【ドバイ=太田順尚】エジプトのムバラク大統領に続き、イエメンのサレハ大統領が2日、次期大統領選への不出馬を表明。チュニジア政変に端を発した中東での政権交代連鎖は現実のものとなった。高い失業率など同様の問題を抱える周辺国は民主化運動の波及を警戒。一方、エジプトの友好国であるイスラエルが孤立化を懸念するなど、地域情勢に影響が広がっている。
中東の長期独裁の代表格だったムバラク大統領が不出馬意向表明に追い込まれたことで、民主化の動きの飛び火は速度を増している。1990年の南北イエメン統一以前の北イエメン時代から30年以上、大統領職にあるサレハ氏は2日、2年後の退陣意向を表明し、息子への権力継承も否定した。1日にはヨルダンのリファイ内閣も総辞職している。
チュニジアの政変を機に民主化デモが広がるなか、各国政府が無策だったわけではない。ヨルダンは政府関連の雇用を増やす失業対策を公表。イエメンは公務員給与の引き上げや税金引き下げを打ち出し、1月31日には若者の雇用創出や学費軽減の追加策も発表した。
だが、民主化の動きは収まらない。3日イエメン、5日シリア、12日アルジェリア、リビア、モロッコ……。ネット上では、大規模な反政府デモの呼び掛けが乱れ飛ぶ。AP通信によると、アルジェリア政府は2日、12日のデモ計画に対し、「デモ禁止令の対象になる」と警告した。
非産油国では政府は有効な対策を打ち出す財政的余裕がなく、失業や物価高騰への不満は富や要職を独占する長期独裁体制に向かった。「我々の利権に向けられた」(イエメンのサレハ大統領)民衆の怒りは、もはやその場しのぎの対策では抑えきれなくなっている。
一方、湾岸産油国のサウジアラビアやクウェートも強権支配や若年層の失業などの問題を抱えるものの、財政的余裕から手厚い補助金を出して医療や教育費、公共料金を低く抑えており、今のところ民主化要求の動きが飛び火する気配はない。ただ、サウジ国営通信が1日伝えたところによると、政府は大規模な洪水被害を背景に、同国では異例の小規模デモが起きた西部ジェッダでインフラ改良投資を約束。不満拡大に神経質になっている姿勢を示した。
一方、エジプトを数少ない友好国としてきたイスラエルは、新政権でのイスラム原理主義勢力の台頭を強く警戒する。イスラエル紙によると、同国外務省は欧米などに駐在する外交官に対し、ムバラク体制の存続を働きかけるよう指示していたという。
中東情勢の安定を望む湾岸産油国は、ペルシャ湾を挟んで接するイランをはじめとする反米勢力の影響力拡大を懸念。本質的な望みは同じ親米穏健派のムバラク政権の存続だったが、民主化波及への警戒とのはざまで明確な意思表示がしにくい立場に立たされている。
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