初恋バレンタイン















    俺が朋と初めて会ったのは、あいつの兄貴の洋平の所に遊びに行った時だ。
    兄貴の洋平とは全く似ていない、ちっちゃくて華奢で大人しそうな朋に、俺はひと目で興味を持った。
    よく見ると朋は、その辺に居る女なんかメじゃないぐらいの可愛い顔をしていた。
    大きな瞳がいつも怯えてるみたいにつやつやに濡れてるのを見ると、ウサギを思い出して堪らない気持ちになった。
    しかもブラコンである兄貴の洋平による過保護のお陰で、メチャクチャ素直で清楚な性格をしているらしい。
    聞けば聞くほど俺好みだ。
    女には全く不自由していない俺だが、男を相手にすることもたまにある。
    稀に、俺好みの綺麗だとか可愛い奴が男でも居るからな。
    そんなワケで男相手の経験もそれなりに積んでいた。
    見れば見るほど朋を手に入れたくなったが、敵もさる者。
    洋平の奴は常に目を光らせていて、俺が朋に近づくチャンスを徹底的に奪いやがった。
    朋は朋で、俺を見かけると小動物みたいにさっと逃げちまう。
    だから俺はなかなかあいつに近づけないで居た。
    だがそんなある日、俺がいつものように洋平の家に遊びに行った時、何とか奴を酔い潰す事に成功した。
    音楽をガンガンにかけても起きないぐらい酔っぱらってやがる。ざまあみろ。
    真っ赤な顔で机に突っ伏した奴を他の奴らに任せて、俺はこっそりと朋の部屋に近づいた。
    さて、どうやって喰っちまおうか。
    最初からハードなのはマズイかもな。まずはソフトに責めるか。
    ニヤニヤしつつ朋の部屋をノックしてみると、返答が無い。
    勝手知ったる他人の家。俺は無造作にドアを開いてみたが、お目当ての朋は部屋に居なかった。
    舌打ちして階段を降りてみると、かすかな水音が聞こえてくる。
    もしかして入浴中かよおい。
    シャワーを浴びている姿なんぞ想像して下半身が反応しそうになる。
    いきなり風呂場に乱入するのはヤバいか、さすがに。
    仕方なく煙草でも吸いながら、朋が風呂から上がってくるのを待つことにした。
    しかし風呂とは都合がいい。やっぱ俺は運が良いな。
    さぁ、早く出てこい。



    お待ちかねの朋は風呂から上がると、そのまま俺の居る台所へとやって来た。
    俺を見て一瞬硬直しやがったが、取り敢えず逃げなかった。
    相変わらずツヤツヤした黒い瞳で、肉食獣を前にした小動物みたいに俺を警戒するように見つめてる。
    「お前、洋平の弟か。」
    何喰わぬ顔をして聞くと、朋が素直に頷く。
    そして冷蔵庫からペットボトルを取り出すと、俺の前でこくこくと音をたてて飲み始めた。
    ずいぶんと俺を意識して緊張してんな。
    頬が湯上がりの薄いピンクから赤に変わってるぜ。
    俺がじーっと見てるせいか、朋は飲んでいたジュースでむせてしまって咳き込み始めた。
    「大丈夫か」と声をかけると、苦しそうに潤んだ瞳で俺を見上げてくる。
    間近で見た朋は濡れた唇がすげえ柔らかそうだし、身体も折れそうなぐらい華奢で肌も綺麗で、何と言っても湯上がりの石鹸の匂いが格別だった。
    いや俺ってば好きなんだ、石鹸の香りってやつ。
    最近の女は湯上がりでも香水とか付けてやがるから興ざめしちまうんだよな。
    ああもう堪らねえ。
    思わずぎゅっと抱き締めると、腕の中で朋が必死に暴れた。
    そんな無駄な抵抗も可愛くて、首筋に味見がてらキスしてやる。
    んー、こりゃウマイ。女顔負けのしっとりすべすべな肌してんじゃねえか。
    思わずちゅっちゅと音を立てて吸い付く。
