【北京=古谷浩一】中国当局はエジプトでの反政権デモの動きに対して神経をとがらせた対応を見せている。国内の民主化を求める動きへの影響を懸念しているとみられ、インターネット上の一部で関連情報が制限されている。ただ、獄中の民主活動家、劉暁波(リウ・シアオポー)氏のノーベル平和賞受賞のときのような厳しい言論規制は敷かれていない。
中国の大手ポータルサイト「新浪」などの中国版ツイッターでは「エジプト」「ムバラク(大統領)」などを中国語で検索すると「関連法規に従い検索結果は表示できない」との文字が出る。「胡錦濤(フー・チンタオ=国家主席)」「天安門事件」などと同様に政治的に敏感な語句として検索不能の措置がとられたとみられる。
中国各紙も国営新華社通信の配信記事を使う形でのみエジプト情勢を低調に伝えている。反政権デモの写真なども掲載されているが、ムバラク大統領の即時辞任を求めるデモの動きがネットを通じて広まったことなどは、ほとんど触れられていない。
このため、香港の中国人権民主化運動情報センターや香港紙は、エジプト情勢が中国の民主化を求める動きを刺激することに中国当局が懸念しているとの見方を示す。同センターによると、中国当局は3日の春節(旧正月)を前に、北京などの民主活動家が他の活動家宅への年始のあいさつに行かないようにも警告したという。
ただ、ネット上で検索サイトでの関連情報の検索自体は可能。カイロのタハリール広場での反政権デモの参加者と大統領支持派との衝突なども写真付きで伝えられており、書き込みの削除も一部にとどまる。NHKやCNNといった海外メディアの関連ニュースの放映が遮断されるような事態も生じていない。
中国政府はエジプト情勢に対して「エジプトが早急に社会の安定と正常な秩序を取り戻すことを望む」(洪磊・外務省副報道局長)と述べるにとどめている。
中東に駐在し、日々、中東の動きに接する川上編集委員が、めまぐるしく移り変わる中東情勢の複雑な背景を解きほぐし、今後の展望を踏まえつつ解説します。エジプトからの緊急報告も。