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[25194] サモンナイト ~未来への道~
Name: ガイナ◆64522285 ID:bbae2f4b
Date: 2010/12/31 12:32


初めまして、ガイナという者です。
ここの掲示板でお世話になるのは初めてです。

馴れないことも多々あると思いますが、完結目指して頑張っていくので応援よろしくお願いします^^


一応原作沿いにするつもりですが、途中オリジナルが入ったり原作と違い登場しないキャラも出ると思います。
ご了承ください。

15~20話ほどでの完結を目指しています。



  原作 
 
     PS・DSソフト 『サモンナイト』




[25194] プロローグ  Who's Calling me??
Name: ガイナ◆64522285 ID:bbae2f4b
Date: 2010/12/31 12:37
いつからだろう??


決して今の生活が不満な訳じゃない。友達や後輩、部活仲間とも上手く行ってる。
ただ、どこかあたしは日常生活に物足りなさを感じていた。




プロローグ

――Who's Calling me??









「せんぱーい!!」


学校が終わった放課後、帰り道後ろから呼ばれる声にナツミは振り向いた。そこには一つ下の後輩、カツヤが笑顔でナツミに手を振っていた。
カツヤはすぐにナツミのとこへ駆けて来る。


「どうしたのカツヤ君??」


ナツミが問いかけるとカツヤは照れくさそうに頭をかいている。


「今帰りなら、良かったら駅まででも一緒に帰りたいな~って思いまして」

そう言いながらもカツヤは恥ずかしそうに頬を赤く染めている。ナツミはそんなカツヤを見て、にっこり笑うと「いいよ。一緒に帰ろうか」と返した。


二人が並んで歩き出すと、カツヤは泣きつくような声でナツミに訴えかけてきた。


「聞いてくださいよ先輩~。新堂キャプテンの練習最近ずっと走りばっかなんスよ~」



カツヤが所属するバスケ部のキャプテン、新堂ハヤトはナツミの幼なじみでもある。
小学校、中学校、高校とずっと同じ学校に通い、家だって近所のため昔から仲が良かった。
そんな馬鹿で単純だけど、曲がったことが大嫌いな幼なじみを最近ナツミはずっと気にしていた。


「あいつは熱血だからね~。でもきっとカツヤ君たちのことを考えてそんな練習にしてるのよ」

「それは分かってるんスけどね~」


ナツミの言葉にカツヤは苦笑いをして、「それでもキツいッスよ」と言った。

ハヤトの練習はキツいってみんなが言っている。だけど、バスケ部を辞めた人は誰一人としていない。きっとみんなキツくてもハヤトを慕ってるんだとナツミは考えていた。昔からハヤトは人を寄せ付ける力があった。常に周りにはたくさんの友達が居る。ハヤト自身もたくさんの人間に囲まれて毎日楽しそうに見える。「きっとハヤトには悩みなんかないんだろうな」、いつからかそんなクラスの幼なじみを見て、ナツミは心のどこかで羨ましいと思っていた。


暫くして駅に着き、ナツミはカツヤと別れた。
駅から自分の家までは近いが、ナツミは直接家には帰らず近くの丘の上にある見晴しの良い公園に足を運んだ。
高校に入学してからナツミは何か考え事や悩み事がある時にこの公園に一人で足を運ぶようになった。

ベンチに座り、太陽が沈みかけ闇に染まろうとする街を見下ろしながらナツミはぼーっと考えていた。





いつからだろう??

いつからかナツミは日常生活に物足りなさを感じていた。
毎日が決して楽しくない訳ではない。後輩とも友達とも上手く行っている。何の不満だってない。


ただ、このままで良いのかな??

