウスが事件解決にリベール中を奔走している中、エステルが闇夜の眷属と友達になりその友達がメンフィル皇帝縁の者であることを言った。

「まさかエステルがそんな人物と友達になるなんてな……魔術が使えることといい、本当にあの娘には驚かされるよ……」
「ふふ、そうね。」
カシウスが驚くという珍しい光景を見たレナは同意しながら笑った。
「それで先生、どうします?」
「渡りに船だ。その人物にできれば今日中にリウイ殿と接触できるように頼むつもりだ。」
「そう……私からもリスティさんに頼んでみるわ、あなた。」
「ありがとう、レナ。」
そして3人はリスティを確実に引き留めるためにいつも空から帰ってくるベランダで待っていた。半刻後、空からエステルを抱きしめたリスティが姿を見せ、ベランダに降り立った。
「あ、おとうさん!帰ってたんだ!」
「ああ、お帰り、エステル。」
「えへへ、ただいま!あ、そうだ!みんなに紹介したい友達がいるんだ!」
「紹介したい友達というのはそちらの女性かな?」
エステルが嬉しそうにしていることをカシウスはリスティを見て聞いた。
「あ、おとうさんは初めて会うよね。この人はリスティ!あたしの親友の一人だよ!」
「リスティですぅ~。よろしくお願いしまーす~」
「エステルの父のカシウス・ブライトだ。娘を守ってくれてありがとう。お陰で安心して娘を遊びに行かせれるよ。」
「リスティも楽しいから別にお礼なんていいです~それよりエステル、パズモの事を報告しなくていいんですか~?」
「そうだ!おとうさん、おかあさん、シェラ姉!みんなにパズモのことを紹介するから広間に行こう!」
エステルは3人に守護精霊になったパズモのことを紹介するために広間に行くよう促した。

「じゃあ、私は帰りますね~」
リスティが帰るために飛び立とうと翼を広げた時レナがリスティを呼び止めた。
「あの、リスティさん。今日はあなたの分の夕食も作りましたからよかったらいっしょに食事をしませんか?」
「あ、大賛成!リスティ、いっしょに食べましょ!」
「はいですぅ~」
そして5人は広間に降りた。

「それで、エステル。パズモさんっていう人はどこにいるの?私達以外いないようだけど……」
レナは広間を見渡しエステルに聞いた。
「えへへ、今紹介するね……おいで!パズモ!」
広間の中で小さな竜巻が起こりその中からパズモが姿を現した。それを見た3人は驚愕した。
「え……妖精!?」
「な………!」
「な……エステル!今、あんたが呼んだからこの子が出たように見えたけどいったい何をしたの!?」
「えへへ、パズモはあたしの守護精霊になってくれたんだ!」
「守護精霊?エステル、いったいそれはなんなんだ?」
カシウスはパズモを横目で見つつ、エステルに聞いた。
「う~んと……ずっとあたしの傍にいてくれる友達だよ!」
「それだけじゃちょっとわからないわね……リスティさん、守護精霊とは何か知っていますか?」
レナは困ったような顔をした後リスティに聞いた。
「はいですぅ~守護精霊とは~普段は契約した主の魔力と同調していますけど~こうやって主が呼んだら出てくるんですよ~それで役割ですけど~その名の通り、主を守るために共に戦ってくれる精霊ですよぉ~ちなみに主が死ぬか契約を解除するまでは主の魔力で身体を保ちますから~致命傷を受けても時間をかけて、復活しますよ~」
「今、エステルの魔力で身体を保っていると言ったがエステルに負担はかからないのかね?」
カシウスはリスティの言ったことに驚愕した後、心配そうな顔になりリスティに聞いた。
「精霊の強さによっては~主に負担を掛けてしまいますけど~この子だったらずっと召喚しても特に問題ありませんよ~」
「そうか……」
カシウスはリスティの言葉を聞きホッとした。
「でも、こんな小さな子が戦えるのかしら?」
シェラザードはパズモを興味深そうに見て呟いた。
(失礼ね!私はこれでも守護精霊の中では強いほうよ!)
パズモはムッとした顔でシェラザードを睨んだ。
「あ~!シェラ姉、私は弱くないってパズモが怒っているよ!」
「へ……この子、しゃべったように見えないんだけど、エステル、わかるの!?」
エステルがパズモの代わりに怒っているのを聞いてシェラザードは驚き聞いた
「あたしはパズモとえーと……いっしんどうたい?なんだよ。だから、この子の怒った声が頭に響いて来るよ!」
「エステルとパズモは契約してつながっていますから~人間には聞こえない精霊の声がエステルに聞こえて当然ですよ~」
「もはや何でもありね……それでどんな事ができるのかしら?」
シェラザードは溜息をついた後、パズモに聞いた。
(今、見せてあげるわ!……エステル、ちょっと手伝ってくれる?)
「うん、いいよー」
そしてエステル達は外に出て、エステルがパズモの言う通り、庭に壊れた小さな椅子をおいた。
「これでいい、パズモ?」
(ええ、それじゃあ、私の力見せてあげるね!……光よ、集え!光霞!)
パズモが椅子に手をむけると、椅子の周りに強烈な光が走り、光が収まった頃には壊れた椅子が粉々になっていた。
「「「な………!」」」
3人はその状態をみて驚愕した。
(光よ、かの者を守護する楯となれ!防護の光盾!)
今度はレナに手を向けるとレナの身体に淡い光が覆った。
「レナ!?」
カシウスはレナに何かの魔術を掛けられたと思い、慌ててレナに駆け寄った。
「あら……?これはいったい?」
レナは自分を覆った淡い光を見て不思議がった。
(魔術によって少しの間だけ、身の守りを固くしたわ。物理防御、魔法防御共に抵抗力があがったわ。)
「すっご~い!あのね、魔術の力でおかあさんを少しの間だけ守っているんだって!攻撃や魔法攻撃を受けてもある程度平気らしいよ!」
エステルは興奮した様子で3人に説明した。
「う~ん、そう言われても特に何も感じないわね……そうだわ!」
レナは悩んだ後、家からペンを持って来てペンの切っ先を思いっきり自分の手に刺そうとしたが、
手に当たった瞬間逆にペンの切っ先が折れてしまい、レナは自分に全く痛みがなかったことを感じた。
「「「………!」」」
そしてレナを含めた3人は信じられないような顔で折れたペンの切っ先を見た。
さらにパズモはカシウスにも手を向けて魔術を放った。
(戦意よ、芽生えよ!……戦意の祝福!)
「む……?」
カシウスも自分に何か起こったかを感じた。
「なんだ……?体が羽のように軽く感じるぞ……?それにこの感触はどこかで感じたような……?」
(今度は戦う意識を底上げしたから、少しの間だけ体がいつもより早く動かせるわ。)
「ふわぁ~……今度はおとうさんがいつもより早く動けるんだって!」
エステルはパズモをキラキラした目で見つつ、説明した。
「そうか、この感触は時のアーツ、”クロックアップ”を使った感じに似ている。だからか……」
カシウスはエステルの説明に納得した。
(私の使う魔術はこうやって味方を援護したり、敵の身体能力を下げたり敵を攻撃できたりするわ。)
「……だって、みんな!」
パズモの言葉を伝えたエステルはパズモのことを自慢の友達だと思った。

