2009年8月25日

犬の去勢・避妊についての賛否両論 (1) - オス編

240809_castration1

尻尾を高く上げて小刻みに振り、背中の毛はブラシのように立ち...未去勢のオスに出くわすと一瞬にして緊張感が体に現れるうちの犬、でも決して視線は合わせないのが問題回避のコツらしい。

散歩に出て道端で見知らぬ犬と出くわしたとき、よく性別についてまず聞かれる。

「女の子?男の子?」「オスです」「去勢してる?」「してません」「ああ、じゃあダメだわ」...

相手の犬もうちの犬と同じ未去勢のオスだった場合、多くの飼い主が「ダメダメ」といってリードを短く持ち、犬が思い切りリードを引っ張って唸り続けているのもお構いなしに大きく迂回してずんずん通り過ぎようとする。

しかし未去勢のオス犬同士だからといってどんな状況でも必ず争いになるかというと、そこまで犬は単純ではない。ただ、お互いの犬がリードに繋がれている状況では去勢如何よりもその「状況」がまず物を言うから、例え飼い主がダメと思っている状況でも時間をかけてちゃんと仕切ればダメではなくなるのにねぇ...残念。

もしもお互いノーリードの状況にいるならば迂回させるまでもなく、そして去勢・未去勢にかかわらず社会性の養われた犬同士ではそれぞれ適当な折り合いをつけ、大事には至らない。

囲いのない場所でノーリード(=中立で自然な状況)で未去勢のオス犬同士が出会った場合、まずはお互いに尻尾をピンと上げて小刻みに振り背中の毛を立てて緊張感を示しているが、くるくると3回くらいまわった後には周囲にマーキングしあって、それで「今日はこのくらいにしておいてやろう」といった風な雰囲気でお互い別々の方向へと別れるというのが自然な状態での「オトナ」の犬の行動だ。これが若く勝気なオス犬だとその経験の浅さからこのプロセスを省略してついルール違反しがち、飼い主は痛いペナルティーを負うことになる。

そして「毎回これではかなわない」ということで飼い主はペナルティーを負う前に愛犬の去勢を考えるのだった。

You're going to cut off my what?

[Photo by merfam]

去勢のメリット

世の中の男性群の多くは同性として飼い犬の去勢に対しかなり同情するようだ。気持ちは分からないでもない。

オス犬の攻撃性を抑えるために取られる手段として「去勢」がある。オス犬では雄性ホルモンがオス犬同士の争いを引き起こすとし、睾丸を除去することでそのホルモンの分泌を下げ、不必要なトラブルを回避しようという「同性への競争心からくる攻撃性」への対策法である。去勢されたオス犬はその名の通りいが取りられ傾向として大人しくなる。

攻撃性の対象が他のオスに限った場合、去勢の効果の程を統計で見てみると、去勢の前にくらべ他のオスへ攻撃性を示さなくなった例はどの調査も約60%、去勢したオス3頭のうち2頭(厳密にはそれ以下だが)は改善されたということになり、残り1頭は期待はずれということに。

ちなみに攻撃性の対象がヒトだったりフード争いや恐怖感が攻撃性の原因であった場合には去勢の効果を期待するのはまず間違い。これらの攻撃性においては性が原動力ではないから去勢による改善は見られないのだ。

去勢による他のオス犬への攻撃性抑制の効果は去勢されるオスの年齢によって変化し、加齢とともにその効果の程は低下する。

そしてオス犬の持つ攻撃性対策よりなにより、安易なあるいは予定外の望まれぬ交配を避けることができるのが去勢の第一のメリットであり、特に動物保護の面において重要な意味合いを持っている。

獣医学的には前立腺肥大症睾丸腫の問題が回避されるほか、肛門嚢炎糖尿病などに罹る確率が減り、小型犬のオスに見られがちなハイパー・セクスアリティー(過剰な性行動)の対策としても度々取られる手段である(もっともこの場合、まずは躾による行動矯正が行われるのだが)。

