そちらの世界について少し。
その世界では『南』に人類が住んでおり『北』に魔物が住んでいる。
『南』は複数の国で構成されている。
その中で最も力のある国は『A国』であり、経済の主導権を持っているということで事実上、他の国を支配している。
現在人類間で戦争は無い。
『北』は一つの国で構成されている。
魔物、というものは、魔王を価値観の中心に置く種族である。
魔王が、魔物を生みだす唯一の存在であり、魔王を失えば、魔物は滅んでしまうからである。
ちなみに魔物の食料は、人間のみ。
『南』の人類は、文明の初期段階では『勇者』というものを創り出し、それに魔王討伐に向かわせていた。
創っては返り討ち、創っては返り討ちの繰り返しだったので、後に人類は戦争という形で魔物と戦うようになった。
しかし、戦争で国の衰退を無視できなくなってしまったので(文明は発達したが)現在(実際は少し過去だが)では生贄を捧げる、という形で魔物と付き合っている。
生贄は、国民に与える情報を制御する、という形で生産していった。
それは、全ての国で共通している。
生贄に選ばれるものは、専用の教育を受け、殆どのものは生贄であることに誇りを持つようになる。
ごく少数のイレギュラーに対しては、魔術により洗脳する。
その世界では『魔法』『魔術』の類が存在する。
基本的には、無から有を生み出すことをそう定義している。
火を生みだしたり、水を生みだしたり、風を起こしたり。
異世界、異次元の類と交信することで、それらを無から生みだす。
そちらの世界の住人は異世界、異次元を『冥界』と呼んでいる。
つまり『魔法』は『冥界』から『盗む』のである。
『A国』の一部の者にしか使えない。
その世界では『予言』というものが存在している。
『冥界』には、異世界の未来観測まで出来る『冥界』も存在する。
『予言』とは『その冥界』と交信することで、世界の未来を知る、という『魔法』の応用。
一子相伝であるため、使える者は『A国』の王、王子、王女のみ。
『A国』の力は、それに由来している。
なお、この『予言』は『魔法』によって書き換えることが出来る。
『予言』はその世界の時空が安定している場合における帰納的推論で、『魔法』はその世界と『冥界』の時空を狂わせる技術だからである。
故に『予言』はころころ変わってしまうため、定期的に『予言者』は『冥界』と交信しなくてはならない。
現王女ヒューイットは知る。
四年後『冥界から来る』魔物によって世界は滅ぶ、ということを。
「―――ということで、私魔王殺しに行ってくるわ」
彼女は、兄にそのことを告げた。
なお彼女が殺す、と言っている対象は彼女の世界の魔王である。
彼女の兄は比較的、非人間的であるせいか、彼女の言葉に対し、頑張って、と返した。
「兄さんアンドロイドとか、そういう研究、確かしてたわよね?」
「バイオロイド?一応」
「私がこれから言うの、造っておいて。もちろん、学習能力高い奴」
「相応の報酬が貰えれば」
「『B国』の次の選挙の出来レースで、その儲けをそっくりそのままやるわ」