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社説:スーダン南部 独立後は共存共栄で

 大規模デモに揺れるエジプトの南にアフリカ大陸最大面積の国スーダンが横たわる。この国の総面積の約4分の1を占める南部が7月に独立する運びとなった。1月の住民投票で独立賛成票が約99%にのぼり、開票の最終結果を受けてスーダンのバシル大統領が南部独立を受け入れる大統領令に署名したためだ。

 独立の確定を歓迎したい。もともとスーダンは南北で大きな違いがあった。北部はイスラム教を信じるアラブ人が主流であるのに対し、南部は黒人が多く、キリスト教やアニミズムなどを主に信仰する。80年代から続いた内戦の死者は200万人ともいわれた。南部住民はそんな北部と和解して統一国家を保つより、別の国をつくる道を選んだわけだ。

 しかし、内戦が名実ともに終結するのなら喜ばしいが、南部独立後も対立や流血が続いては困る。南北の境界にある油田地帯(アビエイ地区)の帰属が決まっていないのは大きな火種だが、平和的に問題を解決して共存共栄を図るべきだ。05年の南北包括和平合意や今回の住民投票を支援した米国や欧州も、引き続き情勢安定に協力してほしい。

 とはいえ、きれいごとでは済まない現実もある。米国の和平工作の背景には南部の石油資源への思惑もあったはずだ。スーダンでは中国が活発に油田開発を進めている。米国が「テロ支援国家」に指定するスーダンに対し、中国は不自然なまでに肩入れしてきた。米国はアフリカ大陸で資源確保に走る中国に焦りを覚え、親米の空気が強いスーダン南部の独立を推進したとの見方も強い。

 バシル大統領はスーダン西部ダルフール紛争での「戦争犯罪」に関して国際刑事裁判所から逮捕状が出ている身だ。スーダンは米同時多発テロの首謀者ウサマ・ビンラディン容疑者が一時滞在し、98年には米国のミサイル攻撃を受けた。米国はバシル政権が南部独立に協力的なら2国間関係の改善を図る方針だが、ダルフール問題に目をつぶるような政治的取引は禁物である。

 独立問題は大国の都合に左右されることを改めて思い知らせた出来事ともいえよう。例えばコソボ独立は米国が強く推進し、ロシアや中国などが反対した。ロシアはチェチェン共和国の分離独立闘争を抑え込むのに必死だし、中国もチベットや新疆ウイグル自治区を抱えている。

 また、同じ住民投票なのに、親米のモロッコが実効支配する西サハラでは宙に浮いたままだ。なぜパレスチナはいつまでも独立できないのか、という根源的な疑問もあろう。新しい国の誕生は祝福すべきだとはいえ、国際社会には不公平感を助長しない取り組みが求められる。

毎日新聞 2011年2月9日 2時30分

 

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