雄性行動が強く見られるオス犬では性を原因とする攻撃性とあわせ、ヒート中のメス犬への興味による極度のストレスが去勢により軽減されるのも事実だ。これまでメスと見ればすべて自分のもののように振舞い恋の季節の度に食欲不振に陥っていたオス犬が、去勢されたことで雄性行動が低下しまるで新しい世界を発見したかのように興味の対象が遊びへと移り変わっていった例は珍しくない。

Lost His Manhood

[Photo by Many Cat 4 Me]

去勢のデメリット

未去勢のオスと去勢済みのオスが出会った場合、「ほとんど匂いも嗅がずにすれ違う」「尻尾を上げて緊張し、未去勢のオスに出会ったときと同じような反応を示す」「未去勢のオスが去勢済みのオスの臭いを執拗に嗅ぎ、マウンティングしようと追い回す」といっただいたい3つのパターンに別れ、3つ目の反応は明らかに去勢によるデメリットに数えられる。去勢済みのオスは多くのオスにマウンティングをされることで劣位を強要され、精神的に大きなストレスとなり鬱状態に陥ることが意外と多い。

幼少期に去勢をするといつまでも仔犬のような振る舞いが残ることもあるが、これが良いか悪いかは飼い主の受け取り方にもよるだろう。仔犬っぽい行動だけならまだいい、中にはヒステリックな性格になるオスもいる。

また性ホルモンは犬の体の成長に影響するため、早期に去勢されたオスでは骨格が弱めであったりフェミニンな様相になることもあり、また骨肉腫甲状腺機能低下などの疾患率の上昇も数えられているほか、食欲の増加により肥満傾向を示す犬も多い。

Volunteers Assisting

[Photo by Mr. P from Panama]

発展途上国での動物保護ボランティアによる野良犬の避妊・去勢ステーション。悪循環を防ぐため、まずは元を断つのが必須。

去勢の決定の理由には往々にして社会への影響が優先されていることが多い。もっとも殺処分される犬の数や保護にかかわるヒトの労力などを考えるとそうそう望まれぬ交配に気を許してはいけないのは納得、なにしろレスキュー団体においてはあまり甘いことは言っていられない状況なのだから。

しかし、もしも付け加えるならば性への興味の強さは個体によって異なり、またそこには飼い主の管理意識も関わってくるということを言いたい。だって犬だもの、オス犬同士少々争いがあるのは当たり前(それを許容するかしないかは程度によるけれど)、でも未去勢のオス犬皆が皆トラブルを起こすかというとそうではないわけだし、去勢による健康面へのリスクがゼロでもないという事実をどこかないがしろにして、すべてのオス犬にただ去勢を押し付けるのもどこか可笑しなものだと私は感じる。

決定を下す前にとにかく、去勢のメリットとデメリット、そして愛犬の性質もしっかりと見据え、飼い主として何ができるかもう一度考えてみたいというわけだ。

次回はメスの避妊についてのお話を。

生態・行動」カテゴリーの記事

京子アルシャー」の新着記事

コメント

確かに微妙なこのテーマ…コメントするのを迷いましたが賛否両論ですもんね、書かせていただきま〜す。

アルシャーさんのスタンスは見て取れますし、このテーマには個人それぞれに考えがあるのも納得できます。ただ情報発信の場としてとらえるなら、もう少し中立的な内容を期待していました。言葉尻を捕らえるつもりは全くないのをわかっていただきたいのですが、獣医学的なメリットとデメリットの取り上げ方や表現(太字含む)にはどうしてもアルシャーさんの主観が感じられます。
犬種の違いや個体差はありますが、未去勢のオス同士が問題なく同じ空間で過ごしているのも私には普通の光景です。逆に、因果関係はあるとしても去勢したオスだけに記述のような疾病が顕著に増えているとも思いませんし、劣位を強要される場面こそ飼い主の管理があればなくなるものですよね。
発展途上国やレスキューの場を別にすれば、すべての犬に去勢を押し付けている社会があるとも思えません。

メスの場合はもっとデリケートな話になると思いますが、楽しみにしています。因みに私は去勢・避妊(手放し)賛成派ではありません(笑)

