経済・IT【産経抄】2月7日2011.2.7 03:01

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【産経抄】
2月7日

2011.2.7 03:01

 新日鉄と住友金属が合併交渉に入ったとのニュースには驚いた。それ以上に、岡山市に本社を置くバイオ企業、林原の経営破綻は、衝撃的だった。抗がん剤のインターフェロンで国内トップクラス、甘味料などに使うトレハロースは、世界生産のほぼすべてを担う。

 ▼いわば地方から世界に打って出た、ベンチャー企業の希望の星だったからだ。もともと水あめ製造業だった。現在は関係がないが、「カバヤキャラメル」の大ヒットでも知られる。その会社を、父親の死により大学在学中の19歳で受け継ぎ、バイオ企業への転換を果たしたのが、今回社長を辞任した林原健さん(69)だ。

 ▼10年以上先を見すえた研究開発や、午前11時ごろ出社して、午後3時前に退社するなど、独特の経営手法が、注目されてきた。社長辞任がなければ、NHKは今月、林原さんを紹介するシリーズ番組を放映するはずだった。

 ▼会社を本業以上に有名にしたのが、林原さんが主導するメセナ活動だ。企業による文化、芸術活動の支援という意味で使われるこの言葉は、バブル景気のころ広まった。林原の活動は、中国の琴奏者の援助から、備前刀の技術の保存、ゴビ砂漠での恐竜の学術調査まで幅広い。

 ▼平成3年には、第1回メセナ大賞にも輝いた。ただ最近のビジネス界で幅をきかすカタカナ語は、メセナに代わって、コンプライアンスだ。直訳すれば「法令順守」、また、しなやかさの意味もある。

 ▼売り上げの水増しなど不正経理の疑いもある林原は、前者の意味で大きな問題を抱えていた。さらに、専務だった弟との同族経営が、時代の波に乗り切れなかった硬直化を招いたのではないか。後者の意味でも検証が必要だろう。

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