きょうの社説 2011年2月8日

◎小松・七尾が特産交流 加賀と能登の融合商品を期待
 小松市と七尾市が、互いの特産品を大型イベントなどの開催に合わせて、出張ブースを 設けてPRし、「遠距離交流」で地域活性化を目指す。こうした交流を積み重ねながら、ゆくゆくは双方の特産物を生かしたコラボ(融合)商品の開発に取り組むことも視野に入れているようだが、南加賀と能登の拠点都市がタッグを組むという意外性を強みにして、いいとこ取りの新名物を生み出すことを期待したい。

 都市間の交流、連携は地域活性化の有効な手段であり、各自治体が力を入れている。主 に広域観光や親善・友好の観点から、提携先の多くは県外あるいは国外だが、産品の地産地消という面からも、足下の都市間交流や連携にもっと目が向けられていい。

 能登と南加賀地区の自治体が、こうした形で交流するケースは、これまでそれほど多い とは言えず、その意味でそれぞれの地域の人たちにとって、同じ県内でも相手の地域は依然「近くて遠い」ところに映っているかもしれない。両地区を代表する都市同士が連携を強め、交流人口を増やす余地はまだまだあると思われる。

 両市の交流は、七尾市で開かれる「海鮮七輪まつり」に小松市がブースを設け、小松う どんなどを提供するのを手始めに、担当者がイベント時などに訪ね合い、来場者に食の魅力をPRする。両市の「道の駅」を活用して、それぞれの特産品を並べる案も検討されている。こうした交流を重ねながら、市民参加で、この2市でしか食べられないB級メニューを考案しても面白いのではないか。

 特産品に限らず、両市を比べれば、中心部に風格ある町家が並び、毎年春には県を代表 する「お旅まつり」と「青柏祭」が開かれるなど、伝統文化が盛んな土地柄である。七尾が生んだ画聖・長谷川等伯と、近世から現代まで陶芸の巨匠を生んだ小松の九谷焼とのコラボレーションなどを企画すれば、ファンならずとも興味がわく。

 こうしたさまざまな視点から交流を推進することで、域内の消費拡大も図れよう。地元 の都市間連携が、地域経済の好循環の一助にもなることを望みたい。

◎新燃岳噴火 長期化への対策は万全か
 爆発的な噴火が続く霧島連山・新燃岳(しんもえだけ)は、江戸期の「享保噴火」以来 300年ぶりの本格的な火山活動に入る可能性が指摘されている。広範囲に降り注ぐ大量の火山灰や窓ガラスが割れる空振などに加え、雨による土石流の危険性も高まっている。この300年の文明の進歩さえ微々たるものに思える自然の恐るべき破壊力である。

 降灰は農作物などに影響を及ぼし、被害はさらに拡大する恐れがある。避難勧告地域は 縮小されたが、住民には疲労の色が濃い。山麓自治体だけの対応には限界があり、政府が現地へ支援チームを派遣したのは当然である。

 「享保噴火」は収まるまで一年半もかかった。20年前に起きた雲仙・普賢岳(長崎県 )の噴火では、発生から7カ月後に火砕流で43人の犠牲者を出した。火山活動の兆候をとらえる観測態勢は強化されたとはいえ、噴火後の推移を予測するのは難しく、あらゆる事態を想定しておく必要がある。

 避難勧告をめぐっては、宮崎県高原町が先月30日夜に発令したが、気象庁は「そんな レベルではない」との見解を示した。専門家の科学的な判断と、住民の安全を担う自治体の判断が異なることは往々にしてあるが、住民が混乱しないよう、関係機関はまずリスクの認識を共有してもらいたい。

 新燃岳の噴火は日本が火山列島である現実をあらためて突きつけた。観光資源である豊 かな山岳景観も火山活動の繰り返しで形成されたものである。北陸に目を移せば、白山、弥陀ケ原(立山)も活火山である。活動度の低いCランクだが、これは過去の噴火活動に基づく分類であり、噴火の切迫性を示したものではない。火山の長い寿命からみれば、小休止しているに過ぎないのである。

 GPS(衛星利用測位システム)でマグマの動きや上昇を把握することが可能になった 。微細な地殻変動を調べる技術は格段に進んでいる。たとえ大きな変化はなくても、そうした情報を伝えることは人々の安心感につながる。火山の監視体制が手薄になっていないか全国的な見直しが必要である。