う~ん、微妙ですね~。

私が犬を飼う理由は、唯一つ。

「殺処分される犬を1頭だけでも救うこと」です。

なので、捨て犬しか飼わないし、「もし、万が一のこと」を考えると、去勢避妊は絶対なのです。

ところで停留睾丸の場合は、去勢を勧めますか?
(今の犬がそうでした。)

我が家の♂のベンは人間には誰にでも触ってもらいいろいろな場所に可能な限り一緒に出かけていたので人間には誰とでもどんなところを触られてもOKで安心ですが、雄の特に柴犬のオスに挑まれると自分も反応するので2歳の時には去勢したほうが良いのではと悩みました。大抵の方は去勢するのが善でしないのは良くないというほうが大半でした。最後にかかりつけのドクターのところに行き、去勢をしたほうが良いと思うのでと相談したら、この子はおとなしくて家の中で暮らしていて問題ないのだから一年に何回かいくドックラン等は親が気をつけていればいいのであってしなくても良いのではないかと言われた。特に去勢をしたから♂同士のトラブルがないかと言えばケースバイケースでどちらともいえないといわれて辞めたのです。ガン等の病気等は悩むところですが、太りやすいリスク等を天秤にかけると我が家はしてなくても良かったほうです。ただ去勢避妊は飼い主の愛犬の性格や生活環境でやれば良いと思う。ちなみに母ラブ×父紀州犬の32kgのmixです。

京子さん、こんにちは。

医学的な立場での去勢・避妊の是非、ずっと知りたいテーマでした。

私が良く聞く話は、病気の予防に去勢・避妊をするのが当り前という考えです。
まことしやかに浸透しています。

昔は放し飼いが普通で、いつの間にか子犬を産んでいたから、無計画な繁殖の予防にも必要だ、という話も聞きます。

うちに犬を迎えたばかりの時は本当に悩みました。
ですが、友達の犬が乳ガンの予防に避妊をしたのに悪性骨肉腫になって死にました。
避妊をした友達の犬が献血をした時、暴れるので麻酔をしたのですが、友達が犬を麻酔から目覚めさせたら酷くモウロウとしていたので、もう麻酔するような事は出来ないと言ってました。
去勢していても喧嘩を売る犬も多いなと感じます。
去勢していなくても穏やかな犬も居ます。

一般的に言われている去勢・避妊の必要な理由がまるで現実にそぐわないと感じ、うちは避妊してません。

もっと犬との共存には何が必要なのか、考える必要があるなと感じます。
しつけやコミュニケーションで大体は解決するのだから、人間はもっと上手に犬と付き合う術を磨く必要が有るなと感じてます。

多頭飼いで、いちいち見てられないという環境の場合は避妊・去勢も必要かもしれませんが、一家に一頭若しくはメス同士・オス同士の組み合わせなら、もっと選択肢が有っても良いと思います。

メスの避妊のメリット・デメリット、楽しみにしてます。

先代の犬が未去勢オスでした。
 拾ってきた成犬雑種、ヘタレでビビリ。誰に対しても、空気を舐めるような動作の、究極のカーミングシグナルを出す子。
「どんなメスにも肘鉄砲を食わされるだけだし」と去勢しませんでしたが、思えばマーキングが大変でした。(臭いも心持ち強かったような。)
 今の日本の都市生活で、マーキングは飼い主さんの悩みの種になりそうですが、そこの効果はどうですか?

 先々代は避妊メスの柴犬。所謂柴気性に加え、後ろ足を上げてマーキングして回る巴御前でした。
 今は生後半年で避妊したメスのビーグル雑種。
 マーキングどころか、外で排便排尿したくない派。ややビビリで、他犬には穏和に控えめに尻尾を振ります。
 ただ、骨格の肩幅が狭く頭も足も細く、胴が太く長いウナギ犬(笑)に見えます。
 巷説にあるように、避妊後のメスは「擬似オス化」するのか、単なる個性か?
 メス犬もホルモン減少により骨格形成に影響が出るのか? 回避したいなら避妊を何歳まで待つべきか?
 次回の話に取り上げていただけたら嬉しいです。

