【聖女は歩む贖罪の道を】深山幽谷、少女は静謐を好む

<オープニング>


 どこまでも続くと思われた小径が途絶えたと気づかせたのは、肩に掛る粉雪と肌刻む寒風だった。
「どこにでも行け、か……言い得て妙だな」
 全員を吐き出すとあるべき姿に素早く戻る木々が、成上・瑞羽(霧幻の翼・b61342)は奔放な美姫ラプンツェルそのままだと口角をあげた。
 もう妖精郷に戻ることは、出来ない。それが彼女の意志なのだろう。
「確かに、狼使いの森のようです」
 前方に生い茂る木々に真赭の瞳を巡らせて、白い息を吐きアリスは更に続ける。
「ローラならば、現在のフェンリルの数と居場所、そしてフェンリルを何に使うのかを知っているはずです」
 禍々しき赤と青。
 破滅と破壊の苛烈の獣を――使う。
「ローラさんは人狼十騎士。だったら確実にネジが埋め込まれてるよ、ね?」
 ルアン・ニーチェ(光凰・b21130)は震える肩を押え込むようににローブを握り締める。
 震えは寒さと、どのような悪しき計画が口をあけるのかという恐怖と。だが哀しむ人を増やしたくはないという使命感が凍えを止めた。
「ところで、ローラはこの森のどこにいるの?」
 広大な森に踏み込む前に、犬神・リディヤ(ラビリンスドール〜白夜迷宮録・b77255)はそう確認する。
「……申し訳ありません。ローラが住む『森の塔』の詳しい場所を私は知らなくて」
 冷たい緑の世界を闇雲に歩くのか……。
 そんな落胆にアリスはすまなそうに唇を噛む。
「ですが、ある程度近づいた場所で、高い木の上に登って上から確認すれば見つける事ができると思います」
「他に注意点はあるか?」
 不破・赤音(迅雷・b22569)の短くシンプルな問いに、アリスはこくりと頭を揺らす。
「はい。狼使いの森には、フェンリル召喚時に付随し招かれる『ゴーストウルフ』が多数住み着いています」
 能力者たちは視線を交す。
 フェンリルの眷属、ゴーストウルフ。
 銀誓館が人狼と刃交えし際によく傍にいたどう猛なる獣たちが、この森を徘徊しているのか。
「彼らは私たちクルースニクでも構わず襲いかかってきます」
 アリスがいるからといって、無事に森を抜けられるという話ではないらしい。 
 狼使いの名を持つだけあって、ローラはゴーストウルフ達を従わせる力があるので、平気で隠遁生活を営めるのだという。
「それこそが、彼女が十騎士になれた理由のひとつ……だと思います」
 その口調から、どうやらローラは他の十騎士のように、戦功などの実績で取立てられたようではないようだ。
「任務で一緒になった事もありません、だから具体的な戦闘能力は、わかりません」
「そう、ですか。とにかく……」
 耳澄ませば獣の遠吠えが聞こえる気がするのは『いる』と意識したからか。
「ゴーストウルフに、出来る限り見つからない方法を、考えなくてはいけませんね」
 白い息に顔を曇らせて、木村・小夜(神様よりも大切なもの・b10537)は、森に入る前に相談が必要だと提案する。
 みなで賛同し、雪で体を冷やさぬよう、葉を豊かに繁らせた梢の下に移動する。
「見つかった場合にゴーストウルフと戦う方法も重要ですね。彼らは1頭なんですか?」
 脳裏に模擬戦闘を描くウォッチャー・ミガトリバド(殲滅砲台・b74339)は、より正確にシミュレートするために問い掛ける。
「いいえ、10頭程度で群れを成しています」
「そうですか。そんなところも狼らしいんですね」
 群れで生きる習性は、ゴーストウルフとて同じなのだろう。
「戦闘中に他のゴーストウルフに嗅ぎつけられない工夫があればいいんですが……」
 太陽が登り始めているのに逆らうように、闇に沈む森に視線を向けて、九頭竜・亞貴名(死の抱擁・b64903)は眉を潜める。
「森を抜けてからの話なのですが……塔にはローラさん以外の人はどれぐらい住んでいるのですか?」
 この旅の中ずっと夢への案内人であった朋・朔夜(闇夢を抱く光・b54873)らしい懸念と言えるだろう。しかし最終目標は『ローラのネジ抜き』だから、重要な確認事項である。
「住んでいる人はローラだけです。ただお気に入りのゴーストウルフを3匹手元に置いていたと思います」
 一番年少の少女に目を向けて、彼女はこう締めくくった。
「彼女はウォッチャーさんの1つ上の13歳。少し変わり者で……とにかく人嫌いです」
 聖女の複雑な表情からは、扱いにくそうな少女だという印象を受ける。
 最悪、戦闘不能にしてから夢の中に入る――そんな手を取る覚悟も必要だろうか。
 長い旅を共にしてきた9人は、もはや見慣れた落ちる白と海松色の迷宮を見据える、どこか暗澹とした気持ちを携えて。
 朝影。
 しかし未だ闇は、濃い。

