まずここまで読んでくださった皆様に感謝を申し上げます。
正直、皆様がいなかったらここまで書くことはできなかったでしょう。
本当にありがとうございます。
ここまでで17話もかかってしまいました。
17話です。長かった。
当初の予定ではもっと早くここまで来る予定だったのに……
よって少しはしょる、ペースを今後あげる予定です。
もしわかりにくいとうございましたが、感想などで伝えてくださると嬉しいです。
さて今後ですが、佐藤大輔氏の「信長征海伝」、「新・信長記」と話の流れが一緒になるところがあります。
最初から氏の作品の続きを書きたいということで始めました。
パクってますのでよろしくお願いします。
17話は批判が多かったことを受けまして少々プロットの変更を行うつもりです。よって矛盾が生じます。17話ではこういっていたのにここでは違うという場面があると思います。ご了承ください。17話を書き直せばいいのですが、それよりも続きを書きたいと思います。時間ができたら17話も書き直したいのですが今のところ難しいです。それでも大本は変わらないといいますか、大部分は変わりません。
長くなりましたが、今後も続読してくださると嬉しいです。
感想、評価もお待ちしております。
18話 本能寺の変
1582年 天正9年 皇紀2242年
「あ、いやー、殿のご賢察通りでありーます。動き出しましたぞー」
「動いたか、引き続き頼む」
石川五右衛門の報告を受け取った俺は胸が高まるのを隠すことはできなかった。
俺は今、花の都、京都に来ている。もちろん観光などではない。
本能寺の変で死亡する織田信長を助けようとしているのだ。
そもそも関が原の戦いは豊臣家と徳川家の戦いである。織田家が生き残った場合、関が原の戦いが起こる確率は圧倒的に低くなる。
俺が島流しにされる事もなくなるであろう。
もちろん織田を生き残らせるということは俺が織田家で生き残っていかなくてはならないことを意味する。
織田家は前世でいうブラック企業だ。生き残るのは過酷を極めるだろう。
そのためのガレオン船であり、西洋馬なのだ。信長に媚を売りまくって生き残ってやる。
多大なリスクは生じるが男なら一度は考えてみたことがあるのではないか。
織田信長が生き残っていた場合、日本はどうなるのか、産業革命、植民地競争、第2次世界大戦、これらに遅れることもなかったのではないか。
この夢を実現することができる。やらいでか!!!
関が原の戦いを有利に進めることも考えた。
時間を考えれば、俺が宇喜多家を今のように無理やりでなく、しっかりと掌握することができる。
しかし、こういう展開にありがちなのが時間の修正力である。戦国自衛隊のようになってしまってはたまらない。
よって、低リスク、高リターンを望める本能寺に賭けたのだ。
「皆、準備は良いか?」
俺は後ろを振り返って声をかける。
全員白装束である。
目は血走り、いまにもはちきれそうである。
1万の軍勢を500で防ごうとしているのだ。
狂わないとやっていられない。
ここでは狂っていることが正常なのだ。
「おおおっー」
後ろから怒号が鳴る。
「大丈夫です。後は殿の号令を待つのみです」
「うむ、よくやってくれた。行長。良くぞ兵を損なわず京まで連れてきたな。」
これらの兵は忠家が毛利方面に行く前に頼んでよりすぐりの精鋭を集めてもらった。
もちろん京まで行軍したわけではない。
信長に謀反の疑いをかけられてしまっては元も子もないのだ。
よって兵を小部隊に分け、ある者は商人、馬借に、ある者は乞食に身をやつし京まで入ったのだ。
10人単位の小部隊を京まで別々の経路を使い、あらゆるものに変装させ、3ヶ月の時間を一杯まで費やした。
武器は輸送した。鉄砲を中心に岡山から京まで瀬戸内海を通って船で運んだのだ。
