テレビが独占する音楽著作権利益の実態(3)

作曲家 穂口雄右

近年、音楽出版社や著作権管理業務に対する批判が相次いでいるが、音楽業界の片隅にいる者としては、テレビ局を中心とする放送系の音楽出版社の存在に問題があるのであって、プロダクション系を中心とする一般の音楽出版社については、一部を除いてほとんどど問題がない。またJASRACについて言えば、一部に天下り体質が残っていることと、テレビ局系音楽出版社の役員がJASRACの役員を兼任していることをを除けば、運営状態も良好であり改革も徐々に進んでいる。

最大の問題はやはりテレビ局系音楽出版社の力が強大になったことである。

欧米ではテレビ局が音楽著作権を持って収益を得ることを禁止している国が多いが、その理由はおおむね次の通りである。

  1. 音楽の大口使用者であるテレビ局が権利者の立場を兼ねることは、実態として著作権使用料の大幅な値引きを意味する。
  2. テレビのプロモーション力を駆使することで不正競争状態となり、音楽著作権者間の公正な競争を阻害する。
  3. テレビが保持する音楽作品に偏った放送が行われることで、本来適正に選択されるべき作品の放送機会が減少し、結果として音楽文化の健全な発展が損なわれる。
  4. テレビがその力を後ろ盾にして、音楽著作権の部分譲渡契約を迫った場合い、本来の音楽著作権者はその力関係から契約の締結を拒むことが難しい。

以上のように、放送事業者であるテレビ局が音楽出版社を持つと、音楽情報の伝達構造からしても当然のように市場の独占が発生する。したがって、もしもテレビ局に対して、音楽出版社の保有を認めるのであれば、他の音楽出版社各社に対しても放送事業者としての認可を与えるべきである。さもなければ、音楽出版社間の不正な競争状態が加速すると断言できる。

しかも日本には、音楽を放送したときの音楽著作権の使用料が極端に安いと言う現実がある、先進諸国の1/3から、場合によっては1/5である。これは日本の音楽著作権管理の仕組みが、放送事業者の介入を許しながら取決められてきた歴史によるところが大きい。そして現在もなお、テレビ局系音楽出版社の役員がジャスラックの役員を兼務して影響力を行使しているのである

テレビ局系の音楽出版社の中には、系列のテレビ局との番組タイアップをことさらに大きく宣伝して、自分の会社と契約することの有利さを強調しているケースもある。番組タイアップは、プロダクション系の音楽出版社にとっては、それこそ懸命にプロモーションをしてやっと獲得できる性質のものであるから、このような強調は、まさにテレビ局系の音楽出版社が如何に不正な競争を助長しているかを端的に表している事例である。

テレビ局系の音楽出版社は、独占禁止法および不正競争防止法をもって近々に規制すべきである。

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