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参加者
木村・小夜(神様よりも大切なもの・b10537)
ルアン・ニーチェ(光凰・b21130)
不破・赤音(迅雷・b22569)
朋・朔夜(闇夢を抱く光・b54873)
成上・瑞羽(霧幻の翼・b61342)
九頭竜・亞貴名(死の抱擁・b64903)
ウォッチャー・ミガトリバド(殲滅砲台・b74339)
犬神・リディヤ(ラビリンスドール〜白夜迷宮録・b77255)



<プレイング>

プレイングは1週間だけ公開されます。

木村・小夜(神様よりも大切なもの・b10537)
単なる人嫌いなら、それでいい。
いいえ、よくないけれど、でも、まだいい。
でも、もし務めで、こんな森の奥にひとり居るのなら。
それは、あまりにも――。



布を纏い身を隠して日中に移動。
狼と戦う際は、白燐奏甲での支援に専念。光・音を抑える。
夜を待ち、足音を殺し塔に潜入。

アリスさんに、ローラさんはいつ十騎士になったのか質問。



ローラさんとは戦闘を避け、こっそりとネジ抜き。
気づかれた場合は強引に無力化。3匹の狼は倒さない。
この時は後衛。白燐奏甲で間断なく回復。
味方がBSを受けたら赦しの舞。



ネジ抜きに同行。夢の景色をしっかりと観察。
狼を眠らせる悪夢爆弾で稼げる時間は短いので、直接攻撃し短期決戦。



夢や会話で知りたいのは、彼女の能力の源と、十騎士としてここにいる理由。
日本との連絡で聞いたメガリス・アクティブか…もしくはメガリスそのもの、神話に伝わる4本の鎖の2つ、魔法の紐グレイプニルか足枷ゲルギャではないかと予想。
「こんな予想、外れていれば、いい、ですけれど」



カリストとネジのことを説明。

会話が途切れた時に、疑問をぶつけてみます。
「ローラさん、あなたは、何かを、守っているのでは、ないですか」
もしも、狼を繋ぐ鎖の守人として幼くして十騎士となり、代償を恐れて、仲間の為に一人守っているのなら。
アリスさん、人狼騎士は、そんな仲間の犠牲を喜びますか。
ローラさん、今こそその力を、仲間の為に使うときではないですか。

ルアン・ニーチェ(光凰・b21130)
孤独がどんな事なのかぼくにも分かるんだ
だから少しでもローラちゃんの力になれたらなって思うから
頑張りたいな

移動時の注意とか基本は皆に準じるの
塔を探す時は時々交代で木に登って探すよ

戦闘の時はネジさん含め相手が固まってる時はアークへリオンで、一体の時は光の槍で攻撃するね

部屋に入る時とローラちゃんと話す時はイグニッションを解除するね
攻撃されても解除して敵意が無いことを示すの
それと話す時はゆっくり静かに話すようにするね

ネジ抜き後はそれを認識してもらうの
ぼく達は今カリストさんの洗脳から皆を助ける為に動いてるんだ
カリストさんは沢山の人を思い通りにして何かをしようとしてるみたいなの

その後はなるべく話を聞く感じで首飾りのこと聞いてみようかな
ぼくは家族から引き離されて、暗闇の中ずっと一人ぼっちだった時、お父さんとお母さんから貰った首飾りを心の支えにしてたんだ
だからもしかしてローラちゃんにとってそれはとっても大切なものなんじゃないのかなって思って

今はぼく傍には沢山の仲間がいるから
だから辛い時も頑張って来れたんだと思うの
この子達を傍に暮らしてるって事は、心のどこかでは寂しいんじゃないかなって

ローラちゃんがなんて言おうと、ぼくはもうローラちゃんの事お友達だと思ってるよ
だから余計なお世話かもだけど、困った事とかあったら言って欲しいなって思うんだ
お友達ってきっとそういうものだと思うから

