2010年6月14日16時8分
日本中華総商会の創立10周年記念パーティーで、出席者と話す厳浩会長(左)=5月、東京都千代田区、古川透撮影
5月中旬、東京・赤坂。高層ホテルの大ホールは、日中のビジネスや交流にかかわる約400人でにぎわった。
在日華人の経営者らでつくる日本中華総商会の創立10周年記念パーティーだ。若手企業家らを中心に1999年に発足し、200社以上が加盟する。大きく成長した自信と熱気に包まれた。
日本を基盤に力をつけてきた彼らは、世界の華人とも手をつなぎつつある。
昨年11月、フィリピンの首都マニラ。約20カ国・地域から3千人近い華人企業家らが集まり、2年ごとの世界華商大会が開かれた。日本中華総商会も厳浩(イエン・ハオ)会長(47)ら70人近い代表団を送り込んだ。
華人の力が大きい東南アジアだが、日本代表団も積極的だった。中国と開催国フィリピンを除くと、団員数はシンガポールに次ぐ規模だった。
医薬品開発受託大手イーピーエスの社長でもある厳会長は「国際的ネットワークの場で、存在感を示したい」。メンバーはそろいのシャツとネクタイをつけて臨んだ。
東京で建設会社を営む王真一(ワン・チェンイー)さん(54)は、名刺を交換したフィリピンの華人経営者と近く中国で会う。福建省にある相手の実家が御影石を供給できると聞いたからだ。「華人同士、気持ちが通じる」と王さん。
一方、独自に世界市場を開拓する在日華人もいる。
和歌山港。埋め立て地に貿易会社ペトロマテリアルの工場が広がる。金属会社から仕入れたシームレス(継ぎ目なし)鋼管を石油掘削用の資材に加工し、主に中国の石油開発会社に販売している。
社長は、日本国籍をもつ江西省出身の三宅(陳)靖樺さん(44)。90年に来日。大学院で学び、商社で働いた。94年に貿易会社を起こし、今の会社に育てた。工場で働く約60人のほとんどが日本人。有名な鉄鋼会社や商社のOBを幹部として招いている。
中国の石油会社の世界展開に伴い、販路が世界に伸びる。「質のいい日本の製品を中国のネットワークを生かして売るのが私たちの仕事だ」と三宅社長。2003年、米国子会社を置き、日本の商社にいた弟を社長にした。在米華人ら社員4人が、南米で操業する中国系石油会社などに年20億円以上を売るという。
昨春、エジプトで、油井管加工の合弁会社に資本参加した。アフリカや中東に販路を広げる拠点づくりだ。ここには日本人役員を派遣した。三宅社長は「エジプト人は中国人より日本人を信頼する。日中エジプトが一緒だからこそできた」と語る。(浅倉拓也)
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第13部「世界商網」は、中国の急発展を背景に、活発に動く華人ビジネスのネットワークと在日華人企業家の姿を伝える。