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強まる中国依存、残る問題――在日華人

2010年6月22日16時9分

写真中国からの編入生が多い暁星国際高1年の特進クラス。生徒にそれぞれ自分の国旗を持ってもらった=2009年3月、千葉県木更津市

写真リゾートホテルを買い、改装中の部屋から山中湖を望む北京出身の露崎強さん=2009年11月、山梨県山中湖村

写真2003年6月に福岡一家4人殺害事件を起こして福岡拘置所にいる魏巍被告が04年4月、中国の父に送った手紙。「悔」の1文字が書かれていた

 少子高齢化の日本が、人不足の穴埋めを中国に頼り、その構造が強まる。約1年半の連載取材で実感した。華人100万人突破は遠くない。

 後継者難の農漁村、働き手がいない中小企業、定員割れの大学、大勢の技術者が必要なIT産業……。様々な分野が中国人を日本へ呼ぶ。日本の社会が回らなくなり、隣国をあてにする。

 そんな状況なのだが、日本社会は外国人労働者が増えることへの警戒感が強い。そこで、単純労働は主に研修・実習生を使う。一方、留学生や技術者は受け入れ、知識層が軸の日本型移民社会ができていく。日本企業に採用される留学生は急増中だ。

 だが、置き去りにされている問題は少なくない。

 記者たちは不法滞在の元留学生たちに会った。就職や学業に挫折したまま、残っている。生活にも行き詰まり、犯罪に手を染める例もある。日本社会で孤立する人々の心の問題もあるし、研修生への人権侵害や、偽装結婚の横行も目の当たりにした。

 在日華人の急増に、彼ら自身も戸惑う。「中国人ばかりが増えるのは良くない。外国人反対の運動が、中国人反対運動になる」と心配する華人もいる。

 こんな中、在日歴の長い華人が様々な問題の対応や日本社会との融和に動き、日本人も加わるというケースが出てきている。対策を探る試みの一つとして注目したい。

 一方、ビジネスの現場は別の悩みを抱える。大手企業の採用担当者が「光る人材を見つけるのは難しくなってきた」と語る。有能な留学生を求めるが、力のある中国人学生は中国に残るか、欧米に行くという。

 帰国を考える華人知識層も目立つ。国際移住問題を研究する法政大社会学部の田嶋淳子教授は「欧州と比べ、現在の日本の華僑・華人の質は高い。80年代の留学生が核だからだ。だが、世界的な人材獲得競争の中で、人材を送り出してきたアジアの国々も取り戻しに動いており、彼らを日本にとどめておくことができるだろうか」と懸念する。

 80〜90年代の留学組には、天安門事件がきっかけで日本に残った人、やって来た人が大勢いる。日本の民主社会や文化に共感し、一方で自ら道を切り開き、優れた仕事をしている人は多い。日本での研究や事業にさらに力を注いでほしいと思う。次世代の「光る人材」の獲得にも、協力を求めてはどうだろう。世界の人材にとっても魅力的な社会づくりにつなげたい。(編集委員・五十川倫義)

     ◇

 「在日華人」シリーズは今回で終わります。

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日本の中東研究者に中東の動きを鋭く分析してもらいます。東京外語大の飯塚正人教授とアジア経済研究所の福田安志氏の定期コラムも連載中。

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