社説

文字サイズ変更

社説:日豪EPA 試される政府の本気度

 経済連携協定(EPA)をめぐる日本とオーストラリアの交渉が再開した。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉参加国でもあるオーストラリアとのEPAは、「平成の開国」を唱える日本政府の本気度を試す交渉でもある。

 日本は、鉄鉱石や石炭、天然ガスなどの資源の多くをオーストラリアに依存している。小麦などの食料供給でもオーストラリアの役割は大きい。経済安全保障の観点からもオーストラリアとの関係は重要だ。

 一方、オーストラリアにとっては、自国の産品の大半がすでに無税で日本に輸出されており、農業分野で関税撤廃が実現しない限り、日本とのEPAのメリットは乏しい。

 しかし、日本側は、牛肉、小麦、乳製品、砂糖の4品目を、関税撤廃などの例外となる重要品目とするよう求めている。農産品の市場開放に消極的で、それが障害となって交渉は中断していた。

 政府が6月をめどに参加の是非を決めることにしているTPPは、より高いレベルでの市場開放をめざしている。オーストラリアとのEPAは、日本にとってTPPへの参加の前提ともなるだけに、正念場となる交渉だ。

 新日本製鉄と住友金属が合併をめざすことになったように、新興国の企業も加わったグローバルな競争に勝ち抜くには、企業の大規模な集約も必要になっている。国内での雇用を確保する意味からも、日本製品が関税などで他国の製品と差をつけられないようにすべきだ。

 もちろん、関税撤廃により打撃を受ける乳製品や砂糖などについては、補償措置が必要だ。集票目当てのバラマキになったとして批判されている農家への戸別補償は、市場開放によって打撃を受ける生産者を救済するための手段として集中的に使われるべきで、そうした仕組みに改めるよう求めたい。

 オーストラリアとのEPAの合意目標も6月がめどという。日豪EPAが進展すれば、TPPへの参加についても追い風になるだろう。

 しかし、オーストラリアは、日本がこれまでEPAを結んできた国々と違って世界有数の農業大国だ。そのため、農業団体などは日豪EPAに強く反対している。

 ただ、このままでは農家の高齢化はますます進む。高い貿易障壁の維持という守りの姿勢だけでは、農業の衰退に歯止めをかけることはできない。

 目先の困難から目をそむけるのではなく、生産性の向上を促し、競争力を備えた農業に転換することを見据えて、オーストラリアとのEPAの交渉に臨んでもらいたい。

毎日新聞 2011年2月9日 2時31分

 

PR情報

スポンサーサイト検索

社説 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド

毎日jp共同企画