    俺が喜んでいると朋が泣きそうな顔になっちまって、よけいに俺の下半身に火が付く。
    まずは抱くか。
    でも台所でエッチなんぞしていたら、いつ邪魔が入るか分かんねえな。
    俺は震える小さな身体を肩に担ぐと朋の部屋に向かい、ベッドの上でヤツを抱くことにした。
    いつもその辺で立ったままとか青姦でも平気な俺としては珍しい事だった。
    なんせ朋はその辺の女よりも華奢だから、一応俺としては気を遣ったつもりなんだぜ、これでも。
    念願の朋とのエッチに、俺はいつもより興奮していたらしく、フェラもしてもらってねえのにギンギンに硬くなっていた。
    俺のムスコを見た朋が怯えた顔をする。これだけデカえりゃ当然か。
    少しぐらいは痛いかもしれねえけど、それに負けないぐらい気持ちヨクしてやるぜ。待ってろよ、朋。
    わくわくしながら俺は朋にむしゃぶりついた。
    俺の期待通り、朋の身体は感度も下の具合も最高だった。
    抱いてる間中「お兄ちゃんお兄ちゃん」って助けを求めるのも可愛くて、ついつい腰の動きも激しくなる。
    俺の下で泣く朋は、潰れるんじゃないかと思うぐらい小さくて可愛くて、どこもかしこも綺麗だった。
    嫌がってるかと思えばキスを大人しく受け止めるし、これは脈有りか?
    俺は嬉しさの余り、息苦しくなるほどキスしまくった。
    セックスが終わった頃には、俺はすっかり朋を気に入ってしまっていた。
    「よかったぜ、お前。また今度可愛がってやるからな。」
    耳元で優しく囁いてやると、朋は腕の中で震えた。
    初めての経験が怖かったのか、朋はなかなか泣きやまなかった。
    ま、最初は誰でも怖いもんだ。
    これからじっくりと馴れさせてやろうと、俺は楽しみに思っていた。






    そうして始まった朋との関係は、飽きっぽい俺にしては意外と長く続いていた。
    女相手なら抜かずに6発とか平気でする俺も、華奢な朋を相手では1回が限度だったが、それでも朋の身体にはかなり負担になるようだった。
    たった一回しただけで子ウサギみたいに震えてベッドで動けなくなってる朋の姿を見ると、らしくもなく気分が落ち込むんだ。
    もっと優しく抱いてやりゃ良かったってな。
    だから抱く度に、とろけそうなぐらい優しくじっくりと可愛がるようになっていった。
    2回目以降、朋は俺に抱かれても抵抗しなくなった。
    そればかりかセックスの最中に誰にもバレないように、声も上げないで一生懸命耐えてくれた。
    そんな健気な受け止め方が可愛くて、ついつい用も無いのに洋平の家に遊びに行っては朋を抱いた。
    俺がいつも朋を抱くのは朋の部屋でだった。
    女みたいに適当な場所で抱くのは、朋相手では何故か気が引けちまうんだよな。
    なんせあいつは弱々しいからな。
    本当は学校ででも抱きたいぐらいなんだが、そんな事をすれば朋がよけいに怖がるかと思って何とか我慢してやった。
    その代わりに身体の付き合いのある女に、学校でも手を出しまくって憂さ晴らしをした。
    そうでもしないと、偶然見かけた朋に襲いかかっちまいそうだった。
    学校で見かける朋は、ベッドの中と同じくらい可愛かった。
    俺にはほとんど見せてくれない愛らしい笑顔を、惜しげもなく他の奴らに見せてるのには正直腹が立って、ついその夜に夜這いをかけて朋に八つ当たりをさせてもらった。
    すると怖がった朋が心底怯えて泣いちまって、さすがの俺もちょっとばかり後悔した。
    ようやく泣きやんだ朋を見てると、やっぱり学校でこいつを抱くのはダメだと痛感した。
    エッチした後の顔が可愛すぎる。
    こんなもん誰にも見せられるか。この顔は俺だけのモンだ。
