2011年1月5日 2時30分
金星を回る軌道への投入に失敗した探査機「あかつき」について、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が「6年後」としてきた金星への再投入計画を1年前倒しして、5年後の再挑戦を検討していることが4日分かった。あかつきをゆっくりと減速し、金星が追い付くのを待つ作戦で、トラブルで出力が落ちたエンジンでも実現可能な計画として浮上した。期間短縮は、機器の寿命の面でも有利に働くとみられる。【山田大輔】
あかつきは昨年12月7日に金星に最接近した際にエンジンを逆噴射して急減速し、金星の引力で進路を変えて周回させる予定だった。しかし、エンジンが計画より短い約2分半で停止。速度は十分落ちず金星を通過し、現在は太陽を回る軌道を金星より速く飛行している。
JAXAは当初、金星が太陽を10周する間にあかつきが11周し、金星が「周回遅れ」になる6年後の16年12月~17年1月に最接近させる予定だった。だが、その後の調査でエンジンの出力が約6割に落ちていると判明。配管の弁の異常による燃料供給の支障や、エンジン噴射口の破損の可能性があり、完全復旧は厳しい状況だ。
噴射が弱ければ、最接近時に急減速が必要となる再投入は困難になる。このため、JAXAは、あかつきの速度を少しずつ減速させ、太陽を8周する5年後に金星に追い付かせる検討を始めた。時期が早まれば太陽からの放射線による機器故障の危険性が軽減され、金星投入後の長期観測も現実味を帯びる。
JAXA関係者は「当初計画の速度では、おそらく再投入できない。あらゆる可能性を検討し、金星の観測を実現したい」と話している。