今のまま生きて行って大学に入り就職して、結婚する――…。
そうすればそれなりの幸せは手に入るだろう…。
だけど、それじゃそれ以上の幸せは手に入らない。決められた道を歩くだけじゃ、他の大事なものを見つけることは出来ない。

だけどそんなものがあるという保証もないため、自分は飛び込むことも出来ずにただ迷って悩んでいる。


他の人とは違う、自分の生き方って何だろう。
自分にとっての幸せって何だろう。

自分にしか出来ないことって…。









気が付けば、太陽は沈み街は闇に包まれていた。
闇の中でポツリと目立つ公園の街灯がいつもより寂しそうに見える。


「そろそろ帰ろうかな…」


ナツミがベンチから立ち上がった時だった。ハッキリとは聞こえないが誰かの声が聞こえる。
ナツミは周りを見渡すが、周りには誰もいないし人の気配もしない。


「……て」

「誰!?誰なの!?」


再び聞こえた声にナツミは大声で問いかける。


「助けて…。何もかもが壊れる前に…」


その声がハッキリと聞こえた瞬間、ナツミの周りに不思議な光が発生した。
その光はあっという間にナツミを覆い、強烈な光となっていく。ナツミはその強烈な光の中で意識をなくして倒れ込んだ。


「助けて…。リィンバウムを…」






[25194] プロローグ  2部
Name: ガイナ◆60df9431 ID:bbae2f4b
Date: 2011/01/08 16:38


「…ミ、ナツミ!!」


「……うっ」



どこか聞き覚えのある声が聞こえる。
ナツミはゆっくりと重い瞼を開けた。意識は戻ったが焦点が合わず、視界がぼやけて見える。



「良かった!!無事だったんだな」


「ハヤト…??」



焦点も合ってきて、目に映ったのは同じクラスの幼なじみだった。
ハヤトは「良かった」と安心したように呟くと、ゆっくりと立ち上がった。それにならいナツミも立ち上がろうとするが、頭がズキズキと痛みよろけてしまった。


「大丈夫か??」


「う…ん、全然ヘーきよ。ありがと」



ハヤトに体を支えてもらいフラフラしながら立ち上がる。

立ち上がりナツミは自分の目に映る世界に呆然とした。思わず目をこすってみるが、目の前の世界は変わらない。


「ここはどこ…」


不安げに呟いた一言にハヤトは返すことが出来なかった。もちろんハヤトだってここがどこなのかなんて分からないからだ。

周りを見渡すと自分たちは何か大きい穴の中のような場所に立っていることが分かった。上を見上げると大きく開いた穴から綺麗な青空が広がっている。

ナツミは今までのことを思い出して見た。
まず自分は公園から出ようとした時に不思議な声を聞いた。それでその後不思議な光に包まれ気を失った。
そして目を覚ましたら…


(ここに居たってことよね)



まず公園を出ようとした時はもう夜だったのに、今はこんなに太陽が綺麗な青空を輝かせている。
て言うことは、ここは日本ではないということになる。



「おーい、ナツミー!!無事だったかー??」


突然穴の上から自分の名を呼ぶ声。ナツミが見上るとそこにはクールな顔立ちで綺麗な瞳をこっちに向けてくる青年――…、同じクラスで剣道部に所属しているトウヤとその横で心配そうにトウヤと同じ一点を見つめる長い黒髪少女――…、同じクラスで生徒会に入っているアヤががこちらを向いている。



「トウヤとアヤも!?」

「あぁ、俺とナツミとトウヤとアヤがここに飛ばされたみたいなんだ」




ハヤトの話によると、ハヤトが目を覚ますとトウヤとアヤとナツミの三人が倒れていたらしい。一人ずつ順番に起こして行く中、トウヤとアヤが周りの様子を見に行っていたのだ。

それにしてもこの場所に飛ばされた時、四人はバラバラの所に居たらしい。全く違う場所に居たのにも関わらず、何故かこの四人が飛ばされてしまったのだ。
考えれば考えるほど謎が浮かび上がって来る。ナツミは未だ整理出来ずに居た。きっとそれは他の三人にも同じことが言える。



