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詐欺:被害者狙い10億集金 神戸の男「円天」集会で誘う

 疑似通貨「円天」など大型詐欺事件の被害者を中心に投資話や商品売買を持ちかけ、10億円以上を集めたとみられる神戸市の会社役員の男(36)の行方が分からなくなっている。顧客は、大阪や兵庫、広島、石川などの少なくとも数百人。大半が返還や配当を受けていない。男は「確実にもうかる」と勧誘したまま姿を消しており、顧客らは「だまし取られた」と主張。返金を求める民事訴訟が相次いでいる他、一部顧客は詐欺容疑での刑事告訴を検討している。【古関俊樹】

 複数の顧客や代理人弁護士らによると、男は06年春ごろから、投資団体「フラーレン」のコンサルタントとして活動。架空とみられる投資話を持ち掛け、「必ず元本が増える」と約束して金を集めた。顧客については、メンバーが他の大型詐欺事件の集会で事件被害者に声をかける手口で勧誘。知人を勧誘すれば紹介料をもらえる「マルチ」の手口でも顧客を増やしていた。

 しかし08年秋ごろからトラブルが表面化。男に返金を求める民事訴訟が相次ぎ、09年に大阪地裁で1件、昨年は神戸地裁で3件の提訴が確認されている。既に大阪地裁の訴訟は顧客側勝訴の判決が確定しており、「出資金を詐取する仕組みを構築し、詐欺に該当する」と男の詐欺行為を認定した。

 男が集めた総額は明らかになっていない。しかし訴訟の過程で入金先の口座が判明。男は約4年間活動していたが、口座では、わずか1年間で約800人から約3億4000万円を集めており、顧客側弁護士は「少なくとも10億円以上に上るのではないか」とみている。

 毎日新聞は携帯電話や知人らを通じて、行方が分からなくなった男に取材を求めているが、これまでに回答はない。

 ◇耳元で「絶対もうかる」、「FXソフトCD」62万円

 疑似通貨「円天」への投資を募った「エル・アンド・ジー(L&G)」事件(09年に警視庁が幹部を逮捕)。その利用者の集会が07年3月、金沢市内で開かれた。「円天の金は返ってこないかもしれない」。会場で説明があった直後、石川県内に住む60代女性は後ろに座っていた女性に耳元でささやかれた。「絶対にもうかる話がある」。フラーレンへの投資話だった。多額の金を失うショックにうちひしがれた時にかけられた言葉に、女性は引き込まれた。そして400万円以上を失った。「損を何とか取り戻したかったのです」

 エビ養殖事業へ投資する「ワールドオーシャンファーム」事件(08年に警視庁が幹部を逮捕)の被害者も「二重被害」に遭った。広島県の60代の主婦。家族3人でワールドオーシャンファームに約1000万円を投資していたが、知人の紹介でその後、フラーレンの集会に参加し、勧誘された。結局、主婦は一家で約1800万円を入金。しかし、配当はわずか6万円だった。「老後の蓄えをすべて失った」と話した。

 投資話はさまざまだ。「上海万博に出展した絵画を扱う会社の未公開株がある」「インターネットカジノの運営会社の株主を募集」--。「1億円かけて開発したFXのソフト」として、CD1枚を62万5000円で売り付けることもしていた。

 「マルチ商法ネットワークビジネス被害者の会」の世話人代表の紀藤正樹弁護士は「楽に金を稼げるマルチ商法は、警察が幹部を逮捕しても残ったメンバーが新しい事業を始める。以前の人脈を使うため、同じ人が被害を重ねることも多い」と指摘する。【古関俊樹】

毎日新聞 2011年2月9日 大阪朝刊

 

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