余録

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余録:中大準硬式野球部

 プロ野球のキャンプが解禁された1日夜、全日本大学選手権で最多の8度の優勝を誇る中央大学準硬式野球部の28人が東京都日野市の合宿所を出て大型バスで向かった先は「球春」とは縁遠い豪雪地帯だ▲秋田県北部の三種町。人口1万9000人余、65歳以上のお年寄りが3分の1を占める高齢化が進んだ町だが、野球部員が分け入った上岩川地区は半数近くが高齢者という、とりわけ高齢化が進んだ集落だ。部員の目的は1人暮らしのお年寄り世帯の雪かき作業▲2日朝、三種町に着くと5、6人ずつ5班に分かれ、作業を始めた。屋根の雪下ろしは「都会の人には危ない」(町役場職員)ため、ひさしからせり出した雪やつららを落とし、玄関や勝手口から道路までの生活通路の確保とガスの排出口周辺の除雪が中心だった▲車中泊を含め2泊3日の「弾丸ツアー」だったが、またたくまに50軒近い家の除雪を完了、予定になかった保育園の雪かきまでこなした。部員の中には南国・石垣島出身者が4人。1メートル近くも降り積もった雪は初体験で、喜々として雪と格闘する光景も見られたという▲野球部は30年以上も三種町で恒例の夏合宿をしており、池田浩二監督が日本海側を襲った豪雪のニュースに心を痛め、除雪ボランティアを三種町長に申し入れた。「部員には慣れない作業だったが、少しでも三種町の人たちに恩返しができたことがうれしい」と池田監督▲公共事業費削減で業者による除雪が思うに任せない自治体は少なくない。中大部員のような奉仕の除雪隊は珍しいことではあるまい。多くの善意に支えられ、雪国の春も近いと信じたい。

毎日新聞 2011年2月7日 1時02分

 

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