中川昭一ライブラリ

NAKAGAWA Shoichi Library

講演録・文書等
2011.01.19

【講演】日本の実力 Vol.3(2008〈平成20〉年6月29日)

日本の実力 Vol.3
平成20年6月29日 青森県連青年局・女性部合同大会にて

日本の実力 Vol.2」のつづき



◆安全・安心
 ある国際機関に「世界平和指数」というデータがございまして、日本は140か国中5番目であります。
 上位には、デンマークやフィンランド、ノルウェーとなど北欧の国が入っています。
 ただ、日本には隣に核兵器持った国があるとかいろんな心配がありますし、残念ながら、最近は信じられないような事件も起きています。
 一時期は「外国人犯罪が云々」なんて言う、いろいろな立場の方々からずいぶん言われたましたけども、今では日本人によるとんでもない犯罪、たとえばあの秋葉原事件のような“何でもいいからやっちゃおう”というような犯罪がも起きるようになってしまいました。
 日本は世界一安全な国だと言われた時代がありましたけれども、この指数も、ひょっとしたらこれから下がってくる可能性もあるのかなと、危惧をしているところであります。


 もともと日本は、地震があり、台風がありと、災害が多い国でありますけれども、その対策は、他の国に比べても、ある意味で世界一だと思っております。
 ただ、気候変動という大きな流れの中で、今後、きちんとした対応をしていかなければなりません。


 例えば、私の地元の北海道は梅雨もないし台風もないと言われていたんですが、ここ最近は、梅雨もあれば、台風もやたらと来ます。
 高潮対策、暴風雨対策、雪の対策、寒さ対策は北海道は出来ておりますけれども、台風対策はまだ出来ておりません。
 今後は、北海道で台風対策、あるいは、西の方では干ばつ対策など気候変動に合わせた災害対策を充実させていかねばなりません。


 なお、死刑制度にもちょっと触れておきますが、死刑制度を採用している国は64か国です。そして、死刑制度廃止している国は130。
 世界の流れは死刑制度廃止にあるように見えますが、実はここには数字のトリックがあります。
 特に途上国の中には、先進国から支援を得たいがために、「わが国では死刑を廃止します」と宣言をするんですが、一応死刑という法制度は廃止してるけれども、例えば拷問をやったり、あるいは知らない所で大量虐殺をやったりという、裏でもっともっと酷いことをやってる国も、随分あります。
 死刑制度の議論をここではするには時間がございませんから、これ以上は触れませんが、死刑制度は議論が分かれるところかもしれませんが、そういう実情もあることを知って頂きたいと思っております。

◆食料と水
 さて、食料自給率です。
 ここ青森県、私の地元の北海道、そして岩手、秋田は全国で4つしかない、自給率100%を超えた都道府県です。
 しかし、世界的に見ると、170か国中124番目という食料自給率の低さです。先進国の中では圧倒的に日本が最下位の国となります。
 これも今後のことを考えると、ますます不安であります。


 そして日本は世界有数の食料輸入国なのですが、実は水も世界一の輸入国となっています。
 さっき、「一人あたまの水が世界の平均の3分の1」と申し上げました。
 最近よくマスコミでもとりあげられるようになりましたが、バーチャルウォーター、仮想水という考え方がありまして、大雑把な数字なんですけども、例えば、米1キロ作るのに水3トンかかります。小麦1キロ、あるいはまた、とうもろこし1キロ作るのに水が2トン必要です。牛肉1キロ作るのに、穀物が12キロ必要です。
 ということは、牛肉1キロ作るのに水が24トン必要だということになります。


 豚肉ですと、1キロの豚肉を作るのに穀物が6キロ必要ですから、穀物1キロ作るのに水が2トン必要ですから、豚肉1キロ作るために水を12トン使っている、という計算になります。


 このような考え方で、ある先生が、日本中に入ってくる農産物を作るためにはどのくらいの水が必要なんだろうという計算をしたところ、日本の農業で使う水よりもはるかに多い量が輸入される農作物に使われている、つまりは日本は世界一の水輸入国である、と発表したんですね。このことを我々は是非知っておかなければなりません。


 私はさっき申しあげたように、水には大変大きな関心を持っております。
 今、世界の中には安全な水が飲めない人たちが11億人おります。衛生的ではない排水関係、つまり水周りのことで苦しんでいる人が、世界に26億人います。
 そういう中、日本は世界中から実は水を買っているというか、奪っているという状況にあるわけでありますか。我々はこのことも今の日本の現状として知っておく必要があるのではないかと思っております。