「あらあら、エステルに小さな騎士(ナイト)さんができたわね。」
驚いていたレナだったが気を取り直し、パズモと目を合わせた。
「パズモさん、私達が見てないところでこの子が危ない目に合わないようお願いしますね。」
(当然、守るわ!)
パズモはレナにもわかるように小さな首を縦に振った。
「ありがとう。」
それを見たレナは笑顔でお礼を言った。
「そうだ~言い忘れていました~風の守護精霊と契約しましたから~もしかしたら、その影響で風の魔術が使えるかもしれませんよ~?」
「本当!?う~んと……風よ起これ~!」
リスティの言った言葉に目を輝かせたエステルは両手を広げて、試しに風を起こそうとしたが特に何も起こらなかった。
「あれ?」
(そんなすぐにはできないわ。でも、練習すれば使えるわよ。)
「本当!?よ~し、かんばるわよ~!」
パズモの言葉を聞きエステルはこれからのことを思い、張り切った。

「はぁ~……あの子は私達をどれだけ驚かすつもりなんでしょうね……」
張り切っているエステルを後ろで見ていたシェラザードは溜息をついた。
「それがあの子の良さの一つなんだろう……得てしまった力は俺達が間違った方向に進ませないよう教えるだけだ。」
「そうね……もしかしたら、その内たくさんの闇夜の眷属の人と友達になるかもしれないわね♪」
「レ、レナさん……今の状況を見たら冗談に聞こえませんよ……」
レナの冗談にシェラザードは冷や汗を垂らした。
その後、新たな小さな家族を迎えたブライト家は賑やかな夕食となった……




後書き エステルがどんどん原作より強くなっていく気がする……このままだと軌跡キャラの中では最強キャラ化するかも……?今のところ、魔術が使えるキャラは空シリーズではエステル以外考えていないんですよね…… 感想お待ちしております。



