2010年12月8日 22時45分 更新:12月8日 23時15分
政府税制調査会は8日、全体会合を開き、11年度税制改正の焦点となっている法人税引き下げを議論した。経済産業省は減税分の代替財源案を提示したが、金額は5000億円台前半と税率に換算すれば1~2%程度。経済界の要望を受けて菅直人首相が指示している5%減税を実施すると、1兆円超の減収になるため、政府税調事務局の尾立源幸・財務政務官は「さらなる財源の上乗せが必要で、確保の努力をお願いしたい」と経産省に要請した。減税の実現に向けてはなお財源問題が重くのしかかっている。【久田宏】
「(法人税減税の見合い財源確保の)厳格化は経済の活性化にはつながらない」。池田元久副経産相はこの日の税調で、見合い財源を企業関連の増税で確保することにはこだわらない「実質減税」の実現を強く訴えた。
これまで政府税調は、5%の法人税減税で税収が1.4兆~2.1兆円減少すると試算。新たな減税にはそれに見合う財源を確保するという政府の基本原則に基づき、企業の優遇税制措置の廃止などで全額を穴埋めできる財源を確保するよう経産省に求めていた。
しかし、民主党は税制改正に関する提言で「見合い財源に固執すればかえって経済成長を阻害する」として実質減税を要望。菅首相も7日、5%減税を改めて指示しており、実質減税を容認する姿勢を示したとみられる。ただ、その場合でも企業関連の増税で相当程度の財源が確保できなければ、税収に大きな穴が開くことになりかねない。
経産省がこの日示した5000億円台前半の財源案は、経産省が日本経団連と調整して積み上げた額だ。ただ、財源案に盛り込んだ「欠損金の繰り越し控除(欠損金を翌年以降の課税所得から差し引く制度)の制限」は、赤字企業にも影響が出ることなどの理由で経済界に強い反対論があり、いまだ経団連との合意には至っていない。税調の議論でも、銀行界を所管する東祥三副内閣相は「金融機関が狙い撃ちにされる」と強い懸念を示している。
政府税調は、さらなる財源の積み増し努力を経産省に求めたものの、目標とする14日の税制改正大綱のとりまとめまで残された時間はあまりなく、企業関連からの財源の上積みは容易ではない。政府税調は、証券優遇税制の打ち切りや所得税の控除見直しなど企業以外の財源を活用することも視野に入れているが、予算編成では子ども手当の上積み分などの財源確保も課題となっており、財源の争奪戦になることも予想される。政府税調内には、国の負担を軽減するため、法人事業税など地方税を含めた実効税率で5%減税を実現する案も浮上しており、着地点はいまだ見えない状況だ。