2011年2月10日13時35分
【モスクワ=副島英樹】ロシアのメドベージェフ大統領が9日、北方領土の実効支配を軍事・経済両面で一層強める意向を明言したことについて、イタル・タス通信は同日夜、「大統領は事実上、領土問題をめぐる日本との今後の対話を閉じた」と報じた。ロシア側は駐留部隊の装備刷新やインフラ整備など領土開発の予算増額の方針を次々と打ち出し、かつてないほど態度を硬化させている。
領土問題を巡っては、「北方領土の日」の7日、菅直人首相が大統領の昨年11月の北方領土訪問について「許し難い暴挙」と発言、ロシア側が「非外交的だ」(ラブロフ外相)と強く反発していた。前原誠司外相の11日の訪ロを目前に、より強硬なロシアの態度を誘発する結果となった。
ロシア国防省筋は9日、国全体の兵員削減など軍改革を進める中で、北方領土では駐留部隊は規模を維持し、装備更新を進めると強調。駐留地のインフラ整備にも資金投入すると述べた。さらに、極東を拠点とする太平洋艦隊に将来配備予定の仏ミストラル級強襲揚陸艦について、「南クリル(北方領土)の防衛にも使われる」と明らかにした。
一方、9日に大統領と会談したバサルギン地域発展相は、北方領土開発に約180億ルーブル(約500億円)を見込むクリル諸島社会経済発展計画(2007〜15年)について、さらに130億ルーブル(約360億円)の追加投入が必要だと指摘。空港や道路整備▽発電や通信▽住宅建設▽水産振興を優先課題に挙げた。