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[25847] 【習作】白刃一閃。(東方project・オリ主)
Name: IXIA◆f3e98338 ID:72868372
Date: 2011/02/06 08:57

・東方projectの二次創作です。
・主人公はオリジナルキャラとなります。
・所謂幻想入りものです。
・オリジナルキャラと原作キャラの恋愛描写があります。
・設定の独自解釈や捏造設定があります。




2011/02/06 第1話投稿



[25847] 少年は、少女と出遭う
Name: IXIA◆f3e98338 ID:72868372
Date: 2011/02/06 09:00
青く深い森の中、少年は白い少女と出会った。

「そこの人間。 ここから先は天狗の領域だ」

そう、少年にとっては意味のわからない言葉を吐くのは、狼の様な雰囲気を持った白髪の少女。
白い和装を身に纏い、威嚇するように睨みつけ、手に持った剣を突きつける。
けれど、彼の意識が真先に向いたのは、見たこともない服より棘で刺すような視線より眼前に突きつけられた切っ先より、

(――空を……飛んで、る?)

それが当然であるように天(そら)に立つ、その在り様だった。

「このまま大人しく立ち去るならばよし。 だが、」

……全く意味が分からなかった。いつから自分がこんな森にいたのかも、目の前の少女が何者なのかも、その言葉も、自分に武器が突きつけられている理由も、
そして何故少女が空を飛んでいるのかも、少年の持つ『常識』では、何一つ説明が出来ない。
だが少女は彼の混乱など関係ないとでも言わんばかりに、一方的に言葉を突きつける。

「それ以上一歩でもこちらに近づいたならば」

そこで言葉を切ると、手に持つ剣を構え直した。その瞳は目の前の人間が何を考えているかなど気にしてもいない。
注視するのは、自らの言葉を受けて相手がどう動くか、といったことのみ。
下手な動きをしたならば、一瞬で斬り殺さんとする意思を見せつけながら……少女は、最後の一言を口にした。

「妖怪の山の一員として、貴様を排除させてもりゃう」

「そこで噛むかっ!?」

思わずツッコミが出た。




                          ========




幻想郷、と呼ばれる場所がある。
日本の何処かに存在する、外界とあらゆる意味で隔離された隠れ里。
そこには、現代社会において忘れられたもの、信じられることがなくなったもの、必要とされなくなったもの。
――すなわち、幻想と呼ばれるものが集まった土地である。

それが何処にあるのかは誰も知らず、そもそも存在自体を知る者すらも限られる。
仮に場所を突き止めたところで、現実に生きる人間の目には、決して映ることはない。
同じ世界の上に在りながら、決して交わることのない異界。
しかし、稀ではあるが現実の世界から幻想郷へと迷いこむ人間も、いた。



もう幻想となった言葉で呼ぶのなら。
それは、神隠しと言われたのかもしれない。



                          ========




状況を整理しよう。冷静になった――というかぶっちゃけ気が抜けた――頭で、少年は思考する。
まず、何故自分はこんなところにいるのか。 周囲を見渡せば森、というより山の奥と言った風情で、そう遠くない所から滝の落ちる音も聞こえてくる。
うっかり迷い込むような場所では無さそうなのだが、けれどもその答えは「気づいたらここにいた」と言うほか無い。
いつからいたのかもよく分からないし、ここに来る直前はどこにいたのかすらはっきりしない。
すわ、まさか記憶喪失とやらかと慌てて記憶を探ってみると、自分の名前は渡辺和那、身分はただの一般学生、昨日の夕食はカツカレーとすらすらと思い出せた。
もっとも、そうなると余計に自分の状況が分からなくなるのだが。


次に目の前の少女が何者か、ということに意識を巡らせる。
気づいたらこんな場所にいて意味も分からず彷徨っていたら、唐突に空から現れ剣を突き付けてきた。
年の頃は、おそらく自分とそう変りないように見える。
服装はまず現代社会では見かけることのないものである。たぶん初詣でも七五三でも成人式でもあんなものは着ない。
(実のところそれは山伏と呼ばれる行者の装束なのだが、和那の知識にそんなものは無かった)
さっきから黙りこくっているが、こっちのリアクションを待っていると言うよりここぞというところで噛んでよほど恥ずかしかったらしく、顔を真っ赤にさせている。これでは白い少女でなく赤い少女である。 ……それはさておき。
明らかに銃刀法違反な剣は多分本物だろうし、犬のような耳があるように見えるのは果たして気のせいか。
――そして何より、空を飛んでいる。これは多分、種も仕掛けも無いのだろうと、何故だか和那はそう感じた。

(……結局のところ、訳が分からないという結論しか出てこないよなあ)

ええいならばこの状況は一体何かと、少女が放った言葉を思い出す。
……色々と理解し難い言葉(天狗とか妖怪とかもりゃうとか)が混ざっているものの、大枠としては要するに立ち入り禁止区域に自分が入りかけたのが原因らしい、と今更に気づく。
そこまで思考が行ったところで、どうやら気を取り直したらしい少女、改めてこちらを睨み付ける。

「……そこの人間。ここから先は天狗の領域だ」
「最初からやり直す気だコイツ!?」

その発想は無かった。

「って言うか何だこの状況、もうちょっとしっかり説明を……」
「このまま大人しく立ち去るならばよし。 だが、それ以上一歩でもこちらに近づいたならば」
「無視してそのまんま続けんな! てかせめてこっち見ろ!」
「妖怪の山の一員として、貴様を排除させてもりゃ……ええい! 引き返す気が無いならば、力ずくで排除させてもらうっ!」
「お前今噛んだろ!? また噛んだろ!? そして逆切れすんなっ!」

もうグダグダだった。色々無かったことにして和那に襲い掛からんとする少女に、あまりと言えばあまりの状況について行けない和那。

「くそ、何なんだ一体!? 気づいたら山の中にいると思えば天狗だの妖怪だの意味分からないことを――」
「煩いっ! そもそも妖怪は人を襲うのが定め、そしてお前が消えれば私の失敗も無かったことに!」
「うわあ私情だ!? 言ってることの意味半分も分からないけど間違いなく私情だ!」

訳は分からないがこのまま立っているのは危険と判断、戦略的撤退を開始。後ろに向かって全力前進。

「って言うか、さっきの場所からは立ち去ってるんだからもう追いかける必要無いんじゃないのかっ!?」
「最早そんなことなど関係無い、大人しく私に倒されろっ!」
「いやまあだろうと思ってたけどさあ! くう、何でこんなとこで空飛ぶびっくり人間と追いかけっこをするハメに……!」

逃げる少年、追う少女。けれども地を這う人間と天を駆ける天狗、どちらが早いかなど言うまでもなく。
そしてその上、

「逃・が・す・かあっ!」
「……え、何そのエネルギー弾みたいなの。 なにくそ舐めるな、そうそう簡単に当たってうわーだめだー!」

少女の放つ螺旋の弾幕が少年に直撃。あっさりと意識を手放すこととなった。




とまあ、これが。現実の世界に生まれ現実の世界に生き幻想郷に迷い込んだ人間の少年・渡辺和那と、幻想郷に生まれ幻想郷に生き現実の世界を知らない天狗の少女――犬走椛の、最初の邂逅だった。


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