[25124] 第15話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/02/08 18:29
~ブライト家~
食後、しばらくの間パズモとリスティとおしゃべりしていたエステルは目をこすり欠伸をした。
「ふわぁ~……」
「エステル、もう寝る?」
「うん……」
レナの言葉に答えたエステルはパズモを呼んだ。
「パズモ。」
(わかったわ。お休み、エステル)
「おやすみ~」
そしてパズモは小さな光となってエステルの中に入った。
「じゃあ、あたしはもう寝るね~またね、リスティ。」
「はいですぅ~」
そしてエステルはレナに連れられて二階に上がった
「それじゃあ、リスティも帰りますね~ご飯ありがとうございました~」
「リスティさん、少し話があるんだが、聞いてくれないかね?」
「私にですか~?別にいいですよ~」
リスティを呼び止めたカシウスは真剣な顔で話しかけた。
「すまない……リスティさんは最近流行っている『D∴G教団』という犯行グループによる誘拐事件を知ってるかな?」
「ごめんなさい……リスティ、難しい話はわかんないですけど、ご主人様達がセリエル様を呼んで教団の拠点がどうとか言ってたのは覚えてます~」
「な……!まさか例の犯行グループの拠点を見つけたの!?」
シェラザードは驚いて椅子から立ち上がった。
「落ち着けシェラザード。……そのセリエル様というのはどなたかな?」
カシウスは心の中で驚き、顔に出さず先を促した。
「セリエル様ですか~?セリエル様は獣人族がたくさん住んでいる領、スリージを治めた前領主様で聖獣メルと同じ動物と意思を通じ合える方ですぅ~」
「動物と意思を通じ合える……か。」
カシウスはリスティの言った言葉を考え、ある結論に至った。
(まさか動物を使って、教団の拠点を見つけたのか!?だとすると一刻も早くリウイ殿と会わなければ!)
カシウスは姿勢を正しリスティに頭を深く下げた。
「リスティ殿、お願いがあります。どうかリウイ殿とすぐ会えるよう口添えをお願いします!!」
「お願いします!」
カシウスにつられてシェラザードも頭を下げた。
「あやや……困りました……どうしましょう……」
リスティは2人を見て困った顔をした。
「リスティさん、私からもお願いします。」
そしてエステルを寝かしつけたレナも二階から降りて来て頭を下げた。
「エステルのお母さんまで……わかりました~取りあえずご主人様に話してみますぅ~」
「ありがとうございます、リスティ殿!」
リスティの答えを聞きカシウスは頬を緩めた。
「じゃあ、今ご主人様に伝えてきますね~」
そしてリスティは椅子から立ちドアを開け外に出た後、翼を広げ大使館へ飛び去った。三人は藁をすがむ思いでリスティが飛び去った空を見上げた。

~メンフィル大使館内会議室~
そこではメンフィルの主な人物達が机に何ヶ所かに印をつけた地図を広げ話し合ってた。
「まさか、これほどの規模だったとはな……」
リウイは大陸中にちらばっている教団の拠点である印がしてある地図を睨み呟いた。
「いかがなさいますか、リウイ様。今この世界にいる兵達を半分ほど使えば一斉攻撃は可能ですが。」
「いや……それは出来ん。他国の領地に勝手に兵を入れる訳にはいかん。」
ファーミシルスの意見をリウイは溜め息をついて否定した。
「それじゃあ、どうするの!?このままじゃ、子供達がどんどんあいつらの実験台に使われ続けられるわよ!?」
「そうじゃぞ、リウイ!力無き者のために動くのが我ら王族の務めであろう!!」
「リウイ様……」
教団の活動内容を知ったカーリアンとリフィアはリウイに詰め寄り、ペテレーネも懇願するような目でリウイを見た。

「……とりあえず、遊撃士協会に相談してみるか。話はそれからだ。」
リウイは少しの間目を閉じて考えた後、目を開き答えを言った。
「そうですね……彼らは国家間の問題では中立の立場であるのでちょうどよいかと。それに彼らも奴らの情報を欲しがっていましたからね……」
ファーミシルスもリウイの考えに賛成した。
「シェラ、生け捕りにした犯人共はあれから口を割ったか。」
「ハッ……捕らえた教団員を尋問しましたが、全く口をわらず、それどころか精神に異常が見られ会話が成り立ちません。」
「そうか……まあいい。拠点が判明した以上奴らに用はない。魔導鎧の実験に使うなり自由にしろ。元々奴らは生かす必要などないしな。」
「御意。では、実行のためこの場を離れます。」
リウイの処刑とも言える命令をシェラは実行するために部屋を出た。。
そしてそこにリスティが部屋に入ってきた。

