国際【主張】新START発効 中国の核削減につなげよ2011.2.7 02:58

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【主張】
新START発効 中国の核削減につなげよ

2011.2.7 02:58

 米露間の新たな核削減の枠組みとなる新戦略兵器削減条約(新START)が発効した。両国は7年以内に配備済み核弾頭と運搬手段を最低水準まで削減する。

 米露の核は世界の95%を占め、率先して削減の範を示すことで核不拡散体制を強化し、北朝鮮やイランなどに国際圧力を強める狙いがある。条約発効を歓迎し、その効果に期待したい。

 ただ、新たな削減は限定的で、一足とびに核廃絶につながるものではない。今後は戦術核や中国、インド、パキスタンの核などが重要課題となる。日本も理想論に流されずに、核抑止の現実と国益を踏まえた安保政策が必要だ。

 新条約は一昨年末に失効した第1次戦略兵器削減条約(START1)と2002年のモスクワ条約に代わるものだ。冷戦時と比べて両国の核は半減以下になるが、実質は実戦配備中の核弾頭を各200発ほど減らせばよい。削減対象は備蓄や予備役に回すことが認められ、廃棄義務もない。

 オバマ米大統領が掲げる「核なき世界」に程遠い内容となったのは、両国の戦略的思惑からだ。

 批准書交換にあたってラブロフ露外相が「米露の国益と世界の安定に有益」と語ったように、核をなくすこと自体が目的ではなく、削減を目指す中でいかに抑止体制の安定と互いの国益を維持するかに腐心した結果といってよい。

 条約発効を受けて米国は1年以内に戦術核の削減交渉入りを目指すが、ロシアは欧州の通常戦力や中国、インドなどの核も考慮するよう求めるなど、難航は必至だ。ロシアは新条約による義務達成にも、米国のミサイル防衛(MD)問題を微妙に絡めている。

 こうした課題の中でも、とりわけ重要なのは中国であることを忘れてはなるまい。米露の核削減が進めば、中国の核戦力の存在が相対的に大きくなるからだ。

 にもかかわらず、中国は自国の核戦力や戦略を自ら公表したことがない。透明性の欠如を指摘されているのは極めて残念だ。核保有を認められた5大国の中で、兵器用核物質生産の自主凍結(モラトリアム)に唯一反対し、核増強と近代化を進めていることも「責任ある大国」とは到底言い難い。

 日本の防衛と安全にも直結する問題だ。新条約発効を機に、国際社会の声をそろえて中国に責任を果たすよう求めていきたい。

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