皆で食べるご飯も美味しいよ

不破・赤音(迅雷・b22569)
【事前準備】
雪景色にまぎれるように白い布をかぶる
可能なら携帯で一帯の衛星写真を入手し、塔を探す手がかりに

【森】
ウルフに遭遇しないように足跡などに注意、鋭敏感覚を使用
戦闘時は前衛を担当、相手に近づかれる前に手裏剣で削っていき、近づいてきたら通常攻撃。なるべくその場を動かずに、複数の群れを相手にしないように気をつける
塔を探す際にはスコープ、本業能力使用

【塔】
近くの木の上で、狼をやり過ごし夜を待つ。塔の明かりが消え、ローラが眠りについたらネジ抜き開始
三匹の狼は無力化し、起きている場合は強引な手段でもローラに眠りについてもらい、ネジ抜き

【ネジ抜き】
「悪いが急いでいる」
爆水掌手加減なし

【説得】
基本仲間任せ、彼女をよく観察し、彼女の本質を見極め、失敗しそうなら、おとなしく立ち去る代わりにフェンリルの情報を求め、また今後の戦争では学園がこの森を攻めて彼女の周囲を騒がさない代わり、ローラもゴーストウルフやフェンリルをこの森から出さず戦争に参加させないでほしいと交渉

【心情】
ローラが自分から人を避けているのなら、それは彼女の考えと誇りがあるのだろう。それを汚すわけにはいかない
ランプツェルも思ったのだろうが、自分達が正義と思っているのが学園の欠点。彼女のためと思っていても「人嫌い=悪い」等のように、こちらの価値観で話せばうるさい人では?
そうならないように注意
人には人の価値観がある。なぜ人嫌いで悪いんだ?

朋・朔夜(闇夢を抱く光・b54873)
【心情】
森の中の塔に、お気に入りのゴーストウルフが一緒とは言え、
たった一人で住むというのはどんな気持ちなのでしょう?
少なくとも、人のぬくもりは感じられませんよね。
微力ながら、人の暖かさを教えてあげたいです。

【移動】
移動は日中。
後方弐番手当たりに位置を取って、移動中の後方警戒をします。
移動中は目立たないように、白い布や迷彩布を羽織ります。
もしもゴーストウルフとの戦闘になってしまった場合は、
早期撃破を目指します。

【ネジ抜き】
夜、寝静まったのを確認して塔内に侵入。
最上階でローラが寝ているのを確認してネジ抜き。
この時、お気に入りの狼がおきていた場合、
夢の中への通路を開いて、私は外で狼を相手します。
「Psychofeld Entwicklung」
サイコフィールドをかけた後は、
悪夢爆弾による無力化を狙います。
「Schlafen」
傷つけたくはありません。
眠ってて下さい。

【ローラ】
「もし宜しければ、みんなで食事でも如何ですか?
一人での食事よりも楽しいと思いますよ」
キッチンを借りられれば食事を作ります。
みんなでよそって食べられるように、シチューが良いですね。
決して諭すような事は言わず、
心地よく話を出来る雰囲気作りに勤しみます。
綺麗な色の髪ですね、とか、褒めてみたり、
髪を結ってあげたりとか、仲良くなれるようにしたいです。
少しでも人と過ごすことの暖かさを知って貰えれば、
争わないで済むのでしょうか?
みんなで仲良く、が一番だと思います。

成上・瑞羽(霧幻の翼・b61342)
■心境
幼き少女が、ただの人嫌いとも思えない。
彼女は人の温もりを知らず生きてきたのではないか。
誰かを好きになれる力になれたら。
私も、そうして救われた身だから。

もしや、鉄鎖のメガリスを扱わされ
それ故に一つ所に留まり独りになったのでは。
未確認の鎖、グレイプニルとゲルギャ
…杞憂であれば良いが。

■森
迷彩布を配り、草木の匂いを
衣服に擦り付け発見されにくくする。

斥候として索敵と前衛を務める。
物音があれば一度止まり、慎重に進もう。
戦闘では群れの側面を叩き敵が散らぬよう攻める。
攻撃にはデモン改、体力が4割を切れば霧影分身術を使用。

■ローラ
深夜までに調理に使える野草の調達をしておく。
勿論彼女の分も含めて。

潜入時、ローラに気付かれたら
多少の傷覚悟で速攻し早めに戦闘不能に。
完了後ネジ抜き。残す力全てで挑もう…!