    本当なら教室で教卓に乗せてガンガン突くとか、保健室で朋の上に覆い被さってパイプベッドごとギシギシ軋ませまくるとか、体操服を着せたまま騎乗位で突き上げるとか、そんなプレイも堪能してみたかったんだが、何とか我慢する俺は本当に偉いと思う。
    そんなある日、俺が朋を抱いてる所をとうとう洋平に見られちまった。
    ヤツは怒り狂って俺を殴り飛ばし、俺もあいつをぶっ飛ばした。
    喧嘩をする俺達を見かねて朋が洋平に取り縋ると、ブラコンのあいつはすぐに喧嘩を止めた。
    泣く朋には洋平も勝てなかったらしく、ヤツは渋々俺達の事を認めたようだ。
    まぁ洋平になんぞ認められなくても、俺は朋を手放す気は無かったが。
    洋平は性格もサッパリしてるし俺とも気が合うが、愛する弟が絡むと話は別らしく、奴は何かと俺に突っかかってくるようになった。
    全く友達甲斐の無いヤツだと思いながら、「あんなに可愛い弟じゃしょうがねえか」とも思う。
    あの顔であの声で「お兄ちゃん」とか呼ばれりゃブラコンにもなるだろう。
    何度も何度も抱いているうちに、ようやく朋は俺にも慣れてきたみたいだった。
    抱くと泣くのは相変わらずだったが、俺にぎゅっとしがみついてくるようになった。
    「兄貴より俺を好きになれよ。」
    そう言い聞かせると素直にこくんと頷いた朋が可愛くて、つい2回目に突入しそうになったが何とか耐える。
    俺がついさっき出したばかりの精液を伝わせた細い足が、行為の余韻でかすかに震えていたからだ。
    女より扱いにくいコイツの身体を、俺はなぜか大事にしたかった。
    どうしてそう思うのかは、よく分からなかったが。
















    ある日、同じクラスのヤツから良いエロビデオがあると言って貸してくれたのが、最近流行の妹モノだった。
    暇つぶしに眺めていると、結構ソソられるモノがある。特に台詞がイイじぇねえか。
    「お兄ちゃん」と画面の中の女が言う度に、俺の頭には朋の顔が浮かんだ。
    朋の洋平への呼び方も「お兄ちゃん」だからだ。
    普通、男兄弟の呼び方は「兄貴」が相場だろうが、朋に限っては可愛いから許してやろう。
    だいたい変声期も過ぎてるのに、ちょっと高めで甘い声してんだよな、朋は。
    あの声でエッチの最中に「お兄ちゃん」とか呼ばれたらとグッときそうだ。
    試してみる価値は有るな。
    翌日、我慢出来なかった俺はいつものように朋の部屋に忍び込んで、「お兄ちゃん」と呼んでくれと頼んでみた。
    訝しそうにしながらも朋は素直に呼んでくれた。
    案の定、すげェ興奮した。
    自分の弟を犯してるみたいな気分だった。
    もし俺が洋平だったら、もっと早くに朋を抱けただろうな。
    などと洋平が聞いたら怒り狂いそうな事を考えながら、俺は朋の中でイった。
    イメクラなプレイがこれほど燃えるものだとは思わなかったぜ。
    味を占めた俺は学校で、気まぐれで抱いた女に「お兄ちゃん」と呼ばせてみることにした。
    勿論、脳裏にうかんでるのは朋だ。
    まるで朋を抱いてる気分になって、しかも女相手で手加減もせずに犯れたとあって、そこそこ満足することが出来た。
    そんな風に日々を楽しんでいると、突然朋からの連絡がいきなり途絶えた。
    「もう先輩とは会えません」というメールが届いたきり、いくらメールを送っても返答が無い。
    携帯電話にも出ない。
    家に直接訪ねて行っても、どこかに雲隠れして居なかった。
    俺はらしくもなく苛立っていた。
    こんな真似を付き合ってるヤツにされるのは初めてだ。
    どうして朋は会おうとしないんだ。
    何か怒ってるのか?
    俺がもう嫌になったのか?