僕も出会い頭で相手犬の性別や年齢を確認しますが、それは同性が相手の場合に避けるのが目的ではありません。 その情報によってトラブルの予測を立てることはありますが、それを踏まえたアプローチを試みます。 仰る通りに、本来であれば時間を掛ければ場は収拾がつくのですが、残念ながらそれが出来る飼い主ばかりではないのが実情です。

この記事での去勢の1番の理由、ちょっと驚きました。 オスの攻撃性云々が問題であるというならば、初めから温厚気質な犬種を選んだり、メスを選べば良いのでは? と、これだけで問題に至らないケースもあるかと思います。
日本では一般的に、外飼いの犬はオスが好まれ、室内飼いの犬はメスが好まれる傾向があると言われています。 前者は子犬が産まれないから。 後者はマーキング行動をされないから。 などという安直な理由です。 

ちなみにうちの犬は去勢をしていますが、理由は発情期のストレスを軽減する為です。 去勢・避妊は倫理に反するという意見もありますが、犬という動物を繁殖淘汰して完成させてきた行為がすでに倫理に反しているとも言えます。
繁殖という分野はその道のプロが行うべきで、一般飼い主が安易に首を突っ込むべきではないと僕は考えているので、自分の犬に関しては交配させることは一切考えていませんでした。 日本の多くのオス犬は、未去勢であっても生涯交配をすることなく過ごします。 世の多くの男性はオス犬の去勢に同情しつつも、未去勢でも性欲を満たすことなく生涯を終えるオス犬の気持ちまでは考えていないと思われます。 それが適わぬならば、去勢も有りだろうというのが僕の考えです。

いずれにしても大義名分はありますが、いずれも広義の意味では我々のエゴですけどね。(笑)
結局のところ、手術行為が賛か否かは、その犬が置かれる生活環境と飼い主が考える手術目的により変わると思います。

我が家にはチワワの♂(1歳1ヶ月)がいます。
どんな犬に対してもマウンティングをしていたので、去勢を悩みましたが、かかりつけの先生に相談した結果、去勢はしないことにしました。
停留睾丸で心配なとこもありますが、アレルギー体質なので、麻酔のほうが危険かもしれませんと言われて。

最近は仲良しのダックスに犬社会を教えられたのかマウンティングが激減…というか全くしなくなりました。
マーキングは酷くなりましたが…。
マーキングと望まない交配がないよう外ではマナーベルトが欠かせません。

京子さん、興味深い内容ありがとうございます。

タローの主さんのおっしゃること、本当に同感します。

>いずれにしても大義名分はありますが、いずれも広義の意味では我々のエゴですけどね。(笑)結局のところ、手術行為が賛か否かは、その犬が置かれる生活環境と飼い主が考える手術目的により変わると思います。

若すぎる手術が悪影響を及ぼす事についてはオス、メスともよく聞きますが、私が子犬(オス)を生後9週間目で予防注射につれてっていったとき、獣医さんが、注射の後に「去勢はいつしましょうか?」と聞きました。

要するに「オス」だからと言う理由だけです。

実家では3匹のオスを未去勢で、他の犬と問題もなく飼っていたことから、もちろん、私は子犬を抱えて逃げました。(笑)

難しい問題ですね。
個々の犬によってどのような方法が最も適するかは、本来なら、その犬と暮らしその犬のことを最も分かっている飼い主さんが最もよく知っていることですから。
またそれとともに一般的なメリット、デメリットは、最終的に去勢非妊をした飼い主、しなかった飼い主全てが認識していきたい点でしょう。
しかし声を大にして言いたいのは、メリットデメリットともに一部分のみ取り上げて、安易に飼い主を批判する風潮は如何なものかということです。
やれ虚勢したのは雄の成犬が扱えないからだろう、とか、やれ避妊したのは出血の処理が面倒だったからだろう、かわいそうに大きな手術までして、という心無い発言も現実に耳にします。
どちらの選択を最終的にするにせよ大半の飼い主は犬のことを思って、よかれと思ってしていることだと思います。
いずれの選択も後戻りができず、大なり小なり心が揺れて当然のデリケートな問題ですから、安易な批判は行ってほしくないという思いです。

