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【暮らし】

ギャンブル依存  発達障害がある場合も

2011年2月10日

発達障害がある人のギャンブル依存について話すワンデーポート施設長の中村努さん=広島市で

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 「ギャンブルにのめり込んでいる人の中には、発達障害の人がかなりいる」。こんな見方が、ギャンブル依存者の回復を支援する専門家の間で認識され始めた。入所型の回復施設「NPO法人ワンデーポート」(横浜市瀬谷区)は、発達障害がある人に合わせた回復プログラムを実施し、成果を上げている。 (白井康彦)

 「発達障害の知識を持たずに運営したのは間違いだった」。ワンデーポート施設長の中村努さんは、一月中旬、広島市で開いたシンポジウム「依存問題を発達障害から考える」で率直に反省の言葉を述べた。

 ワンデーポートの設立は二〇〇〇年。開設後四年ほどは、入所者全員を「依存症」として支援してきた。その後、「発達障害がある人がギャンブルにはまっている場合、依存症という概念で考えない方がいいと分かってきた」という。

 病的なギャンブル依存者の多くは、パチンコや競馬などのギャンブルに金をつぎこみ、家族が借金を肩代わりしても、またギャンブルにのめり込んで借金を膨らませる。やめたくてもやめられず、本人が犯罪に走ったり、家族が崩壊したりする例も少なくない。

 アルコール、薬物などの依存症の人の回復に向けては、当事者たちによる定期的なミーティングがよく実践される。仲間の体験談を聞く中で、自らの行動を反省し、ブレーキを利かせる試みだ。ギャンブル依存にも、定期的なミーティングに取り組む「GA」と呼ばれる団体が各地にあり、ワンデーポートも、ミーティングを回復プログラムの柱に据えてきた。

 そうした中、中村さんが気づいたのが、想定外の反応を示すギャンブル依存者の存在。「通常のミーティングに繰り返し参加しても変化がなく、のほほんとした印象の人たちがいる」

 神奈川県の三十代男性Aさんもこのタイプだ。小学生のときから一つのことにこだわる傾向が強く、同じものばかり食べたり、ゲームに異常に熱中したり。忘れ物が多く、整理整頓も苦手だった。高校二年のとき、パチンコに熱中。大学卒業後、就職したものの、スロットにはまって借金をつくり、退社した。

 その後は仕事をせず、スロットで勝つことに集中。それなりの収入になる時期もあったが、結局、借金が膨らみ、病院で「広汎性発達障害」と診断された。〇八年六月から約一年間、ワンデーポートに入所。発達障害の人を対象にしたミーティングに参加した。

 ワンデーポートは、社会性やコミュニケーション能力が乏しい発達障害の人も回復できるようにと、〇八年から、従来のミーティングのほかに、発達障害の人向けのミーティングを定期的に開いている。発達障害の人だけが集まり、その人なりのペースで自分と向き合える。Aさんはその後も、ミーティングに通い、今は平穏な生活だ。

 さいたま市の浦和まはろ相談室代表で、精神保健福祉士の高沢和彦さんは「発達障害があって、自立した社会生活を営みにくい人が、ゲームに熱中するような感じで、パチンコやスロットにはまるケースが多いのではないか」と推測。その上で、一般的なミーティングに参加しても「他者の話を聞いて共感するといった力がないので効果が出にくい。他の参加者から『やる気がない』などとみられやすい」と説明する。

 中村さんや高沢さんは、発達障害があるギャンブル依存者には、独自の回復プログラムが必要だとして、「自分たちが気づいたことを少しでも伝えていきたい」としている。

◆各地でシンポ 

 ワンデーポートは、13日午前10時15分〜午後4時、横浜市瀬谷区二ツ橋町の瀬谷公会堂で10周年フォーラムを開く。無料。20日午前10時〜午後4時には、富山市安住町のサンシップとやまで、発達障害とギャンブル依存をテーマにしたシンポジウムを開く。参加費2000円。問い合わせはワンデーポート=電045(303)2621=へ。

 

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