彼女が戦闘不能なら手当の手伝いを。
そしてまず、手荒な真似をしてすまないと謝ろう。
目線を合わせ、丁寧に優しく。

一方的にならぬよう様子を見て、ウルフ達や首の鎖は
お気に入りなのか、と彼女が興味を示しそうな話題を振る。

初めは拒絶されても、大丈夫、怖くないからと
根気強く手を差し伸べるような姿勢でいこう。
人と接する温もりを、心に伝えられるように。

答えがあればそれを切欠に
私達がローラと話したい旨を伝える。
私からは戦いについてどう思うか。
否定的であればその意思を貫いてほしいと伝える。
困った事があれば力になる、とも。

九頭竜・亞貴名(死の抱擁・b64903)
【心情】
もしも本人の意思に関係なく重責を背負わせておきながら
巻添えを食うのはご免だと突き放したのだとしたら…
人嫌いにも成りそうですね
仲間に恵まれたならそうはならなかったのでしょうか?

なんだか少し前までのアリスさんもそうでしたが
欧州の人狼騎士は仲間との信頼はあっても
交友に乏しい様な感じがしますね

【作戦】
塔詮索時は光や音を発さない様に注意して移動
また迷彩布に草木の汁等で匂いを付け視覚と嗅覚を誤魔化す工夫を凝らす

ゴーストウルフは遠吠えや足跡発見時の雪の積もり具合等から距離を推測
可能な限り近付かない様にする
万が一戦闘に成った場合、その場での早期決着を目指す

ネジ抜きは寝ている間に忍び込み行う
ただしローラのお気に入り達が起きていた場合は
引き付けている間にネジ抜きを行う

またローラと戦闘に成った場合は積極的非殺で対応

ネジ抜き後ローラと会話

【行動】
◆塔詮索時
作戦に基づき行動

◆ネジ抜き
ローラのお気に入り達が起きていた場合は仲間がネジを抜く間
彼らを引き付けますが成るべく彼らを殺さない様に気を付けます

◆ローラ
説得には加わらず大人しくしています
ただ戦闘で彼女を戦闘不能にした場合は傷の手当をしたいと思います
その時にお気に入り達が生きていても彼らを説得(?)してみます
「君達に彼女の傷は癒せないでしょ?手当が終わったら相手してあげるから今は邪魔しないで」

◆戦闘
戦闘に陥った場合は後衛位置で回復>射撃攻撃の優先度で行動

ウォッチャー・ミガトリバド(殲滅砲台・b74339)
■塔捜索・移動時
可能な限り森や雪等周囲の色に合わせた迷彩用意。
草木の汁等で匂いも誤魔化す。
移動時は光や音を発さぬ様注意。
方位磁石+筆記具で簡易地図作成しスーパーGPSで確認、探索の補助に。
捜索に大きな影響を与えぬ範囲で積雪の少ない所を歩く。
ゴーストウルフは遠吠えや足跡発見時の雪の積もり方等から距離を推測。
可能な限り避ける。
発見された際は移動せずにその場で早期撃破を目指す。
撃破後は速やかに移動。

■塔到着後
昼の間に到着出来たら付近に隠れ夜まで待機。
可能なら灯り等で使用された部屋をチェック。
灯りが消えたら音等を立てない様に塔へ侵入。
入口施錠時は機械修理を利用し可能な限り静かに解錠か破壊を試みる。
破壊の場合、可能なら直せるような解き方を。
塔侵入後も出来るだけ静かに最上階へ。
灯かりの付いていた部屋の扉越しに寝息等音を確認。
眠っていそうなら少し扉を開けて内部を確認し、寝ているようなら静かに侵入。
ネジ抜きを試みる。

■戦闘時
後衛、クロウ前衛壁役。
共にネジ抜き班。
対ネジ戦は最初にラジカル。以後ライトニング。
互いに声を掛合い常に状況確認。
人数減少は特に意識し回復は早めに御願。
森での戦いは術式射撃のみ。

■説得時
ネジ抜き後、私は外へ。
直せるなら鍵を直そうと思います。
…私は所詮、幸せ者です。
苦しみも、孤独も、多分…理解してあげられません…
そんな想いすら…恵まれた者の傲慢、贅沢な悩み…なのでしょうか?