結論に至るまでの情報は多いに越したことがありません。
このようにして様々な側面からこの問題を取り上げてくださるのは大変有難いことです。

みなさん

たくさんのご意見を頂きありがとうございます。
避妊・去勢の問題は飼い主ならば誰しも一度は頭をめぐらせる問題のひとつ、そしてする・しないの理由はまたそれぞれでいずれも良かれと思って決めることには変わりないと私は思っています。
また、この記事を通していろんな方のご意見が聞けたことは私のみならずこれを読んでくださった皆さんにとって大変意味のあることだと思います。

>しまみさん
停留睾丸についてはちょうどチャンスだったので記事にしてみました。
どうぞご参考ください。
もしもメスの避妊が乳腺腫瘍の危険性を下げるため、とお考えならば停留睾丸の去勢は勧めます。
腫瘍へ変わる危険性は確率のお話になってしまいますので、絶対大丈夫とも絶対危ないともいえないものです。
絶対的な数値からすると腫瘍にならない事の方が断然多いわけですが、もしも腫瘍になってしまった場合、たとえ早期発見でも結局は外科的に除去するわけで、発見が遅れれば転移があるかもしれないし、その先の不安は一気に膨れ上がるわけです。かといってじゃあさっさと取ってしまったら後は安心かというと、それも絶対じゃない。
生きているということはそういうことなのだとも思います。(あ、ごめんなさい、ちょっと宗教的ですかね?)

>ともさん
コメントをいただいて??と思い公開記事を確認したところ、ご指摘の部分に気が付きました。
獣医学的なメリットの疾患名について、下書きの段階ですべて太字にして私なりに公平性を出していたつもりが、公開記事ではシステムエラーでそれが反映されていませんでした。
これじゃあ、ともさんのように感じられる方がいらっしゃるのも無理ないな、というわけですぐに訂正させていただきました。
ご連絡が遅れてごめんなさい。
残念ながら去勢後の疾患発症率の上昇は統計上では顕著に現れているようです。(「メス編」にロットワイラーの例と参考文献を挙げていますのでご参考ください)そして骨肉腫のほかにも同じような傾向を示す疾患がいくつかあります。
劣位の強要による精神的なダメージは現在犬の心理学分野ですでに「自己価値の消失によるノイローゼ」という病的所見に数えられています。他のオスがマウンティングしないようにちくいち飼い主が追っ払えるようでも、とくにこれまで問題なく接してきた成犬オスの場合周りの行動が変化するので犬同士対等に交流が出来ないことで精神的な混乱を引き起こすようです。
私も避妊・去勢手放し賛成派でも手放し反対派でもありません。
犬を見て決めたい、それだけです。(笑)

>ベンのママさん
避妊・去勢の問題に絶対はありません。飼い主の思いと裏腹に犬にとって果たしてどうなのか、よく考えてみたいのです。
メリットとデメリットをただ天秤にかけるだけでなく、オスの場合そこにさらに犬の持つ性格を加味して考えて欲しいと思います。
単純に言えばアルファ気質のオスには去勢による沈静効果は期待します。(それが充分な効果があったかはまた別の話ですが)
しかし、生まれつき劣位の性質を持ち合わせるオス犬では健全な社会的行動を満たすために雄性ホルモンが必要な場面もあります。
この辺の見極めがうまくできればなぁ、なんて思うのです。

>mieさん
麻酔も手術時の一般的なリスクですね。
いつかテーマとしてあげたいと思います。
避妊・去勢の問題以前に犬種の健全性ということも考えたいですよね、犬種によって出やすいとされる疾患とどう付き合ってゆくか、あるいはそれが改善できるものであるのか、これも大きな問題だと思います。

>はじろこちさん
マーキングは一度覚えてしまったら去勢しても頻度が少なくなるだけでその後も続きます。
避妊メスでは避妊後にマーキングを始める犬も多いです。(多いだけで必ずではありません)
未去勢オスでも2頭目3頭目として迎えられた生まれつき劣位の性質の犬ではマーキングが少なかったり、思春期に入ってもなかなか足上げオシッコしなかったりすることもありますよ。
たしかに都市部では犬のオシッコは悩みの種ですが、だからといって去勢の理由にするのは無理がありますね。(笑)

