企業採用調査:求む即戦力 「論理的思考力」重視傾向に

2011年1月6日 11時29分 更新:1月6日 14時58分

企業が求める卒業学校別の能力※数字は%。複数回答のため合計しても100%にはならない。高専は08年の調査を行わず
企業が求める卒業学校別の能力※数字は%。複数回答のため合計しても100%にはならない。高専は08年の調査を行わず

 企業が採用時に新卒者に求める資質に関し、経済同友会が昨秋行った「採用と教育に関するアンケート」で、“実務能力”を重視する姿勢に変わりつつあることを示す結果が出た。内定率が就職氷河期を下回る状況が続く中、「熱意・意欲」や「筆記試験の成績」を重視する企業が減少し、説明能力や適性を測る試験の結果を重視する企業が増加。人材育成の余裕を失い、即戦力を求める採用側の傾向が浮き彫りになった。

 調査は97年以降2~4年おきに行っているもので、今回は昨年10月8日~11月8日に経済同友会所属の全国の846社に対して実施、230社から回答を得た。建築など製造業57社、金融、IT関連など非製造業167社で、回答企業の来年度の新卒者予定採用合計数は約2万6900人。新卒者を大学院、大学、短大、高専、専修・専門学校の5グループ(前回08年調査は高専を除く4グループ)に分け、「求める能力」「選考方法と基準」などを聞いた。

 まとめによると、「求める能力」は、全グループで「熱意・意欲」が1位となったが、重視する企業は、グループ別で前回調査の70.5~78.6%から、67.7~77.1%に減少。前回4~9位とばらつきがあった「論理的思考力」が全グループで4位に上昇。営業現場などで説得力のある説明をする能力が求められている様子がうかがえた。「問題解決力」の数値のアップも目立った。

 また、選考方法で最も重視されるのは、全グループが前回同様に「面接の結果」。2位は高専を除いて、100問前後のマークシート方式で実行力などを測る「適性試験の結果」となり、大学以外は、一般常識などを問う「筆記試験の結果」が2位だった08年から変化した。

 文部科学省の調べでは、昨年10月1日現在の11年春新卒予定者の就職内定率(高校は10月末現在)は大学57.6%、短大は22.5%、高校57.1%で、いずれも93~05年ごろの就職氷河期以下のレベル。このため文科省は11月、経済同友会などの企業側と大学側が参加する懇話会を設置し、この席で企業側から「大学教育の中で、即戦力となる人材を育ててほしい」と要望が出されていた。

 アンケートではそのほか、「研修費用の一部個人(本人)負担」について、実施済み企業が12.2%で、今後行いたいとする企業を含めると23.9%に達した。経済同友会の担当者は「長引く不況で研修費を削らざるを得ず、研修が最低限ですむ即戦力を求める傾向が強くなった」と分析している。【篠原成行】

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