いつか…

犬神・リディヤ(ラビリンスドール〜白夜迷宮録・b77255)
フェンリルが20体だと…カリストの野郎、一体何を
喉の奥が焼け付くような嫌な感覚…この焦燥感、不快だわ
この嫌な流れ、断ち切らないと

【塔探索】
狼の群れを避けつつ、日が暮れる前に塔を見つける
狼変身して、雪の上を選んで進む…背を低くさせ雪を保護色にする事で、群れからの発見を防ぐ
注意する点は狼の鳴き声、雪上の足跡や雪を踏む音、あと斥候役の狼等…これらから群れの規模や位置を推測、仲間と迂回ルートを検討

【森での戦闘】
後衛に位置し速やかに群れを殲滅
特に群れの指揮を取る個体がいれば、優先して攻撃
他の群れを呼ぶか解らないけど、念には念を

他の群れを呼ぶような行動をされたら、戦闘後速やかに場所を移動する

【塔侵入】
夜まで塔の外に待機
ローラが寝るのを見計らって潜入
とにかくローラ・3匹の狼に気付かれない様に灯りや物音には注意

【ネジ抜き】
気付かれずドリームダイブ出来るなら、狼を警戒すべく仲間の護衛に
戦闘になった場合、ネジ抜き班に狼を近付けない
出来れば部屋の外に追い出して扉を閉め、ネジ抜きまで狼を入れない様に(狼を抱えて廊下に出る等)
可能な限り狼には攻撃せず耐える

【会話中】
私は後ろに下がり彼女の狼達を観察
妖獣を無理やり制御しているのか、使役の様な関係なのか
特に目を見てみる
そこから彼女を理解する物を得られないか考察

個人的には賢いコ…特にこのコ達のような忠義に厚いコは好き
彼女の許可が得られれば撫でたり色々したいわ…是非!




<リプレイ>


 獣の遠吠えが意外と近い、そう最初に気がついたのは不破・赤音(迅雷・b22569)だった。
 姿を現わした群れの先頭が他を呼び集める前に、練り上げた水の手裏剣を投げつける。
 ほぼ同時に成上・瑞羽(霧幻の翼・b61342)もゴーストウルフに馬乗りになり、脳天に刃を突き立てた。
「ごめんなさい」
 ウォッチャー・ミガトリバド(殲滅砲台・b74339)の放つ光線に合わせ、クラウディアは自身より2倍はあろう巨体に臆せずかぶりつき葬り去った。
 ウォッチャーの地図をのぞき込み、九頭竜・亞貴名(死の抱擁・b64903)は次のルートを探る。
「フェンリルが20体だと……カリストの野郎、一体何を」
 喉の奥が焼け付くような不快な焦燥感。
 舌打ちする犬神・リディヤ(ラビリンスドール〜白夜迷宮録・b77255)だが、雪の積もり具合を亞貴名と共に見極め、冷静にルート選定をしている。
「また木に登ってみましょうか」
 雪に紛れた白布の下から提案するのは朋・朔夜(闇夢を抱く光・b54873)だ。
 戦闘をほぼ最小限に抑えられてはいるものの、そろそろ辿り着きたいところ――そして、その願いはようやく結実する。


 宵闇の中、横殴りの風に煽られる頼りなげな粉雪が当たって砕ける。そうして出来た白の軌跡はまるで天への道筋のようで。

「こっちの方が、ラプンツェル姫の塔って感じなの」
 蒼空色の瞳で赤煉瓦の塔の光が落ちた窓を仰ぎ、ルアン・ニーチェ(光凰・b21130)が零した。
 魔女により塔に封じられし髪長姫――つい先日逢った同じ名を持つ女性こそが魔女で奔放で自ら望み妖精郷のみで生きていた。
 では、ここに棲まう少女は?
 アリスに聞けば8才時からここにひとりでいるらしい。
「単なる人嫌いなら、それでいいの、ですが」
 木村・小夜(神様よりも大切なもの・b10537)は、瞳を閉ざすと手袋に包まれた掌を胸に押し当てる。
 もし、務めで、ひとり居るのなら。それは、あまりにも――。
「髪長姫のお話とは違って入り口はありますよ」
 重たくなりかけた空気を振り払うようにウォッチャーが努めて明るく塔の下部を示しす。
 亞貴名は「気を悪くされたらすみません」と添えアリスの方を向いた。
「欧州の人狼騎士は仲間との信頼はあっても、交友に乏しい感じがします」
「そう……かもしれませんね」
 一瞬瞠目、だがすぐに微笑みに書き換わる。
「率直な亞貴名さんのお言葉が嬉しいです」
 この旅路の中、違う意見を交しあうことを厭わなかった銀誓館の彼ら。それは確立した個が互いを信頼しているから出来ること。そこに含まれている扱いが誇らしい。
「彼女をビャウォヴィエジャの森へ誘ったことがあるのですが……」
 複雑な表情を浮かべた後で、アリスは唇を閉ざし塔の窓を見上げた。
 皮肉な話だが、吸血鬼株式会社で心の闇を利用した今ならわかる――生来の『フェンリルを大人しく出来る』力で十騎士になった少女へは、夥しい嫉妬が向くことが。
「……とても冷たい、です」
 歩み寄り触れたレンガに指を握り、朔夜は切なげに唇を震わせる。
「誰かを好きになれる力になれたら、いいのだが」
 救われた過去を思い起こし瑞羽は不器用な笑みを浮かべ、同じく孤独を知るルアンも力になれたら、と頷く。
 恐らくは人のぬくもりも知らぬ少女に、心通わせる安らぎを教えてあげたい。
「……」
 前ゆく面々を見据える赤音の眉間険しく寄り、ありありとした憂慮が滲んでいた。
(「人には人の価値観がある。なぜ人嫌いで悪い?」)
 自分達が正義と思い込みがちな銀誓館の悪癖は、時に押しつけがましく映る。未成熟そうなローラとぶつからなければ良いのだが、と。


