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検証・交通まひ、福井大雪の現場から (中)北陸道、国8機能不全
(2011年2月4日午後1時11分)
大雪で通行止めになった北陸道下り線の様子。動けなくなった車には多くの雪が降り積もった=31日午前、福井県敦賀市内(読者提供)
通行止めの判断甘く 関係機関、連携が課題
「圧雪で路面なんか見えなかった。本当に除雪していたんですか」。福井市の女性(37)は31日未明、北陸自動車道下り線で大雪による立ち往生に巻き込まれた。滋賀県を抜けて敦賀を過ぎると、80台以上の車が停車していた。進行を阻まれた車は吹雪の中、徐々に雪に埋まっていった。
「動かない原因は」「いつ通れるようになるのか」。正確な情報は何も伝わってこない。大雪となることが事前に分かっていながら「なぜこんな事態に陥るのか」。結局、脱出できたのは半日以上たった31日昼すぎ。不信感ばかりが募った。
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北陸道下りは31日午前1時40分から約28時間50分、上りは30日午後11時50分から約23時間10分通行止めになった。並行して走る国道8号も31日午前1時半から約18時間半の通行止め。嶺北と嶺南を結ぶ大動脈は丸一日近く機能不全になり、合わせて約1100台が閉じこめられた。
中日本高速道路金沢支社は大雪に備え、通常より除雪車を40台増強し、130台の除雪態勢を組んだ。30日午前9時から午後11時まで1時間ごとに除雪を行った。しかし積雪に追いつかず、一部区間は1車線しか確保できなくなっていた。国土交通省福井河川国道事務所も国道8号の巡回態勢を強化し、随時除雪していたが状況は同じだった。
北陸道、国道8号が止まったのは、坂道を上れない車が相次いで発生したことが原因。道路管理者が自発的に通行止めを判断したわけではなかった。「除雪しながら通行を確保する。止めないことが大前提」(中日本高速金沢支社)となっているからだ。
同支社は今後も、通行止めの決定は路面状況や天候の推移などを総合的に判断するとし、明確な基準を設ける考えはないという。ただ、今回の「総合的な判断」は機能不全に陥った後に出されたにすぎず、結果的に判断の甘さは否定できない。
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国交省は先頃、国道で複数の車が立ち往生した場合は早めに通行止めにして除雪を優先する方針を出した。年末年始に福島、鳥取県の国道で約1300台が立ち往生したことが教訓になっている。
国道8号の通行止めは最初に走行不能車が発生してから約4時間半後。この間、道路状況を知らないでやってきた後続車が次々と巻き込まれ、混乱に拍車が掛かった。同省道路防災対策室は「鳥取や福島に比べ通行止めの判断は早かったが、長時間の通行止めが起きた。対応が良かったとは思っていない」と対応の不備を認める。
今回のような大雪の場合は「止めない」ことに固執せず、国道と北陸道が連携を取って最低限の道路を確保することが重要ではないか。同対策室は「あまりに早期の通行止めはドライバーの反発を招く恐れがある」としつつ「国道と高速を交互に止め、それぞれ集中的に除雪することもアイデアの一つ」と話す。
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ドライバーへの情報提供は適切に行われたのか。国交省福井河川国道事務所、中日本高速金沢支社、県、県警は30日午後11時40分ごろ、道路情報を共有、発信する「県冬期道路情報連絡室」を立ち上げた。各機関はホームページや道路上の電光掲示板、ハイウエーラジオ、報道機関への情報提供を通じて広報した。
だが、先の女性は「料金所に電話をかけたが分からないの一点張り。立ち往生した別の車には31日に金沢で大学受験を控えている人がいた。早めに通行止めが分かっていたら別のルートで移動できたのに」と憤った。
国道8号で通行止めの解除を待っていたドライバーも、情報の少なさに不満をあらわにした。関係機関が情報を集約しても、真に必要としている人たちには届かなかった。共有した情報を随時正確に提供することは、大雪を「災害」にしないための最低限の条件といえる。