ほぼ全員に鉄砲を支給してある。戦国時代で鉄砲の有用性に気づいた大名の1人は俺の親父なのだから、俺は少してこ入れするだけでよかった。(ライフリングはまだまだであるが)
こうしてここ、京にいる。
これはいうほど簡単なことではない。
兵というのは大人数で固まって行軍しないと落伍者、脱走兵などで壊滅することも珍しくない。
いくら精鋭揃いとはいえ500もの兵をここまで来れたことは奇跡に近いだろう。
もちろん小部隊ごとに隊長を決め、徹底的に脅し、褒賞を約束するなどあらゆる細工を施した。
それでも向こうを出発したときと比べて、兵は3分の2ぐらいになっている。
京で何をするかまでは兵には教えていなかったので計画が漏れる可能性は多分ないだろう。
これは信じるしかない。
それでも小西行長の功績は大きい。
「どーのー、明智光秀の部隊、2つに分かれましてーござーいますー」
五右衛門が息を切らせて再びやってきた。
「きたかっ! 一方は妙覚寺の信忠様に向かうのだな」
「そのようです。斉藤勢およそ千が妙覚寺でござーいますー。我々の方は明智秀満率いる三千でござーいます。」
「危ういな」
織田信忠を救出するための別働隊は山中鹿之助が率いている。
本能寺は今ある五百のみで対抗しなければならない。
五百対三千、しかも向こうには光秀率いる主力が残っている。多分1万程度だろう。
部隊を2つに分けるか……
いや、兵力の分散は各個撃破につながってしまう。
「行長、いい案はある? 兵を2つに分けた方がいいかな?」
「殿、いっておきますが私もこれが初陣なんですよ。あまり期待しないでいただきたい。
兵を分けるのはあまり良くないかと。ただでさえ人数が少ないのですから」
俺も小西行長も今回が初陣である。
今回の作戦は俺の横暴で行った。小西行長も、山中鹿之助も当初は反対した。
俺が最後まで責任を取らなければならない。
腹をすえなければ。
俺は胸に手をやる。
お香から貰ったお守りがそこにはあった。
京に出立する前にお香には「戦に行ってくる」とだけ伝えてあった。
お香は悲しそうな顔をしたあと、出立前にお守りをくれたのだ。
「八郎様の無事を祈っています」
悲しそうな微笑とその言葉で送り出された。
よしっ! 心を奮い立たせると、地図を取り出す。京の地図だ。石川五右衛門に命じて書かせて置いたのだ。
もともと京を中心に活動していた石川五右衛門だ。期待以上の綿密な地図となっている。
「妙覚寺は鹿之助に任せよう。今更変更しても仕方ない。で、ここが本能寺」
俺は地図の一点を指差す。
そこから地図を右側までなぞっていく。
「で、今我々がいるところがここ」
「光秀はどのように進行している?」
五右衛門のほうに話を振る。
「斉藤勢は鴨川上流方面から周ってくるでございます。秀満はそのまままっすぐ本能寺に向かってくるでございますー」
俺は言われたとおりに地図に書き込んでいく。
となると我々が秀満と相対する前線はここらへんか。
前線になるであろう位置に線を引く。
「行長。お前は急いで信長様にお会いし、謀反の旨を伝え、脱出しろ。俺が時を稼ぐ」
「ですが……」
俺は続きを遮った。
「逃走経路を作ったのはお前だ。そのほうが確実だ。俺は何とかなる」
無理やり口端を上げ、笑いを作る。
「わかりました。殿、ご無事で」
行長はすぐさま本能寺に向けて馬を駆け出した。
「五右衛門、変化があったら早急に教えろ」
「あいー。わかりましたー」
五右衛門も再び敵情視察に向かうために駆け出していく。
「よしっ、早急にこの位置まで移動するぞ。我に続け」
歴史は変化する。ゆっくりと、着実に。
日の本から始まった波はやがて激流に変わっていく。
夜の幕は今開始されたのだ。
完全な奇襲だった。
「敵は本能寺にあり」
この言葉を聴いたときは奮い立ったものだった。
逆を返せば敵は本能寺までいない。