「ハヤトさん、ナツミさん、ちょっとこっちに来てください」


手招きするアヤは顔色があまり良くない。
なんだろうと二人は顔を合わせると穴を登って二人のとこへ来た。

その瞬間、強烈な臭いが匂って来た。それは何か生物が腐ったよいな臭い。二人は思わず鼻を手で抑え込む。



「あれを見てくれ…」


「……!!」



トウヤが指差す先を見て二人は絶句してしまった。アヤの顔色が悪くなる理由がそこにはあった。


「酷い…」

「何でこんなことに…」


そこには真っ黒になった死体が数体転がっていた。
何かとてつもない爆発に巻き込まれたようなように、横たわっている死体は真っ黒になっている。


「とりあえずここから出よう。」


「そ、そうだな」



あくまで冷静を保っているトウヤにハヤトは同意する。
アヤとナツミも黙って頷く。とりあえず行く宛なんかなくてもここから早く立ち去りたかったのだ。

四人は死体が横たわっている悲惨は現場を後に、早足で歩き出した。



[25194] プロローグ  3部
Name: ガイナ◆60df9431 ID:bbae2f4b
Date: 2011/01/08 16:40
「なんか小汚いところね」

「ここはスラム街みたいですね」



方角も何も分からないままただひたすら歩き続けた一行はようやく街に入ることが出来た。
正面の門から入らず、外壁に開いた穴のようなところから入ったせいか、一行はスラム街のようなとこに出てしまっていた。



「とりあえず今までのことを整理してみないか??」


少しは落ち着いて来た頃にトウヤは言いだした。
確かにと三人は頷き、それぞれのことを話しだす。


「俺は部活の帰りに後輩と飯食いに行って、帰りに確か田んぼ道を歩いてて…」


「私は放課後、図書館に寄った帰り道の途中で…」


「僕は電車で帰ろうとホームに居た時だった」


「あたしは公園に居た時に不思議な声が聞こえて、気がついたらここに飛ばされてたみたいなの」



ナツミが言った【不思議な声】というもの残りの三人は首を傾げる。



「ナツミ、なんだその【不思議な声】って」


「えっ、ハヤトたちは聞こえなかったの??」



ナツミが驚いて問うも、三人は揃って首を傾げた。

(意外…。みんなにはあの声が聞こえなかったんだ…)



ならなんであたしにだけ聞こえたんだろう。

そもそもあの声の主って…。



「誰だ!?出てこい!!」



突然声を張り上げるハヤト。
その声のせいか、二人の男がゆっくりと建物の裏から出て来た。
一人はまだ四人と変わらないくらいの年の目つきの悪い男、もう一人は上裸でかなりしっかりとした体付きをした男。
目つきの悪い男がニヤニヤしながら、ハヤトに近づいて来た。



「へぇ、お前良い勘してるじゃねぇか」

「ついでにワシらの用件も分かると助かるんだがな」



「…なにが目的だ!?」

「今持ってるあり金全て俺らに出せ。そうすれば命だけは助けてやる」




理不尽な要求を…。

ナツミは聞いて呆れていた。
とりあえず四人は顔を合わせる。みんな呆れかえっている表情だが、ここで戦いになるのも良したい。みんな考えは一緒だった。


(見ず知らずのとこの奴に因縁つけられてもねぇ)


ため息を着くと四人は渋々財布を取り出した。


「やべっ、俺飯食いに行ってたから全然金持ってねぇ」

「ハヤトさすがにそれは無さ過ぎでしょ」



財布の中を見て絶望するハヤトを見て、ナツミは再び溜め息を着いた。


「これくらいで十分だろ??」

「…なんだこの紙くずと小汚い鉄クズは」



トウヤに返した男の言葉に四人は唖然とした。

そしてすぐに男が怒鳴りつけてくる。


「お前らナメてんのか!?こんな紙くずじゃなくて金を置いて行けったんだよ!!」
「そんなこと言われてもあたしたちこのお金しか持ってないし…」

「何を訳の分からんことを言ってるんだ??」



目つきの悪い男がイライラしているのを悟ったのか、もう一人の男が呆れたように聞いてくる。



「俺たちをナメてるようだな。ちょっと相手してやろうぜ」

「ガゼル、殺すのはマズいぞ」



ガゼルと呼ばれる男はもう一人の男の言葉に「半殺し程度にしかしねぇよ」と恐ろしい言葉でさらっと返した。



「結局こうなるのか…」

「ナツミとアヤは下がってて!!」



ハヤトとトウヤは近くに落ちていた鉄の棒を握り締め、ガゼルと対峙する。そんな二人を見て鼻で笑っているガゼル。相当喧嘩に慣れているんだなとナツミは肌で感じた。



「行かねぇならこっちから行くぜ!!」



ガゼルがダガーを握りながら二人に向かって駆けた時だった。
突然ナツミの周りを不思議な光が覆いだしたのだ。

(これは飛ばされた時と同じ光…)


