河北春秋
「日本の婦人の高い地位を示すもっともよいものは、彼女たちのもつ闊達(かったつ)な自由」だと、その本には書かれている。自由闊達に働き、男性の仕事にまで加わることができることだ、と▼幕末の話である。本とは『オイレンブルク日本遠征記』。日本と修好通商条約を結ぶため、オイレンブルク伯が全権を担ってやって来たプロイセン(現ドイツ)遠征隊の公式記録だ。そのころの江戸は男女共同参画社会だったのだろうか
▼こんな記述もある。「平野は肥沃(ひよく)で耕され、山にはすばらしい手入れの行き届いた森林があり」「住民は健康で、裕福で、働き者で元気がよく、そして温和である」。環境抜群、幸福度も高そうだ▼条約締結から数えて24日で150周年。ことしは日独交流の節目の年だ。各地で記念イベントが企画されている。原点として注目されているのが当時の記録だ
▼遠征隊の一員だった画家ベルクによる風景画集も残っている。江戸や長崎の町並み、神社仏閣、農家、港湾などを繊細な筆致で表現する。「日本で最も美しいものの一つ」として墓地を描いた作品が多いのが興味深い▼「外からの目」が捉えた150年前の日本の姿の中には、今を見つめ直す発見もある。この風景画を紹介する展覧会が、仙台日独協会主催で25〜29日に仙台市内で開かれる。
2011年01月24日月曜日
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