 ぐるぐるぐるぐる……。
 螺旋の石階段を何回廻り昇っただろう?
 ようやく冷え冷えとした回廊の終わりが見えてきた。
「……」
 ローラの私室であろうドアに耳をあてたリディヤの目配せに、イグニッション済みの面々が頷く。
 極限まで音を殺しドアを押せば、漏れてくるのは暖炉の赤に揺らめく簡素な木作りのベッド。ボサボサの白髪と黒の毛皮が並んで眠る。
 床で丸まっているのは白と茶の毛皮、先程対峙したゴーストウルフよりは小柄だ。
 ぴくっ。
 白の個体の耳が外側に揺れもぞりと肩が動いた。空気の揺れが伝わったのか、隣の茶色も金色の目を開く。
「路をひらきます、行って下さいっ」
 素早くローラの額に掌を翳し目を閉じる朔夜。亞貴名が彼女を庇う位置に立つ。
「大人しくなさい」
 鞭を腰におさめたリディヤは、シロに飛びかかり押え込むとチャを挑発するように腕を差し出す。
「ガウッ」
 見事釣られ腕に牙をたてるチャ、滲む血は亞貴名が瓶を投げ素早く癒した。
「Psychofeld Entwicklung……」
 幻夢繰る朔夜の声を背に、6人はローラの夢へ侵入する。


 降り立ったのは、荒野。
 雪。
 緑。
 そしてアトランダムに舞うは、巨大な紙。
 綴られているのは他の国の花だったり日本の漫画だったり人気歌手のグラビアだったりととりとめがない。
 だが詳しく確認する暇は無かった。
「これ、は……っ」
 周りを観察していた小夜は息を呑む。他の皆も同様に驚きやがて憤りを面に刻んだ。
 もはや馴染みとなった暗銀色の螺子。
 蠢く螺旋で締め付けるのは痩せた少女の躰。
 周りを巡回する2体の螺子は、時折止まっては無数の複眼を脂のようにギラつかせ、勘に障る硬質音にて少女をいたぶる。
『フェンリルを呼び出せ』
「……」
『フェンリルの大軍勢を呼び出せ』
「……ゃ……」
『破壊の魔物フェンリルを呼び出すのだ』
「……や、だ……」
 ほんのりとした薄紅色の髪が俯く少女の顔を隠し、辛うじて確認出来る口元が力なく拒絶を紡いだ刹那、
 タンッ!
 銃声。
 複眼の一部を灼かれ、右の螺子が苦しげに痙攣する。
「下郎の螺子よ、ローラを離しなさい」
 漆黒の銃身を構え希有なる憎悪を剥き出しに睨むはアリス。

