中川昭一ライブラリ

NAKAGAWA Shoichi Library

講演録・文書等
2011.01.26

【講演】日本の実力Vol.4〈終〉(2008〈平成20〉年6月29日)

日本の実力 Vol.4(最終)
平成20年6月29日 青森県連青年局・女性部合同大会にて

日本の実力 Vol.3」のつづき

◆四川省大地震での日本人救援隊
 最近、私は非常にいい話を聞きました。
 先日の、四川省大地震。今でも災害が続いておりますし、雨が降れば洪水が来るかもしれない。安全な水もまだ十分に確保されていないという状況です。
 そこに日本の救援隊が何人も行って、大変な活躍をされました。そこであったあるエピソードを私はある友人の中国人から聞きました。

 救援活動中、日本の救援隊が残念ながらお亡くなりになったご遺体を発見した。
 そのご遺体を引き出してきた時、日本人の隊員はみな必ず敬礼をしたり、手を合わせる。この行為に中国人は大変驚き、そして、感動したそうであります。
 この話をつながると思うのですが、先日、鎌倉の円覚寺の方とお会いする機会がありました。
 あの時代、元が攻めてきた元寇がありましたよね。日本は何とか元からの攻撃をしのいだわけですが、あの元寇で亡くなった人たちを祀って建てられたのが円覚寺だそうです。そしてそこには日本人だけじゃなく元の人たちも祀られています。

 つまり日本人にとって、亡くなれば誰でもみんな仏様…と言ってしまってはダメかもしれないけど、みんな畏敬の気持ちを持つ対象としては同じなんだという意識が、当たり前のようにあります。
 ご遺体に手を合わせる、これは日本人にとっては当たり前のことです。
 ちっちゃな子供でもやりますし、私たち大人もそういうふうに教えます。
 でも世界の中から見れば、それは珍しいことなんだそうです。

「そんなことは日本で当たり前だ」
と、私が友人に言ったら、大変びっくりしておりました。
「だから靖国神社があるんだ」
と言ったら、また喧嘩になりましたけれども(笑)。

 ただ靖国神社の話をだって、亡くなった人がどういう人であろうと、戦って亡くなった人は同じなんですよ。そこにお参りとか行くな、と言う話になる…。またこれで議論になりますから、また別の機会にお話したいと思いますが、いずれにしても、私たち日本人は、そういう感覚で生きているんだと堂々と主張してもいいのではないでしょうか。
 それが当たり前の気持ちであり、行動なんだ、と。
 こういった、日本人として当たり前のようにやってることを我々は是非守っていきたい。これは宗教活動というよりも、日本人の習慣です。日本人らしさとも言えるでしょう。
 この「習慣」や「らしさ」を世界に広げていってもいいんじゃないか、と四川省でのエピソードを聞いて感じたわけであります。



◆自信と元気
 さて、とにかく今、日本は自信がないし、元気もない。
 そして、どんどんどんどん競争の中でですね、順番が、今オリンピックの予選みたいなやつ、やっております、やってますけども、どんどんどんどん競争力の点でも他国に抜かれていってる状態であります。

 自信がなくなると元気がなくなる。
 物心ともに今の日本は元気がないと私は思っています。
 今、物心と申し上げましたが、不景気の中、せめて「心では元気にいたい」と思っていたとしても、、食料品の値段も、ガソリンの値段も上がるし、あらゆるものが上がる。こういう状況の中でどうやって心の元気を取り戻すんだ、とお叱りを受けるかもしれません。
 物価の上昇は世界一緒だから、世界中がみんな怒ってることでしょうがない」、では済まされない問題になっていますんで、これを何とかしなければいけない。

 確かにアメリカは今後、残念ながら商品の価格がどんどん上がっていく可能性がある。あるいはまた、中東諸国が握っている石油の値段も、投機が非常にウェートが大きい訳ですが、これも上がる可能性がある。
 世界に目を向ければ、貧困等をきっかけとした紛争も起こる可能性もある。
 アメリカ発のサブプライムローン問題もある状況の中、ひょっとしたら世界全体の経済が悪くなっていく。
 そうなると、もともと日本の経済もますます悪くなるかもしれないという可能性がありますから、やはり思い切った対策を、政治が、行政がとっていかなければならないと思っております。



◆今、本当に必要な経済対策とは
 最近、経済の話となると「財政削減」、あるいは「消費税等の増税」、こういった理論ばかり出てきます。
 ムダ遣いは決してよくはありませんけれども、「こんな時だからお金をいっぱい使おうよ」「必要なお金をどんどん投入しようよ」という議論が、ほとんどないんですね。
 私はこれが不思議でなりません。

 さきほどもこの会場の控え室でいろんなお話を伺いましたけれども、仕事が半分になってしまった方も大勢いらっしゃいました。
 今から30年ほど前にはオイルショックがありました。オイルショックの時もモノの値段がドーンと値段が上がりましたが、ただあの時は、所得も増えていたんです。だから混乱はおきましたけれども、結果的にはバランスが取れていたんです。
 しかし今は所得が上がってきませんから、支出のほうだけ、どんどんどんどん増えてしまう。バランスが取れないんです。

 私は今こそ、所得を増やす政策を思い切ってやることが、真の政治ではないかと思っています。そのためには財政の出動が必要だろうと思っています。
 知恵と政治の力でもって、埋蔵金などあるものを引き出してくる。国債を発行する必要じょあるでしょう。
 子や孫たちに借金を後回しにするということは、これは無責任でありますけれども、今、所得を増やす思い切った政策を取らないと日本自体が衰弱していくことになります。。 財政を削減し、消費税等を上げる形でプライマリーバランスを黒字化できたとしても、それによって日本の国が倒れていたら、それこそ子や孫たちに、私は申し訳がたたない、とに思ってるわけであります。

 景気を良くすれば税収も増えるんです。
 多少のインフレになれば、今ある借金も実質的には減っていくんです。
 私は今こそ、思い切った財政出動、冒頭で申し上げた「N分のN乗減税」、あるいはもう一度定率減税など、所得を増やす知恵を出しあって、実行するべき、と考えているんです。



◆最後に
 日本は、今、非常事態です。デフレ状態から脱却していない。しかも所得が伸びていない。いよいよ、物価、特に生鮮食料品、あるいは生活物資は上がり始めてきた。
 仕事をしている人たちも、コストが上がってきたのに、そのコストを価格に転嫁してはモノが売れないからそれが出来ない。したがって売り上げが伸びない。給料も上げられない…この悪循環をバサっといい循環に転換する役割こそ、政治の仕事ではないかと考えております。悪いものをいいものに180度転換するのですから、それは思い切った策が必要なんです。

 私も元銀行員ですし、国会では大蔵委員会にずっといましたから財政均衡は非常に大事だということは分かってるつもりです。
 しかしもうそろそろ、この経済状況は私たち日本人の限界に来たんじゃないのかなと思っているんです。
 おそらく次の選挙では、そのような皆さんの気持ちが示されて、我々も多分、ひどい目に遭うかもしれません。しかし、我々のことは二の次、三の次でいいんです。


 私は、今の日本に必要なのは、形ばかりの財政均衡を目指すことではなく、所得を上げる思い切った経済対策、財政対策、税制対策と思っているわけでございます。



 ほかにもいろいろなお話をしたかったのですが、時間が来てしまったようです。
 ご清聴、ありがとうございました。


(おわり)

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