「ご主人様~エステルのお父さんがご主人様と話したいそうです~」
「なんだリスティ、帰ってきていきなり……待て。エステル、だと?」
リウイはリスティの言葉に呆れたがエステルの名を聞き、リスティに聞いた。
「はいですぅ~エステルのお父さんがご主人様と今から話したいそうです~」
「そのエステルって子って、確かマーリオンが言ってた人間の友達じゃない?」
カーリアンはリスティから出た名前を思い出しリウイに聞いた。
「ああ。この世界の人間であるにもかかわらず俺達、闇夜の眷属に驚かず、逆にたくさんの闇夜の眷属と友人になりたいと言ってた変わった娘とマーリオンが言ってたな……確か父親は以前のリベールとの会談で何度か会ったカシウス・ブライトだったな。」
「ハッ……カシウス・ブライト……人呼んで『剣聖』。我らがこの世界に来るまで大国、エレボニアの攻撃を凌ぎ、さらには反撃作戦を考えた勇将です。私もかの者と会談を通じて会いましたが、かの者はこの世界の人間では最強の部類だと思います。恐らく”幻燐戦争”時に共に戦った同士達以上、あるいは神格者と同等の強さを持っていると私は感じました。……今は、軍を退き遊撃士協会に所属しています。」
ファーミシルスはゼムリア大陸で有名な武人の情報を入手しており、その情報をリウイに言った。
「遊撃士協会に所属か……ファーミシルス。その者、恐らくランクも高レベルだろう。」
「ハッ!おっしゃる通り、かの者の正遊撃士ランクは最高ランクのA級です。」
「だとすると、例の教団の事件に担当している可能性は高いな……ちょうどいい。今からその者に会いに行く。ペテレーネ、その者の家に今から行くぞ。」
「承知しました、リウイ様。」
「こっちに呼ばないの、リウイ?」
カーリアンは王族であるリウイ達が自ら会いに行くのを珍しがり聞いた。

「今から使者をやってこっちにこさせても二度手間になる。……それにそのエステルと言う娘、少々興味があるしな……」
「そうね。あたし達、闇夜の眷属と進んで友達になりたい人間なんてこの世界じゃ初めてじゃないの?」
「ああ。……会う機会があればその者と話そうと思っていたのでな……まあ、この時間では寝ているかもしれんが。その時はまた、別の機会を待つだけだ。」
カーリアンの言葉にリウイは頷き、外に出かけるため立ち上がった。
「リウイ、余も行くぞ!余達、闇夜の眷属と友人の娘なら、余にとっても友人じゃ!余も会いたいぞ!」
リフィアはリウイ達の会話を聞き、自ら会いにいくため立ち上がった。
「ダメだ。お前はここで留守番していろ。」
「なぜじゃ!?」
「こんな夜遅くに大人数で押し掛ければ相手を警戒させるだけだ。それに俺の不在時、この大使館を指揮できるのはまだお前だけだ。プリネにはまだ早いのはわかるだろう?」
「むう~……確かにそれも王族としての役割じゃの。仕方あるまい……今回は大人しく引き下がるとするかの。」
リフィアはしばらくの間、唸り引き下がった。

そしてリウイとペテレーネはブライト家に向かった……



後書き エステル、本人が知らぬ内にメンフィルでは有名人に……言っておきますがいくらんなんでもリウイとエステルをカップルにするという暴挙はしませんのでヨシュアファンはご安心を……感想お待ちしております。



[25124] 第16話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/02/09 20:00
~ブライト家~
ブライト家では3人がメンフィルからの迎えの使者が来るかもしれないことに誰もが緊張していた。そして広間は時計の針の音だけの静寂な間であった。そこに入口のドアをノックする音が聞こえた。
コンコン
「………はい!どなたですか?」
レナはノックの音を聞き、ハッとし立ち上がりドアの外にいるであろう人物に用を聞いた。カシウスとシェラザードも緊張した顔を見合わせ立ち上がった。
「メンフィル大使館の者です。先ほどリスティさんから知らされた件でこうして参上してまいりました。」
ドアの外から聞こえたのは兵士の声ではなく、穏やかな女性の声を聞きレナは戸惑ったが返事をした。
「今開けますのでお待ち下さい!」
そしてレナは急いでドアに近寄りドアを開けた。

「あ、あなたは……!」
「な……!」
「嘘……!闇の……聖女……!?」
ドアを開け姿を見せたペテレーネにレナは驚き開いた口をふさぐように片手を当て、カシウスは予想外の人物に目を丸く開き、シェラザードは新聞でしか見なかったアーライナ教を広める元となった女性を見て驚愕した。
「こんばんわ、私はゼムリア大陸でアーライナ教の神官長を務めさせて頂いているペテレーネ・セラと申します。夜分遅くの訪問、お許し下さい。」
「顔を上げて下さい……!謝るのは私達のほうです!聖女様ほどの方がわざわざ知らせに来るなんて……ありがとうございます!」
頭を下げるペテレーネに恐縮したレナは慌てて頭を上げるように言った。
「ありがとうございます……あら?もしかしてあなたとお会いしましたでしょうか?どこかで見たような……」
顔を上げたペテレーネはレナの顔を見て、見覚えのある顔だと気付いた。
「あの……ロレントで起こったエレボニア帝国兵による襲撃の時、あなたに傷を癒してもらった者です……あの時は本当にありがとうございました!」
「ああ……あの時の方でしたか……その後お変りはありませんか?」
レナの事を思い出したペテレーネはレナに体調を聞き、それをレナは恐縮しながら答えた。
「は、はい!貴方様のお陰でこうして元気に家族と共に幸せに暮らせております。……娘は特にあなたのことを尊敬していて私の傷を癒すあなたを見て、自分も魔術を覚えて貴方様のように『人助けをするために遊撃士になる!』と言って、時間がある時は貴方様が書いた聖書を読んで魔術の練習と、武術を練習しているんです。あの子に将来の目標が出来たのは貴方様のお陰でもあります。本当にありがとうございます。」
「そ、そんな……!私はただ、当然の事をしただけです……」
レナの言葉にペテレーネは顔を赤くし、慌てた。

