日本とオーストラリアの経済連携協定(EPA)締結に向けた交渉が再開した。日本政府は、貿易やサービスなどの経済連携で「すべての品目を自由化交渉の対象とする」との基本方針を、昨年11月に閣議決定した。決定通り高い水準で貿易を自由化する協定を目指すべきである。
菅直人首相は、日豪など2国間の自由化交渉と並行して、米国の主導で進む環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加も目指している。米国を含めて、より広い自由貿易圏を築くTPPこそが、日本の通商政策が目指す本丸であるはずだ。
そのTPP交渉に、豪州はすでに参加している。日豪EPAとTPPと重複する中身が多い。さまざまな道で自由化を模索するのは間違いではないが、二兎(と)を追う者は一兎をも得ずとならぬよう、道筋を明確にしておかねばならない。
気になるのは、TPPより2国間交渉に力を入れるべきだと主張する「EPA先行論」が、政権内から聞こえることだ。市場開放に例外品を認めるEPAの仕組みを利用し、競争力が弱い農産物に対する実質的な保護を狙っているのだろうか。
これまで日本が東南アジア諸国連合(ASEAN)各国やメキシコ、スイスなどと締結したEPAは、日本側がコメ、小麦、牛肉、砂糖、乳製品などを自由化対象から除外していた。これらの品目は、協定の締結後も高い関税で保護されている。
日豪2国間交渉ではこうしたやり方を踏襲すべきではない。その先の目標であるTPP交渉は、すべての貿易品目を自由化の対象とするのが原則だからだ。助走段階で例外品目の確保を目標にする交渉をするのだとすれば、先行きがおぼつかない。
日豪交渉は、農産物の扱いが焦点となる。段階的な市場開放を前提として交渉を進め、TPPへの一里塚にすべきだ。そのためには、農産物の輸入を国境で抑える関税に代わって、生産性を高めることを条件にしたうえで農家に所得補償をするなど、国内農業を支援する新しい枠組みを急いでつくる必要がある。
菅首相の「開国宣言」は、海外では好意的に受け止められた。首相のTPPへの意欲に刺激を受け、日本とのEPA交渉に消極的だった欧州連合(EU)も前向きに姿勢を変化させた。経済大国である日米の経済連携には、自由貿易に向けて世界全体を動かす強い力があるはずだ。
首相の開国の意志が腰砕けに終わるようだと、期待は一気に幻滅に変わる。市場開放に挑む首相の姿勢が日豪交渉で試される。
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