2011年2月10日21時51分
大阪大医学系研究科の研究費不正使用について、調査結果を発表し、謝罪する調査委員会の西尾章治郎委員長(右端)ら=10日午後、大阪府吹田市の大阪大、筋野健太撮影
大阪大学大学院医学系研究科の森本兼曩(かねひさ)特任教授(64)が、文部科学省などからの科学研究費を私的に流用していたことが大阪大の調査でわかった。大阪大は10日、6年余りで総額約4100万円の不正使用が判明したとする調査結果を公表。そのうち、少なくとも450万円余りを私的流用と認めた。自分の家族の海外旅行費用などにあてていたという。大阪大は近く、研究費をだまし取ったとして森本特任教授を詐欺容疑で告訴する。懲戒処分も検討する。
研究費の不正使用が判明したのは、森本特任教授が昨年3月まで教授を務めていた環境医学講座の研究室。大阪大の調査委員会は2004年4月から6年2カ月分の資料を調べ、関係者に聞き取りをしてきた。
その結果、研究員のカラ出張1328万円、森本特任教授のカラ出張362万円や海外出張で事前の届け出と違う413万円、さらに家族が使うブルーレイ・ディスクプレーヤーなど架空伝票操作での物品購入1593万円、タクシー代335万円など不適切な使い方をした分も含め計4176万円を不正使用と認定した。この間に受けた研究費は計約2億2500万円。不正支出は森本特任教授の指示や認識のもとで行われたとした。
研究室では、カラ出張などで不正に蓄財した裏金を森本特任教授が代表と記された通帳で管理。口座から少なくとも717万円余りが森本特任教授に渡っていた。森本特任教授はこうした金や出張費を使って、米国や2度のイタリア出張の際に家族を同行させるための旅費などに私的に流用していた。業者への預け金の残高も362万円あった。
調査委に対して、森本特任教授は「カラ出張は手続きミス。海外出張に家族を連れて行ったのは研究の手助けのためで、当時は不正という認識はなかった」と主張。3900万円を大学に返金した。森本特任教授から辞職願が出されているが、大学は受理していない。
さらに大阪大は昨年10月、ほかの研究室でも不正支出がないかについて全研究者を対象にアンケートを実施。複数の研究室で不正支出があったことがわかった。今のところ、研究費の私的流用は認められていないとしている。
ビール製造用の特注大型鍋、「パロディーコンドーム」などの遊興用避妊具、「近代ヤクザ肯定論」などの書籍……。適正な研究費の支出として大学が認めた物品の中にも、不可解な物品が多数あった。調査委によると、森本特任教授は「鍋は健康飲料を作るため」などと説明したという。しかし、研究室の関係者は「ビールの製造を指示された。教授の趣味で研究とは無関係だった」と証言。避妊具については行方がわかっていない。(坪谷英紀、木村俊介)