「………なるほどな。あの時、助けを求めた少女がマーリオン達と友人になった少女だったとはな……案外世間とは狭いものなのだな……」
ペテレーネの横に並ぶようにリウイが姿を現した。
「え………!」
「リ、リウイ殿!?」
「嘘……メンフィル皇帝……!」
3人はリウイの姿を見て生きている中で一番驚いた。
「……メンフィル大使、リウイ・マーシルンだ。貴殿とは”百日戦役”の講和条約の時以来だな。カシウス・ブライト。」
「……久しぶりでございますな、リウイ殿。狭い家でございますがどうぞこちらへ。」
「……失礼します。」
「……失礼する。」
そしてカシウス達はリウイとペテレーネをテーブルの椅子へと案内した。

「……エステル・ブライトはやはりもう寝てしまったようだな。」
椅子に座ったリウイは2階にある部屋からリウイのみがわずかに聞こえる少女の規則正しい寝息を聞き、少しだけ残念そうな顔をした。
「あの……エステルが陛下に何か失礼をしてしまったのでしょうか?」
レナは心配そうな顔でリウイに聞いた。
「いや……人間でありながら我ら”闇夜の眷属”と進んで友人になろうとしている少女がどのような少女なのか直接話してみたかったのだがな……寝てしまっているのであればまたの機会を待とう。……子供は幼い時はよく眠るのも仕事の一つだからな。」
「そうでしたか……皇帝という忙しい毎日を送っていたのにもかかわらず子煩悩なリウイ殿を見て、失礼ながら少々意外と思い申し訳ありません。」
カシウスはリウイの子煩悩な所を以外そうな顔でみた後、謝った。
「こう見えてもたくさんの子を持つ父親でもあるのでな。気にするな……」
(メンフィル皇帝にまで気にいられるなんて、あの子、どこまであたし達を驚かせる気よ……)
シェラザードはリウイがエステルの事を話す時、リウイがわずかに笑みを浮かべているのに気付き、心の中で妹分の凄さに溜息を吐いた。
「さて……リスティから聞いたが何か俺に用があるそうだな?……例の教団の件か?」
そしてリウイはここに来た直接の理由を言った。
「ハッ、理解が早くて助かります……レナ、シェラザード。お前達は別の部屋で待機していなさい。」
「でも、先生……!」
「シェラちゃん。今はこの人の言う通りにしましょう……私達ができるのは子供達が一人でも無事に帰れるようにエイドスとアーライナに祈るだけよ……」
「はい……」
カシウスの言葉に反発しようとしたシェラザードだったが、レナに諌められ自分の力の無さに怒りレナと共に別室に入った。

「さて………リウイ殿、まずはこちらをお読み下さい。」
レナとシェラザードが別室に入ったのを見届けると、自分の鞄の中から何重にも保護された一枚の嘆願書を出し、それをリウイに渡した。
「拝見しよう。」
嘆願書を受け取ったリウイはそれを端から端まで丁寧に読んだ。
「………なるほど。3国を始めとし、遊撃士協会、クロスベル警察が一丸となって異世界人である俺達に頭を下げさせるとはな……」
リウイはカシウスの手際の良さに感心した。
「その嘆願書にも書いてあるように、事件解決のためにどうかご協力を……!」
カシウスは机に両手をつけ、リウイに深く頭を下げた。
「………顔を上げてかまわん。こちらもその件に関して遊撃士協会に相談することがあったのでな。……ペテレーネ。」
「かしこまりました、リウイ様。」
リウイの意図がわかっていたペテレーネは一枚の地図を懐から出し、それを机に広げた。
「これは………まさか、教団の拠点ですか!?」
カシウスは地図に示してある印を食い入るように見て、驚愕した。
「なぜ、それがわかる……?……リスティか。ふう……あいつには情報の重要さを教えてやらねばな……」
リウイはカシウスが地図を見てすぐにわかった原因がリスティだとわかり、溜息を吐き、話始めた。
「我らも領民の安寧のためにいい加減やつらとは決着をつけたかったのでな……本格的に調べさせてもらった結果がそれだ。拠点が他国に散らばっている以上、さすがに兵を勝手に動かす訳にはいかなかったのでな……悩んだ結果、貴殿等遊撃士協会に仲介役にでもなってもらおうと思って来たのだがこの嘆願書を見る限り渡りに船のようだな。」
「ハッ!ギルドを始めとし、クロスベル警察、3国も事件解決のために精鋭を参加させてもらうつもりでいます!……それでリウイ殿、先ほどの嘆願書の件はいかがでしょう?もし、よろしければこちらを頂くだけでもいいので良い返事をお願いします!」
「王族として、また子を持つ親として当然我らメンフィル、教団壊滅作戦に全力を持って参加させてもらおう。」
「愛する娘を持つ母として、微力ながら私も参加させて頂きます。」
「ペテレーネ殿まで……ご協力、感謝いたします!」
2人の返事を聞き、カシウスは希望を持った顔で礼を言った。

