失業率上昇により、コンビニ業界の雇用状況はどうなったのか? 他業界からの人材流入により人手不足が解消したのかと考えられてますが、現状はほとんど改善していません。若干応募状況が良くなったどうかが実感です。どうも、コンビニ業務は好かれていないようですね。
コンビニの入り口ドアに掲示されている「アルバイト募集」ポスター。店舗によっては、このポスターの掲示が続いている店舗があります。私のような立場の人間があの状況を見ますと「人がよく辞めるのかな? 定着率が低いお店なのかな」と心配になってしまいます。コンビニ経営にとって、アルバイト雇用(シフトの定着)は非常に重要な項目です。
シフトに穴が開く(アルバイトが埋まらない)状況になりますと、店長といった経営層が店舗オペレーション業務に駆り出されることになります。店長の本来の業務は「利益向上に向けた営業戦略の立案」にあるのですが、アルバイトと一緒に商品を品だしをしたり、レジ接客をしていては落ち着いて営業戦略を考えることができなくなります。そうなりますと営業改善の打ち手が遅れてしまうことになります。
コンビニ経営において、まず最初に実行するフェーズは「シフトの確定」にあります。人件費=固定費となりますので、店舗営業数値(P/L)での営業利益をシミュレーションしながらのシフト確定を行います。利益を出すために、あえて店長が深夜時間帯の勤務をすることもあります。
アルバイト従業員の方々にも業務の習熟度があり、長く勤務しているアルバイトほど無駄のない効率的な店舗オペレーションを行ってくれる貴重な人材となります。店舗としては、優秀な人材を採用し、長く勤務してくれることが重要になります。各店舗ともこの優秀な人材を採用することに努力をしています。冒頭に記述しました店頭に募集ポスター掲示を継続している店舗では、この優秀な人材募集を目的にアルバイト募集を継続している可能性もあります。
では、コンビニでアルバイト採用をする際に、優遇される条件はなんでしょうか?
・勤務シフトに融通が利く
確定シフトを作るとは言え、アルバイトの急な休みなどが発生しがちです。急きょ抜けたシフトの穴を埋めてくれるような勤務シフトに融通が利く人は大歓迎です。
・まじめそうである
店長としては、金銭管理も任せる仕事をしてもらう以上、まじめな人が欲しいものです。
・接客経験がある
ほかのコンビニでの勤務経験はあまり喜ばれません。むしろ飲食業などの接客業務を行ってきていると喜ばれます。これは、コンビニ業界内では「自分たちは、接客が良くない」という認識があるためです。
・夕方勤務シフトは女性優先
コンビニの時間帯別客層を考えると、夕方には仕事帰りの方の男性の来店が増えます。彼らを固定客にするためにも、夕方勤務ができる女性は望まれます。
ちなみに、アルバイト広告掲載からの反応が一番良いのが初日になります。採用する際に面接を行うのが通常です。面接するほうも時間がかかるのであまりゆっくり時間をかけられません。目指すべきシフト枠の応募が来ますと採用活動を終了しがちです。アルバイト広告を見て応募したいシフト枠が見つかった場合は早めの連絡、面接を行うことをお勧めします。日が遅くなればなるほど採用は困難な条件になってきます。
※この記事は、2008年07月30日~2009年12月18日まで日経ビジネスAssocieにて、連載していたものを加筆・修正し掲載しています。
●筆者プロフィール
笠井 清志(かさい・きよし)
船井総合研究所 戦略プロジェクト本部 次長 シニアコンサルタント。
1974年大阪府生まれ。複数の企業にてキャリアを磨き、船井総合研究所の経営コンサルタントとして従事する。コンビニ本部等の多店舗展開チェーン企業へのコンサルティングを中心に活動。クライアント先である「NEWDAYS」の平均日販を日本一に押し上げたことが話題になる。月刊コンビニ(商業界)にて連載を持つほか、著書に『コンビニのしくみ』(同文館出版)や『よくわかるこれからのスーパーバイザー』(どちらも同文館出版)がある。
(著:COBS ONLINE編集部)