>タローの主さん
「犬を飼いたい」と思ったとき、多くの人は「温厚な犬」や「元気な犬」と楽しく暮らすことを頭に描いているでしょう。しかし、犬を希望する人のうち、どれだけの人が仔犬を見て将来の性格を予想できますか?これは仔犬から飼うことのデメリットのひとつです。
そして温厚な性質をセレクトして繁殖するならまだ良心的、ペットショップの背景を考えるとこれらのことは期待する方が馬鹿みたいですよね。(^^;)
「世の多くの男性は...」これ、同感です。(笑) メスの場合も然りで、単純に自分を投影しがちですね。でも、犬は犬、人は人、犬はそもそも家畜で、どんなに感情移入しても人にはなれません。
人とは違う「犬」という生き物なんですよね。
だから擬人化すれば社会に受け入れてもらえると考えるのはちょっと本末転倒で、犬の本質を無視した自殺行為のような気もします。

>秋さん
停留睾丸は爆弾抱えているようなものですよね、何事もないことが多いけれど、もしも腫瘍になってしまったらその時は手術も麻酔も覚悟です。
ご愛犬のマウンティングは思春期の力試しですね。(笑)多くの犬との経験を積めばいずれは自分の地位を自覚しマウンティングは少なくなります。
マーキングも他のオスと競合する場面が最も頻繁ですけれど、それこそただマナーベルトを付けて好き放題させるのではなく、して良い場所・ダメな場所を教えることも大切です。
犬は飼い主の目が届いていないと思ったらちょっと羽目外すことって多いですからね、小さいからといってあまり見過ごさないよう私はオススメします。(^^;)

>のりこさん
「去勢はいつにしましょうか?」...ありそうですね。(^^;)
本当はその場で去勢のメリット・デメリットをレクチャーしてくれるようであって欲しいと願います。
そのうち遺伝子操作とかで無性個体なんか作られちゃうんじゃないかとドキドキ...(笑)

>Liouさん
心無い発言を気にして去勢・避妊を行わない人は多いですね。彼らはっきりは言いませんが雰囲気からして見て取れます。それで問題なければいいのですけど、問題ある場合は「どうしてそんな見栄を張るのだろう」と少し悲しくなります。もちろん先入観に伴う心無い発言が元なのですが。
回りばかりを気にして愛犬を見ていない、あるいはその逆愛犬ばかりを見て周りを見ていないというアンバランスさはやはり何かの形で歪が生じます。
犬も自分も社会も押しなべて考えることが出来るよう、これからもdog actuallyでいろんなテーマをいろんな方と一緒に考えてゆきたいと思います。
あ、テーマはいつでも募集中でーす。


...すっごく長くなりましたね、ここまで読んでくださった方ありがとうございます。

訂正恐れ入ります。細かいところを突っ込んでごめんなさい。

去勢後の疾病発生率ですが、ロットワイラーを含む骨肉腫の好発犬種でそのような統計が出ているのは承知しています。ただそれを犬種全般のものとして理解してしまう方もいるのではないかな?と。去勢・未去勢に関らずほとんど発症例のない犬種もありますからね。ハウンド等いくつかの犬種では遺伝性も確認されていますね。ロットも確かそうですよね。
また未去勢のオスの肛門腺癌も増えていると聞きます。これまた犬種差は当然ありますし、少なくとも癌はひとつの原因だけで発症するというより複数の様々な要因が積み重なって発症するのだと思っていますが。
アルシャーさんのおっしゃるとおり、犬種や性格等個々の犬をよく見極めることが大切だなと思います。

もうひとつ、避妊に関してですが…副作用としてあげられている尿失禁は、エストロゲン反応性尿失禁のことでしょうか?だとしたら避妊時期別の統計が腑に落ちなくて。もっともエストロゲン反応性については、最近の研究では無関係ではないとしても避妊とは直接的な関係はないという結論が出たというのを読んだですよね。う〜ん(?_?)
気長にお待ちしてます(笑)