「代わりにと言ってはなんだが、貴殿等に頼みがある。」
「私共にできることなら、何でも致します。どうぞ、おっしゃて下さい。」
条件を出されたカシウスは一瞬緊張したが、気を取り直しリウイに聞いた。
そしてリウイは教団による襲撃によって孤児になってしまった子供達のために、孤児院を作り、心の治療のために光の神殿で唯一闇夜の眷属の国、メンフィルと友好的な癒しの女神(イーリュン)教の信者達をゼムリア大陸に来させ、子供達の心の治療にあてること、そしてイーリュン教の布教の許可の手配を頼んだ。
「今まで唯一の女神、空の女神(エイドス)を信仰していたそちらにとってはこれ以上異教の信者が増えるのは我慢ならぬかもしれんが、頼まれてくれるか?」
「子供達のためでよければいくらでも協力させて頂きます……!私共のほうから七曜教会に言っておきますので一日でも早く親をなくした子供達の心を癒してあげて下さい。」
「ああ。」
カシウスはイーリュン教の活動内容、その教えをリウイとペテレーネから聞き安心し七曜教会との仲介を約束した。そして話し合いの結果、詳しい作戦内容は代表者達を集めて後日ということになり、リウイとカシウスは友好の証の一つとしてカシウスと握手をした。
「では、今後とも協力、お願いする。」
「ハッ!こちらこそお願い致します!」

そして2人は3人に見送られようとした時、ペテレーネが懐から紫色のブローチを出し、それをレナに渡した。
「あの……よろしければこちらをエステルさんにお渡し下さい。」
「これは……?」
「それは私が魔力を込めて作った厄除けのお守りのようなものです。所有者の潜在魔力を少しだけ上げる効果と混乱と毒を抑える効果を持っています。……命に危険が晒される遊撃士を目指すのですから、状態異常に耐性を持ってたほうがよろしいでしょう。」
「え……そんな凄い物を貰ってもよろしいのですか……?」
レナは渡されたブローチの効果を聞き、驚き聞いた。
「信者の方にもお守りとして配っているものですから、それほど大した品ではありません。ですから、遠慮なく受け取って下さい。」
「わかりました……きっとあの子も喜ぶと思います。」
そしてレナはペテレーネから貰ったブローチを大事そうに両手で包んだ。

そしてそれを見ていたシェラザードがペテレーネに真剣な顔で頭を下げた。
「あの……ペテレーネさん、お願いがあります!失礼と思いますがどうか、私に魔術を教えてもらえませんか!」
「魔術をですか?なぜ私に……?」
ペテレーネはシェラザードの唐突な願いに目を丸くした後、聞いた。
「私は今回の件で改めて、人を守る遊撃士として力の無さを感じました……ですから、力を補うためにも魔術の力が必要なのです!秘印術を使ってのアーライナの魔術は私には使えないと感じ、一度は諦めたのですが噂でペテレーネさんはアーライナの魔術以外も使うと聞いたことがあります!どうか、それを教えて頂けませんか!」
「……確かに秘印術を使えば、神を信仰していない人間の方でも魔術も使えますがそれを教えたからと言って、あなたが私と同じ魔術を使えるとは限りませんよ?人それぞれ適正の属性の魔術がありますから。」
「それでもです……お願いします!」
ペテレーネは必死に何度も頭を下げるシェラザードを見て、リウイと永遠に生きるために必死に神殿で修行したかつての自分を思い出し笑顔で答えた。
「わかりました……魔術の適正属性を調べることぐらいでしたら私でもできますので……それに例え私が使えない属性の魔術でも使えるようにある程度教えることはできますのでそれでもよければ、大使館の隣にある教会に来て下さい。時間がある時なら教えられますので。」
「ありがとうございます!」
シェラザードはペテレーネから返事を聞き笑顔でお礼を言った。

