鹿児島夫婦強殺:無罪、被告「さん」付け 検察官表情硬く

2010年12月10日 11時57分 更新:12月10日 15時22分

傍聴券を求める人たちが長い列を作った鹿児島地裁=鹿児島市山下町で2010年12月10日、黒澤敬太郎撮影
傍聴券を求める人たちが長い列を作った鹿児島地裁=鹿児島市山下町で2010年12月10日、黒澤敬太郎撮影
無罪判決後、弁護士に付き添われ鹿児島拘置支所を出る白浜被告(中央)=鹿児島市で2010年12月10日午後0時41分、黒澤敬太郎撮影
無罪判決後、弁護士に付き添われ鹿児島拘置支所を出る白浜被告(中央)=鹿児島市で2010年12月10日午後0時41分、黒澤敬太郎撮影

 「無罪か死刑か」の究極の選択を迫られた市民が選任から40日目に出した結論は無罪だった。10日、鹿児島地裁であった鹿児島市の高齢夫婦殺害事件に対する裁判員裁判の判決公判。異例の長期審理を経て、平島正道裁判長が「無罪」ときっぱりとした口調で告げると、白浜政広被告(71)はまっすぐに前を向き、判決理由に耳を傾けた。【関谷俊介、岸達也、村尾哲】

 注目されたこの日の判決。開廷前には52の一般傍聴券を求めて1278人が並んだ。206号法廷。開廷予定の午前10時を回ったところで、地裁職員が法廷で「裁判員の一人が交通事情で地裁に到着していない。まもなく到着する」と開廷が遅れることを説明した。地裁によると、集合予定は午前9時半だったが、この裁判員は同10時13分に地裁に着いた。

 判決公判は40分遅れて始まった。白浜被告は法廷に姿を見せるとまず一礼。初公判からずっと変わらない紺のスーツに青色のネクタイ姿だった。

 平島裁判長が「白浜政広さんですね」と声をかけると、「さん」付けしたことに検察官たちは緊張した面持ちとなった。裁判長から「真ん中に立ってください」と言われると、白浜被告は証言台の前に背筋を伸ばして立った。

 「主文、被告人は無罪」。張りつめた法廷の空気を切り裂くように、裁判長は白浜被告を見据えて告げた。白浜被告は大きく息を吐くと裁判長を見上げたまま動かなかったが、その後、裁判長に促されて、ゆっくりと座った。

 男性4人、女性2人の裁判員と補充裁判員2人は被告の表情を見たり、手元に視線を落とすなどしていた。判決理由が読み上げられる中、証言台に座った被告はじっと前を見つめ続けていた。法廷のスクリーンには現場の写真や見取り図などが判決理由に合わせ、代わる代わる映し出された。

 検察官4人は一様にみけんにしわを寄せたまま手元の資料にメモを書き込んでいた。

 死刑が求刑された11月17日の公判では、白浜被告は審理を締めくくる最終意見陳述で「私はぬれぎぬを着せられ、問答無用に逮捕され奈落の底に突き落とされました。しかし、真実は必ずや明らかにされると思います」と堂々とした様子で裁判員に訴えかけていた。

 弁護人によると、結審後も「裁判員たちは自分の無実をわかってくれる」と無罪判決が出ることを疑っていなかったという。

 裁判員は、40日間という異例の長期日程に臨み、無罪主張と死刑求刑の間で難しい判断を迫られた。被告や証人に直接質問することはなかったが、熱心にメモを取り真剣な表情で審理をやり遂げた。

 27人に及ぶ証人尋問では公判が予定時間を超える日も多く、裁判長が「裁判員の疲労もたまっている。聞く側にも配慮してください」と検察、弁護側に伝える場面もあった。

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