それはナツミが公園から荒野に飛ばされた時と同じ光だった。
次の瞬間、その光はガゼルの方へと思いっ切り向かって行く。


「ぐあぁぁぁ!!」


光が直撃し、ガゼルは後ろに吹き飛ばされた。
壁に叩きつけられ、ガゼルはぐったりと倒れている。


「い、今のはあたしが…」

「なっ…、お前さんたちは一体…」
みんながナツミの方を見て驚いている。もちろん当の本人が一番驚いているのだが。


「許さねぇ…、ぶっ殺してやる」

「そこまでだ、ガゼル」


なんとか立ち上がったガゼルの前に剣士のような人物が現れた。
まだ歳も若そうで整った顔立ちの男はガゼルのダガーを奪いとる。


「レイド!!」

「先にふっかけて来たのはお前たちの方からだろ」


「…ちっ、見てやがったのか」



ガゼルは舌打ちをすると悔しそうに四人を見つめている。

そんなガゼルを無視するかのように、レイドと呼ばれる男は穏やかな表情で四人に声をかけた。


「迷惑をかけてすまなかった。怪我はなかったか??」
「全然大丈夫です。ありがとうございます」

「そうか。ところで君たちはあまり見かけない顔だが…。それにさっきの光は一体…」





レイドに問われ、四人は戸惑った。
本当のことを話しても彼らは分かってくれるだろうか。

それにナツミが使ったあの光…。あれに至っては本人すら説明が付かない。

(とりあえず言ってみないと分からないよね)



そう思い、今までのことを全て話した。
四人とも全く違う世界にいながら、同じ異世界に飛ばされたこと。目が覚めた荒野で数人の真っ黒に焼かれた死体が横たわっていたこと。
ナツミ自身でさえ、あの光の力が何なのか分からないこと。


「そうか…。着いてきなさい、少しくらいなら君たちが今まで体験したことの説明が出来そうなんだ」



レイドの言葉に四人は頷く。

もしかしたらここが何処なのかくらいは分かるかもしれない。
四人は黙ってレイドの後をついて行った。



[25194] プロローグ  4部
Name: ガイナ◆60df9431 ID:bbae2f4b
Date: 2011/01/22 20:20
レイドに連れられ、四人はスラムにある木造の建物に来ていた。
建物自体はそこまで古くなく、スラム街の中の他の建物に比べると全然綺麗だ。
レイドの話では、彼らはここで寝泊まりしているらしい。

中に入ると、四人は広間のようなところに案内された。



「さ、座ってくれ」


レイドに声をかけられ、四人は椅子に腰をかけた。
ちょうどその時、四人が今来た通路から賑やかな声と足音が広間の方に聞こえてきた。


広間に飛び出して来たのは小さな三人子供のだった。一人の子が持っているおもちゃが原因でもめているらしい。



「返せ!!オイラのだぞ」

「べーっだ!!早い者勝ちだもんね」

「二人とも、喧嘩はダメぇ…」



騒ぐ子供たちにイライラしたのか、ガゼルは机を思い切り叩き立ち上がった。
子供たちはビックリして一斉にガゼルの方を見つめている。


「うるせぇな!!チビどもはあっちへ行ってろ!!」


ガゼルの怒鳴り声が響き、広間は静まり返った。そして一人の子がその沈黙を破る。


「うっうわぁぁぁ!!」

「なっ、泣くな!!泣くんじゃねぇ」

「どうしたの、ラミ」


事態を聞きつけたのか通路から赤髪を後ろで三つ編みにした少女が出て来た。その少女と目があったガゼルは慌てて目をそらしている。
それで事態を理解したのか、少女は泣きわめく子供を優しく抱き抱えると、ゆっくりとガゼルに近づいて来た。