大変興味深くお話を読んでおりました。
私もボランティアの方に犬をもらい育てています。そのいぬは
譲り受けるときにボランティアの方が去勢を行ってからとまったく疑うこともなく行動をおこして私に譲渡されました。

今考えるとこの犬のちょっとほえられると尻尾を巻いて逃げる性格から 去勢はしないほうがよかったと後悔しております。やはりほかの犬と対等にうちとけれないのは劣悪な環境で育ったからとかではないような気がします。
日本人は右習えの国で去勢 避妊が声高くいわれてるとそのようになってしまいますが、ほとんどの家庭で放し飼いで 飼ってるところはまずいないし、家の中にいるのだったらまず問題ないと思います。言われるがままにやってしまって皆さん本とに後悔しないよう
お願いします。必ず犬の犬種をみてやるべきです。

それから実家のメス犬は最初避妊といってカプセルを背中にうめ
多分生理の周期をあやつる??方法でかっていたら
10年ごくらい後に体調が瀕死の状態になって病院につれていったら
子宮が何倍にも膨れ上がって膿んでいたとのこと
あわてて全摘出をしました。
病院のいい加減さやほんとに 避妊だけのことしか考えなかった結果だとおもっています。特に外を出回るわけでもなかったので
何もしなくてもよかった気がします。

こんにちは、ペキニーズのオス、3歳を飼ってます。かかりつけの獣医氏に去勢をすすめられて、いま悩んでます。性格の面では、少しわがままであるものの、十分許容できますし、未去勢のオスには、攻撃的ですが、それも一部でおおむね友好的です。前立腺などの癌予防のメリットはわかりますが、こちらの記事など読むうち、本当に必要なのか、不安です。悩みは尻尾が気になるのか、噛んでは自傷する事です。もう少し調べて検討します。有り難う御座います。

こんにちは、3歳のペキニーズ雄と暮らしてます。かかりつけの獣医師に去勢を薦められて、悩んでます。性格は少し我がままではありますが、許容できますし。未去勢の一部の雄には、攻撃しますが、おおむね友好的です。前立腺癌などの予防のメリットはわかりますが、こちらの記事など読むと、本当に必要かと不安になりました。困っていることは、尻尾が気になるのか、噛んで自傷するのです。もう少し調べてみます。有り難う御座いました。

>ともさん
はぁ~...遅くなってすみません...(-_-;)すっかり気長にお待ちいただきました。
骨肉腫のことですけど、好発犬種でのみ統計が上がっているわけではないみたいです。全犬種を網羅した調査は無理ですが、人気犬種なども上がっていましたから好発犬種のみにさらに現れるというのではなく、一般的な危険性が上がるのだと私は理解しています。
また、私の記事で文献内容をすべて紹介するわけには行かないので、詳しい犬種等についてはご自身で読んでいただけるように文献(とリンク)を紹介し、あとは皆さんご自身でご理解いただければと思っています。
肛門腺周辺の疾患に関してはいろいろな要因が関係してくるうち、ホルモンの関与は比較的大きいとされています。それは臭い付けとホルモンに関連があることからもお分かりいただけると思います。
関連性はあるけれど絶対ではない、そこに「個体差」と言うものがあるのです。
だからすべてをひっくるめた表現ってなかなかできるはずないのですよね。なのにそれを理解するのは面倒くさいから、どこか端折って単純明快な理論を作り上げようとする、人間ってほんと怠け者です。(笑)
世の中は白か黒かではなくグレーであるのがほとんど、その部分とうまく付き合えればいいなと思っています。
えーっと尿失禁についてはその発症機序が明確にされていないと言うことですが、結果的に統計として数字に上がってきているので何らかの関連性がある、と見ているのが現状で、治療法としてエストロゲン投与で改善が見られるので「エストロゲン反応性尿失禁」と呼ばれています。
尿道の括約筋の機能低下、尿道粘膜層の組織減退のようなものなどが直接的な病理所見として見られるようです。
エストロゲンによって括約筋の機能が強まるのであれば、エストロゲンの分泌量によって受容体が増えてゆくはずですから1回以上ヒートを経験したメスではエストロゲンの減少により括約筋機能の低下が見られるのは納得ゆくものではないでしょうか?どうですか?(^^;)
人間では更年期を過ぎてから同じような尿失禁症状が出ますよね、これにもエストロゲン投与で軽減します。
尿失禁は避妊したすべてのメスに現れるわけじゃないですから、やはりそこにも個体差関与しますし、まずは研究者の皆さんに避妊手術後の尿失禁統計結果のナゾを解明してもらうしかないでしょう。こちらも気長に待ちましょう。(笑)