    いや、そんな筈はない。アイツは俺を好きなんだから。
    あの石鹸の香りの残る身体を抱きたくて抱きたくて、気が狂いそうになる。
    もう他のヤツではダメだった。






    テンパった俺は学校で俺から逃げ出そうとした朋を、そこらへんの用具室に連れ込んで乱暴に犯した。
    今までは絶対にしなかった行為だ。
    獣のようにがむしゃらになって朋を抱き終えた俺は、久しぶりの朋とのセックスに満足していた。
    相変わらず朋の身体は抱き心地が良い。泣き顔も可愛い。
    やっぱり朋は俺のモノだと安心していると、いきなり朋が俺を殴った。
    俺は昔から短気で喧嘩っ早くて、今まで喧嘩した奴らを何人も病院送りにしてきた。
    そんな俺を、か細くて弱い朋が殴った。
    だがカッとして拳を固めたのは一瞬だった。
    殴られた頬の痛みより、俺を恐怖させるものが目の前にあった。
    俺を見ない朋だ。
    全身で俺を拒んでる姿に、俺は怯えていた。
    いつも俺が無茶なことを言っても許してくれた朋が、もう俺を受け入れてくれない。
    「殴って――・・・それで、僕を忘れて・・・全部、無かったことに・・・」
    殴れって言うのか、俺に。お前を。
    想像するだけでゾッとする。
    俺はプライドも何もかも投げ捨てて、朋を抱き締めて縋った。
    聞けば朋は、俺が他の奴らと付き合っていることに耐えられなくなったらしい。
    「僕以外、触らないで。僕だけのものになって、なんて、そんなこと・・・叶うワケ、ない・・・」
    そう言って泣いている姿を見ていると、どうしようもない嬉しさが湧いてくる。
    今まで何も言わなかったコイツが、一生懸命俺を独占したいって言うのが、何故か滅茶苦茶嬉しかった。
    こんな気持ちは俺だって初めてだ。
    関係を持ったヤツが恋人気取りで俺を独占しようとしたり嫉妬すると、今までの俺は嫌気がさしてソイツをあっさりと切ってきた。
    それなのに、朋が言うとどうしてこんなに嬉しいんだ。
    「分かった。他の奴らとは手を切る。」
    俺はあっさり言って、目の前で電話をかけ始めた。
    付き合ってた奴らに片っ端から電話して、別れることだけを淡々と告げてゆく。
    未練がましく泣いたりわめくヤツも居たが、俺は最初からソイツらにはちゃんと身体だけの関係でしかないことは言っていた筈だ。
    朋は―――朋とは最初は曖昧だった。
    可愛くて、物珍しくて手を出しただけだと思っていた。
    どうやらそれは違ってたみたいだと、ようやく俺も気付いた。
    俺はどうやら、弱っちそうですぐ泣くコイツを好きになっちまったらしい。
    関係を持った他の奴ら全部を引き換えにしてもいいぐらい、朋が欲しかった。
    電話を終えた俺は、もう一度朋の身体をマットに押し倒した。
    朋が俺に望んだように、俺だって朋に望みを叶えて貰わないとな。
    もう我慢しねえから覚悟しろ、朋。
    きょとんとしていた朋も俺の愛撫を受けて、一生懸命応えようとしてくれる。
    相変わらず泣きながら。
    そんな泣き顔や泣き声に下半身は煽りに煽られて、腰の上に乗せて下からガンガン突き上げたり、押し潰さんばかりに上から覆い被さってズンズン突きまくったり、今まで出来なかったことを取り敢えず一通りしておいた俺だ。
    終わった頃には朋はもう指一本動かせない状態で、俺の精液で全身を濡らしていた。
    壊れちまうかと思わず青くなったが、そんなに柔ではなかったらしい。
    俺を見つめて柔らかく微笑んでくれる。
    「先輩、好き・・・」
    「ん、俺もだ。」
    「好き・・・先輩・・・大好き・・・」
    繰り返しうっとりと呟く朋のこめかみに、俺はちゅっと口づけてから囁く。
    「俺も好きだぜ・・・朋。たっぷり愛してやるから覚悟しろよ。」
    こうして俺は多くの遊び相手を失って、たった1人の可愛い恋人を手に入れた。
















    恋人が出来ると、それにちなんだイベントは見逃せない。