「ガゼル!!またアンタが泣かしたんでしょ!!」

「お、俺はそんなつもりじゃ…」

「ふーん、口答えするんだ。それはつまり今晩の晩飯はいらないってことよね」

「ちょ、ちょっとタイム!!」

「“ごめんなさい”は??」

「ちくしょう…」


「“ごめんなさい”は!?」


一回目と全く同じような調子で言う少女を見て四人は背筋が寒くなった。
なんだかガゼルが可哀想に見える。



「…ごめんなさい」

「よろしい」


満面の笑みでニッコリと笑う少女からは先程のような黒い笑顔は消えていた。

そんな少女にエドスが申し訳なさそうに声をかける。



「あーリプレ、取り込み中のところ申し訳ないんだか…」


「そろそろ客人がいることに気付いてほしい」




「こ、こんにちは」


ナツミの挨拶にリプレは「えっ」と拍子抜けたような声を出す。
そしてすぐに状況を確認したのか、顔を真っ赤に染めた。


「み、みっともないところ見せてごめんなさい!!すぐにお茶を入れて来ます!!」


そういうとリプレは隣にいたガゼルの腕を掴み、台所へと消えて行った。
強制的に台所に連行されたガゼルを見てレイドは苦笑いする。

「気を悪くしないでくれ。お客が来るなんて滅多にないことなんだ。さて、まずは君たちが居るこの世界がどこなのか知りたいだろ??」


四人は黙って頷く。


「【リィンバウム】。この世界はそう呼ばれている。そしてここはリィンバウムの中央北にある【サイジェント】という街だ。聞き覚えはあるかい??」

「…いいえ」

「そう、だろうな」



ハヤトの言葉に「やっぱりか」とでも言わんばかりの表情をするレイドの横でエドスは頭の上に?マークを浮かべている。

「すまない、きちんと説明しよう。おそらく君たちは別の世界から【召還術】でこの世界に呼び寄せられたんだ」

「召還術…、ですか??」

「あぁ、君たちの世界ではどうか分からないが、リィンバウムでは召還術と呼ばれる魔法がある。尤も、使えるのは召還師と呼ばれる人々だけなんだけどな」


聞き慣れない単語にイマイチイメージが湧かない四人にエドスが「怪しげな格好をした偉そうな奴らさ」と簡単な説明をしてくれた。


「おそらく君たちが見た死体が、君たちをリィンバウムへ呼んだ召還師たちなんだろう」


ナツミはあの残酷な光景を思い出した。
まるで焼き殺されたように真っ黒になって横たわっていた召還師たち。もし自分たちが召還されたせいでああなってしまったのなら少なからず罪悪感が浮かんでくる。


「あの召還師たちが死んでしまったのは、あたしたちのせいなんでしょうか…」

「いや、それは違うと思うぞ。きっと儀式の途中で事故でも起きてしまったのだろう。」

「エドスの言う通りだ。君たちは何も悪くはない。これからのことを考える時間も必要だろう。今日はここに泊まって行きなさい」


レイドの言葉で会話が途切れた。
ちょうどそのタイミングで来たリプレたちが台所から戻って来た。ふてくされた表情のガゼルからお茶を受けとる。ナツミはコップから手に伝わる温かさがまるでここの人たちのようにも感じた。

そして、ナツミはゆっくりとそのコップを唇へと運んだ。



[25194] プロローグ  夜会話
Name: ガイナ◆60df9431 ID:bbae2f4b
Date: 2011/01/22 20:23
「なんだか色々あって頭が混乱しそう…」


その後、四人は左右に二段ベッドがある八畳ほどの部屋へと案内された。
夕飯の誘いも四人は断った。これからのことも考えないといけないし、なにより疲れたいたためだ。
そして夕飯を食べずに風呂へと入り、ナツミは今こうして二段ベッドの下でくつろいでいる。


