2010年12月10日 17時49分 更新:12月10日 21時59分
議員1人当たりの有権者数を比較した「1票の格差」が最大5.00倍だった7月の参院選を巡り、各地の高裁で選挙無効を求めて争われている訴訟の判決が10日、広島高裁であった。小林正明裁判長は請求を棄却する一方「憲法の要求する投票価値の平等が実現していると評価することは困難」とし、格差の状態を「違憲状態」と指摘した。東京高裁で11月に「違憲」とする判決が出ており、選挙制度改革を巡り格差是正を求める声が高まるのは必至だ。
小林裁判長は、今回の参院選で格差4倍以上の選挙区が5区、3倍以上が9区あった点に触れたうえで、鳥取と神奈川選挙区間で5.00倍の最大格差が生じている状態について検討し「憲法上、著しい不平等状態にある」と判断した。さらに94年に8増8減、06年に4増4減の定数是正後も、格差があまり是正されなかったことに言及し「抜本的改正を行ってこなかった国会の不作為に対し、裁量権を超え違憲と評価する立場もあり得る」と指摘した。
そのうえで、国会が都道府県単位の区割りには限界があると認識し、期限を決めて選挙制度の抜本的改正を検討している事情を考慮。「見直しには高度に政治的な判断が必要で、相応の時間を要する」として、今回の選挙までに改正しなかったことが「国会の裁量権の限界を超えたとまでは言えない」と述べた。11月の東京高裁判決は不平等状態が十数年継続していることを「国会の裁量権の限界を超えている」としており、判断が分かれた。
裁判は、広島県内の有権者が「選挙権の平等を定めた憲法に反する」として、同県選挙管理委員会に対し、広島選挙区(格差2.39倍)での選挙無効確認を求めた。同種訴訟は全国の8高裁、6高裁支部で起こされた。
参院選の1票の格差を巡る訴訟では、最大格差6.59倍の92年選挙について、大阪高裁が93年に「違憲」、最高裁が96年に「違憲状態」としたが、最高裁はこれまで5.85倍までの格差を「合憲」と判断してきた。一方、格差4.86倍だった07年参院選を巡る合憲判決(昨年9月)で「選挙制度の仕組み自体の見直しが必要」と国会に求めていた。【中里顕】