COP16:閣僚級会合が開幕 通じぬ日本の道理

2010年12月8日 21時48分 更新:12月8日 23時22分

松本龍環境相(右手前から2人目)と会談する解振華・中国国家発展改革委員会副主任(左前から2人目)=メキシコ・カンクンで2010年12月7日、足立旬子撮影
松本龍環境相(右手前から2人目)と会談する解振華・中国国家発展改革委員会副主任(左前から2人目)=メキシコ・カンクンで2010年12月7日、足立旬子撮影

 【カンクン(メキシコ)足立旬子、國枝すみれ】国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)は7日(日本時間8日)、閣僚級会合が開幕し、京都議定書に定めのない13年以降の枠組みをめぐる論議は山場を迎えた。しかし、地球温暖化を招いた責任論など従来の主張が繰り返され、「決着は来年以降」というのが交渉担当者の共通認識になっている。議定書で温室効果ガスの削減義務を負っている国の排出量は世界の27%にとどまる。日本は議定書の見直しを訴えるが、支持は広がらず厳しい対応を迫られている。

 「立場が違う相手に妥協を求めるより、まず自らが歩み寄ってほしい」。フィゲレス条約事務局長は閣僚級会合で各国に呼びかけた。この発言が象徴するように交渉は難航している。きっかけを作ったのが日本だ。

 11月29日のCOP16初日、日本は「いかなる条件でも(13年以降の)第2約束期間での削減目標を記入しない」と演説、議定書の延長不支持を鮮明にすると、会場は約30秒間静まりかえった。

 97年に採択された京都議定書は日米欧などの先進国に温室効果ガスの排出削減を義務づけた。しかし、米国は経済的影響を理由に離脱、世界最大の排出国の中国も途上国扱いで削減義務はない。

 日本は「現状の枠組みでは産業の国際競争に影響が出る上、温暖化防止の実効性も乏しい」と説明、途上国支援の実績をもとに支持拡大を図るが、「開幕早々、水を差した」(タイ)、「柔軟性を持つべきだ」(パキスタン)など反応は冷ややか。日本と立場が同じなのはカナダとロシアだけだ。

 ◇目立つ米中接近

 交渉では、皮肉にも削減義務を負っていない米国と中国の存在が目立つ。

 例えば、中国はインドと歩調を合わせ、先進国が議定書延長や早期の資金供与などの3条件をのめば、削減対策の国際検証を受け入れると表明。検証は着実に対策を実施するために重要で、米国が強く求める。「内政干渉」と抵抗する国は多いが、中国は条件闘争に入って主導権を握り、米国と水面下交渉を進める。

 中国外務省高官の劉振民氏は「米国との友人関係を楽しんでいる」と語り、米国のトッド・スターン気候変動問題担当特使も会見で「中国と頻繁に話し、愛情すら持っている」と語った。欧州連合(EU)は「米中はいつもひそひそ話をしている」と警戒する。

 中国は、閣僚級が現地入りした2日間に判明分だけで約20回の2カ国会談をこなした。松本龍環境相も7日、温暖化被害を受けやすい島嶼(とうしょ)国グループ代表のグレナダのトーマス首相、中国の解振華(かいしんか)・国家発展改革委員会副主任らと会談したが、中国の半分という。

 ◇交渉の構図が複雑化

 締約国の中で多数派の途上国は「温暖化を招いたのは先進国」という観点で、京都議定書延長の立場で足並みをそろえる。閣僚級会合で、イエメン代表は「先進国は温暖化問題の歴史的な責任がある。経済力に比例した目標をもつべきだ」と訴えた。

 その途上国も、気温上昇幅や世界全体の排出削減目標など、「ポスト京都」を構成する項目で主張が異なる。先進国との対立も相まって交渉の構図は複雑化している。

 COP16の作業部会で、議長のたたき台は、「(地球規模での温暖化被害を深刻化させないとされる)気温上昇を2度未満に抑える」と盛り込んだ。国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告書を反映した数値だが、途上国も排出削減を迫られる可能性があり、中国は反対している。

 同じ途上国でも、米国を抜き世界一の排出国となった中国をはじめとする新興国への目は厳しい。

 1.5度未満を求める南米ボリビアのパブロ・ソロン首席交渉官は「(自然災害をもたらす)温暖化は大量殺人だ。命と自然を守ろうとする姿勢が、交渉を停滞させていると言うのか」と主張する。

 6日の会見でインドのラメシュ森林環境相は、米国が20年までに05年比17%削減するとの目標を取り上げ、「低すぎる数値だ。心底がっかりだ。これまでの累積排出量が最大の米国の参加なしに、地球規模での対策を成功させることはできない」と指摘し、さらなる温暖化防止のための資金支援を求めた。

 これに対し、EUは「2度未満達成には、すべての主要排出国の削減が必要だ」と主張し、日本も米中の参加を求めている。

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