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社説:税と社会保障 安心担保する番号制を

 税制と社会保障の一体改革をめざすうえでポイントとなるのが、国民一人ひとりに番号を割り振り、行政事務に活用する番号制の導入だ。政府がその基本方針を決定した。

 年金、医療、福祉、介護、労働保険、そして税の分野で利用され、年金手帳、医療保険証、介護保険証が1枚のICカードで代用できる。今秋にも番号法案を国会に提出し、15年からの実施をめざすという。

 年金記録が照合できない消えた年金問題のように、共通の番号制度がないためにさまざまな問題が生じ、行政の非効率も指摘されてきた。

 番号制の導入がこれまで見送られてきたのは、納税者番号という形でとらえられ、個人情報を国に管理されることへの不安や、情報流出への懸念などが理由となっていた。

 しかし、財政の危機的状況は限界にきている。これからの少子高齢化の進展を考えると、税制と社会保障の一体改革は避けられない課題だ。

 ただし、所得の低い人たちの負担を軽減するための措置についても同時に考えておかねばならない。消費税率の引き上げなど、国民の負担が増すことは避けられないが、各種の手当を支給するなどの形で、所得の低い人たちについては、支援する必要がある。

 社会保障によるセーフティーネットが、必要な人たちに重点的に行き渡るようにするには、個人の所得情報を正確につかみ、どのような措置がとられているのか、または、とられていないのかが分かるようにしておかなければならない。

 また、税や保険料の支払いと、医療や介護、年金などの形で受け取る分との関係が、個人単位でもよく分かるようになっていれば、社会保障制度に対する信頼も増すだろう。

 安心できる社会を築くには、税と社会保障を共通の番号で管理する仕組みが不可欠だが、一方、この共通番号は、住民基本台帳ネットワークを活用する形で導入するという。

 住基ネットについては、個人情報漏えいの可能性が指摘され、プライバシーの保護を保障した憲法に反するとして訴訟も相次いだ。最高裁は合憲の判断を示したものの、懸念が完全になくなったわけではない。

 しかも、税や年金に加え、医療も含む個人情報が同じ番号で管理されるとなると、さらに慎重な制度設計が必要だ。

 目的外利用を防ぐため、第三者機関によるチェックや自分の番号の使用履歴を確認できるようにするなどの措置をとるというが、徹底した監視制度や違反者への厳罰なども含め、安心のための仕組みが、不安の増幅につながることのないようにしてもらいたい。

毎日新聞 2011年2月8日 2時31分

 

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