「北方領土の日」の7日に開かれた返還要求全国大会で、菅直人首相がメドベージェフ・ロシア大統領の国後島訪問を「許し難い暴挙」と強い調子で非難し、前原誠司外相は早期返還に「政治生命を懸ける」と宣言した。昨年11月に大統領が国後島を訪問した後もロシア要人の北方領土訪問がやまない中、強い言葉で危機感を表した形だ。前原外相は10日からロシアを外相として初めて訪問するが、領土問題解決への展望はなお見えない。【西田進一郎、宮城征彦】
大会で菅首相は「北方四島の帰属問題を解決し、平和条約を締結するという基本方針に従い、強い意志を持ってロシアと粘り強く交渉する」と力説した。
だが、ロシアは相次ぐ要人の訪問に加え、今年に入り北方領土などの投資・開発プロジェクトに中国、韓国などの企業を巻き込む姿勢を示し始めるなど、実効支配をさらに鮮明にしつつある。ロシア外務省は5日の発表で「領土問題に固執する立場をやめることが、静かで建設的な日露対話を可能にする」と日本の姿勢を批判した。
こうした背景が首相や外相の強い言葉につながっており、外務省幹部も「言うべきことは言わないと」と発言を後押しする。
だが、強い姿勢だけで交渉が進むわけではない。前原外相は3日、プーチン首相とパイプを持つ森喜朗元首相とひそかに会い、助言を求めたが、訪露で進展が得られる見通しは描けていない。
外交に不可欠な政権基盤の安定が見込めないことも、影を落としている。鳩山由紀夫前首相は5日の講演で「2島にプラスアルファという考え方」に言及。「身内」の発言に、前原外相は7日の衆院予算委で「前首相が異なる考え方を言うのは控えてほしい」といら立ちをあらわにした。
毎日新聞 2011年2月8日 東京朝刊