◆教育
 日本は識字率が非常に高い国だということは、皆さんもご承知のとおりだと思いますけども、あるいは識字率、あるいは日本の学力が高いのは、江戸時代の寺子屋をはじめとする、先人たちの連綿とした教育に対する努力の賜物です。


 どんなに貧しい人でも、全国のどこに住んでいようと、読み書きそろばんは基本的に出来ますよというDNAがすでに我々にはできているはずなんですが、残念ながら学力はここ数年どんどんどんどん低下をしてきてしまっているという状況であります。


 この原因は、受験のための丸暗記優先の勉強方法、あるいは英語教育、などいろいろあると思います。


 英語については私も国際会議に出席すると、「高校時代もっと英語を勉強すればよかったな」と痛感します。ただ、「あの先生の英語じゃとても語学力として通用しなかったな」という、責任を人に押し付けるようなようですが、そう感じることもあります。
 

 私の中学高校時代の英語の先生はインド哲学の先生でして、サンスクリット語はできたけど、英語は喋れないという先生だったんですね。
 文法はできます。
 それから読むこともできます。
 でも喋れないんです、ほとんど。
 

 ですから私も新聞は読めますけど、まともに、WTOでの交渉も外国人と一体一でできないわけであります。喧嘩だけはできるんですが、喧嘩でも途中から通訳が必要になってしまう。
 若い人たちにとっては今後ますます英語をしゃべれることは大事なことになるだろうと思っています。


 それから、お手元の資料に書いてありますけども、今の子どもたちは卑弥呼やフランシスコ・ザビエルは知ってるけども、大久保利通や木戸孝允は知らないこともあるそうです。
 つまり、近代史まで教えないんですね。教える時間がないんです。
 大体古代史から始まって、戦国時代、江戸時代とあって、そして明治の初めぐらいで大体3学期になってしまう。残りは、ぱっぱっと教えておしまい、こういう感じなんでしょう。慶応の人は喜んで早稲田の人は怒るかもしれませんが、「大隈重信は知らないけども、福沢諭吉は知っている。一万円の人だから」と、こういう話になってしまうわけであります。
 歴史と同時に日本の文化、例えば歌舞伎、能、祭りなど文化をある程度知っておかないと、本当の意味の国際人として必要だろうと感じています。

◆日本人としての誇り
 悲観的な話ばかり申し上げるつもりはないんですが、今年の初めの新聞の世論調査で、「日本人であること、国民であることに誇りを思うという人が、過去最高93パーセント」という記事がありました。
 こういうデータが出てきたのは非常に嬉しいですね。
 もしかしたら、「政治家に任せておくととんでもないから、俺たちが頑張んなきゃダメだ」という国民の怒りの裏返しなのかなとも思う部分もありますが、やはり、国を愛する、ふるさとを愛する、家族を愛するという考え方の先に国際人としてのあるべき姿があるのではないかと、私は思っています。

◆日本の真の実力とは 以上が現状認識でございますが、じゃあ、現状が今の日本の真の実力なのでしょうか。
 私は違うと思います。
 私は日本人、あるいは日本にはもっともっと実力があると思っています。
 世界の中で競争に負けない国にまた戻れる、戻らなければいけない。
 万が一戻れないと、食料もエネルギーも資源もほとんど外国から輸入、水まで輸入ということになっている以上、競争力がない日本は没落していきます。
 日本が没落をしていった時、日本をバリケードのように邪魔な国として捉えているところにとってはバリケードがバリケードでなくなるわけです。


 こういう事態になってしまうのは我々としては困りますから、政治家としては何とかしなければいけないと日々思っております。飲み水も満足にないような国も含めて世界が5パーセントの成長をしてる時に、日本は名目成長率がほとんどゼロという状態が続いている。これを何とかしなければいけないということであります。


 じゃあ、日本の良さ、日本人の良さはなんでしょう。
 海外で仕事をしてきた官民の人たちの話を聞くとですね、真面目さ、勤勉さが日本じんの良さだと言います。
 たとえば、時間に遅れない、嘘をつかないというところから始まって、「きちっとしてる」という評価が海外でも非常に多い。


 この良さは強みです。
 と同時に、この強みを「善意」ではなくて「力」として利用していく必要があると私は考えています。日本人らしさというものを「力」にしていかなければなりません。

(つづく)

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