「ナツミ、部屋にいたのか」


部屋のドアを開けて入って来たのは肩からタオルをかけたハヤトだった。
そのままナツミの上へのベッドへ階段を登って行く。


「アヤとトウヤは??」

「アヤは風呂でトウヤはレイドさんと話してるよ」


そのままハヤトはベッドの下にいるナツミに問いかけた。


「なぁ、ナツミ。これからどうする??」

「どうするって言われてもね…」



予想もしなかったハヤトの弱々しい言葉にナツミはびっくりした。


「俺さ、こういうのって漫画やアニメだけの話だけだって思ってた」

「うん…」

「でもさ、今起こっているのは現実のことなんだよな。ここで寝て朝を迎えても自分の家で目を覚ます訳じゃない。目覚ましても俺たちはリィンバウムにいるんだよな」


ハヤトの口から聞こえる不安な言葉の数々――…。
正直自分でもどうすれば良いのかなんて分からない。


「やっぱり元の世界に帰りたい??」

「そりゃあな。ナツミは帰りたくないの??」


鼻で笑ってそう言うハヤトに勿論ナツミは否定する。


「ならさ、四人で力を合わせて早く元の世界に帰れる方法を探そうよ!!レイドさんたちも居ることだし、絶対見つかるよ」
「そう…だよな。何かしら行動しないと始まらないもんな」


ナツミには見えないけどハヤトの表情を想像出来る。
今の現実を前向きに捉える表情が。


「なんかありがとな」

「いういえ、みんなで絶対に帰ろうね!」

「あぁ!んじゃおやすみ」

「おやすみ~」


それから無言になった。
滅多に聞かない幼なじみの弱音や不安。正直ナツミはびっくりした。
でもそんな時にこそ飛ばされた四人が励ましあえれば良いと思う。
それにレイドさんやここの人たちもいる。
元の世界に帰る方法はきっと見つかる。



(あたしもそろそろ寝よう…)



こうしてリィンバウムでの始めての夜を終えた。



[25194] 第1話  最初の戦い
Name: ガイナ◆60df9431 ID:bbae2f4b
Date: 2011/02/09 22:36



「朝ご飯どうだった??たいしたもの作れなくてごめんね」


朝食を終え、机の上を拭くリプレが申し訳なさそうに言った。

でもここまで美味いご飯は久々に食べた気がする。
ナツミはリプレは料理が得意なんだなと感心した。


「いえ、全然美味しかったです。ごちそうさまでした」


「そりゃあただで飯食わせてもらってんだから、味の良し悪しなんて言える訳ねぇよな」



アヤにトゲのついた言葉でガゼルが返し、四人は黙り込んだ。



「ガゼルっ!!憎まれ口叩く暇があるなら薪割りでもしてきなさい」

「へいへい、そうさせてもらいますよ。ケッ!!」


舌打ちをして出て行くガゼルをリプレは睨みつけて見送ると慌てて四人に頭を下げた。


「ごめんなさい!!あいつきっと拗ねてるのよ。いつまでもガキだから…」


ぶつぶつと文句を言うリプレ。
でもガゼルの言っていることを否定は出来ない。


「良いんです。気にしないでください」

「あ、何か僕たちに手伝えることありません??」
「えっ??あ、良いわよ、そんなに気を使わなくても。」


そこまで言うと一回区切り、リプレは「これからのことを考える必要もあるでしょ」と付け加えた。
四人は顔を見合わす。その四人を代表してハヤトが口を開いた。


「…なら、悪いけどそうさせてもらうよ」

「ううん、全然気にしないでね。何か用があるならあたしは台所にいるし、レイドやエドスもまだ出掛けてないはずだから部屋に居ると思うよ。でもガゼルには近づかない方が良いかもね…」

「今行ったら斧で殺されそう…」



そう言ってナツミが苦笑いする。

リプレと話が終わり、四人は一度部屋に戻ることにした。
部屋に入り、四人は丸くなって机を囲むように座り込む。


「とりあえずこれからどうするか話そう」


先に口を開いたのはハヤトだった。


「どうするかって言ってもね…」

「簡単に帰れる訳じゃなさそうですし…」



ナツミとアヤの発言に四人は黙り込む。



「昨日の夜にレイドさんから話を聞いたんだ。レイドさんは『元の世界に帰る方法は召還師に聞くと良い』って言っていたんだが…」

「あいにくみんな死んじまったんだよな…」


確かに帰る方法を聞くなら呼んだ召還師たちに聞くのがベストだろう。
だが、四人を呼んだ召還師たちは誰も生き残っていない。

再び考え込み、始まった沈黙を破ったのはアヤの意外な発言だった。


「あのー、ガゼルさんのところへ行きませんか??」


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