    特にバレンタインという大イベントは。
    「おい、朋。バレンタインはチョコは要らねェからな。用意すんなよ。」
    「え・・・?」
    突然の俺の言葉に、腕の中の朋は困った顔をしていた。
    俺は甘い物が嫌いで、いくらビターチョコでも食う気がしない。
    毎年、バレンタインで貰うチョコは全てゴミ箱行きだった。
    だが朋がくれるとなると話は別だ。
    朋から貰うものを捨てるのは嫌だった。
    「その代わりにもっとイイもん、くれよ?」
    「う、うん。頑張って考える・・・」
    そう言いいながら今からもう悩み始めたらしい恋人を、俺はぎゅっと強く抱き締めた。
    きっとバレンタインまでの間、朋の頭の中は俺のことでイッパイだ。
    ニヤニヤしながら俺は次の計画を練る。
    まずはセフレだった明日香に電話して、頼みがあると打ち明けることにした。
    『なによ、もうセックスしないって言ったのはあんたでしょ?』
    「ああ、用事はソレじゃねえんだ。頼みがあるから聞いてくれ。」
    『もうー・・・勝手ね、相変わらず。それで、何?』
    怒った様子もなく聞いてくる。
    さっぱりとした性格の明日香は顔も身体も極上で、かっての俺のお気に入りだった。
    こいつになら朋の事を話しても大丈夫だろう。
    「チョコってどこの店が美味いか知ってるか?」
    『え?』
    「チョコだ。チョコ。お前のオススメを教えろよ。ついでに店にも連れて行け。」
    1人で買いに行くのはさすがの俺も嫌だからな。こいつを道連れにしてやる。
    『あんたがチョコって・・・一体どうするのよ?』
    「バレンタインに贈るに決まってんだろ。」
    『はァあ!?あんたがぁ?!』
    おっ。驚いてやがるな。
    『この前言ってた本命の子にあげるってワケ?』
    「そうだ。アイツも男だから、チョコを貰えば喜ぶだろうと思ってよ。」
    『はぁ〜・・・本気でその子のこと好きなのね。浮気者で遊び人のあんたが・・・ねぇ・・・』
    呆れたようで感心したような声で呟いてるな。
    俺だって自分がこんな真似をするなんて思ってなかったぜ。
    だが朋は甘い物が大好きなんだ。喜ぶ顔を見たいじゃねえ?
    俺は案外マメな男だったらしい。
    『いいわよ、付き合ってあげる。』
    軽くOKして、明日香は俺をチョコの美味しい店に連れて行ってくれた。
    店に付き合わせたバイト代として、明日香の買ったチョコの支払いまでさせられちまったが、まあいいだろう。
    これで2月14日を待つばかりだ。俺は心底楽しみだった。











    「坂崎先輩!」
    朋が嬉しそうな顔で駆けてくる。
    バレンタインの今日、俺は朋と一緒に帰ろうと誘っておいた。完璧だ。
    俺の部屋について来た朋は、俺がどれだけチョコを貰ったのか気になっていたらしく、そわそわしつつ鞄を探るように見つめてた。
    「先輩・・・チョコ、たくさん貰ったの?」
    「ああ。お陰で今日は呼び出されまくって告白まみれの一日だったぜ。」
    「そう・・・なんだ・・・」
    少し悲しそうな顔でうつむく朋を、俺は強引に抱き寄せた。
    そうして耳元に唇で触れる。
    「お前はチョコはいくつ貰ったんだ?」
    「せんぱ・・・くすぐったい・・・っ」
    「ほら、早く言えよ。」
    耳朶が敏感に感じることを知っていて、俺はキスを繰り返す。
    ふわふわなんだよな、こいつの身体はどこもかしこも。
    しかも何でこんな甘い匂いがしやがるんだ。男のくせに。
    「えっと・・・お母さんから1つと、先輩から2つ貰った・・・」
    「はぁ?先輩だぁ!?誰だソイツは!」
    寝耳に水とはこのことだ。
    一体どこのどいつが俺より先に、こいつにチョコをやったんだ。
    ぎりぎりと歯噛みしながら抱き締める腕に力を込める。
    「に、2年の知らない女の人だけど・・・別に付き合ってとかそんなことは言われなくって、その・・・可愛いねって・・・」