>みかさん
動物保護団体はまず「不必要な繁殖が行われないこと」をもって不幸な犬の数を減らすことを目指しますから保護された犬に「去勢をしないで欲しい」といえるのはよっぽどその犬のことを分かった時点でのお話になると思います。
他の雄犬に対する攻撃性よりも「不妊処置」を優先させます。
例えほかの雄犬に対して弱気でも、交尾をすれば犬が増えてしまうわけで、一方で飼い主への管理に対する姿勢が問われるところでもあります。
保護団体では上記の「不妊処置優先」のほか去勢しておいた方が問題が少ないだろう、里親が見つかりやすいだろう、という大まかな計算で行われる場合が多いので、去勢をしていない犬を希望する際には、里親自身も犬を見る目ができていることが大事です。
カプセル埋め込み型の避妊・去勢方法ありますね、オスの場合ですが私の知り合いの犬(超大型犬・2歳)がいまそれをしています。
個体に合った投与量などの見極めができなければ副作用の方も大きく出るとかで、それでも最近のものは改良されたとかなんとか、まだ私は半信半疑ですけどね。(笑)
どこを向いてもリスクはあり、果たしてどれなら自分で負ってゆけるか、それが問われています。

>バタフライさん
ご愛犬はもう3歳ですから、今手術しようがそれこそ前立腺に異常が出てからでもあまり差はないと思います。
それより気になるのは尻尾を噛んで傷つける行為、肛門腺が炎症などを起こしていると尻尾の付け根周辺を気にし噛むことがあります。
上のコメントにも書きましたけど肛門腺と性ホルモンには関係がありますので、もしも何か現れるとしたら肛門腺のほうかもしれませんよ。
脅すつもりはないですけど、そうなれば去勢も意味のあるものになると思います。

手術していない♂と♀、虚勢避妊した♂と♀、4パターンともに飼ったことがあります。
やはり犬の性格と暮らす環境によりフィットするものを選ぶのがベストと思います。

未去勢♀を飼っていた時はヒートが来たらピークの1週間ほどは目を離すときはケージに入れていました。特徴がはっきりした大型犬だったので間違って雑種が産まれたら全て飼わなければという状態で間違いのないよう細心の注意が必要でした。なので逆に完璧な管理が出来る自信があるなら問題なく、♀本人のストレスの心配より飼い主の心労が大きいのが♀の管理と思います。同じ犬種を飼っている知人は謝ってかかってしまい(獣医さんです)6頭子犬が産まれました。完璧な避妊のハードルを越えられるかどうかが♀の場合第一の指標になると思います。
しかし・・・うちの♀にヒートがくる度に近所の犬は一斉に発情・・・遠くの犬は鳴き続け♂へストレスをかけ悪いなと思いました。恐らくその点で一番避妊の価値がある環境でした。

♂も誤った交配を完璧に避ける管理が出来ればあとは性格や近所にヒートが来る♀がいるかどうかなど状況に左右されると思います。

どの道質の良い手術を3才くらいで成熟した年齢で受けられれば犬へのデメリットは少なく感じます。♂にとってヒートのメスが居ても交配できない状況は大変なストレスと見えました。このこと以外は社会化と躾けでも対処可能な幅が大きいと思います。♂でも避妊対策が万全で近所にヒートになるメスが居ない気の弱い子に去勢してもあまりメリットはないように思います。
今後もケースバイケースで見ていきたいです。

コメントを書く


この記事を引用