「では、戻るぞペテレーネ。」
「はい、リウイ様。」
そして2人はブライト家を去った。翌日目覚めたエステルは両親からペテレーネが来た事を聞き目を丸くした後、『聖女様が家に来たのにどうしておこしてくれなかったのよ!』と膨れたが、憧れている人が作ったブローチを母から渡され、機嫌が直りそれを宝物のように大事にした。

数日後、3国、遊撃士協会、クロスベル警察、そして異世界の国、メンフィルの精鋭達を加えた教団壊滅作戦の最終会議が始まろうとした………!






後書き シェラザード……FCでは物理、アーツ共にできる万能キャラでしたがパラメーターが本格的に差別されるSC、3rdでは、物理アタッカーのアガット、ジン、アーツアタッカーのクローゼやオリビエ達と違って中途半端な攻撃力しか持たなく、唯一の取り柄は味方の順番を上げるためにいるようなほぼ2軍キャラだったのでちょっとだけ優遇しました。……ちなみにエステル、ある幻燐キャラの魂を受け継いでいるのでさらに使える魔術の属性が増える予定です。やばい、エステルがセリカ並の反則キャラになってしまうかも……?
………さあて、レンをどうしようかな?感想お待ちしております。



[25124] 第17話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/02/10 23:45
~某所~
そこには教団壊滅作戦の指揮を執る事になったカシウス・ブライトを始めとした3国の名将、A級遊撃士、クロスベル警察の部署の中で最強と言われる部署の人物達がある人物達の登場を待っていた。そしてついにその人物達が姿を現した。

「……失礼する。」
「……失礼します。」
「は~い、よろしくね。」
「………失礼しますわ。」
その人物達とはリウイ達であった。リウイ達が姿を見せた時、ざわめきが大きくなった。
(まさか皇帝自らが参加するとは……メンフィルは王族自身が戦い兵を鼓舞するというのは噂だけではなかったのか……)
(へ~……聖女や将軍といいメンフィルは綺麗所だらけだな。あの皇帝、仏頂面に似合わずモテモテだな、アリオス。)
(……滅多なことを言うな、ガイ。)
(あれが我らエレボニア帝国を恐怖の底に叩き落とした悪魔共か……クソ!なぜやつらと共同作戦をとらねばならない!)
ざわめきの中でもエレボニアの軍人達はゼクスを除いてリウイ達を厳しい表情で見ていた。そして視線に気付いたファーミシルスはその中でゼクスの姿を見つけ、ニヤリとした。

「あらあら……どこかで見たと思えば、あの時部下全員を殺されたにも関わらずおめおめと逃げ帰った将じゃない。よくこの作戦に参加できたわね。」
「貴様、少将を侮辱するのか!」
ゼクスの傍に控えていた軍人の一人が声を上げファーミシルスを睨んだ。
「あら、私は事実を言ったまでよ?……まあ、見た所貴方達エレボニアはそいつ以外は話にならない強さだったわね。だったら仕方ないわね。」
「我らを侮辱するか……!」
挑発され、怒りを顔に表したエレボニアの軍人達は武器に手を掛けたがゼクスが一喝した。
「バカ者!これから一丸となって戦う同士に何故武器に手を掛ける!!」
「「「しかし、少将!」」」
「聞こえなかったのか!今すぐ武器から手を放せ!」
「「「クッ………」」」
ゼクスに一喝された軍人達は悔しそうな顔で武器から手を放した。
「……部下共が失礼をして申し訳ございません、ファーミシルス殿。」
「……いいわ。私の方も多少言いすぎたようだしね。」
ゼクスが素直に謝ったのを見てファーミシルスは感心し、自分の非も認めた。

そしてざわめきが一通り収まるのを見計らったカシウスが声を上げた。
「さて……全員揃いましたな。これより『D∴G教団壊滅作戦』を行いたいと思います!作戦は至って単純です。こちらをご覧下さい!」
「この印をされているのはなんだい?カシウス殿。」
セルゲイはカシウスが広げた地図に至る所に印がされてある部分を聞いた。
「メンフィルによって提供された、教団の”拠点”です。」
「へえ……たった数日で大陸中にあるこれほどの数の拠点を見つけるなんて、ぜひその方法を俺達警察にも教えてもらえないですかね?」
セルゲイは捜査が専門の一つである自分達が出し抜かれた不甲斐なさに溜息をつきながら冗談混じりにリウイに聞いた。
「………悪いが方法は教えられん。まあ、教えたとしてもお前達人間では決して真似できんが。」
「”闇夜の眷属”ならではの捜査方法ですか……羨ましいですな……」
セルゲイはリウイの遠回しな言い方で拠点を見つけた方法を推理し、メンフィル特有の人材の良さを羨ましく思った。

