詰めの甘さ反省します───本社社長・秋山耿太郎

 今回の「見解」では、一連の報道について「公共放送と政治という『表現の自由』にかかわる重要な問題に切り込んだ。このことはジャーナリズム活動として評価できる」と認めていただきましたが、同時に、1月の最初の記事については、「真実と信じた相当の理由があるにせよ、取材が十分であったとは言えない」と厳しく指摘されました。

 1月12日付の記事は、NHKの元放送総局長と自民党の2人の有力政治家ら関係者の証言に依拠したものでした。しかし、記事掲載の直後に、この3人の方々がいずれも証言の主要部分を否定し、その後の追加取材でも、政治家がNHK幹部を「呼び出し」たのかどうか、放送の「前日に面会」したのかどうか、という点で、当初の報道内容を裏付ける具体的な事実を確認できませんでした。とくに「呼び出し」については委員会から「詰めの甘さ」を指摘されました。記事の中に不確実な情報が含まれてしまったことを深く反省しております。詳しくは14面の「朝日新聞社の考え方」をお読みください。その反省と教訓を今後の報道に生かしていきます。

 NHKの番組改変問題は、まだ、すべてが明らかになったわけではありません。今後も、その取材を続けるとともに、ジャーナリズムの基本である「調査報道」を、より一層、充実させて、読者の皆さまに信頼していただけるよう努力していく決意です。とくに「政治とメディアの関係」については、最も重要な取材テーマとして、専門の取材チームを早急に発足させることにしました。

 今回の報道に関連し、取材目的で作成した資料が、社外の月刊誌に流出するという報道機関としてあってはならない事態を引き起こしました。本日、管理責任を問う処分を行いましたが、改めて関係者と読者の皆様にお詫(わ)びいたします。

(2005/09/30)