この根底をくつがえされてしまった。
初めは味方の兵が暴発したのだと思った。
先発隊として送り込んだ足軽が次々と倒れていった。
鉛球が秀満自身の下へ届いたとき、初めて気づいたのだ。
「鉄砲隊! 前へ!」
動揺を押し殺して叫んだ。
「はなてぇぇぇぇ」
大きな身振りをしながら言い放つ。心と体を切り離す。何度も戦場を駆け抜けるうちに身についたことだった。
味方の鉄砲が轟音を放つ前に、敵の銃撃によって幾人かが倒れる。
うめき声を上げているが今はほうっておくしかない。
うめき声を上げたいのはこちらの方だ。と叫びたいがどうしようもない。
すでに引き返せないところまで来ている。
我らが大将明智光秀はすでに反逆ののろしを上げた。
今更、どうすることもできない。
信長の首級をあげないかぎり生き残ることはできない。
たとえ事前に謀反がばれていたとしても。
奇襲は受けたものの手勢はまだある。
敵勢は全員白装束で決死の覚悟をしている限り、少数なのであろう。
勝機はある。
今は本能寺これのみだ。
相手は廃屋で簡易な遮蔽物を利用している。
が、時間がなかったのだろう。
あまりできは良くない。
1箇所突撃できるであろう地点を見つける。
時間との戦いだ。
「鉄砲やめ! 鋒矢!」
鋒矢とは「↑」の形に兵を配置することである。陣形の1つだ。
上の部分で敵に突撃する。突破力に高い陣形の1つである。
一斉に隊形が整えられていく。
「目指すはあそこだ。すすめぇぇぇ」
遮蔽物の合間に向かって突撃を敢行する。
遅れを少しでも取り戻さなくては。こんなところで戦っている場合ではない。
「すすめぇ!すすめぇ!」
焦りは声となり部下を叱咤していく。
「レッツゥ! パァリィィィィィィ!」
不意に前方から声が聞こえた。敵の大将か? まだ声が幼い。
轟音が響いた。
左右、前方。三方向から一斉に響く。
はめられたっっっっ!
気づいたときは遅かった。
左右の兵が倒れていき。意識が遠くなるのを感じた。
「本能寺が落ちました」
斥候が戻ってきて報告した。
「信長は! 信長の首はあったのか!」
「焼けているためしかとわかりませぬが、南蛮の甲冑の遺骸が見つかりました」
「案内せい」
京は夏真っ盛りである。
夜といえども盆地特有の気候は肌にべたつく暑さをはなっている。
さらに人間の焼けた臭いが合わさり、不快感を倍増させている。
それでも今はその不快感を全く感じなかった。
俺が天下人だ。
俺が王だ。
何度も信長にこけにされ、屈辱を受けた。
殺してやろうと思ったことは一度ではない。
そもそも奴には天下人などもったいない。教養も、戦術も、私の方が上ではないか。
信長が勝っていたことは、生まれながらの地位、それだけだった。
それだけで私があのような下劣なものの下につかなくてはならなかった。
それも、もう終わりである。
白装束の軍勢が出てきたときはこれまでか、とも思ったが、どこの軍なのかもわからなかった。
先鋒を叩いただけで消え去ってしまったのだ。
まぁそれもよい。
このような夜に不可解なことはつきものだ。
なんにせよ。俺がこの国の王であり、天下人であり、大名だ。
現場に着くとすでにある程度人が集まっていた。
「どけ! どけ!」
声を張り上げて人群れを掻き分ける。
そこには1つの焼死体があった。
確かに信長独特の南蛮甲冑をつけている。
横にはもう1つの死体があった。
こちらはあまり焼けていない。
顔にも見覚えがあった。
「森蘭丸か」
光秀は呟いた。
「ふはははははははっ くはっ だははははははっ かはっ ふひぃ あーはっはははっは」
奇怪な笑い声が満ちた。
「第六天魔王かっ あはっ ひーひひひひひひ。」
笑い声はこの日途切れることはなかった。
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