 ――人狼全てを螺子から解放し、カリストを倒すことに全力を尽くす。

 その路を拓き示してくれたのは、8つの光。
「そう言うわけで、急いでいる」
 進み出た赤音は地を蹴り飛び上がると、更に複眼を潰すべく上空から力を注ぐ。
「……軽いな。やはりあわせて1体分か」
 螺旋には螺旋を。
 風切丸の手ごたえから瑞羽は敵戦力を分析、後方に伝達した。
「汝の名は、クラウディア」
 無機の配列を瞳に映しながら、ウォッチャーは傍らの黒い刃にそっとなぞる。
 3人を外に残しここに来た――戦いは熾烈を極めるだろう。いつも以上に無茶を乞う、だけれど!
「ゆけ、命を賭して護るべきものを知る戦士」
 誇り高き獣は咆吼あげて恐れなく前へ、螺子の胴へ牙をたてた。振り落とさんと揺さぶられても、絶対に離れぬと喰らいつく。
「光ある路望む者に始まりを、阻む者には破滅を!」
 白光帯びた扇を前にルアンが叫べば、螺子3体を巻き込み光が爆ぜた。
 共に歩みし彼らは、もはや意識せずともあうんの呼吸で攻撃をつないでいける。
「短期決戦、です」
 躊躇わず前に出て、小夜は琥珀をクロウの真横に突き刺しねじる。
 ギギギギぎぎギ……。
 前で捻れ廻る2体の螺子が解けた螺旋で赤音と瑞羽を叩き打った。
「その程度か」
「動きが鈍い」
 2人は短刀で堰きとめ勢いを殺し堪える。
 力はやはり3分の1、しかもローラを戒める螺子は攻撃叶わぬ様子……押し切れる!
「私も前に出ます」
 アリスは螺子の頭頂へ歯を立て血を啜りあげる。
 ――忌まわしの力を奮う嫌悪なぞ、囚われの同族を助けるためなら些細なこと。
 3人欠いた状態なれど、彼らの猛攻は3つの螺子を薙ぎ払う。1人とて膝折ることなく。


 黒狼を抱いて眠る少女の瞼がゆるゆるとあがる。気配を悟ってか朔夜が眠らせた2匹も、ひくりと鼻をそよがせた。
「……? あ、アリス」
 目覚め身を起こし、渇いたアルトヴォイスは抑揚無く瞳に映る同族の名を呼んだ。
「わたし……群れる気、ないよ」
「今日は、その話ではあ……」
 わうっ。
 わうわうっ。
「シロ、チャ……どしたの? あ、わぁ……」
 初見だらけの顔に、首から下がるごつい鎖を指でなぞりローラは困惑を浮かべた。
「あ、あの、争う気はないのっ」
 と、目の前でイグニッションを解くルアンを無視して、枕元のノートを手に取りひらくローラ。
「……なんか、アリスがいっぱい人、連れてきた。眠い。あ、クロが起きない……クロ」
 ぺちん。
 鉛筆を置いて、ローラは未だ温い布団の中で夢の中のゴーストウルフの額を叩く。
 ちなみに。
 ローラは『〜起きない』までを口に出しながらノートにぐりぐり綴っていたり。そんな奇矯な行動に口火を切る機会を逸した能力者達。
 そして少女は状況をまるっと無視、素足をぺたぺた部屋を出て行く
「随分、肝が据わってるのね」
 尻尾をふりふりお供するシロとチャに視線を向け、リディヤは鋭い眼差しを投げる。
「だって殺す気なら、わたしもう死んでる。でも、生きてる……だから、平気」
 鎖を一つ一つ確かめるように人差し指でつつき、ローラは再び歩き出す。
「あ、あの……ごめんなさい」
 ウォッチャーは不法侵入の無礼を詫びた。
 孤独なローラに掛けられる言葉を見つけられなかったため、引いていたのだが……淡泊な反応に戸惑いが隠せない。
 謝られても思い当たりれないと首傾げ、ローラは廊下突き当たりのドアの先へ。シロとチャはドアの前でお座り。やがて水の流れる音、どうやらトイレらしい。
「これは……」
「どうしましょうか?」
 困惑した朔夜の視線を受け、亞貴名が苦笑する。
「成程」
 そしてずっと状況を観察していた赤音は、腕を解き続けた。
「ローラは孤独を苦にしていないようだな。好きの反対は無関心というが、そういう『人嫌い』か」
 赤音が予想していた人物像が一番正解に近かったことになる。
「好きでひとりでいることを念頭に、押しつけがましい言動は避けた方がいいだろうな、まぁ、怯えたり激高されたりするよりはマシだろう」
 先程の瞳には敵意が無かったとウォッチャーは添える。
 ――螺子を抜いた影響は確実にあるはずだ、とも。
「そう、ですね」
 暖炉の光を頼りに部屋を見回していた小夜は、夢の中で浮遊していた紙に似たもの――世界の四季の花々を解説した百科事典の1ページ、を見つけ頷いた。