    顔を真っ赤に染めた朋は凶悪に可愛い。
    女と聞いて少しホッとしたのは、女ならコイツを無理矢理手に入れたりはしないだろうと思ったからだ。
    「そのチョコは食うなよ。いいな。」
    「えっ、なんで?」
    こいつは本気で分かってないらしい。
    「お前・・・俺が居るってのに他の奴からのチョコを食うってのか!?」
    俺は抱き締めていた身体を少し離すと、野獣のように吠えた。
    「そんなぁ・・・僕、チョコ好きなのにぃ・・・」
    うるっと瞳を潤ませて、朋は今にも泣きそうだ。
    朋は甘い物が大好きだから、かなり酷い意地悪な事を言ってんだろうな、俺は。
    だが、こればっかりは譲れないぜ。
    睨んでやる。
    「ひどい、先輩・・・それに、先輩だってチョコ貰ったんでしょう?僕だって本当は、先輩にチョコをあげたかったのに・・・」
    「俺は甘いモンが嫌いだって知ってるだろう。貰ったチョコは全部ゴミ箱行きだ。」
    「でもでも、僕もあげてみたかったんだ。好きな人に・・・あげるのって、初めてだから・・・」
    そんな風に恥じらって言うと、チョコじゃなくて別の初めてのものを捧げるみたいに聞こえるぞ。



    「・・・あっ、チョコの代わりにプレゼント用意したんだった。ちょっと離して、先輩。」
    仕方なく腕を離すと、朋はバッグから包装された箱を取り出して、小さな手で俺に差し出した。
    包み紙を破って箱を空けると、中には十字架のシルバーが付いたストラップが入っていた。
    「それ、携帯に付けて欲しいなって思って・・・」
    「ん。なかなかイイ感じだぜ。サンキュー、朋。」
    礼と共に素早くキスをお見舞いしてやるとさっきまで泣きそうだったくせに、俺のキスでもうにっこりと笑いだした。
    現金なヤツだ。
    「すごくすごく悩んだんだけど、結局それにしちゃった。ほんとはバイトとかして、もっと良いものをあげたかったんだけど、お兄ちゃんが絶対駄目だって言って・・・」
    バイトなんぞ俺だってさせるつもりはない。
    そんな暇が有るなら俺と会え。
    「だからお年玉使って買っちゃった。先輩、大切に使ってね。」
    「分かった。お前だと思って大事にするからな。」
    「あとで僕が携帯に付けてあげるね。」
    俺も今まで女から色々なアクセサリーを貰ったが、そうした物から奴らの独占欲を感じてうんざりして、いっさい身には付けなかった。
    どれだけ高価な物であってもだ。
    だが朋が贈ってくれたものは、それとは全然違うんだよなぁ。
    安いとか高いとかどうでも良くて、こいつが俺に選んでくれた事が何より嬉しい。
    携帯ストラップか・・・洋平に見せびらかして目一杯自慢してやるぜ。
    おっとそうだ、俺もせっかくのチョコを渡すか。
    机の上に置きっ放しになっていた包みを手に取り、それで朋の頭をポンと叩く。
    「俺からの愛だ。受け取れよ。」
    「え・・・・・・?」
    朋はポカンとした表情で俺を見上げた。
    何を渡されたか全然分かってねえな、こいつ。
    「早く開けろって。」
    「う、うん。」
    朋は丁寧に包み紙を取り除くと、そおっと箱を開けた。
    中身を認めた瞬間に、ただでさえ大きな瞳がさらに大きく見開く。
    「これってチョコ!?どうしてっ!」
    「勿論、お前のために俺が買って来てやったんだ。どうだ嬉しいか?」
    「先輩が・・・?僕のために・・・?」
    「おう。チョコ売場ってのはスゲエもんだな。ありゃもう戦場だぜ。」
    「・・・・・・・・・・」
    思わずチョコ売場で女どもが群がる光景を思い出していると、朋が無言で黙り込む。
    訝しく思って見下ろせば、ぽろぽろと涙を流す朋が。
    「ちょい待て朋!なんで泣くんだお前が!?」
    「だってだって・・・先輩がくれる、なんて思わなかったから、僕・・・嬉しく、て・・・っ」
    とうとうしゃくりあげて泣き始めた朋の頬を包み込む。柔らかですべすべでふわふわだ。
