八百長問題を受け、日本相撲協会が6日、臨時理事会で大相撲春場所(3月13日初日、大阪府立体育会館)の中止を正式に決定した。無料公開での開催という代替案も認めない完全中止となった。角界への衝撃は大きく、評議員会で説明を受けた高田川親方(元関脇安芸乃島)は八百長を認めた力士について「腹を切ってほしい」と吐き捨てた。八百長の疑惑がある14人についての処分は、調査結果が出るまで先送りにされた。
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評議員会後、出席した親方衆らの表情は一様に険しかった。高田川親方は「八百長なんて信じられない。そういう(関与した)ヤツは今すぐ辞めてもらいたい。腹を切って死んでほしい」とまくしたてた。力士にとって存在意義を示す場である本場所を失うことは、耐え難い屈辱だった。
この日の理事会は、特別調査委員会座長も兼務する伊藤滋外部理事から、八百長事件の取り調べについて報告があった。疑惑を認めた竹縄親方(元幕内春日錦)、千代白鵬、恵那司の3人以外の11人について、調査が終了しないことを確認。一般に無料開放する形で、興行ではなく「技量審査」を行うべきという意見も出たが、最終的に全会一致で中止が決定した。
午後の評議員会で中止の承認を得た際は、採決は行われなかった。出席したある親方は「(夏場所も)厳しいかなあ…。調査をするのに時間がかかると言われたので。5月になるのか、7月になるのか…」と視線を落とした。年寄総会開催の予定もあったが、調査結果が出ていない段階では年寄会として意見が出せないなどの理由で取りやめに。春場所開催を訴える意見はほぼ出なかった。
放駒理事長(元大関魁傑)は夕方の会見で「1人でも故意による無気力相撲の疑いをかけられている力士が存在する限りは、一生懸命やっている力士たちも同じ目線で見られることになる」と完全中止の理由を説明した。自身の進退については「この問題が起こった時点で我々がやらなくてはならないのは、この問題をどう処理していくかという問題が先」と問題究明まで職をまっとうする考えを示した。
本場所の中止は1946年夏場所の1度だけで、戦争で被災した国技館修復が遅れたためという事情があった。不祥事による中止は初めてだ。理事長は会見の冒頭で、相撲を奈良時代から続く「神事」とした上で、「再び生まれ変わった元来の姿で後世に引き継がなければいけない使命と義務を持っております。必ずや実態を解明してみせます」と誓った。
過去に例がない「最大の汚点」をどうぬぐうのか。協会が審判を受けるのはこれからだ。
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