「読者家なんだな」
 ベッドに寝転がり本を読み出すローラに瑞羽が静かな口調で話しかける。
「ん……本、好き」
 ぱたん。
 百科事典を綴じた際に起きた風が、少女の不揃いな前髪を持ちあげた。
「色々、写真や説明……おもしろいよ」
 無表情のままだが僅かにうわずる声。そしてその間も少女は言葉をノートに書き綴る。
「それは、なんですか?」
「日記」
 小夜の問いに更に続く答え。
「後で読み返すの、楽しい。わたし……こんなこと考えてたんだ、とか」
 書き留めるのはクセで、更に一々口にしているのには気がついていない様子。
 過去の自分はある意味彼女に一番近しい他者だ。
 孤独は退屈。
 だが他者と話すのも億劫な彼女は、常にこうやって過去の自分と対話し退屈を紛らわしてきたのだろう。
「ひとりは寂しくないか?」
「別に。だって……」
 瑞羽の問いを受けベッドを降り本棚へ。古びたノートを取り出し最初のページを確認すると、再び口を開く。
「5年前から、ここいるし……人狼十騎士、やる条件で静かで気ままに過ごせる場所、欲しいって言ったの」
 その言葉から、彼女がメガリスの代償のため孤独を選んだわけではないと理解出来た。
 小夜が投げた「グレイプニル」「ゲルギャ」という単語にも反応はない、知らないようだ。
(「よかった……」)
 瑞羽はメガリスのせいで彼女が孤独に歪められているわけではないことに胸を撫で下ろす。
 ぺらり、ぺらり……ぺら……。
 ページを繰る音が不意に、止まった。
「カリ、スト……」
 零れ落ちた名に、すかさずルアンは自分達がここに来た経緯を話しはじめる。
「カリストさんは沢山の人を思い通りにして何かをしようとしてるみたいなの」
 ……それはネジによる洗脳で、ローラにも施されていたこと。
 ……ローラを、更には他の人達を洗脳から助けることが目的だということ。
 その間も、ローラはノートから目を離さない。

「――呼ばないと、ふぇんりる」

 唐突に読み上げられた一文は強制されていた過去。
 あんな怖いモノを何故嫌々ながら喚びだしていたのか? その理不尽さがじわじわと胸に染みてくる。
「それが、十騎士としての、お仕事ですか?」
「メガリス、壊すと……フェンリル、飼い慣らせる。わたしにしか、出来ないって」
 もしかしたらローラは、メガリスを壊す際に特殊な効果を発揮できるタイプのメガリス・アクティブなのかもしれない。
「……」
 ノートを閉じ顔をあげた薄紅の瞳に、今初めてルアンそして夢の中に入った面々が映る。
「なんか……すっと、してる……あなた達、名前は?」
 相変わらず感情は見えづらいが、声と表情には明らかな好奇心が滲んでいた。

 自己紹介が済む頃には、皆の前にシチューが並ぶ。
 ローラに断りリディヤは3匹に冷ましたシチューを振舞ってやる。
「このコ達のような忠義に厚いコは好き」
 撫でていい? には「どぞ」と返った。
「シチューはお口に合いますか?」
「これ……どの、缶詰?」
 朔夜は柔らかに首を揺らすと、材料を借りて作ったと返す。
 キッチンには、保存の利く缶詰やレトルトの他に賞味期限が明日までの牛乳がストックされていた。つまり誰かが食料を届けているのだ、定期的に。
「そ……じゃ、書いて」
 ぐいっとノートと鉛筆を突き出すローラ。
「ね、ローラちゃん。その鎖は大切なものなの?」
 快くレシピを書く朔夜の隣、ルアンは自分の宝物――両親からの首飾りを見せながら話をふる。
「ずっとつけてる、し……大事、なのかな。でも、クロとチャとシロ、もっと大事」
 手の甲にすり寄るシロを撫でとつとつと。
「わたし、ここでこいつらと、一緒。それだけで……いい。でも…………」
 続かぬ声を急かさぬようにじっと待つ。

「……フェンリル、怖い。でも、いっぱい、呼び出した」

 頼りなげに俯き、ローラはぎゅっと唇を噛みしめる。
 リディヤの元から2匹が戻り、心配そうに喉を鳴らし主に躰をこすりつけた。
 洗脳時の行いだと他者が慰めてくれても自分を赦せるわけもない、と、痛い程に知っているアリスは気遣わしげにローラを見つめる。
「ローラちゃん、ぼくたちに任せて!」
「ああ、私たちがなんとかする。安心するといい」
 ルアンと瑞羽の声を皮切りに、皆口々に申し出る。
 フェンリル討伐――。
 そもそもローラへの接触の目的はそれだった、だからむしろ望むところだ!
「フェンリル、強いのに……ま、でも」
 くす。
 笑い慣れていない少女は不器用に小さく唇をあげる。それは初めて見せる、笑顔。
「お願いしちゃおう、かな……」
 顔をあげたローラは、フェンリルの居場所を語りはじめる――。


マスター:一縷野望 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/02/07
得票数:カッコいい2  知的8  ハートフル17 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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