    「泣いてないで1個ぐらい食ってみろよ。」
    「うんっ」
    朋は素直にチョコを1個取り出すと、小さい口の中に放り込んだ。
    もぐもぐする様はまるでリスかハムスターだ。
    「わぁ・・・これすごく美味しい!」
    「そうか、良かったな。それじゃ、俺もたまには甘いモンに手ェ出してみるか。」
    「先輩も食べてみる?それじゃ、これとか――・・・ん・・・っ」
    柔らかいピンクの唇に口づけて、チョコの残る舌に俺の舌を絡ませる。
    わざとちゅっちゅと音を立ててキスしながら、細い腰を抱いてベッドに運ぶ。
    さぁ、本格的に甘いモンを頂くぜ。
    舌なめずりする俺を、朋はうっとりした顔で見つめてた。






    仰向けになった朋の足を胸につくほど上げさせて、俺は上から腰を揺さぶる。
    俺のものを呑み込んだ場所からローションが溢れ、濡れた音がいやらしく響き、その音で一層俺のものが猛っていた。
    肌を打ちつける音が響くほど、激しく腰を使って朋を責めると、羞恥に染めた頬に涙を伝わせて朋が泣く。
    苦痛で泣いているワケじゃないと知っているが、念のため聞いておくか。
    「朋、気持ちイイか・・・」
    「い・・・い・・・ン・・・っ」
    覆い被さって突き上げながらキスすると、苦しげに口を開いた。
    背中に腕を回して抱き締めると、そのまま朋の身体ごと俺は起き上がった。
    座り込んだ膝の上に朋を乗せる。勿論繋がったままだ。
    「やっ・・・痛・・・!」
    「こうすると根元まで入るだろ。感じるか、奥で・・・朋?」
    「あ・・・やだっ、動か、ない・・・でっ」
    動くなと言われても無理に決まってんだろうが。
    きゅんと締め付けてくる熱い体内の感覚に、腰の動きが止まらない。
    おまけに向かい合わせに抱き締めたおかげで、朋の薄い胸のちょこんとしたピンクの乳首が、俺の胸をすりすりと擦る。
    めちゃくちゃイイ。最高。
    その上、正面には朋の絶品の泣き顔だ。
    辛抱たまらなくなった俺は乱暴にキスしながら、下から突き上げるように腰を揺さぶり続けた。
    「朋・・・ッ」
    散々ズンズンと下から突き上げまくった後で名前を呼んで、朋の中に全部注ぎ込む。
    もう全部俺のもんだな、こいつは。いっそのこと女みたいに孕んじまえばいいのに。
    そうしたら朋をもっと俺のモンに出来るんだがな。
    まぁ、今でも充分頭から爪先まで俺のモンだけどよ。
    そんなしょうもないことを考えている間、俺の胸に顔を伏せた朋はじっと大人しくしていた。
    「今日は泊まって行けよ。」
    「でもお兄ちゃんが帰って来いって・・・」
    「洋平だって女とバレンタインを過ごしてるんだ。お前だって、もう大人だろう?」
    「う、うん・・・」
    洋平が本当に女と過ごしているかどうかは知らんが、俺のバレンタインの邪魔をするなら容赦はしない。
    「明日はここから一緒に学校に行こうぜ。な?」
    その言葉に朋は顔を輝かせた。
    こくこくと頷く朋に、俺は数え切れないほどのキスをしながら、また華奢な身体をベッドに押し倒しながら覆い被さる。
    勿論、腰はゆっくりと動かしながら。
    繋がった場所が、さっき中で出したものが擦れ合って濡れた音を立てる。
    「やっ・・・だめ、先輩・・・」
    「俺のタンクはまだ満タンだぜ、朋。」
    「・・・あっ・・・また、大っきく・・・っ」
    朋を相手にしてると回復力も早いんだよな。朋の中ですぐに大きくなっちまった。
    さて今日は何回出来るか楽しみだ。今までの記録を更新してやるぜ。
    そんなワケで明日は学校に行くのは無理かもな。朋は。
    洋平の怒った顔が頭に浮かんだが、一瞬で消えた。
    あとはもう獣に成り下がって朋を喰らい尽くすだけだった。

















    終わり





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