2011年2月3日1時27分
カイロのタハリール広場で2日、ムバラク派(手前)と反政権派のデモ隊が衝突した=AP
カイロのタハリール広場で2日、ムバラク派(手前)が、反政権派のデモ隊と衝突した。ラクダや馬に乗り、棒で武装して広場に突入しようとする姿も見られた=AP
エジプト・カイロで2日、ムバラク派(手前)と、戦車の上に乗った反政権派のデモ隊がにらみ合う中、いくつもの石が飛び交った=AP
カイロのタハリール広場で2日、ムバラク派が築いたバリケード近くでもみ合う反政権派の男性=越田省吾撮影
【カイロ=貫洞欣寛、玉川透】エジプトの首都カイロ中心部で2日午後2時(日本時間午後9時)すぎ、ムバラク大統領の即時退陣を求めてタハリール広場でデモを続けていた野党勢力を、大統領支持を訴えるグループが包囲し、襲撃した。投石やこん棒、火炎瓶を使った大規模な衝突となり、数百人が負傷した模様だ。
ムバラク大統領は1日夜のテレビ演説で9月の大統領選に出馬しないことを表明したが、即時辞任は否定。これに対し、野党勢力は即時辞任を求め、イスラム教の集団礼拝がある4日に再び大規模なデモを呼びかけていた。デモのさらなる拡大を阻止するため、ムバラク政権が襲撃に関与したとの指摘が相次いでいる。
ムバラク大統領の即時退陣を求める野党勢力の「100万人行進」が前日に開かれたタハリール広場には、2日も即時辞任を求める数千人がとどまっていた。複数の目撃者が朝日新聞の取材に語ったところによると、ムバラク派が広場を包囲。内部にいた野党勢力の人々の脱出を許さず、投石などで攻撃を続けた。衛星テレビ局アルアラビアは、同局の記者が襲われた、と報じた。
目撃者の一人は、広場内で投石して野党勢力のデモ隊に包囲された私服の男が「自分は警官だ。勘弁してくれ」と叫ぶのを見た、と語った。衛星テレビ局アルジャジーラは、デモ隊を襲った男が警察官の身分証明証を持っていたと報じた。内務省は私服警官の関与を否定している。
タハリール広場周辺には2日朝からムバラク派が広場に現れ、緊張感が高まっていた。カイロ中心部の国営テレビ周辺やカイロ西部モハンデシーン地区などではこの日、ムバラク氏支持を訴える人々が続々と集まり始めていた。午後2時ごろにはモハンデシーン地区などから数千人のムバラク派がタハリール広場に徒歩で向かい、騒乱に加わった。エジプトでは、貧困層に金銭を配って動員する官製デモが以前から起きており、ムバラク派の行動も、同様に動員された可能性がある。
タハリール広場周辺から制服警官は撤収しており、代わりに配置されているエジプト軍は2日夕現在、衝突を制止せず静観を続けている。威嚇射撃をしたのではとの情報もある。
エジプトの民主化運動指導者で国際原子力機関(IAEA)の前事務局長エルバラダイ氏は「これはエジプトに対する犯罪だ」と政権を批判した。
カイロでは2日朝、ムバラク支持デモへの参加を呼びかける差出人不明の携帯メールが一斉に発信され、政権側の巻き返しが始まったとみられていた。
現場で騒乱を目撃した政府系シンクタンク、アハラム戦略研究センターのナビール・アブドルファッタル研究員は朝日新聞に「前日から、このようなことが起きる兆候が見えていた。体制エリートによってカネで雇われた貧しい人々や犯罪者らが、体制を維持するために暴れている」と指摘した。
タハリール広場に面し、「ツタンカーメンの黄金のマスク」などが所蔵されているエジプト考古学博物館に対し、火炎瓶が投げ込まれたとの情報もある。
中東に駐在し、日々、中東の動きに接する川上編集委員が、めまぐるしく移り変わる中東情勢の複雑な背景を解きほぐし、今後の展望を踏まえつつ解説します。エジプトからの緊急報告も。