2011年1月6日 18時31分 更新:1月6日 20時5分
【ワシントン古本陽荘】5日の米議会で、下院で多数党となった野党・共和党のジョン・ベイナー氏(61)が下院議長に就任した。連邦政府の役割縮小を求める保守系草の根運動「ティーパーティー(茶会運動)」の意向を受け、憲法重視の姿勢を示す下院規則改正に着手したが、「1000億ドル(約8.3兆円)の歳出削減」などの実質的な公約実現は困難とみられている。オバマ大統領や上院で多数党の民主党指導部との政策協議抜きでは成果を見込めないが、安易に妥協すれば茶会運動から突き上げられる可能性があり、難しい議会運営を強いられることになる。
べイナー議長は就任あいさつで、「まずは規則改正から始めよう。透明性や説明責任、憲法重視の姿勢を新たにするもので、下院の運営方法を変えることになる」と提案した。
直後に可決された下院の新規則では、提出される法案に憲法上のどの条文を根拠としたか明記することが義務付けられた。
実は、この憲法規定は、昨年11月の中間選挙前、茶会運動の全国組織「フリーダム・ワークス」が掲げた10提案の第1項目だ。「小さな政府」の実現のため「憲法上、規定がない権限を連邦政府から取り上げる」というのが茶会運動の基本政策。
茶会運動の主張を重視し議会運営を進めるとのべイナー議長の事実上の決意表明だったと言える。さらに、下院では史上初めて議場で憲法全文を読み上げる行事を6日に予定している。
ただ、こうした意思表示は象徴的なものに過ぎず、茶会運動が目指してきた連邦政府の極端な権限縮小の実現は容易ではない。
共和党が中間選挙の公約として掲げた「少なくとも1000億ドルの年間歳出削減」は、もともと具体的な提案ではなく、早くも共和党内で目標の下方修正の動きが出ている。
さらに、オバマ大統領の最優先課題、医療保険制度改革法についても、共和党は廃止法案を提出し12日に下院で採決する予定。だが、上院で否決され廃案になるのは織り込み済みで、茶会運動に姿勢を示すパフォーマンスに過ぎない。その後、関連予算を凍結することで医療保険改革を骨抜きにすることを検討しているが、オバマ政権側はすでに改革の意義を国民に売り込むキャンペーンに乗り出しており、成算があるわけではない。