「では、続けさせて頂きます。具体的な作戦はこちらの拠点を一斉に制圧し、子供達を救出、そして犯人達の拘束です。みなさん、覚悟はよろしいですかな?」
カシウスの確認の言葉にその場にいる全員が頷いた。
「それでは具体的な各国の制圧メンバーの行く場所を今からいいます。まずこちらのA拠点ですが……」
そしてカシウスは次々と各国の精鋭達が行く拠点の場所を読み上げて行った。
「最後にこの拠点ですが……メンフィルの方々にお願いしてもよろしいですかな?」
「ああ。」
「お任せ下さい。」
「腕がなりますわ。」
「任せてよ!」
4人の頼もしい言葉に頷きカシウスは号令した。

「ではみなさんにエイドスとアーライナのご加護を!」
そして軍人や遊撃士達は出て行き、その場に残ったのはカシウスとリウイ達だけであった。
「……本当にこの拠点を俺達に当ててよかったのか?そちらの調書にも書いてあるが”そこ”は拠点の中でも特別だぞ。」
リウイはカシウスにその拠点の特別さを強調して確認した。
「……その拠点に関係するであろう人物達のことを考えれば、その者達と関係がない貴殿等でなければ頼めません。……信じたくはないのですが”ここ”を襲撃した際、”客人”を庇うメンバーが出る恐れもありますので……」
カシウスはリウイの問いに目を閉じて答えた。
「そうか……それとカシウス・ブライト。先ほど貴殿は犯人を拘束してくれと言ったが、悪いが俺達は犯人を”客人”ごと滅し、子供達の保護をするつもりだ。」
「………下手に”客人”が生きていては後々国家間で問題になるので、そのほうがいいでしょう。子供達の救出を優先的にお願いします……」
「わかった。」
そしてリウイ達も出て行きその場に残ったのはカシウス一人だった。
「快楽のためだけに幼い子供達を汚す薄汚い権力者共が……!俺達は裁けないが彼らなら裁いてくれるだろう。では、俺も行くか……」
カシウスは怒りの言葉を呟いた後、自分も作戦に参加するため出て行った。



深夜の森の中、リウイ達は拠点が見えると見張りに見つからないよう隠れて時間を待ち、ついにその時間が来た。
「……時間だ。行くぞ。」
「ええ!」
「ハッ!」
「かしこまりました!」
3人の返事に頷いたリウイはあることに気付いていて、それをファーミシルスとカーリアンに言った。
「……ファーミシルス、カーリアン。気付いているな?」
「ええ。この気配、人間にしては結構腕があるようね。」
「いかがななさいますか?」
「……警告だけしておけ。」
「ハッ!……闇に呑まれよ!ティルワンの闇界!!」
ファーミシルスは闇の奥に潜む存在に加減した魔術を放った。そしてそれを察知できなかったリウイ達を監視していた者達は回避もできず命中した。
「グハッ……!」
「くはっ!」
魔術が命中した監視者達は思わず呻き声を上げた。
そしてファーミシルスは呻き声を上げた方向に向かって叫んだ。
「今のは警告よ!私達の後をついてきたり、私達が戻って来た際まだいるつもりなら、今度は本気で殺すわよ!!」
警告をしたファーミシルスはリウイ達の方に向き直った。
「ではさっさと終わらせましょう、リウイ様。」
「ああ。」
そしてリウイ達は拠点へ進撃した。

一方ファーミシルスの魔術を受けた監視者――青年と少年は呻き声を上げながら起き上がった。
「……ア、無事か?」
「くっ……なんとか……まさか気配を悟られた上、僕達が攻撃を察知できないなんて……」
「……”闇夜の眷属”は人間より感覚が優れているというしな……それにこの暗闇の中であんな魔術を使われれば、例え察知能力が高いお前でもよけられまい……」
「それよりどうするの……ェ。結社からはあの拠点の襲撃の命令を受けたけど、これじゃあ任務どころか返り討ちにあってしまうよ……?」
「退くぞ……メンフィルがこの件に関わってきた際、『絶対に関わるな』。それも命令の一つだろう。」
「わかった………」
そして少年は音もなく木に飛び移り消えた。
「………あれがエレボニアを降したメンフィル皇帝か……機会があれば手合わせを願いたいものだ。」
リウイ達が進撃した方向を見た青年は一言呟いた後、気配を消しどこかへと消えた……



後書き アハハ……ここまでヒント出せば、リウイ達がどの拠点に行ったかわかっちゃいますよね……ちなみにリウイ達は今回の件が終わり、本編に移ればリフィアやプリネにバトンタッチしあまり出てきませんので、ご了承を……感想お待ちしております。


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