2011年2月9日21時8分
米国の格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスで日本国債の格付け責任者をしているトーマス・バーン氏が9日、記者会見した。菅政権が6月までにまとめる「税と社会保障の一体改革」が実現できなければ、日本国債を格下げする方向で見直す考えを示した。
ムーディーズの日本国債の格付けは2007年から3回格上げされ、現在は「Aa2」。21段階のうち上から3番目だが、先進国ではイタリアと並ぶ最下位だ。
バーン氏は会見で、政府の狙い通りの経済成長率を実現できても、「(政権が掲げる)基礎的財政収支(プライマリーバランス)の20年度の黒字化を達成できない」と指摘した。「4、6月に発表予定の社会保障制度と税制改革の内容をみながら、格付けを精査したい」という。
菅政権は4月に社会保障改革、6月に消費増税の具体策を示す予定だ。バーン氏はこれらが実現できなければ「格付けのマイナス要因になる。格下げの可能性を示唆することがありえる」と答えた。早期に衆院が解散された場合も「格付け上マイナス」と明言した。いずれの場合も、格下げの検討に入ったことを公表するなどの措置をとることを示唆した。
日本国債の格付けは、米国の格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が民主党政権の財政再建の実行力を疑問視し、1月下旬に「AA」から「AAマイナス」に1段階引き下げた。ムーディーズも格下げの可能性を示唆したことで、財政再建に対する市場の見方は一層厳しくなるとみられる。(大日向寛文)